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第1章「火星へ」
赤本(2)
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もちろん、ほんの数時間前まで文字の存在そのものを知らず、おそらく今もおぼつかないだろうガキだ。
四則計算などできるはずがない。
ただ、感覚というかコースが得られれば、実際の計算は今のようにコンピュータでできる。
センスだけで言うなら俺を越えて、あるいは「赤本」の出題者すら越えているかもしれない。
俺は内心の高ぶりを押さえて、つとめて憮然を装い、ガキの前の聖書に目をやった。
気づいたガキは拳を握って親指を立て、それを下に向けて断言した。
「この『主』とかいうやつ、カスやな!」
って、どんな読み方をしたんだ。
「世界を6日でつくったんは、仕事が早いからエライとは思うわ。てか『世界』ってどこまでの話やろ?」
大昔、俺が子供の頃にはすでに古典になっていたSFでは、今の時代は巨大宇宙戦艦の大艦隊が銀河狭しと暴れ回り、銀河帝国やら銀河連邦やらが覇権を争っているはずだった。
が、実際には、軌道エレベータこそ完成させたもののアインシュタインの呪いにも届かず、SFでは家庭用宇宙船で気軽に光速を越えていたのが、いまだ人類は太陽系すら出ていない。
「この船よりは大きいと思うぞ」
「木とか動物とか放したゆーから、コロニーくらいかな。それを1週間なら、やっぱスゴイんはスゴイわ。
スゴイからルールを作れるくらい出世してるんも認める」
感心して頷いてみせるガキに、思わず苦笑した。
「けど、罰があるんなら、最初に言うとかなアカン。
それをあとから言うて『追放』って、横暴にもほどがあるんちゃう?」
ガキはさらに息巻いて言った。
「俺がおっちゃんの飯を食ったら、とりあえず殴られるくらいやん?」
「俺だってオマエが俺の飯を勝手に食ったら、船の外に放り出す!」
「やから、最初にそれ言うてたら、俺かて食わんわ。それをいきなり放り出したんやで、こいつ」
俺はたまらず吹き出した。笑いながら途切れ途切れに、なんとか声を絞り出して
「オマエ。火星に着いたら、絶対に人前でそれ言うなよ」
と、一応の釘を刺した。
とはいえ、ガキが言っているのは「罪刑法定主義」で、近代法治国家の根幹だ。
もちろん、現代の考え方で3000年以上昔の人物評をするのは愚かとも言えるが、このガキは自分が読んでいた本の登場人物達が、そんな大昔だとは知らないだろう。
旧約聖書・創世記の序盤で、何時間もかけてそこまでしか読めていないのは遅い気もするが、「the」も「this」も知らない人間が辞書で探しあて、その説明を理解するためにさらにページをめくる。
それを繰り返し、未知の暗号解読さながらの作業をコンピュータに発音を教わりながらとはいえ、自力でやったとすれば、むしろすさまじく早い。
さらに法治主義の基礎に、あっさりとたどり着いた。
このガキは「知識」を持っていないだけで、「地頭」はとてつもなく優秀だ。
俺は、方針を変えた。
「赤本」の計算問題をしている間は、やはりガキには聖書を読ませているが、航路や軌道などの図形問題については二人で解くことにした。
もちろん10年前に一度受験して合格した俺の方がたいてい早く解けるが、そのあとガキにヒントや解説をしてやる。
他人に教えるというのは、一人で黙々と問題集をすすめるよりも、はるかに自分への学習効果が高い。
気分転換は、聖書の音読だ。
俺とガキは会話ができる。
だから、俺が1ページ音読してやれば、ガキはその音をヒントに文章の大意を知り、見当をつけて単語を探すことが、より早くできるようになった。
コンピュータを相手にしていることと差はないと思うが、ガキに言わせると「こっちのが、よくわかる」そうだ。
もっとも「創世記」が終わった頃には音読の必要すらなくなったが。
4ヶ月も、それを続けた。
「赤本」の俺の自己採点はは、コンスタントに「A評価」が出せるようになった。
新規ではなく更新の場合、「C評価」以上が合格の目安とされるから、多少は油断してもいいだろう。
同じ問題でガキを採点すると「B評価」だ。サービス問題の計算でしばしば間違うのが減点理由だ。
おかげでまだ俺の方がエラそうにしていられるが、単純計算はコンピュータにさせればいい。
「B評価」では、航海士試験の新規取得だと、そのときの体調とか運によっては落ちる可能性があるが、何も受験は1回しか受けられないわけではない。
2度3度と受ければ、いずれは合格するレベルだ。
ただ、実技については未知数だ。
なにせこの船は、この4ヶ月の間に1度もスラスターを噴くことなく、ひたすら慣性航海を続けていたから。
それから3週間ほど過ぎて、火星の極冠がコンピュータの補正なしで見分けられる距離に近づいた。
当初の予定では3日後に火星の衛星軌道に乗せるためスラスターを噴くことになっていた。
その後、予定ポイントで180度回頭して、MAXでスラスターを噴いて、大減速を行う。
