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第四話 助けはどこからともなく
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「ん? 待って。東の宮って言った?」
どうしたものかと頭をひねらしていると、クフレスの話におかしな点があることに気づいた。
「だから何だ?」
腕を組んでふんぞり返っているクフレスの言葉に間違いはないのだろう。
なら、尚更今の話には大きな誤りがある。
「私、今日はまだ東の宮の方には行ってないんだけど?」
今日の仕事は最初に南の宮から初めて、北の宮へ。そして、騎士団の詰所へ行く途中で西の宮の手前を通って──うん。今日はまだ東の宮には行ってないし、近寄ってもいない。
「行ってもいない場所で、どうやって私が階段から突き落とせたっていうのよ?」
「口ではどうとでも言えるだろう。証拠もないのに信じられるか!」
「だったら、まずそちらから証拠を出してくれない?」
「ジーナの証言があるだろう!」
──それは証拠とは言わない!
いや、言っても無駄だ。元々、クフレスにはこういうところがあるのだ。自分の思ったことが絶対だと信じて疑わないところが。
「そうです。それ以上にどんな証拠が必要だって言うんですか? 被害者である私が言ってるんですから、間違いがある訳ないでしょう!」
まさか、こんな最悪の波長の合い方をする人がいるとは・・・・・・。
東の宮に行っていないと言い張っても、話は平行線のままだろう。
私は質問を返ることにした。
「ならお訊きしますけれど、ジーナさん。貴女が階段から突き落とされた時刻を教えて頂けますか?」
「九短針半頃よ!」
──九短針半・・・・・・確定だ。
私ははっきりとアリバイを告げる。
「その時間帯であれば、私は騎士団の詰所へ伺おうとしていたところよ。つまり、東の宮とは正反対の西の宮の近くにいたの。私は仕事上、色んな人に会うから、すぐに裏付けも取れると思うわよ」
「なっ!」
「えっ!?」
いや、そんな驚くことある?
こっちが確たる証拠を提示出来ることを示すと、途端にクフレスとジーナさんはあからさまなくらいに狼狽え出した。
なんて、脆い。
「何をどう勘違いされたか知りませんけど、とにかく私ではありませんから。早く近衛様なり、騎士様なりにご相談した方がよろしいと思いますよ。まぁ、本当に突き落とされてたらのお話ですけど」
これでもういいよね?
あー、時間無駄にしちゃった。夕刻までに東の宮と後宮にもお伺いしちゃいたかったのに。
うーん。スケジュール立て直さないと。とりあえず、お昼休みを少し削って──
早く図書館へ向かおうとしたら、後ろからぐいっと引っ張られた。
「待て!」
「みきゃっ!? ──って、ちょっと! 人の商売道具に何してくれてんの!?」
見ると、クフレスが私の鞄を引っ張って、引き止めて来る。この鞄の中にどれだけ大切なお手紙や書類が入ってると思ってるの!? そんな雑に扱っていいものじゃないんだけど!!!
私は反射的にクフレスを振り払って、鞄を両腕で抱え込む。中で紙同士が擦れ合う音がした。
まさか、今のでくしゃくしゃになったりしてないよね?
不安になっていると、元凶であるクフレスが言った。
「本当の本当の本当に行ってないのか? どうせ嘘だろう。だったら、今すぐここに証人を連れてこい。今すぐ!」
「はぁ!?」
クフレスは自棄でも起こしたのか、これまでに輪をかけて無茶苦茶を言ってくる。
「出来ないんですか? なら、やっぱり嘘ってことですよね? 証人なんていませんよね? 私が言った通りってことですよね? なら、ほら! 早く土下座して謝って下さい!」
どうしてそうなるの?
頭が痛い。
何でそんなに私に土下座させたいの?
そもそも、クフレスとジーナさんはどんな関係な訳。何で、婚約者の言い分を少しも信じようとしないの?
何か、気持ち悪くなってきた。
言葉の通じない異国の地に放り出されたような気分だ。怖くて、蹲りたくなる。
けど、そんなことしたくない。私、間違ってないもの。
胃がせり上がる感覚がして、思わず口元を塞ぐ。
何か、平衡感覚までなくなりそう。
ぐらり、と立ち眩みを起こして、後ろへと倒れそうになった。その時だった。
大きな手のひらに肩が包まれ、体が支えられる。
「いるよ。ここに」
あ、朝露の匂い。
しっとりと澄んだ香りと共に、穏やかで優しい声がした。
見上げると、そこには岩のような不動の安定感と花のような優美さと僅かな儚さを漂わせた男性が立っていた。
その人を見て、私は驚いた。
何で、この方がここに? グリーフ様が探しに行かれた筈なのに。そもそも、さっきは西の宮にいらっしゃったのに。
──そう。私を支えてくださったのは、第二王子・ヒース殿下。
お肌のきめ細やかさまで分かる程の至近距離。
そんな間近にある美しいご尊顔に目を奪われて放心していたけれど、我に返った途端に心臓が大変なことになった。
もうばっくばく!
何で、ここにヒース殿下がいらっしゃるの? グリーフ様は?
──というか、気のせいじゃありませんよね?
