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第三話 そういうわけで、わたしのおにいさまなのです!
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話は十五年前に遡る。
わたし、シアラ・アンジェラはアンジェラ男爵家の七番目の子供として生を受けた。
けど、わたしがアンジェラ男爵家にいたのは、約五年ほどだ。
そのそれ以外の時間は、おししょー様の元でお勉強をしながら生活をしていた。そこにおにいさまも一緒にいたのだ。
何故、わたしが親元から離れて育ったかというと、それはわたしが生まれつき魔力が強すぎたからだそうだ。
王侯貴族は皆、多かれ少なかれ魔力を持った家系であり、魔法を使える人たち──魔行士だ。
普通は、王族や公爵家が一番魔力が強くて、爵位が下に行くほどに持っている魔力は弱まるらしい。魔力が強い者は相対的に大きな功績を残すから、高い爵位を与えられることが多いからだ。
だから、男爵家の娘であるわたしが持つ魔力は少しおかしい量だったらしい。
わたしには二人のお兄様と四人のお姉様たちがいて、六人も魔力は平均より高い方だが、わたしはその中でも突出していたと聞いた。
魔力を持つ人は、生まれつき体に魔力を持っているけれど、魔法が使えるようになるのは自我が芽生えてからだ。だから、普通は赤ちゃんは魔力を持っていても魔法は使えない。なのに、おかしなことにわたしは使えてしまったそうだ。
わたしの魔力の量は、赤ちゃんだったわたしの小さな体には多すぎたらしく、自然と体外に放出されていたらしい。そのせいか、わたしは赤ちゃんの時から魔法が使えたそうだ。記憶にはないけれど、時々物を飛ばしたり、風を起こしたり、泣いたりすると何もないところから突然炎や雷を出したこともあるそうだ。
それから成長するにつれ、魔法の発動の頻度や威力が上がっていき、このままではわたしを含めた家族の誰かが怪我をすると考えた両親は、わたしをとある人物に預けることにした。
それが、わたしとおにいさまのおししょー様。
濃霧山に住んでいる数少ない魔法使いの一人。
魔法を使う人は、魔行士と呼ばれるけれど、それ以外にも魔法使いと呼ばれる人たちがいる。
この人たちは魔行士とも違うとても特別な存在らしい。
魔法使いというのは、元々は古い時代に子供たちのために書かれた幻想本──お伽噺に出てくる存在で、桁外れの魔法で奇跡に等しい現象を起こせる人を指す。
現代でもそんな凄い魔法を使える人を魔法使いと呼んでいる。
なんと! わたしとおにいさまのおししょー様はそんなすごい人なのだ。
魔法使いは特別で、魔法使いたち自身もその力を一度振るえばどうなるかをよく理解している。
だから、魔法使いたちは人間社会から独立しており、どの国や組織にもまつろわず、ただひたすら魔の道を修めるために人里から離れた場所で暮らしている。
どういうわけか、わたしの両親はそんな魔法使いであるおししょー様とお友達だったらしい。
お父様とお母様はおししょー様にお願いして、わたしがちゃんと魔力を操れるようになるように教えてやってほしいとお願いした。
赤ちゃんの頃から魔法が使えたわたしは、これから成長して自我が固まっていっても無意識で魔法を暴走させる可能性があったからだ。
なので、わたしは四歳の時に家族から離れ、濃霧山のおししょー様の元で暮らすことになった。
そして、そこにはすでにわたしと似た経緯でおししょー様に預けられたおにいさまがいた。
それからはわたしとおにいさまとおししょー様の三人で、おししょー様に魔法を習いながら暮らしていたのだ。
その生活はおにいさまが十四歳になるまでの八年間続いた。だから、正確には一緒に育ったのは八年だけど、それからの一年間はお手紙でやり取りをしていたし、わたしも十四歳になって学園に入学するための準備をするためにアンジェラ男爵家に戻ってから学園に入学するまでの間は、濃霧山にいた頃みたいに遊んでくれていた。だから帰ってきてからもおにいさまとの交流は続いている。
とまぁ、わたしとおにいさまはこんな経緯で知り合った。