それで引っ張っている岩塊群をパージして集積場に投げ込み、身軽になった船は楽々と火星の静止衛星軌道上にある宇宙港を目指そうというものだった。
今までそうしてきたし、そういう手順なんだと疑問にすら思わなかった。
スラスター剤はドラム缶2つがまだ手つかずで残っているが、MAX噴射などで、ほとんど空になる。
それでも、ここは火星から至近距離で、MAX噴射時には火星衛星軌道の中にいる。
万が一スラスター剤が尽きても、割高にはなるが補充は可能だ。
が、ガキはその遙か手前での回頭を提案してきた。
それも180度どころかわずか60度の回頭で、減速も行わない。
それだけで、ポイントとタイミングさえ間違わなければ火星の公転軌道を追う形になって、集積場や宇宙港への相対速度は、当初予定と同程度にまで落とせると言う。
使われるスラスター剤は、俺の予定の1割程度におさまるとも。
俺はうさんくさいペテンを言われているような気すらしたが、同時にペテンでいいとも思った。
間違っていたら、このガキの頭を殴ればいい。
ペテンにかけた相手は目の前にいるのだから、気は楽だ。
…………。
このガキと俺は火星への片道道中で、俺はこのガキの名前を知らない。
少なくとも、こんな「リンドバーグ様」がいるはずはない。
このガキに火星に何か目的が……あるはずもないか。
コイツは、ライトスーツ1枚で岩塊にしがみついてきた。
それで火星まで行けるとはさすがに思わないというか、この船が惑星間航海をするとも思わず、単にキツイ飯場を逃げだそうとしただけだと俺は思っている。
が、今は違う。
「赤本」の成績から、コイツが望めば航海士になることも可能だ。
俺が教えられるのがそれしかなかったというのが最大の理由だが、このガキも興味がないことは全く覚えようとしない。
それも、半ば意地になって。
いまだに「πって、rの前やっけ後ろやっけ?」と口走る。
どうやら「π」をアルファベット小文字の1つととらえているフシがある。
それでも、航海士の芽ができた。
コイツが本当に航海士になって、ついでに商売敵になったとしても、土壇場で航路計算を間違えたという経験は必ず活きる。
思いつきでバカな行動に出て大損害を出したことや、なんなら危ない目にあったっていい。
むしろ危険回避のテクニックを目と身体で体験できるいいチャンスだし、座学と実地の違いを教えてやれるのも……この船での最後の勉強、最終仕上げだ。
それが、このガキにやれる、唯一の餞別だと思っている。
俺はこのガキにあえて「失敗」を味合わせるために、無謀としか思えない提案に乗ってやった。
餞別のスラスター剤が泣くほど割高になったとしても、酒場での笑い話にレパートリーが1つ増えるだけだ。
四則計算などできるはずがない。
ただ、感覚というかコースが得られれば、実際の計算は今のようにコンピュータでできる。
センスだけで言うなら俺を越えて、あるいは「赤本」の出題者すら越えているかもしれない。
俺は内心の高ぶりを押さえて、つとめて憮然を装い、ガキの前の聖書に目をやった。
気づいたガキは拳を握って親指を立て、それを下に向けて断言した。
「この『主』とかいうやつ、カスやな!」
って、どんな読み方をしたんだ。
「世界を6日でつくったんは、仕事が早いからエライとは思うわ。てか『世界』ってどこまでの話やろ?」
大昔、俺が子供の頃にはすでに古典になっていたSFでは、今の時代は巨大宇宙戦艦の大艦隊が銀河狭しと暴れ回り、銀河帝国やら銀河連邦やらが覇権を争っているはずだった。
が、実際には、軌道エレベータこそ完成させたもののアインシュタインの呪いにも届かず、SFでは家庭用宇宙船で気軽に光速を越えていたのが、いまだ人類は太陽系すら出ていない。
「この船よりは大きいと思うぞ」
「木とか動物とか放したゆーから、コロニーくらいかな。それを1週間なら、やっぱスゴイんはスゴイわ。
スゴイからルールを作れるくらい出世してるんも認める」
感心して頷いてみせるガキに、思わず苦笑した。
「けど、罰があるんなら、最初に言うとかなアカン。
それをあとから言うて『追放』って、横暴にもほどがあるんちゃう?」
ガキはさらに息巻いて言った。
「俺がおっちゃんの飯を食ったら、とりあえず殴られるくらいやん?」
「俺だってオマエが俺の飯を勝手に食ったら、船の外に放り出す!」
「やから、最初にそれ言うてたら、俺かて食わんわ。それをいきなり放り出したんやで、こいつ」
俺はたまらず吹き出した。笑いながら途切れ途切れに、なんとか声を絞り出して
「オマエ。火星に着いたら、絶対に人前でそれ言うなよ」
と、一応の釘を刺した。
とはいえ、ガキが言っているのは「罪刑法定主義」で、近代法治国家の根幹だ。
もちろん、現代の考え方で3000年以上昔の人物評をするのは愚かとも言えるが、このガキは自分が読んでいた本の登場人物達が、そんな大昔だとは知らないだろう。
旧約聖書・創世記の序盤で、何時間もかけてそこまでしか読めていないのは遅い気もするが、「the」も「this」も知らない人間が辞書で探しあて、その説明を理解するためにさらにページをめくる。
