20 / 20
第二十話 兄の友人
しおりを挟む
「アウグスト様、こんにちは。来てらしたんですね。お兄様にご用ですか?」
「おかえりー。うん、まぁね。ちょっと暫く仕事が忙しくなりそうでさ。暫く来れないから、色々話しとこうと思って」
にこやかに話す客人の名は、アウグスト・リーフィリア。
細く柔らかな緑がかった亜麻色の髪を腰まで伸ばし、髪と同じ色の睫毛で縁取られた瞳は深緑の色をしている。体格は長身痩躯ながらも、柳のようなしなやかな強さを感じる佇まいの青年だ。
そして、公爵家の中で唯一『植物』の魔力を継承するリーフィリア公爵家の令息でもある。
リーフィリア公爵家は、あのエルツィア・リーフディウスの生家であるリーフディウス伯爵家の本家でもあり、ある意味、レティシアがアレックスに話したヘンゼルとの「色々」の原因でもある。
とは言え、アウグスト自身は兄の友人であるため、レティシアとも親しい間柄だ。
そんなアウグストは、レティシアの兄に会うためにちょくちょくソルシェ侯爵家を訪れていた。こうして顔を会わせるのはよくあることだ。
「それはそれは、お気をつけて。お怪我なきようお祈りします」
「ありがとう」
「・・・・・・あの、ところでお兄様のご様子はいかがでしたか? 今日はまだお兄様と顔を合わせてなくて」
レティシアが訊ねる。
平静を装っているように見えて、瞳がそわそわしている。
レティシアにとって、アウグストと同い年の兄は家の中にいても外にいても気になる存在であり、常に心の片隅にある気掛かりでもあった。
「いつも通りだよ。俺には無反応だけれど、暫く来れない旨は伝えた。あいつは変わらないね」
そう言うアウグストの表情は悲しげなような、悔しげなような色で滲んでいた。
それはまるで、拭い去れない記憶の本のページを開いては心を痛めているようにレティシアには映った。
兄の友人であるアウグストと友人の妹であるレティシアには重ねた時間がある。その上で互いが何を思って今を過ごしているかに思いを馳せることもある。とは言え、どちらもそれを口にはしないが。
「そうですか。私も後でお顔を伺いに行ってきます」
「うん。レティシアちゃんが見ててくれてるなら安心して行けるよ。あいつにはもう、レティシアちゃんの声しか届かないからね」
刹那、レティシアの脳裏に炎に焼かれた光景が広がる。
その記憶の中では誰かが叫んでおり、誰かが泣いていた。
きっと生涯忘れ得ぬ光景を思い出せば心穏やかではないが、それでもレティシアは動揺を表に出すことはしない。
「・・・・・・そうですね」
けれど、僅かに出来た一拍にアウグストは目敏く気づき、レティシアの無表情な仮面の下の心情を思い、「しまった」という顔をした。
「ごめんね。そういうつもりじゃ・・・・・・レティシアちゃんの声が届いてるだけでも俺は──」
「大丈夫です。分かっておりますから」
何が、とは口に出さない。
それは二人の間でもまだ全然癒えぬ傷であるということは分かっていたから。
無理して取り繕ったような笑顔を浮かべるレティシアに、アウグストは胸が締めつけられるように痛んだが、これ以上言葉を重ねても余計に傷を抉ることになるのは分かっていたため、努めて明るい声で話題を変えることにした。
「うんうん! よろしくね! あ、そうだ。レティシアちゃんにも言っておこうと思ってたことがあったんだよ」
「何でしょう?」
「薬には気をつけて」
その声は酷く真剣だった。
まるで一瞬でも目を離せば我が身目掛けて襲いかかってくる業火を扱う時のように真面目な瞳で、アウグストはレティシアの目を見て警告する。
「薬・・・・・・ですか? 何の薬に気をつければいいのでしょう」
薬と一口に言っても種類は様々だ。傷薬や解熱剤は身近だし、医者に掛かれば処方される。まさかそこまでの範囲で警戒しろと言われてる訳ではないことはレティシアにも分かっていたが、アウグストが何の薬を差しているのかも分からなかった。
レティシアに問い返され、アウグストは答えようと開きかけた唇を閉ざす。
それから口元に手を当て、逡巡する素振りを見せると顔を上げて答えた。
「ごめん。今はまだ箝口令が敷かれているから詳細については答えられないんだ。けれど、一般の流通では間違いなく手に入らない。専門の売人がいるから、怪しい奴に気をつけてくれればいいから。何かあったらすぐに俺に連絡して」
「それはまた随分と穏やかではありませんね。暫く忙しくなるというのは、その件で?」
「うん。その元締めの捜索と殲滅の命を陛下から賜ったよ」
(捕縛ではなく殲滅令・・・・・・ということは、余程危険な薬物なんですね。陛下からの勅命で特務が動く程とは・・・・・・この国の裏側で何が起こっているのでしょう)
