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強面騎士団長の憂鬱⑮
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クソッ!何でだよ!何で退団なんか•••
ゼリュスから報告を受けてから、フィリスは自分の感情を抑えられずにいた。
折角これからはただの主従関係ではない良い関係が築けると思っていたのに。
怪我が治って、団長職に復帰した時にフィリスは自分の気持ちをジャスに伝える事を決めた。あの時の事をきちんと謝って、今までの態度も謝って1から関係を築き直そうと思っていた。
それなのにその前に自分の前から消えようとするなんて。
フィリスはギリっと奥歯を噛み締めた。
僕の側から離れるなんて絶対に許さない。
フィリスは怒りの感情に支配されていた。
自分の側からいなくなるくらいなら、いっそ部屋に閉じ込めて、一生出られないようにしてやろうか。
仄暗い考えがフィリスの中に芽生える。
フィリスはフラフラとした足取りでジャスの部屋を目指した。
その目はどこか正気を失っていて、すれ違う家臣たちをギョッとさせた。
もう、リハビリも必要ないか。部屋に戻ったら早速荷造りを始めよう。王に約束を取り付けたんだ。きっとそうかからず俺の退団の手続きが終わるだろう。
ジャスは自身の今後の事を考えながら、自室へと戻っていた。
王との約束は取り付けた。リースへの引き継ぎも済ませた。後はフィリス様に報告するだけだな。
フィリスの事を考えただけで、ジャスの足取りは重くなった。
俺が退団してここを去ると言えば少しは驚いてくれるだろうか。
そんな自分の浅はかな考えに、ジャスは自身を笑った。
それはないだろうな。ずっと俺に辞めて欲しいと思っていた筈だ。きっとホッとするだろう。これで罪悪感を感じる存在がいなくなるんだから・・・彼を守りたかった。でも結局俺はいつまで経ってもフィリス様にとって目の上の瘤でしかなかったのだな。
寂しく居た堪れない気持ちがジャスの中に広がっていく。
自身を見つめるあの顔をもう見れなくなるのかと思うと心が痛んだ。
考え事をしているうちに気づけば自室前まで来ていた。ジャスは部屋の扉を開けると中へと足を踏み入れた。
しかし、その歩みはそこでピタッと動きを止めた。
ヒュッとジャスが息を呑む。
「退団するって本当か?」
部屋の奥から酷く低い声がする。その声を聞いただけで、ジャスの体がビクッと震えた。
「フィリス様・・・」
ゆっくりと歩みを進めてくる人物の名をジャスは呆然と呟いた。
どうして此処にというジャスの言葉はフィリスによって完全に聞き流され、質問が繰り返される。
「退団するのは本当かと聞いている。」
フィリスの声から怒りの感情がこれでもかという程伝わってくる。しかしどうしてこんなに怒っているのかがジャスには全く理解できなかった。
「はい・・・」
何とかそれだけ返すと、フィリスがガッと目を見開いた。般若のようなその顔に気後れしたジャスが思わず後ろに後退ると、いきなり距離を詰めたフィリスがジャスの腕を掴み力任せに引っ張った。
怪我を負い、感覚の鈍った腕では抵抗することも出来ず、そのままジャスは前へとバランスを崩す。それを見越したかのようにフィリスはジャスの体を受け止めると首筋に思いっきり歯をたてた。
「い“っ!」
思わず痛みでジャスは呻く。その体を突き飛ばしベッドへと素早く押し倒した。
ジャスの首筋にはくっきりとフィリスの歯形が残り、そこに薄く血が滲んでいた。それを今度はゆっくりと舐め上げる。
「フィリス様!落ち着いてください。一度話をっー」
「うるさい!」
今までで1番の怒りようにジャスは只々困惑する。
