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第一章 赤い糸は切れていませんでした。
第二話 愉快な平民クラスのD組
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テイルが小悪魔的な「男の子だよ?」発言をかますと、クラスは恒例の阿鼻叫喚となった。主に男子が。
「う、うわぁあああ────!!!」
「やめてぇ! 俺の夢を壊さないでくれぇ!」
「こんな可愛い子が男なんてぇええええ」
「頼むからお前は俺らの永遠の妖精でいてくれ!」
「アハハハ、ナニイッテルノ? ヨウセイニ、セイベツハナインダヨー」
男子たちが天を仰ぐようにテイルの前で膝をつき、号泣する。
初日から定期的に見る光景だ。
男子たちはテイルに関して「こんな可愛い子が俺たちと同じ男なわけないだろ!」という自己暗示のようなものをしており、今は満場一致でテイルは性別不詳ということになっている。
知人曰く、「テイル君は妖精だから性別ないんだって~」らしい。ここまで来るとある意味怖い。
泣き叫ぶ男子の脇では女子たちが避難していた。最初は皆、男子たちの取り乱しっぷりに困惑していたが、もう慣れたようで、それぞれ呆れたり、全く気にせず女子同士でお喋りしたりしている。
一部、複雑そうな顔をする女子や男子と同じ反応をしている女子もいるけど。
そんなクラスを地獄絵図にした張本人であるテイルは天使の微笑みを絶やすことなく、にこにこしている。しかし、私の目には悪魔の角と尻尾が見えた。ああ、完全に楽しんでるなぁ、テイル。
「みんな、おもしろいねぇ。おもしろい人はだぁい好き」
テイルは天使の「だぁい好き」を繰り出した。効果は抜群だ。
「ぐはっ!」
「可愛すぎる!」
「テイルきゅん・・・・・・」
威力があまりにも強すぎたのか、一部女子を含む男子生徒たちが地に伏した。まるで屍のよう。
「お前、相変わらずだな・・・・・・」
ある意味こうなる原因を作った赤髪の男子生徒がおっかなそうにテイルを見て言った。
「えー? なんの事?」
よく分かんないといった風にテイルが小首を傾げる。この仕草があざとさなく出来てしまうあたりが怖い。けど、可愛い。可愛いから許されてしまう。うん、可愛いは正義だものね。
「ワー、テイルハカワイイナー」
そう棒読みで言った赤髪の青年・カイはどこか遠くを見つめていた。
カイと並んでいるとテイルがより小さく見える。
真っ赤な髪とそれよりも濃い紅の瞳をしたカイは同学年の中でも背が高い。隣に並んだ感じだと、今の未央さんより数センチくらい高い気がする。
「カイー、戻って来て」
「別にどこにも行ってないけど?」
「いや、どこかに行ってたでしょ」
中身が。
まぁ、カイは入学早々テイルに黒歴史を植え込まれたから仕方ないかもしれないけど。
初日の授業を思い出して思わず吹き出しそうになり、唇を噛んで耐える。
「そういや、エリー。お前、どこ行ってたんだ? 変な方向から校舎に戻るの見たんだけど」
ぎくり。
「ああ、そういえばエリーちゃんって時々お昼休みとかにいなくなるよね。どこに行ってるの?」
ぎくぎくり!
テイルとカイの何気ない疑問に心臓が縮む。
落ち着け、私。これくらいの質問は計算の範囲内でしょ! でも、不意打ちは心臓に悪いです。
「一人になりたい時にぴったりの場所よ。だから秘密なの。ごめんね?」
「「ふーん」」
予め用意していた答えを言うと、二人はあまり興味がなかったのか、それ以上は追及して来なかった。
私は別に協調性がないわけでもなく、皆といるのも好きだけど、一人でいても別に平気な質だ。だから時折一人でふらふらしているし、クラスも皆もそれは知っている。日頃の行いから納得してもらえたのだろう。
私が密かにほっと胸を撫で下ろしていると、担任のライネス先生がやって来た。
「こらー、お前たち、もうとっくに本鈴がなったぞ。席に着けー」
「「「はーい」」」
元気よく返事をして、皆が各々の席に着く。
このクラスのノリの良さは平民クラスらしさだと思う。
サムレア魔法学園では学年ごとにAからDまでのクラスが存在する。
A組とB組は王侯貴族の所属するクラスであり、C組とD組は平民の所属するクラスである。前者は貴族クラス、後者は平民クラスという俗称で呼ばれている。
これはトラブル防止の為のクラス分けであり、差別的な意味合いはない。実際、貴族クラスや平民クラスでの合同授業などもあるし、当然、差別的な態度は懲罰の対象になる。
そもそも、何故貴族と平民が同じ学舎で学んでいるのか。
それは単に魔法を使える人間が少ないからである。
未央さんが王子を務めるこのアルトレム王国では魔法を使える者はサムレア魔法学園で学ぶことが義務づけられている。前の世界でいうところの義務教育のようなものだ。
しかし、魔法を使える者が少なければ、当然、教えられる者も少ない。魔法教育は慢性的な人材不足に陥っている。
そのため、魔力持ちは必然的にこのサムレア魔法学園に身分問わずに集められるという訳だ。
私的には未央さんと同じ空間にいられてラッキーだけど。
