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第四章
エルトナム城と呪いの大穴(4)
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講堂から出て左右の階段を上り二階に上がると、一階と同じような通路が左右にあった。
右手にある通路を案内されると、通路にある扉のプレートには防衛術、基礎教養と書かれた教室があるが、所々にある扉には名前がなく、空き部屋のようになっていた。
ガイアが防衛術の教室をノックすると、扉の向こうから「どうぞ」と言う声が聞こえた。
「失礼します。三年のガイアです。学院案内で訪れさせて頂きました」
そう言って扉を開けた先にあった教室は奥に教卓があり、手前には長テーブルが数列にわたって置いてあった。
教卓の横に扉があり、そこからマースが顔を覗かせながらこちらを見ていた。
「少々待ってくだされ。ちょうど授業で使う、アーティファクトの調整をしておりまして。」
扉の奥でカタカタと物音を立てているマースは慌てながら話した。
アレフたちは教室に入り、壁際にある棚や飾られた装飾品をジロジロ見ていた。
鍵付きの棚に入っている杯や盾はまるで博物館の展示品のように、名前や説明書のプレートが置かれていた。
アレフたちが周りの物に気を取られ見ていると、マースが扉の奥から出てきた。
深緑色のベストを着たマースがアレフとエトナを発見するやいなや「アレフ! エトナ!」と呼んでは駆け寄ってきた。
アレフとエトナも「おはよう。マース」と言って挨拶をした。
「ああ、おはよう、二人とも……、ご友人が出来たみたいですな」
マースはマーガレットとリィンをそれぞれ見た。
一度見たことがあるマーガレットは「あら、あなたは、ウィルカート町で会いましたわね。ご機嫌麗しゅう」と挨拶し、リィンも「あ、コンニチハー」と気の抜けた感じで挨拶をしていた。
マーガレットとリィンを見た後に「なかなか面白いご友人たちですな」と笑って見せた。
「はてさてガイア殿。学院案内と言うことで、何か私目に協力できることは?」
「そうです先生。せっかく知り合いの子がいるようなので、教室と勉強について教えて頂ければと思います」
「なるほど分かりました。では皆さん、席について下さい」
マースは一度扉の奥へと消えていく。
アレフたちは教卓の目の前の席に座ると、マースが石ころを手に持ちながら教卓の前に立った。
「さて、すでに知っていると思いますが、この手のひらサイズの石ころをアーティファクトと言います」
マースは手のひらに持っていた一つのアーティファクトを長テーブルの上にアレフたちが見やすいように置いた。
アレフたちは覗き込むようにアーティファクトを見つめた。
「これもアーティファクトなの?」
「そうですとも。では、クイズをしましょう。こちらは防衛術で使用するアーティファクトであります。さてその効力は?」
マースの質問に思わず四人は顔を見合わせた。
アレフは置かれたアーティファクトを手に取って観察した。
見た目は長方形をしており、跳び抜けフープのようにずっと動いているようなものではなく、どちらかと言うとアレフたちが持っている木剣に近いものに感じた。
そこまで考えたアレフはアーティファクトに唱える言葉が分からなければ、正体は掴めないじゃないか、と思うと「分からない」と呟いた。
すると、マーガレットとアーティファクトを見ていたエトナは「盾のアーティファクト?」とマースの質問に答えてみせた。
「正解です、エトナ! なぜ分かったのです?」
「今日読んでた教科書に書いてあったから」
エトナは明るい顔でマースに答えると、アレフは確かに談話室で防衛術の教科書を読んでいたことを思い出した。
「すでに教科書を読みこんでいるとは、さすがですな」
「さすがエトナ! 偉いわ!」
マーガレットが仔犬を褒めるようにエトナを撫でていると、リィンがアレフの耳元で「教科書読み込んでるとか、やばいナ」と呟いた。
思わずアレフもこくりと頷いてしまう。
「あそこまで熱心だとは思わなかった」
エトナは孤児院のみんなと離れたくないだの、実の父親の話をされて困惑していたにも拘らず、やる気は誰よりもあった。
「素晴らしい! 吾輩、感動してしまいますぞ」
