探偵はじめました。

砂糖有機

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プロローグ

同居開始

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さて、二人の主人公が揃ったところで
もうそろそろこのかなり長かったプロローグを締めようかと思う。
しかし、まだ英二が探偵事務所で働き始める経緯を記すことができていないためもう少しお付き合いいただきたい。

今度は酒井がコーヒーをすすりながら目の前にいる謎の若者に質問をした。
「君は、どうしてそんなこと聞くんだい?」
「あの、同居人を募集していると父から聞いたから・・・」
少しうつむき気味で答えているから、酒井からは照れてるんだな、とか思っただろうがまったく違った。
この人が俺のおじ!?嘘だろ!?若いなァ!
うちの親父と年いくつ離れてんだよ・・・
英二には考える時ついうつむいてしまうクセがある。
「え!ホントに!からかってないよね!?嘘じゃないよね!?信用していいの!?いいよね!?ホントだね!?」
酒井の急変とあまりの喜びようとかなりの疑い深さについ背筋がピンとなってしまう。
それと、まだ同居を申し込んでいないのにな・・・
「は、はい。あの、家賃半分ってホントですか?それっていくらですか?」
「はいはいはいは~い!ホントですッ!
そして価格は電気・水道すべて込みで月3万ッ!安いでしょう!?」
(はい)が多い!と先生がいたら注意されていただろな。
それにジャパネット初心者なみの紹介だなぁ。
しかし、その時の英二にはそんなこと頭に浮かばなかった。月3万の前にはなにも敵わない。
「さ、3万!?どうしてそんなに安いんですか!?」
「それはね、ここは昔コーヒー店だった所を
ほぼそのまま使わせてもらっているからだよ。」
いつの間にか落ち着きを取り戻した酒井。
と同時に英二も落ち着いてきた。
なるほど、だからコーヒー店モドキなのか。
と考えられるほどに。
そして、質問に戻った。
「ところで、君の名前は?」
「英二です。中倉英二。あなたの甥です。」
すると、大袈裟にも手に持っていたコーヒーを落とし口をポカーンと開けたあとに
「中倉って、き、君が僕の甥っ子なのか!?だ、だって君成人してるだろう?」
「はい。」
「僕と年が10くらいしか変わらないじゃないか!」
「はい。」
「よく落ち着いていられるねぇ・・・」
英二は遠い昔を思い出すように
「俺もあなたを見たとき驚きましたよ・・・」
とついさっきのことを話した。

これからの住まいに関することだから二人は正座し、向かい合い確認しあった。
「では、ここに同居するということでいいかな?」
「はい、よろしくお願いします。」
「こちらこそこれからよろしく。」
この会話が終わったすぐに、酒井は正座を即座にくずし、
「いや~しかし、今月中に家賃3万になってかったら大変だったよ。うんッ!君が来てくれてホントに助かった!」
「いえいえ、家賃が3万だと俺も手に職をつけていないから、助かりました。」
この言葉を聞くと、酒井は目を光らせ
「ほぅ、では君は良くいえばフリーター普通にいえば無職ってことかな?」
なに?なんだと?無職だとぉ!
「無職ではないです!ちゃんと働いてます!フリーターっていう職についてますッ!」
さすがにニートにされては黙っていられない。
まったくどこの世界に家賃3万の住まいに引っ越すニートがいるんでぃ!
「まぁそう怒るなよ。」
ケラケラと笑ったあとに真剣な顔になり、
「では、この事務所に依頼が来たときに手伝ってくれないか。報酬に応じて額は変わるがね。」
職業・探偵、か。
悪くない。というか、かっこよくないか!?
友達にもうお前はフリーターかって言わなくてすむし。
ニートと間違われなくてすむし。
「はい!よろしくお願いします!」
快く受け入れた。

「では、着替えや荷物、そしてちょっとした手続きをしてくるのでまた後で。」
「ああ、手伝うことがあれば言ってくれ。」
しばしの別れの挨拶を済ませると私鉄の竹見町駅に向かった。

ただ、少し気になることがある。
家賃半分で3万ってことはもとは6万だろ?
6万でも安いのに酒井さんはあんなに助かったって・・・
一体なぜだろう?
でもいいや、どうにかなるだろう。
その時、空は雲がちょくちょく見え青々としていた。
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