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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第300話:コンボ
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「まだ遅い」
「くッ!」
三騎士の内の一人が短槍と巧みに使って襲い掛かって来る。
確実に俺の顔を貫こうと迫る槍をすんでのところで首を曲げて回避してそのまま反撃に移る。
だが短槍で攻撃して来た騎士は攻撃と同時に一歩下がっており、攻撃が空振りに終わる。
それだけに留まらず、俺の空振りを見越してもう一人の騎士が俺に肉薄して来る。
完全に体勢を崩された俺は回避出来ないと瞬時に判断して攻撃を仕掛けた右腕を急いで戻してガード態勢に入る。
そこでリリの登場だ。
体勢の崩された俺に攻撃を仕掛けて来た騎士の真横から飛び蹴りを入れてその攻撃を止める。
そして冒頭の言葉となる。
「攻撃の起点と起点の間のラグを無くせ」
「クソッ」
リリの言葉に悪態を付いて、短槍を持った騎士を追い掛ける。
リリの言葉は俺が体得している嶋崎流においても課題だと言われている。
人間が演じてる以上、身体の可動域やその他の制限も有りどうしてもそれらを完全に無くす事は出来ない。
なのでそれらを限り無く削ぎ落として行くのが達人と呼ばれる者達だ。
俺はもう既に普通の人間では無い。認めたくは無いが、だからこそ人間の枠に嵌って無駄の多い動きをする俺にリリは言うのだ。
お前はもう人間では無い
人間としての固定観念を捨てろ
もう一歩先を行け
と。それでも身体に脳に細胞に染み付いたその人間らしさは簡単には捨てられない。
条件反射的に動いてしまう身体とそれを制御しようと藻掻く脳のせめぎ合いを常に感じながら戦闘行為を行うのはストレス以外何者でも無かった。
だが、それで文句等言えるだろうか。
これは俺が単に情けなく弱いからだ。
身体以外にも様々な能力等の恩恵を受けながら人間の域を出る事が出来ない俺じしんの問題であり、リリに悪態を付いたり怒りをぶつけるなどナンセンスなのだ。
少しずつしかないか・・・
一朝一夕で対応出来れば苦労は無い。だが俺はそがで所謂天才でも無いし、俺の能力が無ければ嶋崎流の体得まで一体どれ程の年月を費やす事になったのかも分からない。
なので、そんな凡人の俺は日々鍛錬を積み重ねるしか結局強くなる道は無いのだと今この瞬間にもそう自分に言い聞かせて雑念を振り払う。
「ちょこまかと動くんじゃッ――ねぇ!!」
短槍持ちの騎士に追い付き、横並びとなった俺はノーモーションで右ストレートを放つ。
が、それは騎士の持つシールドに弾かれ、逆に腕を跳ね上げられてしまう。
「ッ!?」
俺の腕を跳ね上げたと粗同時に短槍を突き出していた騎士が一瞬息を飲み行動をキャンセルして頭を後ろに仰け反らせる。
「チッ!」
通常ならば腕を跳ね上げられたらその腕を引き戻し、体勢を維持しようとする。
が、俺は跳ね上げられた腕をそのままにして、反動を利用して身体を持ち上げ、所謂サマーソルトキックを放っていた。
だがそれは短槍持ちの騎士がギリギリで避けてしまい空振りに終わる。
一度お互い距離を取る為にバックステップをすると、後ろからリリの声が聞こえる。
「何故二撃で止める。三、四と連続しなければ意味か無いだろ」
分かってるよ・・・
一瞬で相手の行動を先読みしつつ自分の行動を決めるだけでも脳をフル活動させているのに、それに加えてリリの言ったラグを無くすだとか、先の先の先まで考えるなどかなり厳しい。
正直言って一手先くらいが俺の限界と言っても良い。
それにしても・・・
リリの言葉に眉を顰めつつ改めて対峙している騎士を見る。
三騎士の内の一人は短槍と小盾を装備しており、その両方を巧みに使い速度重視と言うスタイルだ。
そして今仲間達が対応している残りの二人の騎士もそれぞれこの騎士とは別の武器を持っている。
