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強面騎士団長の憂鬱➉
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バァァァン!!
フィリスは勢いよく、護衛騎士団の執務室の扉を開いた。
この時間はいつもジャス達はここで書類仕事をしていることをフィリスは知っていた。
部屋に入って、フィリスは辺りを見回す。
そして真正面に座る、驚いたような顔のリースと目があった。
「どうして・・・どうしてリースが団長の机に座ってるの?」
突然のフィリスの来訪に一瞬驚いた顔を見せたリースだったが直ぐに冷めた目をした。
「この度、ジャス・ブライトに変わり私がこの騎士団の団長を務めることになりました。」
淡々とした口調でそう告げたリースにフィリスの心臓がドクッと嫌な音をたてた。
「何故・・・ジャスはどうしたの?」
フィリスの問いかけに、リースが鋭い視線を投げかけた。それはフィリスも見た事がない表情で思わずグッと喉が詰まる。
「失礼ですが、全てフィリス様の思いのままになったと私は考えておりますが。」
「何っ?何が言いたいの?」
「畏れながら、フィリス様は団長の事を快く思っていなかった。それは私もよく存じております。ですから今回の出来事は全て彼を引き摺り下ろす為に貴方が仕組んだ事なのでしょう?そうでなければあんな中型の魔物に彼がやられる訳がない。本来ならばかすり傷一つも負っていない筈だ。」
リースの言葉が恐ろしくフィリスは体を震わせた。それでもリースは話すことを止めようとはしなかった。
「団長がフィリス様を抱えて私たちの元に帰ってきた時、衣服がかなり乱れていました。私たちは半ば強引に彼を森へ連れて行こうとする貴殿の姿も見ています。一体あの森でフィリス様は彼に何をしたのですか?」
リースはジャスによく軽口を叩いていたが、彼のことを尊敬し慕っていた。
だからこそジャスがあんな事になってしまったのをどうしても許すことが出来なかったのだ。
フィリスは問い詰めるようなリースの言葉に顔を真っ青にしてカタカタと震えていた。
そして震える声で口を開いた。
「ぼっ、僕はジャスを傷つけるつもりなんてなかったんだ・・・」
目に涙を溜めてそう言うフィリスはとても嘘を吐いているようには見えなかった。
リースは軽く混乱した。では何故あんな事態になってしまったのかと。
「・・・、僕は別の騎士と楽しそうに話すジャスが許せなかっただけだ。僕にもそんな顔を向けて欲しかっただけだったのに・・・ジャスの制止も聞かず森に入って彼を困らせた・・・僕が魔物に襲われそうになった時も何度も身を挺して守ってくれた。それなのに僕はなんて事を・・・」
両手で顔を覆い嗚咽を漏らすフィリスにリースは戸惑いを隠せなかった。
「ジャスは•••ジャスはどうなったの?」
嗚咽の合間、消え入るような声でフィリスがそう尋ねた。
「団長は生きています•••今はまだ辛うじてですが•••ただ、力尽きるのも時間の問題だと思います。」
リースの言葉にフィリスがバッと顔を上げた。
「どういう事⁉︎時間の問題って、ジャスの身に何が起こっているの⁉︎」
縋り付く勢いで答えを問うフィリスにリースは目線を逸らすと口を開いた。
「医務室に行けば、彼が今どういう状況なのか直ぐに理解できると思います。でも、もし彼を助けたいというお気持ちが少しでもあるならば、急いだ方がいい。事は一刻を争います。」
