探偵はじめました。

砂糖有機

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ヘビを使った殺人は可能か?

一難去ってまた一難、で、また一難(英二)

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ああ、実家に帰りたい・・・
叔父とはいえ所長だもんなぁ・・・
またフリーターになるのはちょっとなぁ・・・
まったく自分勝手だよな、「キミニキョヒケンハナイ」だもんなー。
英二はブツブツと文句を言いながら竹見通りを歩いていた。
・・・そういえば朝ご飯食べてなかったな。
もうそろそろお昼の時間だ。朝昼ご飯食べてから探そう。うん、別に時間制限ないもんな。
それから、英二の足先は山から定食屋へと変更された。
定食屋の名前は「定食屋」。
看板に大きく太い文字で「○○屋」とか「○○食堂」と書いているわけではなくそのまま「定食屋」と書いているので間違えることはないだろう。
店内はキレイともいえないし汚いともいえない。
ザ・普通の定食屋。それが「定食屋」だ。
英二は昼頃なのに人がほとんどいない中に入ると発券機にお金をいれる。中でも一番安い納豆ご飯定食のチケットを購入した。
そして店員のおじさんに渡し、一人席のカウンターに座った。
セルフサービスの水をお腹が満たされない程度に飲みながら、来るべき至福の時を待った。

ボケーっとしていたらいつの間にか自分の左隣の左隣に二人誰かが座っていたことに気づいた。
こういうのなんか傷つくんだよな、いや、避けてる訳ではないことは分かるよ、でもどうせ離れるならテーブル席に座れよ!
わざわざカウンター席で俺の席から一個飛ばした所に座ることないだろ!
軽く傷ついた英二に気づかず、あの二人組は軽い口喧嘩を始めたようだ。
そのときにチラッと見ると二人組の姿を知ることができた。別に知りたかったわけじゃないけど。
一人はスーツを着て、スラッとした、じゃダメか、ガリガリ、うん、こっちの方がいいな。
もう一人は・・・うわぁオタクっぽい・・・
権藤さん程ではないがかなりのぽっちゃり体型で顔は油でテカってる。
おまけに鼻のしたには水滴が・・・多分汗だろう。
うえっ、隣に来なくてよかった。
「・・・じゃ売れるわけないぜ!・・・だ!」
「いや・・・最悪・・事故・・・いいだろう」
ボケーっとしてたから少ししか聞き取れなかった。
というか聞き取ろうとしていなかった。
小耳にはさむといったところかな?
なんだろう、売れるわけない?最悪・・事故?
まぁ、俺関係ないし関わらない関わらないっと。
「へい!納豆定食!」
おっ!きたきた・・・
どれもインスタントだとわかっていても腹がへっているからどれもうまそうだ。
まったく「空腹は最大の調味料」とはよくいったものだ。
ご飯、納豆、味噌汁、サラダ、どれから食べようか?
よし、メインディッシュの納豆ご飯は後でにして、味噌汁とサラダを先にいこう。
二分たらずでこの二つをたいらげたが、まだ俺の腹は満たされない!
最後は納豆ご飯を一気に食ってくれるわ!
さっきとは違う意味で手をスリスリすると、割りばしの先は納豆ご飯へ。

その時だった。

口喧嘩していた二人組が急に立ち上がり
「クソッ!早く聞き出してやらねぇとな!」
「まて!俺には考えがあると言ったろ!!人の話を最後まで聞け!!」
出口の方向、つまり英二のいる方に勢いよく移動した。
ガリガリはうまくすり抜けたがぽっちゃりは横幅が大きい。よって、英二に激突。
ドンッ!
しかし、余分なお肉が多いからなのか、ぽっちゃりは英二にぶつかったことが分からなかったようだ。謝りもせずに外へ行ってしまった。
大きな衝撃と共に手から割りばしが離れる。
割りばしは宙を舞い、カランと落ちた。
割りばしがッ!
あ、危ない危ない納豆ご飯を食べる前でよかった。
大丈夫、代わりはある。
さて、邪魔者はいなくなったし、次は注意をはらって食べよう。

その時だった。

カサッ

ん?何か聞こえたな・・・気のせいか・・・

カサッ

後ろ?まさか・・・ヤツが・・・・

カサカサッ

姿を表した。長い触覚。ギザギザした足に黒光りボディ。そして忍者のように身を潜め素早く、目的のためなら手段を選ばない黒い悪魔・・・

間違いないッ!ヤツだッ!
病原菌の塊、人類の敵ッ!

ゴキブリだ!
嘘だろ!?ここ飲食店だぞ!?弾幕薄いぞ!なにやってんの!
しかし、姿を表したのは失敗だったな!
このまま注意を払えば・・・・

カサッ       
        カサッ
 カサッ           カサッ

  カサッ

気のせいじゃない!!囲まれている!包囲されている!
しかし俺は朝飯なしの飢えた獣!先にこの納豆ご飯を食べきればこちらの勝ちッ!負けてたまるかぁ!英二は無駄にテンションを高めていく。

ゴキブリ相手になに熱くなってんだろう?と思う方もいるかもしれないが、英二はそういうやつなのだ。もう少し見ていよう。
英二はゴキブリをあなどっていたのかもしれない。
英二を嘲笑うかのようにゴキは数匹羽をひろげ飛び始める。・・・そして茶碗の中へ。
しかし英二は後ろに気をとられすぐに気づけなかった。
その為気づいたときには時遅し。
英二の顔はみるみる絶望の色がうかびあがる。
ぁぁぁぁぁぁああ!!
「俺の納豆ご飯がぁぁぁぁああああ!!」
・・・そんなぁあ!!
英二は嘆いた。俺もう金ないのに!!
とぼとぼと出口までいくと当然の一言。
「こんな店二度と来るかぁぁぁぁああ!!」

さて、読者の皆様には英二が初詣のおみくじにて、2連続大凶を引いてしまったことを伝えておきましょう。
それから英二の苦手な物にゴキブリが追加されてしまった。

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