レティシアは暗がりから見えざる黒い手が伸びてくるのを感じ、ぞっと背中に冷たいものが広がる心地がした。
人の数だけ影が生まれる。その影で出来た闇の社会と薬の関係は根深い。そういったところで危険な薬物が売買され、時として無辜の民が悪人の餌食になっていることは知っていたが、こうやって知り合いの口から聞かされるとそれが遠い世界の話ではないことを強く実感した。
薬効についても気にはなったが、アウグストが箝口令が敷かれていると言った以上、無関係な自分が知る術はないだろうと知ることは諦めた。
(けれど、特務が動くのであれば、すぐに解決するでしょうね)
レティシアは不安を払い除けるように信頼の灯った視線をアウグストへ向ける。
アウグストは王宮の中にあっても特別な特務と呼ばれる陛下直轄の部署に所属している。その特務は騎士団や警邏隊では手に余る国の危機を解決する命を陛下から受け、事態の解決に死力を尽くす優れた魔力持ちたちがいるところだ。
かつてテスタライズ王国を襲った『キメラ軍隊』や『凋落の黄昏同盟』、『深淵事変』に『落天法陣事件』──そして国家存亡の危機に王手を掛けた『真紅の三日間』。それらを解決に導いた英雄的存在。
そして、レティシアは彼らの実力を誰よりも知っていた。今回も彼らが必ず何とかしてくれるだろうという確固たる信頼がある。
だから、日常は続く。そう信じているレティシアは笑ってアウグストへ向き合った。
「分かりました。薬の件、重々気をつけます。アウグスト様もご武運を」
「うん」
この信頼を裏切ってはいけないとアウグストは思った。
(もう、戦えるのは俺しかいないんだから。レティシアちゃんを安心させるためにも、あいつらのためにも速攻片して朗報を土産にまたここに来よう)
アウグストの脳裏に浮かぶのは在りし日の赤い夕日に浮かぶ三つの影。
二度と実現しない景色を胸に、アウグストは戦場へ赴く。
けれど、レティシアにその臭いを知って欲しくないアウグストはレティシアの前では笑って気楽に振る舞う。まるで日常の延長線上のように。
「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。時間にうるさい同僚が出来てさ」
その覚悟も惨劇も、無垢な少女に知られないように。
「はい。次のお越しをお待ちしております」
「うん。お土産持ってくるね」
手を振って去ろうとするアウグストの背を見送ろうとした時、レティシアはふと昼のことを思い出し、アウグストの足を止めた。
伝えるかどうか迷ったが、一応アウグストも全く無関係ではないから、言っておいた方がいいと思ったのだ。
「アウグスト様」
「何?」
アウグストが振り返る。
「そう言えば、今日のお昼に学園でヘンゼル様にお会いしました」
「・・・・・・そう。どんな様子だった?」
「お変わりありませんでしたよ」
エルツィア様の大樹に口づけておりました。とはアウグストには言わなかった。部外者のアレックスと違い、アウグストはエルツィアともヘンゼルともそれなりの交流があった。エルツィア亡き後も亡霊に心を捧げているヘンゼルのことを公爵家の人間としてアウグストがどう思っているのか分からないが、アウグストが初めて兄に会いに来た時の理由を考えれば現状を良しとしていることはないと思ったからだ。
とは言え、変わりないと言うだけで大体伝わるだろうが。
アウグストがその名を聞いて思い出すのは自分を「お兄様」と呼んでいた分家の少女の顔と、先日のとある一件。
(あいつにもいい加減一歩踏み込んで貰わないとランジュバル伯爵家の立場も危うくなるぞ)
ヘンゼルは今は言わば、王命に逆らい続けている状態。それは王家からしてみれば喜ばしいことでは決してない。そして、王家から目をつけられれば他の貴族たちからの目も変わる。
下手に婚約を進めれば自禍中毒の危険性があるのは分かっているが、いつまでもこのままにして置けないのも確かだ。
先日、事を急いたランジュバル伯爵家の人間のやらかしとそれに対するヘンゼルの反応を思い出したアウグストは、ランジュバル伯爵家の未来を案じた。ヘンゼルの現状はかつての恋人の親族としても、貴族たちを牽引していく公爵家の人間としても放って置けない。
(とは言え、俺は悲しき公僕。任務が最優先だからなー。まぁ、帰ったらヘンゼルを飲みにでも誘ってやるか。俺もそこそこ嫌われてるけど、エルツィアの思い出話で釣ればくるだろ)
「教えてくれてありがとう。またね」
「はい」
ヘンゼルをどうやって誘き出すかの奸計を張り巡らせながら、アウグストは爽やかな笑みでレティシアに挨拶をしてソルシェ侯爵邸を後にした。
