探偵はじめました。

砂糖有機

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ヘビを使った殺人は可能か?

若者もヘビも崖からおちる(英二)

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うーん、いつからだろうか。
さっきムカデがでてきてからだっただろうか。
確かに引っ張られているのだが、向きが前から下に変わっている。
そして、左腕が暖かいような暑いような・・・
それもそのはず、腕には理紗お嬢が抱きついているからだった。
「キャア!い、今ガサッっていいましたわ!」
「ハハ・・・大丈夫ですよ、風で木がガサッっていっただけです」
きっと多くの殿方が『うらやましい!』状況だが、英二は困っていた。
彼は女性とあまり関わってこなかった人生を過ごしてきたため、全く女性慣れしていない。
全然ヘビ探しに集中出来ていなかった。
先ほど道中にて犬のうんこを踏んだことにも気づいていない。
おいコラ、依頼受けたんならちゃんとしろよな!このヘボ探偵が!
そう罵倒するのも無理はない。
何故なら、この状況を要約すると『依頼を受けた探偵見習いが仕事ほったらかして、女とイチャついてやがる』ことになるからだ。
しかし、安心してもらいたい。
仮にも彼は主人公の一人。命を張った他のキャラクターには出来ない事でこの事件の解決へと導くことになるからだ。
まぁ、この時本人はそんなこと夢にも思わなかったが。
さて、彼らの様子を見に戻ってみよう。

足の親指の高さくらいから腰の高さと同じくらいの雑草をかき分けながら英二と理紗は進んでいった。といっても目的地があるわけでもなく、ただ闇雲に進んでいただけである。
そのため、もう日は沈んでしまいそうだ。
「暗くなってきましたよ。もう戻りましょうよ理紗さん」
「いいえ、なにをおっしゃるのですか!事件解決のためですわ!」
ふと、先に見える景色に樹木が少なくなって、なにやら明るい光が見えてきた。
やがて、先に見える景色に樹木はなくなり、地面もなくなった。
その理由は見れば分かる・・・といっても文字でしか伝えることが出来ないためハッキリといっておこう。
崖になっていた。
先にはペンションのような建物が見える。
「行き止まり・・・ですわ」
「・・・みたいですね」
「これからどうしましょう?」
「うーん、とりあえずこのペンションのような建物の人に色々聞いてまわりましょうか」
「はい!・・・あ、この崖から降りるのが近道ですね!」
「ハハ・・・死にますよ?」
様々なゴタゴタがありつつも、なんとか目的地が出来た二人はくるりと体を崖に背を向けた。
その時にある音が聞こえた。
カラカラカラカラ・・・・
ん?気のせいか・・・
いや違う!ゴキブリの二の舞はごめんだ!
強い意志を持ち、英二は体を180度回転させ、理紗はつられて振り替える。
英二はやはりな・・・という顔になり、理紗は青ざめ発狂した。
「いやぁあ!!ヘビ!!ヘビがあそこに!」 
「ああ・・・やっぱり」
間違いない、カラカラヘビだ!・・・あれ?パラパラヘビだっけ?
と、とにかくあのヘビだ!
そう、あの『写真に写っていたヘビ』が彼らのわずか5メートル程先にいたのだ!
皆さまに考えてもらいたい。
世界には二種類の人間がいることを。
それはヘビが平気な人間とそうでない人間だ。
英二と理紗はまさしく後者である。
「は、はやくあのヘビを!」
「ま、まって、俺もヘビは・・・」
「助けて!中倉様!」
この時英二の中で何かが沸々と沸いてきた。
「任せて下さい!必ずやあのヘビを捕らえましょう!」
あぁぁああ!俺はなんて軽率なことを!これで二度目だ。英二は一時的な感情に流されやすいのかもしれない。
けれどここでやっぱりムリと言えば男ではない!
ありったけの勇気を振り絞り、英二はヘビの首(?)を捕らえ動きを封じた。
「やった!やりましたよ理紗さん、ほら!」
『ほら!』と理紗にケースにいれてないヘビを向けた英二が完全に悪かった。
「イヤァ!こっちに向けないでください!」
ドンッ!
驚いた理紗に両手で力いっぱい押された英二はヘビを持ったまま、オットットと崖の方へ。
そして・・・
ガッ!
「あ」
「あら」
英二+ヘビはまっ逆さまに落ちていく。
「うわぁぁぁぁぁあああああッ!!」
「中倉さまぁぁぁあああああッ!!」
そして、下にあった池に水柱が一本、ドボンと作り上げられた。
もう日は沈んでいたため、水が綺麗に揺らめくことはなかった。
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