しかしその間にも、フィリスはジャスの衣服を荒々しく脱がそうとしていた。
「お止めください!あ”ぁっ!」
制止をしようとすると今度は胸の突起に噛みつかれた。あまりの痛みにジャスの体がビクッと強張った。
「俺を拒絶するのか?」
恐ろしい声でそう聞くフィリスにジャスはゴクっと唾を飲み込む。
「もう一度聞く。お前は僕の忠誠に背くのか?」
「いえ、滅相も御座いません。」
恐怖に引き攣った顔でジャスがそう言うと、フィリスはベッドから降りた。
その事に安心してフッと息を吐いた時、残酷な声が室内に響いた。
「では、お前の忠誠を試そう。服を脱ぎ、俺を受け入れるよう此処で股を開け。」
ジャスは驚きで目を見開く。信じられないものを見るような目で目の前の男を見つめるが、フィリスは暗い目をしたままジャスを見下ろすだけだった。
ジャスはノロノロと上体だけ起こすと震える手で千切られたシャツを脱ぎ始めた。
その様子を黙ってフィリスが見つめている。
もう、耐えられない・・・
ジャスは無理やり動かしていた手を止めると俯いた。
「どうした?何故手を止める?」
フィリスの冷たい声がジャスの胸に突き刺さる。
「ふっ・・・くっ・・・ぅ」
俯いた顔から透明な液体が滴り落ち床を濡らした。
泣いているのか?
嗚咽を漏らす目の前の男にフィリスは困惑した。
「ふっ•••うぅ•••どうして•••」
掠れたように弱々しいジャスの声に思わずフィリスがハッとする。
「そんな目で私を見るのですか?」
嗚咽を漏らしながら、消え入るような声を出すジャスにフィリスの胸が締め付けられた。
「フィ、フィリス様によく思われていない事は知っています。だから、自ら離れようと決心したのにどうしてそんな目で、そんな口調で私を貶めるのですか?」
「違う•••僕は!」
「私の事が嫌いなら、もう放っておいてください!」
「違う!」
ジャスの悲痛な叫びに居ても立っても居られなくなったフィリスは、目の前の男を優しく抱きしめた。
「私には•••フィリス様がわかりません。あんなに冷たい目をしたと思ったら、こんな風に抱きしめる•••苦しいのです•••敬愛している貴方に振り回されている自分が•••だからもう離してください。フィリス様の事でこれ以上私は感情を乱されたくはないし、フィリス様にも私の事に時間を割いて欲しくないのです。」
涙を流しながら体を小さくする様は、この国で1番強い男とは思えないほど、愛らしくフィリスの庇護欲を誘った。
そして、フィリスの腕の中でポツポツと喋るジャスに堪らなく可愛さを感じてしまう。
側から見れば、ゴツい男が男に抱きしめられている何とも言えない構図だが、フィリスにとってはそれが何より幸せに思えた。
「敬愛っていつから?」
ジャスはいつも無愛想でとても自分を敬愛しているとは思えなかった。しかし、最近関わる事が増えた事で自分に対する敬愛の念が芽生えたのかもしれないとフィリスは期待した。
「•••」
言いにくいのか、暫く黙っていたジャスだがフィリスが答えを聞くまで話すつもりがないと分かると渋々口を開いた。
「14歳の時•••5歳のフィリス様が初めて民衆に前に姿を見せた時からです•••」
「っ!?」
予想外の答えにフィリスは言葉を失う。そんなに昔からジャスが自分を認識していた事も、敬愛されていたこともこれっぽっちも知らなかった。
「じゃあ、ジャスは僕の為に騎士になったのか?」
「•••はい。」
ジャスの答えに胸が締め付けられる。
ずっと自分の事なんか眼中にないと思っていたジャスが実は自分を追いかけてここまできたのだと知り、温かいものが胸の中に流れ込む。
それと同時に、やはりジャスを手放す事はできないと改めて強く思った。
自分に腕の中にいる男をこのままずっと此処に閉じ込めていたいと。
「好きです。」