決して大袈裟ではないリースの言いようにフィリスはゴクっと唾を飲み込むと慌てて執務室を飛び出した。
その後ろ姿を祈るような目でリースが見つめていた。
「ジャスは!ジャス・ブライトはどこにいる?」
フィリスは医務室に着くや否や、大声でそう言った。そこにいる患者も医師も驚いたようにそんなフィリスを見つめていた。
「僕の言うことが分からないのか?ジャスはどこにいる?」
戸惑う彼らの様子にも苛立ったようにフィリスがそう言うと、中年の白衣を着た医師が落ち着いた様子で口を開いた。
「これは王太子殿下殿。わざわざ医務室に足を運んで下さったのですね。ジャスさんはこちらに居ますよ。付いてきてください。」
そう言って中年の医師は医務室の奥の方へと進んでいった。その後をフィリスが直ぐに追いかける。
「いや、私もここの医師を長くやっていますがね。ジャスさんがここに治療に来たのはほんの数回なんですよ。だからこんな大怪我で運び込まれた時には驚きました。しかも相手は中型の魔物。彼がやられるような相手ではない。彼はずっとこの国の為に頑張っていたでしょう。各言う私の娘もね、一度彼に救われているんです。魔物に食われそうになった所を助けてくれた。だから彼には感謝してるんです。決してこんな扱いを受けていいような人じゃないんです。」
先程まで冷静に見えた男の声が話している内に震えてくる。しかしフィリスは男が言うこんな扱いという単語の方が気になってそれどころではない。
「さぁ、着きました。ここです。おそらく持ってあと数日。いや今直ぐ死んでしまってもおかしくない状況です。」
そう言って暗い通路を進んでいった先の部屋の扉を開けた。
そこには大柄な男が確かにベッドに横たわっていた。フィリスは堪らなくなり、直ぐにそのベッドへと駆け寄った。
「!?」
そしてジャスの姿を見て驚愕した。
彼はあの日から何の治療も施されていなかったのだ。今や全身に毒が回り、皮膚が紫色に変色していた。傷は化膿しており、嫌な匂いを放っている。顔を見ると落ち窪んだ目に、カサカサの唇。顔色も青を通り越して蒼白になっていた。
パッと見ただけでは死んでいるように見えるが辛うじて胸が浅く上下しており、なんとか生きているということが分かる状況だった。
「どうしてっ・・・こんな酷いことを・・・」
フィリスが涙をいっぱいに溜めてそう呟いた。
「王様の命令です。王様は愛する息子を傷ものにされたと大変お怒りでした。そして彼に一切の治療を施すなと命令された。ジャスさんは屈強な男です。少しの毒では直ぐに死なない。だからこれは究極の処刑です。ジワジワと毒に侵食され、死ぬその時まで苦しみを味わうのですから。今朝はとうとう水分も受け付けなくなりました。もう彼が息絶えるのも時間の問題でしょう。」
その医師の言葉を聞いた瞬間、フィリスは膝から崩れ落ちた。自分は彼に助けられておきながら何故2日間も眠りこけてしまったのか。そもそも彼の忠告を聞かず、森に入ってしまった。彼1人ならどうってことのない魔物だったのに自分が足を引っ張ったせいでこんな事態に陥ってしまった。
後悔が後悔を呼び、涙が止めどなく溢れ床を濡らした。そしてダランと垂れたジャスの手を握り締め許しを乞う
「ごめん・・・ごめんなさい・・・僕のせいでっ・・・」
その時、握り締めた手がピクッと動いた。
その事にフィリスがハッと顔を上げる。見上げると、浅いが確かに胸が上下し呼吸をしているジャスの姿があった。
そうだ!泣いている暇なんかない!彼はまだ生きてるんだ!