午後の最初の授業はライネス先生の座学だ。
私は野望の為にしっかり勉強をしなくてはいけない。だから真面目に黒板の内容をノートに写し始めた。
「う、うわぁあああ────!!!」
「やめてぇ! 俺の夢を壊さないでくれぇ!」
「こんな可愛い子が男なんてぇええええ」
「頼むからお前は俺らの永遠の妖精でいてくれ!」
「アハハハ、ナニイッテルノ? ヨウセイニ、セイベツハナインダヨー」
男子たちが天を仰ぐようにテイルの前で膝をつき、号泣する。
初日から定期的に見る光景だ。
男子たちはテイルに関して「こんな可愛い子が俺たちと同じ男なわけないだろ!」という自己暗示のようなものをしており、今は満場一致でテイルは性別不詳ということになっている。
知人曰く、「テイル君は妖精だから性別ないんだって~」らしい。ここまで来るとある意味怖い。
泣き叫ぶ男子の脇では女子たちが避難していた。最初は皆、男子たちの取り乱しっぷりに困惑していたが、もう慣れたようで、それぞれ呆れたり、全く気にせず女子同士でお喋りしたりしている。
一部、複雑そうな顔をする女子や男子と同じ反応をしている女子もいるけど。
そんなクラスを地獄絵図にした張本人であるテイルは天使の微笑みを絶やすことなく、にこにこしている。しかし、私の目には悪魔の角と尻尾が見えた。ああ、完全に楽しんでるなぁ、テイル。
「みんな、おもしろいねぇ。おもしろい人はだぁい好き」
テイルは天使の「だぁい好き」を繰り出した。効果は抜群だ。
「ぐはっ!」
「可愛すぎる!」
「テイルきゅん・・・・・・」
威力があまりにも強すぎたのか、一部女子を含む男子生徒たちが地に伏した。まるで屍のよう。
「お前、相変わらずだな・・・・・・」
ある意味こうなる原因を作った赤髪の男子生徒がおっかなそうにテイルを見て言った。
「えー? なんの事?」
よく分かんないといった風にテイルが小首を傾げる。この仕草があざとさなく出来てしまうあたりが怖い。けど、可愛い。可愛いから許されてしまう。うん、可愛いは正義だものね。
「ワー、テイルハカワイイナー」
そう棒読みで言った赤髪の青年・カイはどこか遠くを見つめていた。
カイと並んでいるとテイルがより小さく見える。
真っ赤な髪とそれよりも濃い紅の瞳をしたカイは同学年の中でも背が高い。隣に並んだ感じだと、今の未央さんより数センチくらい高い気がする。
「カイー、戻って来て」
「別にどこにも行ってないけど?」
「いや、どこかに行ってたでしょ」
中身が。
まぁ、カイは入学早々テイルに黒歴史を植え込まれたから仕方ないかもしれないけど。
初日の授業を思い出して思わず吹き出しそうになり、唇を噛んで耐える。
「そういや、エリー。お前、どこ行ってたんだ? 変な方向から校舎に戻るの見たんだけど」
ぎくり。
「ああ、そういえばエリーちゃんって時々お昼休みとかにいなくなるよね。どこに行ってるの?」
ぎくぎくり!
テイルとカイの何気ない疑問に心臓が縮む。
落ち着け、私。これくらいの質問は計算の範囲内でしょ! でも、不意打ちは心臓に悪いです。
「一人になりたい時にぴったりの場所よ。だから秘密なの。ごめんね?」
「「ふーん」」
予め用意していた答えを言うと、二人はあまり興味がなかったのか、それ以上は追及して来なかった。
私は別に協調性がないわけでもなく、皆といるのも好きだけど、一人でいても別に平気な質だ。だから時折一人でふらふらしているし、クラスも皆もそれは知っている。日頃の行いから納得してもらえたのだろう。
私が密かにほっと胸を撫で下ろしていると、担任のライネス先生がやって来た。
「こらー、お前たち、もうとっくに本鈴がなったぞ。席に着けー」
「「「はーい」」」
元気よく返事をして、皆が各々の席に着く。
このクラスのノリの良さは平民クラスらしさだと思う。
サムレア魔法学園では学年ごとにAからDまでのクラスが存在する。
A組とB組は王侯貴族の所属するクラスであり、C組とD組は平民の所属するクラスである。前者は貴族クラス、後者は平民クラスという俗称で呼ばれている。
これはトラブル防止の為のクラス分けであり、差別的な意味合いはない。実際、貴族クラスや平民クラスでの合同授業などもあるし、当然、差別的な態度は懲罰の対象になる。
そもそも、何故貴族と平民が同じ学舎で学んでいるのか。
それは単に魔法を使える人間が少ないからである。
未央さんが王子を務めるこのアルトレム王国では魔法を使える者はサムレア魔法学園で学ぶことが義務づけられている。前の世界でいうところの義務教育のようなものだ。
しかし、魔法を使える者が少なければ、当然、教えられる者も少ない。魔法教育は慢性的な人材不足に陥っている。
そのため、魔力持ちは必然的にこのサムレア魔法学園に身分問わずに集められるという訳だ。
私的には未央さんと同じ空間にいられてラッキーだけど。
午後の最初の授業はライネス先生の座学だ。
私は野望の為にしっかり勉強をしなくてはいけない。だから真面目に黒板の内容をノートに写し始めた。
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