マースは黄色いハンカチをポケットから取り出した後、大げさに泣いて見せた。
エトナたちはマースの行動に笑うと、マースは黄色いハンカチをしまいテーブルのアーティファクトを取り上げた。
「これを使う際は、〝スクーツム(盾よ)〟と呼びます」
マースはそう言うとアレフたちの目の前にマースでさえも覆い隠す程の大きな鋼の盾が広がった。
アレフたちはその大きさに驚きながらも、マースの「〝レベルテレ(戻れ)〟」の言葉に反応して、一瞬にして手のひらサイズになった。
四人の驚く姿にマースは微笑み、得意げに話し始めた。
「アーティファクトはどこからともなく産まれる物でありますが、回収し解析をして中身を知ってしまえば、誰にでも扱えるものではあります。しかし例外もあります」
「例外って?」
アレフが質問する。
「例外とは、アーティファクトが人を選ぶ場合です」
「誰でも扱えるって話しじゃなかったケ?」
リィンが食いつくように質問をする。マースが「そのはずなんです」と黒板の前まで移動した。
「お店などで扱われているアーティファクトは基本的に誰でも使えます。しかし、強力なアーティファクトは人を選びます。例えば、死の与えるアーティファクトなど」
アレフは生つばを飲んだ。
エトナは思わず「死?」と聞き返してしまった。
マースがしまった、という顔をすると慌てて話し始める。
「あ、あくまでの話ですよ。他にも良いものはたくさんあります。この学園にもあるアーティファクトで言うなら、治癒のアーティファクトや皇帝のアーティファクトがあります」
治癒という言葉に、アレフはなんとなくイメージがつくが、皇帝という言葉には全くイメージがわかず、アレフはマースに尋ねる。
「皇帝のアーティファクト?」
「名前だけじゃ意味わからんわナ」
アレフとリィンが反応すると、ガイアがマースの内容に補足をする。
「皇帝のアーティファクトは基本的に決闘試合で使われるんだ。皇帝を使い宣言されると、宣言した内容が現実となる。というものさ」
アレフとリィンは、ガイアの内容に思わずきょとんとした。
ガイアは「まあ、分かりづらいよな」と言っては笑ってアレフたちを見た。
「世の中にはそのような物もあるということです。まあ、学園にあるのは大抵誰でも使えるものです。今は難しく考える必要はありません」
マースは手元にあるアーティファクトをポケットに入れると、人差し指を立て姿勢を正した。
「私が教える防衛術は誰にでも扱え、そして、自身の身を守るために必要な教科です。ぜひ、遅刻欠席の無いように授業を受けてくださいまし。また、普段私はあちらの部屋にいますので、何か困ったことがあればここに来て下され」
マースが指をさした方向は先ほどからマースが出入りしていた扉を指していた。
どうやら扉の奥がマースの寝泊まりする所らしい。
一年中いると気が滅入りそうだなと思ったアレフは、度々遊びに来ようと考えるのだった。
マースに挨拶をし、教室を後にしたアレフたちは長い廊下を歩き始めた。
「さっきの話で決闘試合って言ってたけど、決闘試験と関係あるの?」
エトナがガイアに質問をする。
するとガイアは少し考えたあと口を開いた。
「うーん、そうだな。似てるけどちょっと違うかな。決闘試合は一種のスポーツみたいなものでね。騎士たちが実際に剣を持ち、アーティファクトで戦う競技なんだ」
ガイアは話をすると、続けざまに四人に向かって提案をした。
「せっかくだから、ここの学院の決闘部屋まで行こう。ついて来て」
ガイアは階段のあったフロアから逆方向に進み、突きあたりの螺旋階段を降りると、一階を通り過ぎて地下一階に降りた。
降りた場所には大きな金属の扉がある以外に目立った物はなく、金属の扉の先からは大きな金属音や破裂音が響いていた。
「もう十時過ぎていたか。丁度いいタイミングだな」
ガイアは大きな扉を開けると、アレフたちは恐る恐る中に入っていった。
そこには講堂よりも大きな空間が広がっており、所々に設けられた縦長のステージの上で剣を振り回している人が何人もいた。
戦っている人たちは鋼の胸当てに籠手を装着しながら、鈍く輝いている剣を振り回していた。
他にも杖を持って火の玉を飛ばし、突風を出して対面している人を吹っ飛ばしていた。
それぞれが気合を込めた掛け声や、地響きするほどの踏み込みをして戦っており、アレフはその熱気に押しやられ、思わずその場で立ち留まってしまう。