そう思った瞬間、フィリスは扉のところに立っている中年の医師に声を掛けた。
「王の命令は僕が反故する。今直ぐ彼の治療を開始してくれ!」
「いや、しかし王の命令に背くとなると・・・」
医師は渋るがその時間も惜しいとフィリスは捲し立てた。
「君たちには絶対に迷惑はかけない。僕が全ての責任を持つ!だから今直ぐ治療を!君も言っていただろう。彼がこんな扱いを受けていい人じゃないって。僕もそう思う。彼を絶対に救ってやってくれ!」
力強いフィリスの言葉に医師は深く頷くと慌ててその場を去っていった。
少しして、数名の医師たちを連れもどってきた。
そしてフィリスが見守る中、直ちに治療が開始されたのだった。
フィリスは勢いよく、護衛騎士団の執務室の扉を開いた。
この時間はいつもジャス達はここで書類仕事をしていることをフィリスは知っていた。
部屋に入って、フィリスは辺りを見回す。
そして真正面に座る、驚いたような顔のリースと目があった。
「どうして・・・どうしてリースが団長の机に座ってるの?」
突然のフィリスの来訪に一瞬驚いた顔を見せたリースだったが直ぐに冷めた目をした。
「この度、ジャス・ブライトに変わり私がこの騎士団の団長を務めることになりました。」
淡々とした口調でそう告げたリースにフィリスの心臓がドクッと嫌な音をたてた。
「何故・・・ジャスはどうしたの?」
フィリスの問いかけに、リースが鋭い視線を投げかけた。それはフィリスも見た事がない表情で思わずグッと喉が詰まる。
「失礼ですが、全てフィリス様の思いのままになったと私は考えておりますが。」
「何っ?何が言いたいの?」
「畏れながら、フィリス様は団長の事を快く思っていなかった。それは私もよく存じております。ですから今回の出来事は全て彼を引き摺り下ろす為に貴方が仕組んだ事なのでしょう?そうでなければあんな中型の魔物に彼がやられる訳がない。本来ならばかすり傷一つも負っていない筈だ。」
リースの言葉が恐ろしくフィリスは体を震わせた。それでもリースは話すことを止めようとはしなかった。
「団長がフィリス様を抱えて私たちの元に帰ってきた時、衣服がかなり乱れていました。私たちは半ば強引に彼を森へ連れて行こうとする貴殿の姿も見ています。一体あの森でフィリス様は彼に何をしたのですか?」
リースはジャスによく軽口を叩いていたが、彼のことを尊敬し慕っていた。
だからこそジャスがあんな事になってしまったのをどうしても許すことが出来なかったのだ。
フィリスは問い詰めるようなリースの言葉に顔を真っ青にしてカタカタと震えていた。
そして震える声で口を開いた。
「ぼっ、僕はジャスを傷つけるつもりなんてなかったんだ・・・」
目に涙を溜めてそう言うフィリスはとても嘘を吐いているようには見えなかった。
リースは軽く混乱した。では何故あんな事態になってしまったのかと。
「・・・、僕は別の騎士と楽しそうに話すジャスが許せなかっただけだ。僕にもそんな顔を向けて欲しかっただけだったのに・・・ジャスの制止も聞かず森に入って彼を困らせた・・・僕が魔物に襲われそうになった時も何度も身を挺して守ってくれた。それなのに僕はなんて事を・・・」
両手で顔を覆い嗚咽を漏らすフィリスにリースは戸惑いを隠せなかった。
「ジャスは•••ジャスはどうなったの?」
嗚咽の合間、消え入るような声でフィリスがそう尋ねた。
「団長は生きています•••今はまだ辛うじてですが•••ただ、力尽きるのも時間の問題だと思います。」
リースの言葉にフィリスがバッと顔を上げた。
「どういう事⁉︎時間の問題って、ジャスの身に何が起こっているの⁉︎」
縋り付く勢いで答えを問うフィリスにリースは目線を逸らすと口を開いた。
「医務室に行けば、彼が今どういう状況なのか直ぐに理解できると思います。でも、もし彼を助けたいというお気持ちが少しでもあるならば、急いだ方がいい。事は一刻を争います。」
決して大袈裟ではないリースの言いようにフィリスはゴクっと唾を飲み込むと慌てて執務室を飛び出した。
その後ろ姿を祈るような目でリースが見つめていた。