同じおししょー様の元でお勉強して育ったから、わたしとおにいさまは兄妹弟子の関係になる。
お互いに血の繋がった家族よりも長い時間一緒に暮らしてきた。だから、わたしたちはお互いを血は繋がってなくても本当の兄妹のように思っているし、おにいさまもわたしはずっとおにいさまの妹だって言ってくれた。王家もアンジェラ家も知っているし、今ではおにいさまは訪問予告がなくても、顔パスでもアンジェラ家の門を通れるくらいにわたしの家族とも仲がいい。
勿論、おにいさまは王子様という立場だし、アンジェラ男爵家に戻ってから学園に入学するまでの一年間は貴族社会のマナーやルールについてお勉強したから公の場では互いの身分に合った振る舞いをするけれど、それ以外の時は今までと変わらず兄妹として接している。
けれど、そのことを知っている人は多くない。
おにいさまと会うのは大体、おにいさまがアンジェラ家にくるという形だし、学園では学年が違うから一緒にいるのはお昼休みくらい。それも山の中で育ったからか人が多いところが好きじゃないおにいさまに合わせて裏庭の人通りの全くない秘密の穴場で過ごしているから、人に見られたことはない。
「どういう関係?」って訊かれたら答えるけど、いちいちおにいさまと兄妹ですって自己申告してる訳じゃないし。
ラリオ様が知らないのは、今までおにいさまと顔を合わせる機会がなかったから。
何度かラリオ様と仲良くなろうとおうちにご招待したけど、いつも忙しいとかで断られていたからなぁ。おにいさまが来てる時もあったし、その時に紹介しようと思ってたから、今までずっとラリオ様にはおにいさまのことを話せないでいた。
おにいさまにはラリオ様のことをお話ししていたけど、あまり一緒に過ごすことがなくですぐにお話しすることが無くなって困った。
あ、そういえば、ラリオ様と婚約してから一、二ヶ月くらいはおにいさまも色々とラリオ様と仲良くなれるようにアドバイスをしてくれてたけど、最近はめっきりなくなっちゃった。なんでだろ?
──でもまぁ、これでお話はおしまい。というわけで、おにいさまはわたしのおにいさまなのです!
この話を要約して伝えると、ラリオ様はすっごいびっくりした顔をして、何度もわたしとおにいさまの顔を見比べていた。
わたし、シアラ・アンジェラはアンジェラ男爵家の七番目の子供として生を受けた。
けど、わたしがアンジェラ男爵家にいたのは、約五年ほどだ。
そのそれ以外の時間は、おししょー様の元でお勉強をしながら生活をしていた。そこにおにいさまも一緒にいたのだ。
何故、わたしが親元から離れて育ったかというと、それはわたしが生まれつき魔力が強すぎたからだそうだ。
王侯貴族は皆、多かれ少なかれ魔力を持った家系であり、魔法を使える人たち──魔行士だ。
普通は、王族や公爵家が一番魔力が強くて、爵位が下に行くほどに持っている魔力は弱まるらしい。魔力が強い者は相対的に大きな功績を残すから、高い爵位を与えられることが多いからだ。
だから、男爵家の娘であるわたしが持つ魔力は少しおかしい量だったらしい。
わたしには二人のお兄様と四人のお姉様たちがいて、六人も魔力は平均より高い方だが、わたしはその中でも突出していたと聞いた。
魔力を持つ人は、生まれつき体に魔力を持っているけれど、魔法が使えるようになるのは自我が芽生えてからだ。だから、普通は赤ちゃんは魔力を持っていても魔法は使えない。なのに、おかしなことにわたしは使えてしまったそうだ。
わたしの魔力の量は、赤ちゃんだったわたしの小さな体には多すぎたらしく、自然と体外に放出されていたらしい。そのせいか、わたしは赤ちゃんの時から魔法が使えたそうだ。記憶にはないけれど、時々物を飛ばしたり、風を起こしたり、泣いたりすると何もないところから突然炎や雷を出したこともあるそうだ。
それから成長するにつれ、魔法の発動の頻度や威力が上がっていき、このままではわたしを含めた家族の誰かが怪我をすると考えた両親は、わたしをとある人物に預けることにした。
それが、わたしとおにいさまのおししょー様。
濃霧山に住んでいる数少ない魔法使いの一人。
魔法を使う人は、魔行士と呼ばれるけれど、それ以外にも魔法使いと呼ばれる人たちがいる。
この人たちは魔行士とも違うとても特別な存在らしい。