それを繰り返し、未知の暗号解読さながらの作業をコンピュータに発音を教わりながらとはいえ、自力でやったとすれば、むしろすさまじく早い。
さらに法治主義の基礎に、あっさりとたどり着いた。
このガキは「知識」を持っていないだけで、「地頭」はとてつもなく優秀だ。
俺は、方針を変えた。
「赤本」の計算問題をしている間は、やはりガキには聖書を読ませているが、航路や軌道などの図形問題については二人で解くことにした。
もちろん10年前に一度受験して合格した俺の方がたいてい早く解けるが、そのあとガキにヒントや解説をしてやる。
他人に教えるというのは、一人で黙々と問題集をすすめるよりも、はるかに自分への学習効果が高い。
気分転換は、聖書の音読だ。
俺とガキは会話ができる。
だから、俺が1ページ音読してやれば、ガキはその音をヒントに文章の大意を知り、見当をつけて単語を探すことが、より早くできるようになった。
コンピュータを相手にしていることと差はないと思うが、ガキに言わせると「こっちのが、よくわかる」そうだ。
もっとも「創世記」が終わった頃には音読の必要すらなくなったが。
4ヶ月も、それを続けた。
「赤本」の俺の自己採点はは、コンスタントに「A評価」が出せるようになった。
新規ではなく更新の場合、「C評価」以上が合格の目安とされるから、多少は油断してもいいだろう。
同じ問題でガキを採点すると「B評価」だ。サービス問題の計算でしばしば間違うのが減点理由だ。
おかげでまだ俺の方がエラそうにしていられるが、単純計算はコンピュータにさせればいい。
「B評価」では、航海士試験の新規取得だと、そのときの体調とか運によっては落ちる可能性があるが、何も受験は1回しか受けられないわけではない。
2度3度と受ければ、いずれは合格するレベルだ。
ただ、実技については未知数だ。
なにせこの船は、この4ヶ月の間に1度もスラスターを噴くことなく、ひたすら慣性航海を続けていたから。
それから3週間ほど過ぎて、火星の極冠がコンピュータの補正なしで見分けられる距離に近づいた。
当初の予定では3日後に火星の衛星軌道に乗せるためスラスターを噴くことになっていた。
その後、予定ポイントで180度回頭して、MAXでスラスターを噴いて、大減速を行う。
それで引っ張っている岩塊群をパージして集積場に投げ込み、身軽になった船は楽々と火星の静止衛星軌道上にある宇宙港を目指そうというものだった。
今までそうしてきたし、そういう手順なんだと疑問にすら思わなかった。
スラスター剤はドラム缶2つがまだ手つかずで残っているが、MAX噴射などで、ほとんど空になる。
それでも、ここは火星から至近距離で、MAX噴射時には火星衛星軌道の中にいる。
万が一スラスター剤が尽きても、割高にはなるが補充は可能だ。
が、ガキはその遙か手前での回頭を提案してきた。
それも180度どころかわずか60度の回頭で、減速も行わない。
それだけで、ポイントとタイミングさえ間違わなければ火星の公転軌道を追う形になって、集積場や宇宙港への相対速度は、当初予定と同程度にまで落とせると言う。
使われるスラスター剤は、俺の予定の1割程度におさまるとも。
俺はうさんくさいペテンを言われているような気すらしたが、同時にペテンでいいとも思った。
間違っていたら、このガキの頭を殴ればいい。
ペテンにかけた相手は目の前にいるのだから、気は楽だ。
…………。
このガキと俺は火星への片道道中で、俺はこのガキの名前を知らない。
少なくとも、こんな「リンドバーグ様」がいるはずはない。
このガキに火星に何か目的が……あるはずもないか。
コイツは、ライトスーツ1枚で岩塊にしがみついてきた。
それで火星まで行けるとはさすがに思わないというか、この船が惑星間航海をするとも思わず、単にキツイ飯場を逃げだそうとしただけだと俺は思っている。
が、今は違う。
「赤本」の成績から、コイツが望めば航海士になることも可能だ。
俺が教えられるのがそれしかなかったというのが最大の理由だが、このガキも興味がないことは全く覚えようとしない。
それも、半ば意地になって。
いまだに「πって、rの前やっけ後ろやっけ?」と口走る。
どうやら「π」をアルファベット小文字の1つととらえているフシがある。
それでも、航海士の芽ができた。
コイツが本当に航海士になって、ついでに商売敵になったとしても、土壇場で航路計算を間違えたという経験は必ず活きる。
思いつきでバカな行動に出て大損害を出したことや、なんなら危ない目にあったっていい。
むしろ危険回避のテクニックを目と身体で体験できるいいチャンスだし、座学と実地の違いを教えてやれるのも……この船での最後の勉強、最終仕上げだ。
それが、このガキにやれる、唯一の餞別だと思っている。
俺はこのガキにあえて「失敗」を味合わせるために、無謀としか思えない提案に乗ってやった。
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