「さあ、中に入って壁際に。君たちは決して怪我をしないように」
ガイアに急かされながら、決闘部屋の隅へと歩いて行く。
「これすげぇな。テレビで決闘は見たことあるけど、こんなに迫力あるんダ……」
「私も直で見たことなくて……、こんなに本格的に戦うのね」
リィンとマーガレットが思わず感嘆の声を出した。
目の前に広がっているのは本物の戦いに、アレフは思わず手に汗を握った。
傍で剣の斬撃や杖からの爆撃を見ているだけで、騎士の本当の意味を知らされた気分になり、恐怖心が駆り立てられた。
「凄いね……」
エトナは呟いた。
思わずアレフはエトナの方に振り向く。
エトナはアレフと同じように、目の前の光景にあっけにとられながらも、その目には恐怖を感じられず、むしろ気分が高揚していた。
「アレフ、ビビってる?」
リィンの言葉に「ビビってない!」と強い口調で答えてしまった。
「大丈夫か? 顔色が悪いが……」
ガイアの言葉にもアレフは「大丈夫です」と答えた。
「彼らって怪我しないの? こんなに激しく戦っているのに」
「さっき言った皇帝のアーティファクトのおかげで、怪我はしないんだよ。アレフ! あそこの試合が終わりそうだ。よく見てごらん」
ガイアが指をさしたステージでは、ステージ端まで追い詰められた騎士がいた。
対面の騎士にじわじわと追い込められ、追い詰められた騎士は一か八か大振りに剣を振り下ろした。
しかしその剣は見事に躱されて、追い詰めた騎士が彼の腹を剣で切り裂いた。
アレフは手にかいた汗を忘れ、口に手を当てた。
目の前で人が両断された。
アレフの見開いた眼は瞬きを忘れていた。
切られた人は膝を突いているが、その体には血の一つどころか、服への切れ込みすらなかった。
アレフは不自然な光景を目の当たりに思考が止まってしまう。切られた人は立ち上がり、相手へ握手をすると、ステージから下りるのだった。
「どういうこと……」
アレフの姿を見たガイアは薄っすら笑みを浮かべた。
「これが皇帝のアーティファクトの効果さ」
アレフはその言葉を聞いては、切られた人をもう一度見た。
先ほど自分を切った相手と、平然と笑いながらタオルで汗を拭っていた。
「どういうこと……」
アレフは再び、ガイアに答えを求めた。
アレフの返事に笑いながらも、ガイアは説明をし始めた。
「先ほども言ったように、皇帝のアーティファクトで宣言すると、それが現実になるんだ。だから、彼らを対象に皇帝のアーティファクトが働いて、〝この室内では、血も怪我も起こりえない〟となっているんだ。ほら、ちょうど寄ってきた男の人いるだろう? あの人が皇帝のアーティファクトに選ばれた人だよ」
アレフが三度切られた人の方へと目をやると、そこには茶髪で短い髪に優しそうな表情で話しかける男がいた。
「彼はシドニア・リーフだ。みんなからはリーフ先生って呼ばれていてね。決闘競技の先生として今はここの学院にいてくれている。皇帝のアーティファクトを扱え、それに加えて実力もすごいから、ローレンス学院長と同じ、騎士団総長でもあるんだ」
「あんな若い見た目をしているのに、ローレンス学院長と同格なの?」
マーガレットが驚いた。
その様子にエトナは事態が掴めず「凄いの?」と聞き返してしまう。
「凄いのなんの、騎士団総長は騎士団に多大な貢献をし、さらには、他の騎士から厚い信頼がある人なの。それにドラゴン退治とか、戦争とかで貢献するといった、他の人では真似できないようなことをしちゃう人なの」
「そ、そうなんだ……」
マーガレットが鼻息を荒くしては、熱く語る姿に思わずエトナは引き気味に笑う。
「リーフ先生のことは置いといて、基本的に一年生の頃は騎士決闘学で礼儀作法や戦い方を学び、二年生の頃に実践する。腕がよければ決闘競技に参加して、実際に他学院と対抗試合を行うことがある。まあ、おいおい授業で学ぶと思うよ」
「それじゃあ、ここにいる人たちは、みんな決闘騎士のメンバーなのカ?」
ガイアはリィンに向かって頷くと「そういうことになる」と言った。
「さ、そろそろここを出よう。僕らには皇帝のアーティファクトの効果はかかっていないから……」
ガイアが話していると、ガイアの横に火の玉が勢いよく飛んでは、部屋の壁を黒く焦がした。
ガイアはアレフたちに振り返ると、分かった? と言わんばかりに、ここは危険だと目で訴えてきた。
