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第一話 出会い
しおりを挟む――私と彼が出会ったのは、15歳の頃だった。ナピ学園に在学中だった私たちは、幽恐祭という生徒会主催の肝試しで、偶々ペアになった。
「あの……私怖いものが苦手で、もしかしたら倒れてしまうかもしれません」
「そんな、安心してください。必ず俺が支えますよ」
そういって見せた彼の笑顔は輝いていて、とても頼もしかった。彼の名前は、アダン。赤髪の爽やかな青年だった。騎士科コースの一年で成績優秀のエース。甘いマスクを持ちながら、どんな人にも親切に接する彼は学園の皆に愛されていた。生徒だけではない、先生からの信頼も厚かったと思う。そんな彼に、支える、だなんていわれたものだから15歳の私は胸が高鳴っていた。
「……ありがとうございます」
「君の名前は?」
「ディーナ、です」
きっと耳が赤くなっていたことだろう。噛んでいないかどうか不安にもなっただろう。
「ディーナさんね。よし、行きましょうか。怖いなら俺の腕を掴んで、後ろに隠れていて。俺は騎士希望だからね、守るのは得意なんです」
「はい」
私は彼の腕をぎゅっと握る。震えてしまっていた。そんな私を安心させるかのように彼は、私の背中に手を回す。
幼いころに深夜に寝ぼけて外にでたまま、迷子になって墓の周りをさまよったことがあるけど、正直それよりも肝試しは怖かった。あんなに自身満々だったアダンも、出るころには髪はぼさぼさで涙目にになっていた。かわいい、と思いクスッと笑ってしまった。完璧人間の彼にも限界はあるのね、と。
「うう、見ないでくれ。というか君なんて汗がすごいじゃないか!」
私は涙目どころか、冷や汗が溢れ出していた。この肝試しがあと三年もあることを想像すると、鳥肌がたつくらいにはトラウマを植え付けられてしまった。私たちはお互いの酷い状態を笑いあう。初めて話したけれど、昔から仲のいいい幼馴染だったのではないかと、錯覚してしまうほど会話が弾んだ。そして、敬語で話すのも今日が初めてで、今日が最後だった。
これがきっかけで私たちはよく絡むようになる。
「この短期間でこんなに目が合って、今も食堂の座る位置がこんなにも近いなんて運命なんじゃない」
私の友人が静かにそう言った。
確かにこの三週間の間で食堂の座る位置、お弁当の日の昼食場所、ほとんど被っている。しかもお互い近くにいることに自分では気づいていないのだ。これが運命でないのなら何なのだ、と考えれるほど。私自身彼と会うのは嬉しかったから、毎回、今日もいます様にと祈っていた。
「ディーナ、お付き合いをしている人や婚約者はいるの? いや、あの深い意味はないんだけど」
「いないわよ。あなたは?」
「いないよ」
「「……」」
とある昼休みの時間、またもや隣に居た……(というよりは座りにいった)彼にふと聞かれ、私は即答する。
アダンは、学園一のイケメンで人気者なのだ。
そんな彼からのこの質問は嬉しくてたまらなかった。
自分の気持ちの高揚を隠すのに必死だった私は、質問してきた彼の顔面が赤らんでいることに気が付けなかった。
――そして16歳の冬、ついに私はアダンに告白された。
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