一人はロングソードの二刀流、もう一人はロングソードと大盾とオーソドックスな騎士スタイル。
そして何より、この三人の連携がもう何か常にインカム等を付けてやり取りしているのではと思ってしまう程正確で鮮やかなのだ。
漸く今は俺が一人引き離した所だが、戦闘に集中しているといつの間にか三人が連携出来る位置まで誘導されていて術中に嵌っていく。
個の能力も飛び抜けていて、先程から俺は一撃で殺すつもりで攻撃しているが難無く往なされているし、あちらの攻撃もかなり鋭く逆に油断していると一撃で沈められ兼ねない。
つまり、強い・・・
戦闘が始まる際、この三騎士は周りの他の兵士や騎士に手を出すなと命じていた。
そう言う吟時でも持っているのか、他に何か目論みがかあるのかは分からないが、今は三人しか相手にしていない。
これは俺達にとってはかなり有利でラッキーな事なのだが、どうにも攻めきれ無いどころか逆に若干押されている始末だ。
俺一人と他の残りの仲間と別れているが、仲間の方はリリが遊撃と言うか自由に動いて危ない所をカバーしつつ他の仲間は受け一択と言った具合だ。
攻める事は出来ずにいるので手詰まり感は否めない。
やっぱり縛りは辞めるか・・・
瞬間、俺の姿は闇へ消える。
「ッ!?」
きっと其れは無意識だったのだろう。
短槍持ちの騎士は顔を向けずに右上方からの俺の攻撃を短槍を振り弾く。
いい反応じゃねぇか
そう思ったがそれだけだ。影移動からの攻撃に反応されたのなら、影移動から影移動に繋げてからの攻撃、更に影移動。タイミングをずらし意表を付き、時に直接的に時に変則的に前後左右、上から下へ決して直線的にはならず常に立体機動を意識して立ち回る。
「なんッ、だッ、あぐッ!?突然―――」
急にギアを一段も二弾も引き上げた俺の動きに短槍持ちの騎士ほ翻弄される。
一発、二発と徐々に俺の攻撃が当たりだし、最初こそギリギリで避け、回避出来ずとも致命傷を避ける事の出来ていた騎士は次第に手傷を増やして行った。
よしッ、イける!
この影移動を使っての戦闘方法は何よりも座標と影に入った後、出て来る時の体勢、力のベクトルの向きの決定が重要だ。
それら全てを一瞬の内に判断して決定して能力を発動させる。
移動の為の影移動とは異なり、戦闘時は座標を細かく設定する。
つまりそれは相手の動きを予測し移動後に何処にどの体勢でいるのか、そう言った事に左右されるので俺からすれば殆ど全て、それこそ未来予測とも言える様な計算を瞬時に行っている。
限界をとうに超えた処理を行う脳は一瞬でオーバーヒート寸前になってしまうので日常的に使う事は出来ないし、恐らく極限まで集中しそれこそきっと今この瞬間俺は人間の域を超えているのかも知れない。
なら、通常の鍛錬ではこの域に到達する事は出来ない。始めての感覚に俺は完全に取り込まれる。
未来を予測して動きそれがハマる。
コンボやろコレ!コンボだろ!?
次の俺の一撃が短槍騎士の甲冑のショルダー部分を砕く。
「ぐぅッ」
大きく体制を崩したのを目にして気分が逸る。
一気に決めようと逸る。
驕りとも言えるかも知れない。
「ぁ――」
失敗したと思った。
と言うか失敗した。
ここは影移動を使わずに直接動くべきだったと思ったが時既に遅し。
影移動を終えてトドメとばかりに大振りになった俺に合わせるかの様にドンピシャのタイミングで騎士が崩れた体勢から無理矢理右手に持った短槍を突き出して来ていた。
「グ――ぅッ!?」
何とか身体を捻り致命傷は回避するが、左腕を一本持って行かれる。
痛みが脳を突き抜けるが直ぐに別の衝撃を腹部に受けて後ろに吹き飛ばされた。
「――うッ、ぐッ、ぎぃッ」
三回程ゴロゴロと無様に転がるが直ぐに体勢を立て直し立ち上がる。
「マスターは本当に阿呆だな」
「・・・うるせぇ」
丁度仲間の元に転がって来ていた事にリリの言葉で気付く。
リリは当然呆れた表情だったが他の仲間は?と思い少しだけ振り返ると大体が同じ顔をしていた。
いや、だって・・・
と、途中までは結構いい感じだったよね!?