右手にある通路を案内されると、通路にある扉のプレートには防衛術、基礎教養と書かれた教室があるが、所々にある扉には名前がなく、空き部屋のようになっていた。
ガイアが防衛術の教室をノックすると、扉の向こうから「どうぞ」と言う声が聞こえた。
「失礼します。三年のガイアです。学院案内で訪れさせて頂きました」
そう言って扉を開けた先にあった教室は奥に教卓があり、手前には長テーブルが数列にわたって置いてあった。
教卓の横に扉があり、そこからマースが顔を覗かせながらこちらを見ていた。
「少々待ってくだされ。ちょうど授業で使う、アーティファクトの調整をしておりまして。」
扉の奥でカタカタと物音を立てているマースは慌てながら話した。
アレフたちは教室に入り、壁際にある棚や飾られた装飾品をジロジロ見ていた。
鍵付きの棚に入っている杯や盾はまるで博物館の展示品のように、名前や説明書のプレートが置かれていた。
アレフたちが周りの物に気を取られ見ていると、マースが扉の奥から出てきた。
深緑色のベストを着たマースがアレフとエトナを発見するやいなや「アレフ! エトナ!」と呼んでは駆け寄ってきた。
アレフとエトナも「おはよう。マース」と言って挨拶をした。
「ああ、おはよう、二人とも……、ご友人が出来たみたいですな」
マースはマーガレットとリィンをそれぞれ見た。
一度見たことがあるマーガレットは「あら、あなたは、ウィルカート町で会いましたわね。ご機嫌麗しゅう」と挨拶し、リィンも「あ、コンニチハー」と気の抜けた感じで挨拶をしていた。
マーガレットとリィンを見た後に「なかなか面白いご友人たちですな」と笑って見せた。
「はてさてガイア殿。学院案内と言うことで、何か私目に協力できることは?」
「そうです先生。せっかく知り合いの子がいるようなので、教室と勉強について教えて頂ければと思います」
「なるほど分かりました。では皆さん、席について下さい」
マースは一度扉の奥へと消えていく。
アレフたちは教卓の目の前の席に座ると、マースが石ころを手に持ちながら教卓の前に立った。
「さて、すでに知っていると思いますが、この手のひらサイズの石ころをアーティファクトと言います」
マースは手のひらに持っていた一つのアーティファクトを長テーブルの上にアレフたちが見やすいように置いた。
アレフたちは覗き込むようにアーティファクトを見つめた。
「これもアーティファクトなの?」
「そうですとも。では、クイズをしましょう。こちらは防衛術で使用するアーティファクトであります。さてその効力は?」
マースの質問に思わず四人は顔を見合わせた。
アレフは置かれたアーティファクトを手に取って観察した。
見た目は長方形をしており、跳び抜けフープのようにずっと動いているようなものではなく、どちらかと言うとアレフたちが持っている木剣に近いものに感じた。
そこまで考えたアレフはアーティファクトに唱える言葉が分からなければ、正体は掴めないじゃないか、と思うと「分からない」と呟いた。
すると、マーガレットとアーティファクトを見ていたエトナは「盾のアーティファクト?」とマースの質問に答えてみせた。
「正解です、エトナ! なぜ分かったのです?」
「今日読んでた教科書に書いてあったから」
エトナは明るい顔でマースに答えると、アレフは確かに談話室で防衛術の教科書を読んでいたことを思い出した。
「すでに教科書を読みこんでいるとは、さすがですな」
「さすがエトナ! 偉いわ!」
マーガレットが仔犬を褒めるようにエトナを撫でていると、リィンがアレフの耳元で「教科書読み込んでるとか、やばいナ」と呟いた。
思わずアレフもこくりと頷いてしまう。
「あそこまで熱心だとは思わなかった」
エトナは孤児院のみんなと離れたくないだの、実の父親の話をされて困惑していたにも拘らず、やる気は誰よりもあった。
「素晴らしい! 吾輩、感動してしまいますぞ」
マースは黄色いハンカチをポケットから取り出した後、大げさに泣いて見せた。
エトナたちはマースの行動に笑うと、マースは黄色いハンカチをしまいテーブルのアーティファクトを取り上げた。
「これを使う際は、〝スクーツム(盾よ)〟と呼びます」
マースはそう言うとアレフたちの目の前にマースでさえも覆い隠す程の大きな鋼の盾が広がった。