「おかえりー。うん、まぁね。ちょっと暫く仕事が忙しくなりそうでさ。暫く来れないから、色々話しとこうと思って」
にこやかに話す客人の名は、アウグスト・リーフィリア。
細く柔らかな緑がかった亜麻色の髪を腰まで伸ばし、髪と同じ色の睫毛で縁取られた瞳は深緑の色をしている。体格は長身痩躯ながらも、柳のようなしなやかな強さを感じる佇まいの青年だ。
そして、公爵家の中で唯一『植物』の魔力を継承するリーフィリア公爵家の令息でもある。
リーフィリア公爵家は、あのエルツィア・リーフディウスの生家であるリーフディウス伯爵家の本家でもあり、ある意味、レティシアがアレックスに話したヘンゼルとの「色々」の原因でもある。
とは言え、アウグスト自身は兄の友人であるため、レティシアとも親しい間柄だ。
そんなアウグストは、レティシアの兄に会うためにちょくちょくソルシェ侯爵家を訪れていた。こうして顔を会わせるのはよくあることだ。
「それはそれは、お気をつけて。お怪我なきようお祈りします」
「ありがとう」
「・・・・・・あの、ところでお兄様のご様子はいかがでしたか? 今日はまだお兄様と顔を合わせてなくて」
レティシアが訊ねる。
平静を装っているように見えて、瞳がそわそわしている。
レティシアにとって、アウグストと同い年の兄は家の中にいても外にいても気になる存在であり、常に心の片隅にある気掛かりでもあった。
「いつも通りだよ。俺には無反応だけれど、暫く来れない旨は伝えた。あいつは変わらないね」
そう言うアウグストの表情は悲しげなような、悔しげなような色で滲んでいた。
それはまるで、拭い去れない記憶の本のページを開いては心を痛めているようにレティシアには映った。
兄の友人であるアウグストと友人の妹であるレティシアには重ねた時間がある。その上で互いが何を思って今を過ごしているかに思いを馳せることもある。とは言え、どちらもそれを口にはしないが。
「そうですか。私も後でお顔を伺いに行ってきます」
「うん。レティシアちゃんが見ててくれてるなら安心して行けるよ。あいつにはもう、レティシアちゃんの声しか届かないからね」
刹那、レティシアの脳裏に炎に焼かれた光景が広がる。
その記憶の中では誰かが叫んでおり、誰かが泣いていた。
きっと生涯忘れ得ぬ光景を思い出せば心穏やかではないが、それでもレティシアは動揺を表に出すことはしない。
「・・・・・・そうですね」
けれど、僅かに出来た一拍にアウグストは目敏く気づき、レティシアの無表情な仮面の下の心情を思い、「しまった」という顔をした。
「ごめんね。そういうつもりじゃ・・・・・・レティシアちゃんの声が届いてるだけでも俺は──」
「大丈夫です。分かっておりますから」
何が、とは口に出さない。
それは二人の間でもまだ全然癒えぬ傷であるということは分かっていたから。
無理して取り繕ったような笑顔を浮かべるレティシアに、アウグストは胸が締めつけられるように痛んだが、これ以上言葉を重ねても余計に傷を抉ることになるのは分かっていたため、努めて明るい声で話題を変えることにした。
「うんうん! よろしくね! あ、そうだ。レティシアちゃんにも言っておこうと思ってたことがあったんだよ」
「何でしょう?」
「薬には気をつけて」
その声は酷く真剣だった。
まるで一瞬でも目を離せば我が身目掛けて襲いかかってくる業火を扱う時のように真面目な瞳で、アウグストはレティシアの目を見て警告する。
「薬・・・・・・ですか? 何の薬に気をつければいいのでしょう」
薬と一口に言っても種類は様々だ。傷薬や解熱剤は身近だし、医者に掛かれば処方される。まさかそこまでの範囲で警戒しろと言われてる訳ではないことはレティシアにも分かっていたが、アウグストが何の薬を差しているのかも分からなかった。
レティシアに問い返され、アウグストは答えようと開きかけた唇を閉ざす。
それから口元に手を当て、逡巡する素振りを見せると顔を上げて答えた。
「ごめん。今はまだ箝口令が敷かれているから詳細については答えられないんだ。けれど、一般の流通では間違いなく手に入らない。専門の売人がいるから、怪しい奴に気をつけてくれればいいから。何かあったらすぐに俺に連絡して」
「それはまた随分と穏やかではありませんね。暫く忙しくなるというのは、その件で?」
「うん。その元締めの捜索と殲滅の命を陛下から賜ったよ」
(捕縛ではなく殲滅令・・・・・・ということは、余程危険な薬物なんですね。陛下からの勅命で特務が動く程とは・・・・・・この国の裏側で何が起こっているのでしょう)
レティシアは暗がりから見えざる黒い手が伸びてくるのを感じ、ぞっと背中に冷たいものが広がる心地がした。
