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第二十八話 この思いは世界を超えて
しおりを挟む「着きましたよ、ここが私の家です。」
アリアンについていきしばらくすると普通の家より一回り大きな家があった。
「さあ、入ってください、お茶を出しますから。」
そういうとアリアンはそそくさと入って行った。
「「お邪魔します。」」
家の中は綺麗だった、しっかりと整理整頓されていた。
「椅子に座っていてください、今お茶を持っていくので。」
言われた通りに椅子に座って待っていた。
「どうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
「ん、ありがとう。」
お茶はなんかよくわからない味がした。
「すいません、お口に合いませんでしたか?」
どうやら顔に出ていたらしい。
「いや、気にしないでくれ。」
「そうですか、そういえば寝床なのですが、部屋が二つ空いているのでどうぞお使いください。」
「そうか、ありがとう、俺はもう寝るよ。」
「ん、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい、部屋は手前の二つですので。」
「了解、おやすみ。」
俺たちは部屋に入ってさっさと寝た。
夜中
キィィィ、パタン。
その音で、俺は目を覚ました。
気配察知をオフにしていたらしい。
だか、誰が入って来たのかはすぐにわかった。
「こんな夜更けに何の用だ、アリアン。」
最初はルシファーかと思っていたが足音がアリアンのだったのだ。
「ふふっ、気付くのが早いですね?驚かせようと思いましたのに。」
「悪戯なら帰れ、俺は眠いんだ。」
そう悪態をつき、アリアンを帰そうとしたが。
「ねぇ、レッドさん、あなたはお兄さんというのに聞き覚えはありますか?」
俺は途端に目が覚めた。
バッ、と起き上がりドアの近くにいるアリアンを睨みつけた。
「なぜ、その呼び方をお前がするんだ?」
俺は、もう気づいていたのかもしれない、ありえない可能性に。
「ああ、その反応はやっぱり、お兄さんなんだね?」
アリアンは泣きそうな顔で続けた。
「お兄さん、お久しぶりだね?私だよ、神白神奈だよ。」
「か、んな?」
俺は今までに無いほど混乱していた。
(なんで、神奈がここに?いや、あの時神奈は俺の目の前で死んだはずだ。
見間違いなどはありえない。
そもそも神奈は今は獣人じゃないか?
種族が違う。
いや、問題はそこじゃ無い!)
「な、なんでここに神奈がいるんだよ!神奈はあの時、俺の目の前で死んだはずだ!」
アリアンは、神奈は答えた。
「私もね、あの時死んじゃったと思ったんだよ。」
そう、私はたしかにあの時死んだのだ、暗い暗いどこまでも深い水の中に沈んでいくような感覚だった。
「だけどね、目が覚めたらこの体になっていたの。」
暁は驚愕していた。
「て、転生したっていうのか?」
「うん、そうみたいだね、わたしも驚いたよ?死んだと思ったら、突然別の体に生まれ変わっているんだもん。」
本当に驚いた、まさか自分が転生するとは思わなかったのだ。
「転生した後は大変だったよ、毎日の生活を送るだけでもとても苦労した。」
水も綺麗とはあまり言えない、
ご飯も満足に食べれない。
毎日が死と隣り合わせ、
けど、と続けた。
「今までの苦労が報われたよ。」
満面の笑みを浮かべた。
「髪の色が違う、体格も違う、目つきも違う、性格も変わった、だけど私にはわかった。」
「か、んな?」
「あなたの、お兄さんの面影が残っていたの、あなたは私が助けて欲しいときに助けてくれた、私の英雄。」
私のことをまた、助けてくれた。
「ち、違う、俺は、英雄なんがじゃない!俺は守れなかった!お前を、神奈を、守れなかったんだよ!」
暁は否定した。
「あれは、私がいけないんだよ、私がお兄さんを誘わないで帰ったから。」
あの時、私は学校帰りに襲われたのだ。
「違うんだ、俺は、神奈と一緒にいつも帰っていたのに、その日は、友人との約束を優先してしまった!だから、だからあんなことがおきたんだ!」
暁は毎日の日課みたいなことを破った。
「ううん、私も一人で帰らないで友達と帰るべきだったんだよ。」
暁は喚くように言った。
「俺は、俺は、あの時神奈と一緒に帰っていれば、守れたかもしれないとずっと後悔していた!」
神奈は静かに聞いていた。
「俺が、しっかりとしていないから、神奈を死なせてしまった!痛かった、怖かったはずなのに!」
「ごめん、ごめん、神奈、お前を死なせてしまって、お前は俺が殺したようなものだ!」
神奈は口を開いた。
「たしかに、あの時少しは恨んだよ?」
「だけどね、それ以上に寂しかったんだ。」
「もう、お兄さんに会えないのかなって、そんなことを考えていたんだ。」
「でもね、お兄さんに死ぬ前に会えて、私の気持ちを伝えることができて、私は幸せだったんだよ?」
暁は伏せていた顔を上げた。
「体が変わったとしても、この思いはいつまでも変わらないよ。」
神奈は近づいてその顔を両手で挟んで自分の顔の前に持っていった。
「だから、もう一度言わせてください。」
暁は目を見開いていた。
「大好きだよ、お兄さん。」
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