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本編
いざ、出発
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あら、何処かで見たことがある様な気がする…。髪色が赤だから、鮮明に思い出せそうだけれど。何故か記憶にない、ずっと頭の端で何かが引っかかってモヤモヤする。
「ケイリー、彼女が俺が話した友達だよ。」
ともだち。その言葉が私の目を潤す。疲れた心にはよく聞く魔法の様な言葉ね。こんなところで涙を流すことなど許されないけれど、初めて嫌な言葉以外の言葉で泣きそうになった。
「ああ…、君がイアリス様?初めまして、僕はケイリーアルファードです」
「初めましてケイリー様、私はイアリス・ガドナーと申します」
ケイリー様は丁寧に礼をして、私をみた。ああ、なんて彼の瞳は美しいのでしょう。燃える炎のような髪に鮮やかな赤と黄色の混ざった目。芸術家から見ればなんと素晴らしいと絶賛するのが目に見えるほどの美しさ。芸術的才能がない私でもこんなに魅了されるんですもの。
やはり、魔法を使える特別な人間は姿も特別なのね。
…ふと、脳に何かが浮かんだ。
先程の見覚えは、間違いでは無かったと肯定できる記憶が蘇ってきたのだ。
ああ、そうだ。彼は幼い頃、親に内緒で共に遊んだ彼に似ている。
しかし、その彼は赤い髪ではあったけれど、瞳は黄色だし、名はシエルと言っていた気がする。ただ似てるだけ。最終的に私はそれでこの見覚えを終わらすことにした。だって、シエルが彼なんかありえないもの。名前も違うし。
「では、認識阻害の魔法をかけるという事でしたよね」
「はい…お願いします」
彼は腰にかけてあった杖の様なものを取り出して、それを私に向けた。
「イアリス様、目を瞑っていてください。僕が言葉を発するまで、」
やはり、こういうのは秘密なのだろうか。手の内は隠していたい、というもの。
そりゃそうよね、もし真似なんかされれば国は崩壊するもの。
シュシュっ、と空気を切る音が聞こえる。
今きっとかけられているのだろう。ああ、魔法に実際に触れるって初めて。希少な体験ね。
「終わりましたよ、イアリス様」
私はゆっくりと目を開ける。ずっと目を閉じていると外の世界が眩しくて、また瞑ってしまいそう。
「俺はイアリス様ってよく分かりますね…」
ふむ…という顔でアルツ様は私を見る。
「アルツは最初からイアリス様を認識しているからね。侍女など呼んでごらん、きっと気づかないよ」
ケイリー様はにやり、と笑う。私は何も変化がないけれど、周りから見れば私が誰か分からなるなるのか。凄い。
アルツさんはケイリー様の言う通り、侍女を呼んだ。
「あら、ケイリー様と…初めましての方が居ますね。アルツ様のご友人ですか?」
彼女はアルツ様のお気に入りの侍女だから、私はよく会ったことがある。しかし、認識が阻害されている、それがよくわかる彼女の反応だった。
「申し訳ないんですが……僕、ちょっとアルツと話したいことがあるので先に裏門に行っておいててくれませんか?アンタ、案内頼むよ」
「あら……分かりましたわ」
私はアルツ様の侍女についていく。裏門なんてものがあったのか。
彼らは一体どんな話をしているのか。
数分間裏門の近くで待っていると、小走りの足の音が聞こえ、振り返ると、ケイリー様が来ていた。
「お待たせしてすみません。さ、イアリス様行きましょう。今日は僕がエスコートしますよ」
ケイリー様は私の手を取り、ふふっと笑った。
「ケイリー、彼女が俺が話した友達だよ。」
ともだち。その言葉が私の目を潤す。疲れた心にはよく聞く魔法の様な言葉ね。こんなところで涙を流すことなど許されないけれど、初めて嫌な言葉以外の言葉で泣きそうになった。
「ああ…、君がイアリス様?初めまして、僕はケイリーアルファードです」
「初めましてケイリー様、私はイアリス・ガドナーと申します」
ケイリー様は丁寧に礼をして、私をみた。ああ、なんて彼の瞳は美しいのでしょう。燃える炎のような髪に鮮やかな赤と黄色の混ざった目。芸術家から見ればなんと素晴らしいと絶賛するのが目に見えるほどの美しさ。芸術的才能がない私でもこんなに魅了されるんですもの。
やはり、魔法を使える特別な人間は姿も特別なのね。
…ふと、脳に何かが浮かんだ。
先程の見覚えは、間違いでは無かったと肯定できる記憶が蘇ってきたのだ。
ああ、そうだ。彼は幼い頃、親に内緒で共に遊んだ彼に似ている。
しかし、その彼は赤い髪ではあったけれど、瞳は黄色だし、名はシエルと言っていた気がする。ただ似てるだけ。最終的に私はそれでこの見覚えを終わらすことにした。だって、シエルが彼なんかありえないもの。名前も違うし。
「では、認識阻害の魔法をかけるという事でしたよね」
「はい…お願いします」
彼は腰にかけてあった杖の様なものを取り出して、それを私に向けた。
「イアリス様、目を瞑っていてください。僕が言葉を発するまで、」
やはり、こういうのは秘密なのだろうか。手の内は隠していたい、というもの。
そりゃそうよね、もし真似なんかされれば国は崩壊するもの。
シュシュっ、と空気を切る音が聞こえる。
今きっとかけられているのだろう。ああ、魔法に実際に触れるって初めて。希少な体験ね。
「終わりましたよ、イアリス様」
私はゆっくりと目を開ける。ずっと目を閉じていると外の世界が眩しくて、また瞑ってしまいそう。
「俺はイアリス様ってよく分かりますね…」
ふむ…という顔でアルツ様は私を見る。
「アルツは最初からイアリス様を認識しているからね。侍女など呼んでごらん、きっと気づかないよ」
ケイリー様はにやり、と笑う。私は何も変化がないけれど、周りから見れば私が誰か分からなるなるのか。凄い。
アルツさんはケイリー様の言う通り、侍女を呼んだ。
「あら、ケイリー様と…初めましての方が居ますね。アルツ様のご友人ですか?」
彼女はアルツ様のお気に入りの侍女だから、私はよく会ったことがある。しかし、認識が阻害されている、それがよくわかる彼女の反応だった。
「申し訳ないんですが……僕、ちょっとアルツと話したいことがあるので先に裏門に行っておいててくれませんか?アンタ、案内頼むよ」
「あら……分かりましたわ」
私はアルツ様の侍女についていく。裏門なんてものがあったのか。
彼らは一体どんな話をしているのか。
数分間裏門の近くで待っていると、小走りの足の音が聞こえ、振り返ると、ケイリー様が来ていた。
「お待たせしてすみません。さ、イアリス様行きましょう。今日は僕がエスコートしますよ」
ケイリー様は私の手を取り、ふふっと笑った。
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