気づけばその言葉が口をついて出ていた。
驚きにジャスがバッと顔を上げる。泣いた後だからか少し目の下が赤いジャスが何とも可愛くて、フィリスはクスッと微笑んだ。
ゼリュスから報告を受けてから、フィリスは自分の感情を抑えられずにいた。
折角これからはただの主従関係ではない良い関係が築けると思っていたのに。
怪我が治って、団長職に復帰した時にフィリスは自分の気持ちをジャスに伝える事を決めた。あの時の事をきちんと謝って、今までの態度も謝って1から関係を築き直そうと思っていた。
それなのにその前に自分の前から消えようとするなんて。
フィリスはギリっと奥歯を噛み締めた。
僕の側から離れるなんて絶対に許さない。
フィリスは怒りの感情に支配されていた。
自分の側からいなくなるくらいなら、いっそ部屋に閉じ込めて、一生出られないようにしてやろうか。
仄暗い考えがフィリスの中に芽生える。
フィリスはフラフラとした足取りでジャスの部屋を目指した。
その目はどこか正気を失っていて、すれ違う家臣たちをギョッとさせた。
もう、リハビリも必要ないか。部屋に戻ったら早速荷造りを始めよう。王に約束を取り付けたんだ。きっとそうかからず俺の退団の手続きが終わるだろう。
ジャスは自身の今後の事を考えながら、自室へと戻っていた。
王との約束は取り付けた。リースへの引き継ぎも済ませた。後はフィリス様に報告するだけだな。
フィリスの事を考えただけで、ジャスの足取りは重くなった。
俺が退団してここを去ると言えば少しは驚いてくれるだろうか。
そんな自分の浅はかな考えに、ジャスは自身を笑った。
それはないだろうな。ずっと俺に辞めて欲しいと思っていた筈だ。きっとホッとするだろう。これで罪悪感を感じる存在がいなくなるんだから・・・彼を守りたかった。でも結局俺はいつまで経ってもフィリス様にとって目の上の瘤でしかなかったのだな。
寂しく居た堪れない気持ちがジャスの中に広がっていく。
自身を見つめるあの顔をもう見れなくなるのかと思うと心が痛んだ。
考え事をしているうちに気づけば自室前まで来ていた。ジャスは部屋の扉を開けると中へと足を踏み入れた。
しかし、その歩みはそこでピタッと動きを止めた。
ヒュッとジャスが息を呑む。
「退団するって本当か?」
部屋の奥から酷く低い声がする。その声を聞いただけで、ジャスの体がビクッと震えた。
「フィリス様・・・」
ゆっくりと歩みを進めてくる人物の名をジャスは呆然と呟いた。
どうして此処にというジャスの言葉はフィリスによって完全に聞き流され、質問が繰り返される。
「退団するのは本当かと聞いている。」
フィリスの声から怒りの感情がこれでもかという程伝わってくる。しかしどうしてこんなに怒っているのかがジャスには全く理解できなかった。
「はい・・・」
何とかそれだけ返すと、フィリスがガッと目を見開いた。般若のようなその顔に気後れしたジャスが思わず後ろに後退ると、いきなり距離を詰めたフィリスがジャスの腕を掴み力任せに引っ張った。
怪我を負い、感覚の鈍った腕では抵抗することも出来ず、そのままジャスは前へとバランスを崩す。それを見越したかのようにフィリスはジャスの体を受け止めると首筋に思いっきり歯をたてた。
「い“っ!」
思わず痛みでジャスは呻く。その体を突き飛ばしベッドへと素早く押し倒した。
ジャスの首筋にはくっきりとフィリスの歯形が残り、そこに薄く血が滲んでいた。それを今度はゆっくりと舐め上げる。
「フィリス様!落ち着いてください。一度話をっー」
「うるさい!」
今までで1番の怒りようにジャスは只々困惑する。
しかしその間にも、フィリスはジャスの衣服を荒々しく脱がそうとしていた。
「お止めください!あ”ぁっ!」