アレフたちはその大きさに驚きながらも、マースの「〝レベルテレ(戻れ)〟」の言葉に反応して、一瞬にして手のひらサイズになった。
四人の驚く姿にマースは微笑み、得意げに話し始めた。
「アーティファクトはどこからともなく産まれる物でありますが、回収し解析をして中身を知ってしまえば、誰にでも扱えるものではあります。しかし例外もあります」
「例外って?」
アレフが質問する。
「例外とは、アーティファクトが人を選ぶ場合です」
「誰でも扱えるって話しじゃなかったケ?」
リィンが食いつくように質問をする。マースが「そのはずなんです」と黒板の前まで移動した。
「お店などで扱われているアーティファクトは基本的に誰でも使えます。しかし、強力なアーティファクトは人を選びます。例えば、死の与えるアーティファクトなど」
アレフは生つばを飲んだ。
エトナは思わず「死?」と聞き返してしまった。
マースがしまった、という顔をすると慌てて話し始める。
「あ、あくまでの話ですよ。他にも良いものはたくさんあります。この学園にもあるアーティファクトで言うなら、治癒のアーティファクトや皇帝のアーティファクトがあります」
治癒という言葉に、アレフはなんとなくイメージがつくが、皇帝という言葉には全くイメージがわかず、アレフはマースに尋ねる。
「皇帝のアーティファクト?」
「名前だけじゃ意味わからんわナ」
アレフとリィンが反応すると、ガイアがマースの内容に補足をする。
「皇帝のアーティファクトは基本的に決闘試合で使われるんだ。皇帝を使い宣言されると、宣言した内容が現実となる。というものさ」
アレフとリィンは、ガイアの内容に思わずきょとんとした。
ガイアは「まあ、分かりづらいよな」と言っては笑ってアレフたちを見た。
「世の中にはそのような物もあるということです。まあ、学園にあるのは大抵誰でも使えるものです。今は難しく考える必要はありません」
マースは手元にあるアーティファクトをポケットに入れると、人差し指を立て姿勢を正した。
「私が教える防衛術は誰にでも扱え、そして、自身の身を守るために必要な教科です。ぜひ、遅刻欠席の無いように授業を受けてくださいまし。また、普段私はあちらの部屋にいますので、何か困ったことがあればここに来て下され」
マースが指をさした方向は先ほどからマースが出入りしていた扉を指していた。
どうやら扉の奥がマースの寝泊まりする所らしい。
一年中いると気が滅入りそうだなと思ったアレフは、度々遊びに来ようと考えるのだった。
マースに挨拶をし、教室を後にしたアレフたちは長い廊下を歩き始めた。
「さっきの話で決闘試合って言ってたけど、決闘試験と関係あるの?」
エトナがガイアに質問をする。
するとガイアは少し考えたあと口を開いた。
「うーん、そうだな。似てるけどちょっと違うかな。決闘試合は一種のスポーツみたいなものでね。騎士たちが実際に剣を持ち、アーティファクトで戦う競技なんだ」
ガイアは話をすると、続けざまに四人に向かって提案をした。
「せっかくだから、ここの学院の決闘部屋まで行こう。ついて来て」
ガイアは階段のあったフロアから逆方向に進み、突きあたりの螺旋階段を降りると、一階を通り過ぎて地下一階に降りた。
降りた場所には大きな金属の扉がある以外に目立った物はなく、金属の扉の先からは大きな金属音や破裂音が響いていた。
「もう十時過ぎていたか。丁度いいタイミングだな」
ガイアは大きな扉を開けると、アレフたちは恐る恐る中に入っていった。
そこには講堂よりも大きな空間が広がっており、所々に設けられた縦長のステージの上で剣を振り回している人が何人もいた。
戦っている人たちは鋼の胸当てに籠手を装着しながら、鈍く輝いている剣を振り回していた。
他にも杖を持って火の玉を飛ばし、突風を出して対面している人を吹っ飛ばしていた。
それぞれが気合を込めた掛け声や、地響きするほどの踏み込みをして戦っており、アレフはその熱気に押しやられ、思わずその場で立ち留まってしまう。
「さあ、中に入って壁際に。君たちは決して怪我をしないように」
ガイアに急かされながら、決闘部屋の隅へと歩いて行く。
「これすげぇな。テレビで決闘は見たことあるけど、こんなに迫力あるんダ……」
「私も直で見たことなくて……、こんなに本格的に戦うのね」
リィンとマーガレットが思わず感嘆の声を出した。