「くッ!」
三騎士の内の一人が短槍と巧みに使って襲い掛かって来る。
確実に俺の顔を貫こうと迫る槍をすんでのところで首を曲げて回避してそのまま反撃に移る。
だが短槍で攻撃して来た騎士は攻撃と同時に一歩下がっており、攻撃が空振りに終わる。
それだけに留まらず、俺の空振りを見越してもう一人の騎士が俺に肉薄して来る。
完全に体勢を崩された俺は回避出来ないと瞬時に判断して攻撃を仕掛けた右腕を急いで戻してガード態勢に入る。
そこでリリの登場だ。
体勢の崩された俺に攻撃を仕掛けて来た騎士の真横から飛び蹴りを入れてその攻撃を止める。
そして冒頭の言葉となる。
「攻撃の起点と起点の間のラグを無くせ」
「クソッ」
リリの言葉に悪態を付いて、短槍を持った騎士を追い掛ける。
リリの言葉は俺が体得している嶋崎流においても課題だと言われている。
人間が演じてる以上、身体の可動域やその他の制限も有りどうしてもそれらを完全に無くす事は出来ない。
なのでそれらを限り無く削ぎ落として行くのが達人と呼ばれる者達だ。
俺はもう既に普通の人間では無い。認めたくは無いが、だからこそ人間の枠に嵌って無駄の多い動きをする俺にリリは言うのだ。
お前はもう人間では無い
人間としての固定観念を捨てろ
もう一歩先を行け
と。それでも身体に脳に細胞に染み付いたその人間らしさは簡単には捨てられない。
条件反射的に動いてしまう身体とそれを制御しようと藻掻く脳のせめぎ合いを常に感じながら戦闘行為を行うのはストレス以外何者でも無かった。
だが、それで文句等言えるだろうか。
これは俺が単に情けなく弱いからだ。
身体以外にも様々な能力等の恩恵を受けながら人間の域を出る事が出来ない俺じしんの問題であり、リリに悪態を付いたり怒りをぶつけるなどナンセンスなのだ。
少しずつしかないか・・・
一朝一夕で対応出来れば苦労は無い。だが俺はそがで所謂天才でも無いし、俺の能力が無ければ嶋崎流の体得まで一体どれ程の年月を費やす事になったのかも分からない。
なので、そんな凡人の俺は日々鍛錬を積み重ねるしか結局強くなる道は無いのだと今この瞬間にもそう自分に言い聞かせて雑念を振り払う。
「ちょこまかと動くんじゃッ――ねぇ!!」
短槍持ちの騎士に追い付き、横並びとなった俺はノーモーションで右ストレートを放つ。
が、それは騎士の持つシールドに弾かれ、逆に腕を跳ね上げられてしまう。
「ッ!?」
俺の腕を跳ね上げたと粗同時に短槍を突き出していた騎士が一瞬息を飲み行動をキャンセルして頭を後ろに仰け反らせる。
「チッ!」
通常ならば腕を跳ね上げられたらその腕を引き戻し、体勢を維持しようとする。
が、俺は跳ね上げられた腕をそのままにして、反動を利用して身体を持ち上げ、所謂サマーソルトキックを放っていた。
だがそれは短槍持ちの騎士がギリギリで避けてしまい空振りに終わる。
一度お互い距離を取る為にバックステップをすると、後ろからリリの声が聞こえる。
「何故二撃で止める。三、四と連続しなければ意味か無いだろ」
分かってるよ・・・
一瞬で相手の行動を先読みしつつ自分の行動を決めるだけでも脳をフル活動させているのに、それに加えてリリの言ったラグを無くすだとか、先の先の先まで考えるなどかなり厳しい。
正直言って一手先くらいが俺の限界と言っても良い。
それにしても・・・
リリの言葉に眉を顰めつつ改めて対峙している騎士を見る。
三騎士の内の一人は短槍と小盾を装備しており、その両方を巧みに使い速度重視と言うスタイルだ。
そして今仲間達が対応している残りの二人の騎士もそれぞれこの騎士とは別の武器を持っている。
一人はロングソードの二刀流、もう一人はロングソードと大盾とオーソドックスな騎士スタイル。
そして何より、この三人の連携がもう何か常にインカム等を付けてやり取りしているのではと思ってしまう程正確で鮮やかなのだ。