「ジャスは!ジャス・ブライトはどこにいる?」
フィリスは医務室に着くや否や、大声でそう言った。そこにいる患者も医師も驚いたようにそんなフィリスを見つめていた。
「僕の言うことが分からないのか?ジャスはどこにいる?」
戸惑う彼らの様子にも苛立ったようにフィリスがそう言うと、中年の白衣を着た医師が落ち着いた様子で口を開いた。
「これは王太子殿下殿。わざわざ医務室に足を運んで下さったのですね。ジャスさんはこちらに居ますよ。付いてきてください。」
そう言って中年の医師は医務室の奥の方へと進んでいった。その後をフィリスが直ぐに追いかける。
「いや、私もここの医師を長くやっていますがね。ジャスさんがここに治療に来たのはほんの数回なんですよ。だからこんな大怪我で運び込まれた時には驚きました。しかも相手は中型の魔物。彼がやられるような相手ではない。彼はずっとこの国の為に頑張っていたでしょう。各言う私の娘もね、一度彼に救われているんです。魔物に食われそうになった所を助けてくれた。だから彼には感謝してるんです。決してこんな扱いを受けていいような人じゃないんです。」
先程まで冷静に見えた男の声が話している内に震えてくる。しかしフィリスは男が言うこんな扱いという単語の方が気になってそれどころではない。
「さぁ、着きました。ここです。おそらく持ってあと数日。いや今直ぐ死んでしまってもおかしくない状況です。」
そう言って暗い通路を進んでいった先の部屋の扉を開けた。
そこには大柄な男が確かにベッドに横たわっていた。フィリスは堪らなくなり、直ぐにそのベッドへと駆け寄った。
「!?」
そしてジャスの姿を見て驚愕した。
彼はあの日から何の治療も施されていなかったのだ。今や全身に毒が回り、皮膚が紫色に変色していた。傷は化膿しており、嫌な匂いを放っている。顔を見ると落ち窪んだ目に、カサカサの唇。顔色も青を通り越して蒼白になっていた。
パッと見ただけでは死んでいるように見えるが辛うじて胸が浅く上下しており、なんとか生きているということが分かる状況だった。
「どうしてっ・・・こんな酷いことを・・・」
フィリスが涙をいっぱいに溜めてそう呟いた。
「王様の命令です。王様は愛する息子を傷ものにされたと大変お怒りでした。そして彼に一切の治療を施すなと命令された。ジャスさんは屈強な男です。少しの毒では直ぐに死なない。だからこれは究極の処刑です。ジワジワと毒に侵食され、死ぬその時まで苦しみを味わうのですから。今朝はとうとう水分も受け付けなくなりました。もう彼が息絶えるのも時間の問題でしょう。」
その医師の言葉を聞いた瞬間、フィリスは膝から崩れ落ちた。自分は彼に助けられておきながら何故2日間も眠りこけてしまったのか。そもそも彼の忠告を聞かず、森に入ってしまった。彼1人ならどうってことのない魔物だったのに自分が足を引っ張ったせいでこんな事態に陥ってしまった。
後悔が後悔を呼び、涙が止めどなく溢れ床を濡らした。そしてダランと垂れたジャスの手を握り締め許しを乞う
「ごめん・・・ごめんなさい・・・僕のせいでっ・・・」
その時、握り締めた手がピクッと動いた。
その事にフィリスがハッと顔を上げる。見上げると、浅いが確かに胸が上下し呼吸をしているジャスの姿があった。
そうだ!泣いている暇なんかない!彼はまだ生きてるんだ!
そう思った瞬間、フィリスは扉のところに立っている中年の医師に声を掛けた。
「王の命令は僕が反故する。今直ぐ彼の治療を開始してくれ!」
「いや、しかし王の命令に背くとなると・・・」
医師は渋るがその時間も惜しいとフィリスは捲し立てた。
「君たちには絶対に迷惑はかけない。僕が全ての責任を持つ!だから今直ぐ治療を!君も言っていただろう。彼がこんな扱いを受けていい人じゃないって。僕もそう思う。彼を絶対に救ってやってくれ!」
力強いフィリスの言葉に医師は深く頷くと慌ててその場を去っていった。
少しして、数名の医師たちを連れもどってきた。
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