制止をしようとすると今度は胸の突起に噛みつかれた。あまりの痛みにジャスの体がビクッと強張った。
「俺を拒絶するのか?」
恐ろしい声でそう聞くフィリスにジャスはゴクっと唾を飲み込む。
「もう一度聞く。お前は僕の忠誠に背くのか?」
「いえ、滅相も御座いません。」
恐怖に引き攣った顔でジャスがそう言うと、フィリスはベッドから降りた。
その事に安心してフッと息を吐いた時、残酷な声が室内に響いた。
「では、お前の忠誠を試そう。服を脱ぎ、俺を受け入れるよう此処で股を開け。」
ジャスは驚きで目を見開く。信じられないものを見るような目で目の前の男を見つめるが、フィリスは暗い目をしたままジャスを見下ろすだけだった。
ジャスはノロノロと上体だけ起こすと震える手で千切られたシャツを脱ぎ始めた。
その様子を黙ってフィリスが見つめている。
もう、耐えられない・・・
ジャスは無理やり動かしていた手を止めると俯いた。
「どうした?何故手を止める?」
フィリスの冷たい声がジャスの胸に突き刺さる。
「ふっ・・・くっ・・・ぅ」
俯いた顔から透明な液体が滴り落ち床を濡らした。
泣いているのか?
嗚咽を漏らす目の前の男にフィリスは困惑した。
「ふっ•••うぅ•••どうして•••」
掠れたように弱々しいジャスの声に思わずフィリスがハッとする。
「そんな目で私を見るのですか?」
嗚咽を漏らしながら、消え入るような声を出すジャスにフィリスの胸が締め付けられた。
「フィ、フィリス様によく思われていない事は知っています。だから、自ら離れようと決心したのにどうしてそんな目で、そんな口調で私を貶めるのですか?」
「違う•••僕は!」
「私の事が嫌いなら、もう放っておいてください!」
「違う!」
ジャスの悲痛な叫びに居ても立っても居られなくなったフィリスは、目の前の男を優しく抱きしめた。
「私には•••フィリス様がわかりません。あんなに冷たい目をしたと思ったら、こんな風に抱きしめる•••苦しいのです•••敬愛している貴方に振り回されている自分が•••だからもう離してください。フィリス様の事でこれ以上私は感情を乱されたくはないし、フィリス様にも私の事に時間を割いて欲しくないのです。」
涙を流しながら体を小さくする様は、この国で1番強い男とは思えないほど、愛らしくフィリスの庇護欲を誘った。
そして、フィリスの腕の中でポツポツと喋るジャスに堪らなく可愛さを感じてしまう。
側から見れば、ゴツい男が男に抱きしめられている何とも言えない構図だが、フィリスにとってはそれが何より幸せに思えた。
「敬愛っていつから?」
ジャスはいつも無愛想でとても自分を敬愛しているとは思えなかった。しかし、最近関わる事が増えた事で自分に対する敬愛の念が芽生えたのかもしれないとフィリスは期待した。
「•••」
言いにくいのか、暫く黙っていたジャスだがフィリスが答えを聞くまで話すつもりがないと分かると渋々口を開いた。
「14歳の時•••5歳のフィリス様が初めて民衆に前に姿を見せた時からです•••」
「っ!?」
予想外の答えにフィリスは言葉を失う。そんなに昔からジャスが自分を認識していた事も、敬愛されていたこともこれっぽっちも知らなかった。
「じゃあ、ジャスは僕の為に騎士になったのか?」
「•••はい。」
ジャスの答えに胸が締め付けられる。
ずっと自分の事なんか眼中にないと思っていたジャスが実は自分を追いかけてここまできたのだと知り、温かいものが胸の中に流れ込む。
それと同時に、やはりジャスを手放す事はできないと改めて強く思った。
自分に腕の中にいる男をこのままずっと此処に閉じ込めていたいと。
「好きです。」
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