漸く今は俺が一人引き離した所だが、戦闘に集中しているといつの間にか三人が連携出来る位置まで誘導されていて術中に嵌っていく。
個の能力も飛び抜けていて、先程から俺は一撃で殺すつもりで攻撃しているが難無く往なされているし、あちらの攻撃もかなり鋭く逆に油断していると一撃で沈められ兼ねない。
つまり、強い・・・
戦闘が始まる際、この三騎士は周りの他の兵士や騎士に手を出すなと命じていた。
そう言う吟時でも持っているのか、他に何か目論みがかあるのかは分からないが、今は三人しか相手にしていない。
これは俺達にとってはかなり有利でラッキーな事なのだが、どうにも攻めきれ無いどころか逆に若干押されている始末だ。
俺一人と他の残りの仲間と別れているが、仲間の方はリリが遊撃と言うか自由に動いて危ない所をカバーしつつ他の仲間は受け一択と言った具合だ。
攻める事は出来ずにいるので手詰まり感は否めない。
やっぱり縛りは辞めるか・・・
瞬間、俺の姿は闇へ消える。
「ッ!?」
きっと其れは無意識だったのだろう。
短槍持ちの騎士は顔を向けずに右上方からの俺の攻撃を短槍を振り弾く。
いい反応じゃねぇか
そう思ったがそれだけだ。影移動からの攻撃に反応されたのなら、影移動から影移動に繋げてからの攻撃、更に影移動。タイミングをずらし意表を付き、時に直接的に時に変則的に前後左右、上から下へ決して直線的にはならず常に立体機動を意識して立ち回る。
「なんッ、だッ、あぐッ!?突然―――」
急にギアを一段も二弾も引き上げた俺の動きに短槍持ちの騎士ほ翻弄される。
一発、二発と徐々に俺の攻撃が当たりだし、最初こそギリギリで避け、回避出来ずとも致命傷を避ける事の出来ていた騎士は次第に手傷を増やして行った。
よしッ、イける!
この影移動を使っての戦闘方法は何よりも座標と影に入った後、出て来る時の体勢、力のベクトルの向きの決定が重要だ。
それら全てを一瞬の内に判断して決定して能力を発動させる。
移動の為の影移動とは異なり、戦闘時は座標を細かく設定する。
つまりそれは相手の動きを予測し移動後に何処にどの体勢でいるのか、そう言った事に左右されるので俺からすれば殆ど全て、それこそ未来予測とも言える様な計算を瞬時に行っている。
限界をとうに超えた処理を行う脳は一瞬でオーバーヒート寸前になってしまうので日常的に使う事は出来ないし、恐らく極限まで集中しそれこそきっと今この瞬間俺は人間の域を超えているのかも知れない。
なら、通常の鍛錬ではこの域に到達する事は出来ない。始めての感覚に俺は完全に取り込まれる。
未来を予測して動きそれがハマる。
コンボやろコレ!コンボだろ!?
次の俺の一撃が短槍騎士の甲冑のショルダー部分を砕く。
「ぐぅッ」
大きく体制を崩したのを目にして気分が逸る。
一気に決めようと逸る。
驕りとも言えるかも知れない。
「ぁ――」
失敗したと思った。
と言うか失敗した。
ここは影移動を使わずに直接動くべきだったと思ったが時既に遅し。
影移動を終えてトドメとばかりに大振りになった俺に合わせるかの様にドンピシャのタイミングで騎士が崩れた体勢から無理矢理右手に持った短槍を突き出して来ていた。
「グ――ぅッ!?」
何とか身体を捻り致命傷は回避するが、左腕を一本持って行かれる。
痛みが脳を突き抜けるが直ぐに別の衝撃を腹部に受けて後ろに吹き飛ばされた。
「――うッ、ぐッ、ぎぃッ」
三回程ゴロゴロと無様に転がるが直ぐに体勢を立て直し立ち上がる。
「マスターは本当に阿呆だな」
「・・・うるせぇ」
丁度仲間の元に転がって来ていた事にリリの言葉で気付く。
リリは当然呆れた表情だったが他の仲間は?と思い少しだけ振り返ると大体が同じ顔をしていた。
いや、だって・・・
と、途中までは結構いい感じだったよね!?
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