人の数だけ影が生まれる。その影で出来た闇の社会と薬の関係は根深い。そういったところで危険な薬物が売買され、時として無辜の民が悪人の餌食になっていることは知っていたが、こうやって知り合いの口から聞かされるとそれが遠い世界の話ではないことを強く実感した。
薬効についても気にはなったが、アウグストが箝口令が敷かれていると言った以上、無関係な自分が知る術はないだろうと知ることは諦めた。
(けれど、特務が動くのであれば、すぐに解決するでしょうね)
レティシアは不安を払い除けるように信頼の灯った視線をアウグストへ向ける。
アウグストは王宮の中にあっても特別な特務と呼ばれる陛下直轄の部署に所属している。その特務は騎士団や警邏隊では手に余る国の危機を解決する命を陛下から受け、事態の解決に死力を尽くす優れた魔力持ちたちがいるところだ。
かつてテスタライズ王国を襲った『キメラ軍隊』や『凋落の黄昏同盟』、『深淵事変』に『落天法陣事件』──そして国家存亡の危機に王手を掛けた『真紅の三日間』。それらを解決に導いた英雄的存在。
そして、レティシアは彼らの実力を誰よりも知っていた。今回も彼らが必ず何とかしてくれるだろうという確固たる信頼がある。
だから、日常は続く。そう信じているレティシアは笑ってアウグストへ向き合った。
「分かりました。薬の件、重々気をつけます。アウグスト様もご武運を」
「うん」
この信頼を裏切ってはいけないとアウグストは思った。
(もう、戦えるのは俺しかいないんだから。レティシアちゃんを安心させるためにも、あいつらのためにも速攻片して朗報を土産にまたここに来よう)
アウグストの脳裏に浮かぶのは在りし日の赤い夕日に浮かぶ三つの影。
二度と実現しない景色を胸に、アウグストは戦場へ赴く。
けれど、レティシアにその臭いを知って欲しくないアウグストはレティシアの前では笑って気楽に振る舞う。まるで日常の延長線上のように。
「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。時間にうるさい同僚が出来てさ」
その覚悟も惨劇も、無垢な少女に知られないように。
「はい。次のお越しをお待ちしております」
「うん。お土産持ってくるね」
手を振って去ろうとするアウグストの背を見送ろうとした時、レティシアはふと昼のことを思い出し、アウグストの足を止めた。
伝えるかどうか迷ったが、一応アウグストも全く無関係ではないから、言っておいた方がいいと思ったのだ。
「アウグスト様」
「何?」
アウグストが振り返る。
「そう言えば、今日のお昼に学園でヘンゼル様にお会いしました」
「・・・・・・そう。どんな様子だった?」
「お変わりありませんでしたよ」
エルツィア様の大樹に口づけておりました。とはアウグストには言わなかった。部外者のアレックスと違い、アウグストはエルツィアともヘンゼルともそれなりの交流があった。エルツィア亡き後も亡霊に心を捧げているヘンゼルのことを公爵家の人間としてアウグストがどう思っているのか分からないが、アウグストが初めて兄に会いに来た時の理由を考えれば現状を良しとしていることはないと思ったからだ。
とは言え、変わりないと言うだけで大体伝わるだろうが。
アウグストがその名を聞いて思い出すのは自分を「お兄様」と呼んでいた分家の少女の顔と、先日のとある一件。
(あいつにもいい加減一歩踏み込んで貰わないとランジュバル伯爵家の立場も危うくなるぞ)
ヘンゼルは今は言わば、王命に逆らい続けている状態。それは王家からしてみれば喜ばしいことでは決してない。そして、王家から目をつけられれば他の貴族たちからの目も変わる。
下手に婚約を進めれば自禍中毒の危険性があるのは分かっているが、いつまでもこのままにして置けないのも確かだ。
先日、事を急いたランジュバル伯爵家の人間のやらかしとそれに対するヘンゼルの反応を思い出したアウグストは、ランジュバル伯爵家の未来を案じた。ヘンゼルの現状はかつての恋人の親族としても、貴族たちを牽引していく公爵家の人間としても放って置けない。
(とは言え、俺は悲しき公僕。任務が最優先だからなー。まぁ、帰ったらヘンゼルを飲みにでも誘ってやるか。俺もそこそこ嫌われてるけど、エルツィアの思い出話で釣ればくるだろ)
「教えてくれてありがとう。またね」
「はい」
ヘンゼルをどうやって誘き出すかの奸計を張り巡らせながら、アウグストは爽やかな笑みでレティシアに挨拶をしてソルシェ侯爵邸を後にした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる