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第7章:愚者の目覚めは月の始まり編
第333話:帝国皇帝
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「お前らがナオヤの友人達か!何をそんな所で縮こまっている、もっと近くに来い!」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
目の前の男が豪奢な椅子にふんぞり返りながら俺達を見下ろし言う。
だが、俺達はどうしたら良いのか分からず黙っているしか無いのだが―――
「どうした、聞こえなかったのか?」
「・・・とりあえず言う通りにしとけ」
俺達から反応が返って来ないので目の前の男は片眉を釣り上げて椅子の手摺りを使ってつまらなそうに頬杖を付く。
直哉は極、小さい声で俺にそう言うと皆を前へと誘う。
「ほう、よく見ると面白そうな者達だな!」
「ははは、そうでしょうか・・・」
男は少し前に移動した俺達をまじまじと見てからそんな事を言い、それを直哉が愛想笑いを浮かべて返す。
どうしてこうなった・・・
今置かれている状況に俺は必死に頭を回転させるが、やはり正解が分からず堪らず頭を掻き毟りたい衝動に駆られる。
それはここに居る他の仲間達も同じだろう。
「んんッ、皇帝陛下、この者達がナオヤ殿より報告が有りました傭兵を生業としている者達に御座います」
「そうか、ナオヤから報告は聞いている。ノビリグアでの連合との戦いに我が帝国として参戦しナオヤを助けたと聞いている、大義であった」
「・・・勿体無いお言葉に御座います」
男の隣に立っていた、初老の男性から報告を受けるとその男は偉そうにそう言って笑う。
直哉は一緒に居て聞いた事も無い丁寧な言葉遣いでそう返答し恭しく頭を下げた。
そう、今俺達の目の前にふんぞり返るこの男、何を隠そうハイスタード帝国現皇帝、イングリット・エレシエム・ハイスタード・アニアスカその人なのだ。
男と言うより―――
直哉に倣い頭を下げていた俺達だが、俺は玉座に座るその男をチラリと覗き見る。
男は見る限りまだ成人していなそうな年頃で、この世界は男は十五で成人と言う事を考えても、かなり幼い顔立ちと言う事ならギリ十五と言われれば納得する――かな?くらいの見た目なのだ。
もっと厳ついオッサンを想像してたんだけどな・・・
確か王国や公国とは十五年程前から戦争していたと言っていたし、こんなガキが現皇帝って事はお家騒動でもあったかな?
皇帝が代替わりした等とは聞いた事無かったのだが、目の前の男――の子?を見る限り何かしらあったのだろうと推測した。
「ナオヤは何故そんな畏まっておる?何時もの様にせんか」
「いえ、そんな大それた事は・・・」
「こやつらの事なら心配するな。居ないものと扱え」
「・・・・・・」
皇帝の隣に控える初老の男に目を向けてそう言うのだが、言われた当の本人は目を瞑り何も答えなかった。
現在、謁見の間とも呼ぶべき広間に俺達は居るのだが、皇帝初め初老の何か重要な役職と推察される男の他にも直衛の騎士が二十名程左右に並んで此方をまるで威嚇する様に睨んでいる。
直哉はそんな事言われてもと言う様な表情をして皇帝の隣に控える男に目をやるが無視されている。
「そうは言っても、と言ったところか?なら一旦こやつら全員外させるか。いや、それよりも奥の―――」
「なりません陛下、今は公務中ですぞ。ハイスタード帝国皇帝として相応しい振る舞いをお願い致します」
皇帝は俺達――主に直哉だが――の態度が気に入らないのか、ちょっとプライベートで話そうと控えの者を下がらせ様とするが、すぐ様隣の男にピシャリと制される。
「・・・相変わらず硬い爺だな。まぁいい、ナオヤからは折り入って頼みたい事があるとララーナ経由で聞いたが、どう言った要件だ?」
爺の飛ばれた初老の男は咳払いをして皇帝を諌めようとするが、そんな事お構い無しに俺達全員を見て続ける。
その言葉に俺達はある種の緊張が一瞬走るが、表を上げよとの言葉に一斉に顔を上げた。
いや、だからどうしてこうなった・・・
大国のトップを目の前にして何時のも様な軽いノリが出来ず皆困惑する。
此処に居るのは俺の他に直哉とアリシエーゼとラルファだけなのだが、そもそも昨日仲間内でチームを決めてガバリス大司教がザルドレイクに入って来る所を捕まえられればと王宮付近やザルドレイク内にある教会の施設を中心に監視活動を行っていた。
それは良い。とりあえずの方針として監視活動を行うのは話し合った結果だし仲間内から反論などと無かったのだが、夜監視を行っていない者達だけで食事をした際モニカが急に愚痴りだしたのだ。
直哉が監視活動を行わず何処かへ行ったきり戻って来なかったと。
数時間後に戻っては来たのだが、結局何処に行っていたのか、何をしていたのかは俺も聞いてみたがはぐらかされてしまった訳だ。
妙に含んだ言い方してるから気になってはいたけど―――
翌日、しかも早朝朝飯を食う前に直哉が俺に声を掛けて来たのだ。
ちょっと付き合え。
それだけ言うと、昨日と同じメンバーで監視活動を行おうと思っていた為、俺とアリシエーゼとラルファが一緒になっていたので三人宿から連れ出された。
訳が分からないが、少し様子がおかしかったので何かあるのかと直哉に着いて行くとあれよあれよと言う間に気付いたら王宮の中だった・・・
いや、その間も色々あったと言うか直哉との問答は有ったんだが―――
恐らくだが、昨日直哉が消えていたのはこの皇帝への謁見を調整していたのだと思われる。
皇帝からララーナと言う名前が出たが、その名前には聞き覚えがあった。
直哉がこの世界に来てからの事を語っていた時に帝国の皇帝の妹の話が出て来たが、その時に聞いた気がする。
なので昨日直哉はそのララーナ姫と会い、その時に皇帝と謁見出来る様に頼んでいたのだろう。
王宮に一人で勝手に行って、面会の約束もしていないだろう皇帝の妹に会うなど普通の奴には絶対出来ない。
それは身分がどうこうと言う話でだが、これも直哉が以前語った経緯の話の中でララーナ姫にも皇帝にも妙に気に入られたと言う件があった事から、本当に誇張無く気に入られているのかも知れないなと思った。
因みに王宮と言っているが、皇帝は王では無いので、帝城や宮城と呼ぶべきなのかも知れない。
が、此処はどちらかと言うと城と言うよりは宮廷とかそんな感じの雰囲気なので何となく王宮と呼んでいたのだが、とりあえず帝城にしておくかとそんな意味の無い事を考えた。
はい、すみません
現実逃避です・・・
直哉に連れられ、昨日も通ったな、見たなと言う路地を通り、大通りを抜け、目の前に帝城が見えて来ると俺とアリシエーゼ、ラルファの三人は妙な胸騒ぎと言うか、「おい、まさか・・・」と思ったもんだ。
どんどんと近付く帝城、どんどんと血の気が引いていく三人。
それは対照的だったが、俺達が何か言ってもズンズンと直哉は進んで言った。
途中で「まぁいいから」とか「俺に任せておけ」とか言っていたが、今のこの状況に何故俺は此奴を止めなかったんだ!と激しく後悔した。
正面の糞デカい門で直哉が門兵に何か言うと直ぐに門が開く。
それを見る限りだとララーナ姫が事前に確りと手を回していたのが伺えた。
この時には俺達三人は頭が着いて行かない状態なのだが、直哉に促されるまま帝城に足を踏み入れ、暫しの間客間か何かで待たされる事数十分。
お紅茶と洋菓子をザ・メイドと言う格好の女性が運んで来てそれを美味しく頂く。
この時ばかりはアリシエーゼも借りて来た猫の様に静かにお紅茶を啜りながら時折洋菓子に手を付ける程度だった。
三人で、「このお茶美味しいなぁ」とか「この洋菓子どんだけ砂糖使ってるんだろうな?」とか「置いて来た仲間は大丈夫かなぁ」とかのほほんと話していたのを思い出す。
そう、この時も三人揃って現実逃避していたのだ。
皇帝陛下が謁見になられると部屋に入ってきた衛兵に声を掛けられても、現実感が無く「へぇ、そうなんだ」くらいにしか思っていなかったのだが―――――
どぉぉ言う状況じゃぁああッッッ
本当に今直ぐにでも頭を掻きむしり地団駄を踏みたい衝動に駆られる。
皇帝の問い掛けに直哉は神妙な顔付きとなっているが、今直ぐにその糞ウザい横っ面を殴り飛ばしたかった。
「それは―――」
俺の怨念が伝わったのかどうかは定かでは無いが、直哉は一度言葉を切ってから横に居た俺に顔を向ける。
???
「―――この者からお話致します」
「・・・へ?」
思わず素っ頓狂な声を挙げてしまったがそれも仕方の無い事だろう。
何も説明の無いまま帝国と言う巨大な国の皇帝の前まで連れて行かれ、何も説明の無いまま何か話せと言われる。
どうして直哉がこんな場を設けようと思ったのかも不明で、何の準備も考えを纏める事らしていない。
「ほう、お前の名は?」
「・・・・・・・・・へ?」
直哉の言葉に皇帝は頬杖を付いていた姿勢を戻して俺に語り掛ける。
が、俺はまたしても盛大に惚けてしまった。
「・・・名前を教えろと言っているんだ」
「ぁ、あぁ――はい・・・」
皇帝の言葉の意味を漸く理解して俺が姿勢を正すと、横からクスクスと聞こえてくる。
何だ?と顔を向けると、アリシエーゼが此方を見て笑いを堪えているではありませんか!?
「プククッ」
こ、この野郎!?
完全に楽しんでるじゃねぇか!?
その場で殴り掛かりそうになったが、皇帝から「どうした」と声が掛かり踏み止まる。
絶対に後でお仕置してやるッッ
心の中で「ぐぬぬッ」と怒りを押さえ込みながら俺は一度大きく深呼吸をして皇帝へと再び顔を向ける。
どうなっても知らねぇからな・・・
「「「「・・・・・・・・・」」」」
目の前の男が豪奢な椅子にふんぞり返りながら俺達を見下ろし言う。
だが、俺達はどうしたら良いのか分からず黙っているしか無いのだが―――
「どうした、聞こえなかったのか?」
「・・・とりあえず言う通りにしとけ」
俺達から反応が返って来ないので目の前の男は片眉を釣り上げて椅子の手摺りを使ってつまらなそうに頬杖を付く。
直哉は極、小さい声で俺にそう言うと皆を前へと誘う。
「ほう、よく見ると面白そうな者達だな!」
「ははは、そうでしょうか・・・」
男は少し前に移動した俺達をまじまじと見てからそんな事を言い、それを直哉が愛想笑いを浮かべて返す。
どうしてこうなった・・・
今置かれている状況に俺は必死に頭を回転させるが、やはり正解が分からず堪らず頭を掻き毟りたい衝動に駆られる。
それはここに居る他の仲間達も同じだろう。
「んんッ、皇帝陛下、この者達がナオヤ殿より報告が有りました傭兵を生業としている者達に御座います」
「そうか、ナオヤから報告は聞いている。ノビリグアでの連合との戦いに我が帝国として参戦しナオヤを助けたと聞いている、大義であった」
「・・・勿体無いお言葉に御座います」
男の隣に立っていた、初老の男性から報告を受けるとその男は偉そうにそう言って笑う。
直哉は一緒に居て聞いた事も無い丁寧な言葉遣いでそう返答し恭しく頭を下げた。
そう、今俺達の目の前にふんぞり返るこの男、何を隠そうハイスタード帝国現皇帝、イングリット・エレシエム・ハイスタード・アニアスカその人なのだ。
男と言うより―――
直哉に倣い頭を下げていた俺達だが、俺は玉座に座るその男をチラリと覗き見る。
男は見る限りまだ成人していなそうな年頃で、この世界は男は十五で成人と言う事を考えても、かなり幼い顔立ちと言う事ならギリ十五と言われれば納得する――かな?くらいの見た目なのだ。
もっと厳ついオッサンを想像してたんだけどな・・・
確か王国や公国とは十五年程前から戦争していたと言っていたし、こんなガキが現皇帝って事はお家騒動でもあったかな?
皇帝が代替わりした等とは聞いた事無かったのだが、目の前の男――の子?を見る限り何かしらあったのだろうと推測した。
「ナオヤは何故そんな畏まっておる?何時もの様にせんか」
「いえ、そんな大それた事は・・・」
「こやつらの事なら心配するな。居ないものと扱え」
「・・・・・・」
皇帝の隣に控える初老の男に目を向けてそう言うのだが、言われた当の本人は目を瞑り何も答えなかった。
現在、謁見の間とも呼ぶべき広間に俺達は居るのだが、皇帝初め初老の何か重要な役職と推察される男の他にも直衛の騎士が二十名程左右に並んで此方をまるで威嚇する様に睨んでいる。
直哉はそんな事言われてもと言う様な表情をして皇帝の隣に控える男に目をやるが無視されている。
「そうは言っても、と言ったところか?なら一旦こやつら全員外させるか。いや、それよりも奥の―――」
「なりません陛下、今は公務中ですぞ。ハイスタード帝国皇帝として相応しい振る舞いをお願い致します」
皇帝は俺達――主に直哉だが――の態度が気に入らないのか、ちょっとプライベートで話そうと控えの者を下がらせ様とするが、すぐ様隣の男にピシャリと制される。
「・・・相変わらず硬い爺だな。まぁいい、ナオヤからは折り入って頼みたい事があるとララーナ経由で聞いたが、どう言った要件だ?」
爺の飛ばれた初老の男は咳払いをして皇帝を諌めようとするが、そんな事お構い無しに俺達全員を見て続ける。
その言葉に俺達はある種の緊張が一瞬走るが、表を上げよとの言葉に一斉に顔を上げた。
いや、だからどうしてこうなった・・・
大国のトップを目の前にして何時のも様な軽いノリが出来ず皆困惑する。
此処に居るのは俺の他に直哉とアリシエーゼとラルファだけなのだが、そもそも昨日仲間内でチームを決めてガバリス大司教がザルドレイクに入って来る所を捕まえられればと王宮付近やザルドレイク内にある教会の施設を中心に監視活動を行っていた。
それは良い。とりあえずの方針として監視活動を行うのは話し合った結果だし仲間内から反論などと無かったのだが、夜監視を行っていない者達だけで食事をした際モニカが急に愚痴りだしたのだ。
直哉が監視活動を行わず何処かへ行ったきり戻って来なかったと。
数時間後に戻っては来たのだが、結局何処に行っていたのか、何をしていたのかは俺も聞いてみたがはぐらかされてしまった訳だ。
妙に含んだ言い方してるから気になってはいたけど―――
翌日、しかも早朝朝飯を食う前に直哉が俺に声を掛けて来たのだ。
ちょっと付き合え。
それだけ言うと、昨日と同じメンバーで監視活動を行おうと思っていた為、俺とアリシエーゼとラルファが一緒になっていたので三人宿から連れ出された。
訳が分からないが、少し様子がおかしかったので何かあるのかと直哉に着いて行くとあれよあれよと言う間に気付いたら王宮の中だった・・・
いや、その間も色々あったと言うか直哉との問答は有ったんだが―――
恐らくだが、昨日直哉が消えていたのはこの皇帝への謁見を調整していたのだと思われる。
皇帝からララーナと言う名前が出たが、その名前には聞き覚えがあった。
直哉がこの世界に来てからの事を語っていた時に帝国の皇帝の妹の話が出て来たが、その時に聞いた気がする。
なので昨日直哉はそのララーナ姫と会い、その時に皇帝と謁見出来る様に頼んでいたのだろう。
王宮に一人で勝手に行って、面会の約束もしていないだろう皇帝の妹に会うなど普通の奴には絶対出来ない。
それは身分がどうこうと言う話でだが、これも直哉が以前語った経緯の話の中でララーナ姫にも皇帝にも妙に気に入られたと言う件があった事から、本当に誇張無く気に入られているのかも知れないなと思った。
因みに王宮と言っているが、皇帝は王では無いので、帝城や宮城と呼ぶべきなのかも知れない。
が、此処はどちらかと言うと城と言うよりは宮廷とかそんな感じの雰囲気なので何となく王宮と呼んでいたのだが、とりあえず帝城にしておくかとそんな意味の無い事を考えた。
はい、すみません
現実逃避です・・・
直哉に連れられ、昨日も通ったな、見たなと言う路地を通り、大通りを抜け、目の前に帝城が見えて来ると俺とアリシエーゼ、ラルファの三人は妙な胸騒ぎと言うか、「おい、まさか・・・」と思ったもんだ。
どんどんと近付く帝城、どんどんと血の気が引いていく三人。
それは対照的だったが、俺達が何か言ってもズンズンと直哉は進んで言った。
途中で「まぁいいから」とか「俺に任せておけ」とか言っていたが、今のこの状況に何故俺は此奴を止めなかったんだ!と激しく後悔した。
正面の糞デカい門で直哉が門兵に何か言うと直ぐに門が開く。
それを見る限りだとララーナ姫が事前に確りと手を回していたのが伺えた。
この時には俺達三人は頭が着いて行かない状態なのだが、直哉に促されるまま帝城に足を踏み入れ、暫しの間客間か何かで待たされる事数十分。
お紅茶と洋菓子をザ・メイドと言う格好の女性が運んで来てそれを美味しく頂く。
この時ばかりはアリシエーゼも借りて来た猫の様に静かにお紅茶を啜りながら時折洋菓子に手を付ける程度だった。
三人で、「このお茶美味しいなぁ」とか「この洋菓子どんだけ砂糖使ってるんだろうな?」とか「置いて来た仲間は大丈夫かなぁ」とかのほほんと話していたのを思い出す。
そう、この時も三人揃って現実逃避していたのだ。
皇帝陛下が謁見になられると部屋に入ってきた衛兵に声を掛けられても、現実感が無く「へぇ、そうなんだ」くらいにしか思っていなかったのだが―――――
どぉぉ言う状況じゃぁああッッッ
本当に今直ぐにでも頭を掻きむしり地団駄を踏みたい衝動に駆られる。
皇帝の問い掛けに直哉は神妙な顔付きとなっているが、今直ぐにその糞ウザい横っ面を殴り飛ばしたかった。
「それは―――」
俺の怨念が伝わったのかどうかは定かでは無いが、直哉は一度言葉を切ってから横に居た俺に顔を向ける。
???
「―――この者からお話致します」
「・・・へ?」
思わず素っ頓狂な声を挙げてしまったがそれも仕方の無い事だろう。
何も説明の無いまま帝国と言う巨大な国の皇帝の前まで連れて行かれ、何も説明の無いまま何か話せと言われる。
どうして直哉がこんな場を設けようと思ったのかも不明で、何の準備も考えを纏める事らしていない。
「ほう、お前の名は?」
「・・・・・・・・・へ?」
直哉の言葉に皇帝は頬杖を付いていた姿勢を戻して俺に語り掛ける。
が、俺はまたしても盛大に惚けてしまった。
「・・・名前を教えろと言っているんだ」
「ぁ、あぁ――はい・・・」
皇帝の言葉の意味を漸く理解して俺が姿勢を正すと、横からクスクスと聞こえてくる。
何だ?と顔を向けると、アリシエーゼが此方を見て笑いを堪えているではありませんか!?
「プククッ」
こ、この野郎!?
完全に楽しんでるじゃねぇか!?
その場で殴り掛かりそうになったが、皇帝から「どうした」と声が掛かり踏み止まる。
絶対に後でお仕置してやるッッ
心の中で「ぐぬぬッ」と怒りを押さえ込みながら俺は一度大きく深呼吸をして皇帝へと再び顔を向ける。
どうなっても知らねぇからな・・・
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