目の前に広がっているのは本物の戦いに、アレフは思わず手に汗を握った。
傍で剣の斬撃や杖からの爆撃を見ているだけで、騎士の本当の意味を知らされた気分になり、恐怖心が駆り立てられた。
「凄いね……」
エトナは呟いた。
思わずアレフはエトナの方に振り向く。
エトナはアレフと同じように、目の前の光景にあっけにとられながらも、その目には恐怖を感じられず、むしろ気分が高揚していた。
「アレフ、ビビってる?」
リィンの言葉に「ビビってない!」と強い口調で答えてしまった。
「大丈夫か? 顔色が悪いが……」
ガイアの言葉にもアレフは「大丈夫です」と答えた。
「彼らって怪我しないの? こんなに激しく戦っているのに」
「さっき言った皇帝のアーティファクトのおかげで、怪我はしないんだよ。アレフ! あそこの試合が終わりそうだ。よく見てごらん」
ガイアが指をさしたステージでは、ステージ端まで追い詰められた騎士がいた。
対面の騎士にじわじわと追い込められ、追い詰められた騎士は一か八か大振りに剣を振り下ろした。
しかしその剣は見事に躱されて、追い詰めた騎士が彼の腹を剣で切り裂いた。
アレフは手にかいた汗を忘れ、口に手を当てた。
目の前で人が両断された。
アレフの見開いた眼は瞬きを忘れていた。
切られた人は膝を突いているが、その体には血の一つどころか、服への切れ込みすらなかった。
アレフは不自然な光景を目の当たりに思考が止まってしまう。切られた人は立ち上がり、相手へ握手をすると、ステージから下りるのだった。
「どういうこと……」
アレフの姿を見たガイアは薄っすら笑みを浮かべた。
「これが皇帝のアーティファクトの効果さ」
アレフはその言葉を聞いては、切られた人をもう一度見た。
先ほど自分を切った相手と、平然と笑いながらタオルで汗を拭っていた。
「どういうこと……」
アレフは再び、ガイアに答えを求めた。
アレフの返事に笑いながらも、ガイアは説明をし始めた。
「先ほども言ったように、皇帝のアーティファクトで宣言すると、それが現実になるんだ。だから、彼らを対象に皇帝のアーティファクトが働いて、〝この室内では、血も怪我も起こりえない〟となっているんだ。ほら、ちょうど寄ってきた男の人いるだろう? あの人が皇帝のアーティファクトに選ばれた人だよ」
アレフが三度切られた人の方へと目をやると、そこには茶髪で短い髪に優しそうな表情で話しかける男がいた。
「彼はシドニア・リーフだ。みんなからはリーフ先生って呼ばれていてね。決闘競技の先生として今はここの学院にいてくれている。皇帝のアーティファクトを扱え、それに加えて実力もすごいから、ローレンス学院長と同じ、騎士団総長でもあるんだ」
「あんな若い見た目をしているのに、ローレンス学院長と同格なの?」
マーガレットが驚いた。
その様子にエトナは事態が掴めず「凄いの?」と聞き返してしまう。
「凄いのなんの、騎士団総長は騎士団に多大な貢献をし、さらには、他の騎士から厚い信頼がある人なの。それにドラゴン退治とか、戦争とかで貢献するといった、他の人では真似できないようなことをしちゃう人なの」
「そ、そうなんだ……」
マーガレットが鼻息を荒くしては、熱く語る姿に思わずエトナは引き気味に笑う。
「リーフ先生のことは置いといて、基本的に一年生の頃は騎士決闘学で礼儀作法や戦い方を学び、二年生の頃に実践する。腕がよければ決闘競技に参加して、実際に他学院と対抗試合を行うことがある。まあ、おいおい授業で学ぶと思うよ」
「それじゃあ、ここにいる人たちは、みんな決闘騎士のメンバーなのカ?」
ガイアはリィンに向かって頷くと「そういうことになる」と言った。
「さ、そろそろここを出よう。僕らには皇帝のアーティファクトの効果はかかっていないから……」
ガイアが話していると、ガイアの横に火の玉が勢いよく飛んでは、部屋の壁を黒く焦がした。
ガイアはアレフたちに振り返ると、分かった? と言わんばかりに、ここは危険だと目で訴えてきた。
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樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
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