騎士アレフと透明な剣

トウセ

文字の大きさ
25 / 48
第六章

危険な夜の散歩 (3)

しおりを挟む
ダァトと再会してから、アレフたちはダァトと共に森の奥へと向かっていた。

「ところでさっきの煙は何なの?」

「ん? あの煙かい? あれは気配消しさ。コトボーの能力の一つだよ」

「能力の一つ?」

アレフはダァトの言葉に疑問に思った。

「聞きたかったんだけど、コトボーもアーティファクトなの? おしゃべり出来たり、煙を吐いたり、いろんなことが出来るみたいだけど」

「んー。なんと言えばいいのかな。エトナと同じ特別な力を持っていると考えてくれればいいよ」

ダァトは地面に突いていたコトボーを持ち上げると、考えながら話した。

「私と同じ?」

「そう。アーティファクトは通常一つの事しかできないが、コトボーは色んなことが出来る。普通のアーティファクトとは違うって訳さ」

ダァトはエトナの方を見た。

「エトナも同じ、今は自がないかもしれないが、そのうち、普通の人と違うことを自覚し始めるようになる」

ダァトの言葉に、アレフとエトナは顔を見合わせた。

「それでなんだけど、実はエトナは……」

アレフが話そうとするが、エトナが遮るように話を被せた。

「私、決闘騎士用に使用するアーティファクトが使えなかったの」

「だろうね」

ダァトが当然のように言った。

知ったように話をしたダァトに、エトナは少し不機嫌そうな顔をした。

「おっと、機嫌を悪くしないで欲しい。別に隠していたわけじゃないさ。ただ、教える必要が分かっただけさ。そのうち分かることだったからね」

ダァトは申し訳なさそうにせず、エトナに話をした。

ダァトはそのことに加え、さらに話を続けた。

「それに、決闘騎士用のアーティファクトだっけ? あれ以外にも大抵のアーティファクトは使えない。コトボーとか、木剣とか、人を選ばない物は基本的には大丈夫だけど……」

「わしは人を選ぶぞ」

コトボーがぼそりと、けれどもアレフたちには聞こえるように呟いた。

「コト爺。私なら大丈夫かな?」

「この軟派モンと比べたら、喜んで使われよ」

「あらら、フラれちゃったよ」

エトナはコトボーからの返答に不機嫌そうな顔を止めて、コトボーをダァトから奪っていった。

アレフは嬉しそうにコトボーと話を始めたエトナを見つめながら、ダァトに質問を投げかけた。

「ダァト。他にもエトナには何かしらの力があるんでしょ。全部教えてよ」

「それは分からない。あくまでアーティファクトの件に関しては予測できたというだけさ。ローレンスと話した際に、結論の一つとして挙がった点さ」

「じゃあ、わかる範囲で教えてよ。もったいぶらないで」

アレフの口調は真剣だった。

けれども、アレフの真剣さがダァトに伝わることはなかった。

「それは出来ない。というか、絶対とは言い切れないからね。正しくないことを教えるのは、君にとってエトナの見方を変えることになる。エトナの見方が変われば、エトナの味方が変わることもある。そのうちの一人に、君を入れたくはないんだよ」