ヒース殿下、今頭上から降って来ましたよね!?
どうしたものかと頭をひねらしていると、クフレスの話におかしな点があることに気づいた。
「だから何だ?」
腕を組んでふんぞり返っているクフレスの言葉に間違いはないのだろう。
なら、尚更今の話には大きな誤りがある。
「私、今日はまだ東の宮の方には行ってないんだけど?」
今日の仕事は最初に南の宮から初めて、北の宮へ。そして、騎士団の詰所へ行く途中で西の宮の手前を通って──うん。今日はまだ東の宮には行ってないし、近寄ってもいない。
「行ってもいない場所で、どうやって私が階段から突き落とせたっていうのよ?」
「口ではどうとでも言えるだろう。証拠もないのに信じられるか!」
「だったら、まずそちらから証拠を出してくれない?」
「ジーナの証言があるだろう!」
──それは証拠とは言わない!
いや、言っても無駄だ。元々、クフレスにはこういうところがあるのだ。自分の思ったことが絶対だと信じて疑わないところが。
「そうです。それ以上にどんな証拠が必要だって言うんですか? 被害者である私が言ってるんですから、間違いがある訳ないでしょう!」
まさか、こんな最悪の波長の合い方をする人がいるとは・・・・・・。
東の宮に行っていないと言い張っても、話は平行線のままだろう。
私は質問を返ることにした。
「ならお訊きしますけれど、ジーナさん。貴女が階段から突き落とされた時刻を教えて頂けますか?」
「九短針半頃よ!」
──九短針半・・・・・・確定だ。
私ははっきりとアリバイを告げる。
「その時間帯であれば、私は騎士団の詰所へ伺おうとしていたところよ。つまり、東の宮とは正反対の西の宮の近くにいたの。私は仕事上、色んな人に会うから、すぐに裏付けも取れると思うわよ」
「なっ!」
「えっ!?」
いや、そんな驚くことある?
こっちが確たる証拠を提示出来ることを示すと、途端にクフレスとジーナさんはあからさまなくらいに狼狽え出した。
なんて、脆い。
「何をどう勘違いされたか知りませんけど、とにかく私ではありませんから。早く近衛様なり、騎士様なりにご相談した方がよろしいと思いますよ。まぁ、本当に突き落とされてたらのお話ですけど」
これでもういいよね?
あー、時間無駄にしちゃった。夕刻までに東の宮と後宮にもお伺いしちゃいたかったのに。
うーん。スケジュール立て直さないと。とりあえず、お昼休みを少し削って──
早く図書館へ向かおうとしたら、後ろからぐいっと引っ張られた。
「待て!」
「みきゃっ!? ──って、ちょっと! 人の商売道具に何してくれてんの!?」
見ると、クフレスが私の鞄を引っ張って、引き止めて来る。この鞄の中にどれだけ大切なお手紙や書類が入ってると思ってるの!? そんな雑に扱っていいものじゃないんだけど!!!
私は反射的にクフレスを振り払って、鞄を両腕で抱え込む。中で紙同士が擦れ合う音がした。
まさか、今のでくしゃくしゃになったりしてないよね?
不安になっていると、元凶であるクフレスが言った。
「本当の本当の本当に行ってないのか? どうせ嘘だろう。だったら、今すぐここに証人を連れてこい。今すぐ!」
「はぁ!?」
クフレスは自棄でも起こしたのか、これまでに輪をかけて無茶苦茶を言ってくる。
「出来ないんですか? なら、やっぱり嘘ってことですよね? 証人なんていませんよね? 私が言った通りってことですよね? なら、ほら! 早く土下座して謝って下さい!」
どうしてそうなるの?
頭が痛い。
何でそんなに私に土下座させたいの?
そもそも、クフレスとジーナさんはどんな関係な訳。何で、婚約者の言い分を少しも信じようとしないの?
何か、気持ち悪くなってきた。
言葉の通じない異国の地に放り出されたような気分だ。怖くて、蹲りたくなる。
けど、そんなことしたくない。私、間違ってないもの。
胃がせり上がる感覚がして、思わず口元を塞ぐ。
何か、平衡感覚までなくなりそう。
ぐらり、と立ち眩みを起こして、後ろへと倒れそうになった。その時だった。
大きな手のひらに肩が包まれ、体が支えられる。
「いるよ。ここに」
あ、朝露の匂い。
しっとりと澄んだ香りと共に、穏やかで優しい声がした。
見上げると、そこには岩のような不動の安定感と花のような優美さと僅かな儚さを漂わせた男性が立っていた。
その人を見て、私は驚いた。
何で、この方がここに? グリーフ様が探しに行かれた筈なのに。そもそも、さっきは西の宮にいらっしゃったのに。
──そう。私を支えてくださったのは、第二王子・ヒース殿下。
お肌のきめ細やかさまで分かる程の至近距離。
そんな間近にある美しいご尊顔に目を奪われて放心していたけれど、我に返った途端に心臓が大変なことになった。
もうばっくばく!
何で、ここにヒース殿下がいらっしゃるの? グリーフ様は?
──というか、気のせいじゃありませんよね?
ヒース殿下、今頭上から降って来ましたよね!?
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