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第十一話 やりたくないので、やりません。

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「な、何故ですか!?」

 いや、そんなに驚かれても・・・・・・。

「興味ないから」

 としか答えられん。

「用件はそれだけですか? なら、私はこれで──」

 ミントも大分食べたし、もう大丈夫でしょ。
 これ以上ここにいても、厄介なことにしかならない予感しかない。
 こういう時はすぐに逃げるに限る。

「お待ち下さい!」

「・・・・・・なーに?」

 引き留められた。
 無視しても良かったけれど、囲まれてるし。

「エルシカ様は悔しくないのですか? 平民上がりの子爵令嬢に婚約者を盗られて!」

「全然」

「何故・・・・・・あの悪女の行いは、あまりにも目に余ります! 公爵令嬢であるエルシカ様のご助力があれば、あの女を学園から追い出すことも可能でしょう? どうか、我々を助けると思って」

 ふーん、そういうこと。
 ことを起こすのに、公爵令嬢を旗頭にしようってとこかな?

「助ける、ね。それ、私に何の得があるんですか?」

「そ、それは勿論、あの女さえ排せば、レスド殿下もエルシカ様の元に──」

「いやー、別に帰ってきて欲しくないですし。そもそも、私が出てってどうこうなる問題ですか? 公爵家なら、そもそもシャルニィ嬢の仲の良い方の中には公爵家のご令息だっているでしょう? その人たちはシャルニィ嬢を守ろうとするんじゃない? 私が貴女たちの頼みを聞き入れたとして、矢面に立たされた私を貴女たちは守ってくれるの?」

「──っ!」

 あら、図星。
 皆が皆、私みたいに婚約破棄をラッキーだと思ってるなんてないだろうし、婚約者を奪われた彼女たちの屈辱は押して知るべしだけど、そのせいで諍いに巻き込まれては堪らない。
 返答に窮しているなら、丁度いい。言いたいことは言わせてもらおう。

「そもそもね、私はやりたいことしかやらない主義なの。貴女たちにも事情はあるんでしょうけれど、その被害者の会とやらには微塵も興味がありません。なので、やるなら貴女たちだけでやって下さい」

 やりたいことしかやらない。
 それが私の信条だ。
 今までずっと、その通りに生きてきたし、これからもそうしていくつもり。

 それこそ、私がやりたくもないのにしたことなんて、後にも先にもレスド殿下との婚約一つだけだ。
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