魔法使いというのは、元々は古い時代に子供たちのために書かれた幻想本──お伽噺に出てくる存在で、桁外れの魔法で奇跡に等しい現象を起こせる人を指す。
現代でもそんな凄い魔法を使える人を魔法使いと呼んでいる。
なんと! わたしとおにいさまのおししょー様はそんなすごい人なのだ。
魔法使いは特別で、魔法使いたち自身もその力を一度振るえばどうなるかをよく理解している。
だから、魔法使いたちは人間社会から独立しており、どの国や組織にもまつろわず、ただひたすら魔の道を修めるために人里から離れた場所で暮らしている。
どういうわけか、わたしの両親はそんな魔法使いであるおししょー様とお友達だったらしい。
お父様とお母様はおししょー様にお願いして、わたしがちゃんと魔力を操れるようになるように教えてやってほしいとお願いした。
赤ちゃんの頃から魔法が使えたわたしは、これから成長して自我が固まっていっても無意識で魔法を暴走させる可能性があったからだ。
なので、わたしは四歳の時に家族から離れ、濃霧山のおししょー様の元で暮らすことになった。
そして、そこにはすでにわたしと似た経緯でおししょー様に預けられたおにいさまがいた。
それからはわたしとおにいさまとおししょー様の三人で、おししょー様に魔法を習いながら暮らしていたのだ。
その生活はおにいさまが十四歳になるまでの八年間続いた。だから、正確には一緒に育ったのは八年だけど、それからの一年間はお手紙でやり取りをしていたし、わたしも十四歳になって学園に入学するための準備をするためにアンジェラ男爵家に戻ってから学園に入学するまでの間は、濃霧山にいた頃みたいに遊んでくれていた。だから帰ってきてからもおにいさまとの交流は続いている。
とまぁ、わたしとおにいさまはこんな経緯で知り合った。
同じおししょー様の元でお勉強して育ったから、わたしとおにいさまは兄妹弟子の関係になる。
お互いに血の繋がった家族よりも長い時間一緒に暮らしてきた。だから、わたしたちはお互いを血は繋がってなくても本当の兄妹のように思っているし、おにいさまもわたしはずっとおにいさまの妹だって言ってくれた。王家もアンジェラ家も知っているし、今ではおにいさまは訪問予告がなくても、顔パスでもアンジェラ家の門を通れるくらいにわたしの家族とも仲がいい。
勿論、おにいさまは王子様という立場だし、アンジェラ男爵家に戻ってから学園に入学するまでの一年間は貴族社会のマナーやルールについてお勉強したから公の場では互いの身分に合った振る舞いをするけれど、それ以外の時は今までと変わらず兄妹として接している。
けれど、そのことを知っている人は多くない。
おにいさまと会うのは大体、おにいさまがアンジェラ家にくるという形だし、学園では学年が違うから一緒にいるのはお昼休みくらい。それも山の中で育ったからか人が多いところが好きじゃないおにいさまに合わせて裏庭の人通りの全くない秘密の穴場で過ごしているから、人に見られたことはない。
「どういう関係?」って訊かれたら答えるけど、いちいちおにいさまと兄妹ですって自己申告してる訳じゃないし。
ラリオ様が知らないのは、今までおにいさまと顔を合わせる機会がなかったから。
何度かラリオ様と仲良くなろうとおうちにご招待したけど、いつも忙しいとかで断られていたからなぁ。おにいさまが来てる時もあったし、その時に紹介しようと思ってたから、今までずっとラリオ様にはおにいさまのことを話せないでいた。
おにいさまにはラリオ様のことをお話ししていたけど、あまり一緒に過ごすことがなくですぐにお話しすることが無くなって困った。
あ、そういえば、ラリオ様と婚約してから一、二ヶ月くらいはおにいさまも色々とラリオ様と仲良くなれるようにアドバイスをしてくれてたけど、最近はめっきりなくなっちゃった。なんでだろ?
──でもまぁ、これでお話はおしまい。というわけで、おにいさまはわたしのおにいさまなのです!
この話を要約して伝えると、ラリオ様はすっごいびっくりした顔をして、何度もわたしとおにいさまの顔を見比べていた。
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