ダァトは淡々と話す。

アレフを見ずに、エトナを見ずに、深く被ったフードの内側をダァトは見ていた。

「なにそれ」

まるで、アレフがエトナを裏切るような物言いに、アレフはダァトの言葉に飽き飽きしていた。

そんなことあるわけないだろ、大切な家族なんだから、とアレフは思った。

すると、ダァトはコトボーがいなくなって寂しくなった右手を、アレフの頭の上に乗せた。

「君は利口な人間だ、同じ十二歳の子どもでも、ここまでしっかりしている子はそうそういない。君はよく頑張っているよ、エトナの兄として」

ダァトの手を跳ね除けるように、アレフは左手で払った。

「何にも出来ていないよ」

アレフはダァトを置いて、とぼとぼとエトナの方へ歩いて行った。

しばらくして、アレフたちの目の前には、他の木々と比べ物にならないほど、大きな大木がそびえ立っていた。

大木は風に木の葉を揺らし、大鳥が飛んでいるのかと思うほど、葉っぱを擦り合わせて、大きな音をたてていた。

その大きな大木の足元には、色とりどりの花が咲いており、月の光を浴びて、花畑は一段と輝いていた。

その中には、アレフたちが探していた青色の葉っぱの姿もあった。

「凄い綺麗な場所!」

エトナは一面の花畑に目をキラキラさせていた。

コトボーは自慢げに「ホッホッホッ」と笑っていた。

一歩遅れて到着したダァトは「ここはまだ無事だったみたいだね」と言っていた。

アレフは花畑が目立つ中、大木の近くに一つの石造りの台座を見つけた。

「あれはなに?」

アレフが指さす方向にダァトも振り向いた。

「ああ、あれは剣の台座だよ。先人たちがここに設置したのさ」

「へぇ」

アレフは石造りの台座に近づいた。

台座に小さい文字で言葉が彫られていることにアレフは気づく。

〝——サ——こ——眠る〟

台座に綴られた文字はかなり擦れており、ほとんど読むことは出来ない状態であった。

アレフがじっと見ていたせいか、ダァトが話しをし始める。

「ここの台座に眠る人は、たくさんの人に愛され、いつしか王と呼ばれる存在になったんだ」

「王? このセフィラには王様がいたの?」

傍に寄ってきたダァトにアレフは疑問を呈した。

「そう、いたのさ。王様がね」

何処か悲し気にダァトは語った。

「君に渡した剣の柄があったろ? あれは台座に刺してあった物でね。この王様の物なんだ。死んで誰も使わないなら、いっそ誰かに使ってもらった方がいいなと思って君に上げた」

ダァトは平然と語るがアレフは驚きのあまり、台座とダァトを何度も見直した。

アレフが貰った柄はいわゆる宝物のような貴重な物で、アレフは内心、自分なんかが持ってて良い物か困惑する反面、大層な物を持っている事実に興奮していた。

「さて、さっさと青皮膚の呪いを解く薬草を摘もう。早くリィン少年に渡さないとね」

ダァトに言われて、アレフは「そうだね」と頷いた。

さっそくアレフとエトナは、地面に手を突き、青色の葉っぱを探し始めた。

探し始めると案外簡単に見つかるもので、青色でイボの付いた葉っぱという見た目は、他の花や葉っぱと比べてすぐに目についた。

「十枚程度でいいだろう。あまり摘みすぎると、繫殖出来なくなるからね」

ダァトがそう話している間にも、青皮膚の呪いを解く薬草は摘み終わっていた。

「これで、リィンの呪いが解ける」

「さっさと帰りましょ」

そう言って、アレフたちはダァトを見ては「帰り道教えて」と二人揃って言った。

「いやあ、人気者だね。私は」

エトナが地面に刺していたコトボーは、ダァトの手元に戻ると、「せっかくお前さんから離れえていたのに」とボヤいていた。

「さて、帰り道はコトボーの力を借りよう。エルトナムの近くに転移先を用意しておいた」

ダァトはコトボーの杖先を使って、地面に大きな円を作る。

すると、出来上がった円の先には、見覚えのある学院の後ろ姿が映し出されていた。

「跳び抜けフープ!」

「あそこまで便利な物じゃないさ。さあ行った行った。私は学院には入れないから、道先案内はここまでさ」

ダァトの言葉に、アレフとエトナは「ありがとう!」と笑顔で応えると、勢いよく円の中へと跳んで行った。

アレフたちは一時間前に訪れていたロストフォレストに繋がる道に立っていた。

アレフとエトナは、頭上に点在しているロストフォレストの奥地を映し出す輪っかを見上げた。

空中に浮かぶ輪っかは瞬く間に消え、セフィラの夜空が、アレフたちの目の前に映し出された。

「消えちゃった」

「早く戻ろう。きっと、グレイアロウズたちもそろそろ戻ってくる頃だ」

アレフは急かすように言うと、アレフたちは校庭の真ん中を突っ切って、校庭と学院を繋げる入り口へと入っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...