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本編
第一話 花たちと悪風
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私の名前はアルメリア・ツルーネ。
今日は王宮のパーティーに参加しております。
優雅な宮廷音楽が奏でられる中、私は人波を縫ってとある人物を探しておりました。
「おっ、いたいた。アルメリア!」
「ライラック!」
探していた人物が人垣の間からこちらへ向かって手を振っているのが見えたので、私は久しぶりの対面に足取り軽くライラックの元へ向かいました。
「久しぶりだな、アルメリア。元気にしてたか?」
「うん、ライラックも元気そうでよかった。公爵家の方はどう?」
「変わりないよ。皆、元気にやってる」
ライラックはこの国の筆頭公爵家であるシアーガーデン公爵家の跡取り息子で、最近は特に忙しいようでなかなか会うことが出来ていませんでした。
それでもこうして元気そうな顔を見られてほっとします。
それからは互いの最近の出来事を話しながら、楽しく過ごしました。
喉に渇きを感じるほどの時間が過ぎた頃、それは起こりました。
「アルメリア・ツルーネ! お前との婚約は破棄する!」
背後から撃たれるように唐突に、名指しでそう言われました。
驚いて振り返ると、そこには婚約者であるホータラン侯爵家のご子息、グジル様でした。
……私は今、何を言われたのでしょう……? 婚約破棄……?
「────は?」
地を這うような低い声が漏れました。私の口から、ではなくライラックの口から。
さっきまで楽しそうな顔をしていたというのに、ライラックの顔は今や目元に影が差し、怖い目でグジル様を睨みつけています。
即座に臨戦態勢に入ったライラックとは対照的に、私は状況が飲み込めず目をぱちくりさせることしか出来ませんでした。
困惑の渦に飲み込まれたまま、視界の端にパーティーの参加の姿が見え、ここがパーティー会場であることを思い出しました。
婚約破棄の理由より、何故この場所で、という疑問の方が浮かんだまま私はしばしその場で茫然としてしまいました。
「えっと……グジル様、その話は帰ってから致しませんか?」
とにかくパーティー中の王宮でこの話は不味いと脳が警告しているため、場所を改めてすることを提案しました。
「いいや、この場でなくてはダメだ。何故なら、俺は今日、この場で婚約発表をするのだからな!」
「「……………………は?」」
今度は声が重なりました。流石私とライラック。息ぴったりです。いえ、それどこではありませんね。
「グジル様、その……私の記憶違いでなければ、すでに婚約発表は済ませているはずですが」
グジル様の仰っている婚約発表が私とグジル様のことを指すものではないことはなんとなくわかっておりましたが、もうそう言うしかありませんでした。
例え、その一言で決定的な言葉が返ってくると予測出来ても、暴走した馬車がどこかにぶつかるまで止まれないように、なりゆきに身を任せることしか出来ません。
そして、決定的な言葉は放たれました。
「この場で婚約破棄すると言った相手との婚約発表をするわけないだろう。俺が言っている相手はリマリーのことだ」
今日は王宮のパーティーに参加しております。
優雅な宮廷音楽が奏でられる中、私は人波を縫ってとある人物を探しておりました。
「おっ、いたいた。アルメリア!」
「ライラック!」
探していた人物が人垣の間からこちらへ向かって手を振っているのが見えたので、私は久しぶりの対面に足取り軽くライラックの元へ向かいました。
「久しぶりだな、アルメリア。元気にしてたか?」
「うん、ライラックも元気そうでよかった。公爵家の方はどう?」
「変わりないよ。皆、元気にやってる」
ライラックはこの国の筆頭公爵家であるシアーガーデン公爵家の跡取り息子で、最近は特に忙しいようでなかなか会うことが出来ていませんでした。
それでもこうして元気そうな顔を見られてほっとします。
それからは互いの最近の出来事を話しながら、楽しく過ごしました。
喉に渇きを感じるほどの時間が過ぎた頃、それは起こりました。
「アルメリア・ツルーネ! お前との婚約は破棄する!」
背後から撃たれるように唐突に、名指しでそう言われました。
驚いて振り返ると、そこには婚約者であるホータラン侯爵家のご子息、グジル様でした。
……私は今、何を言われたのでしょう……? 婚約破棄……?
「────は?」
地を這うような低い声が漏れました。私の口から、ではなくライラックの口から。
さっきまで楽しそうな顔をしていたというのに、ライラックの顔は今や目元に影が差し、怖い目でグジル様を睨みつけています。
即座に臨戦態勢に入ったライラックとは対照的に、私は状況が飲み込めず目をぱちくりさせることしか出来ませんでした。
困惑の渦に飲み込まれたまま、視界の端にパーティーの参加の姿が見え、ここがパーティー会場であることを思い出しました。
婚約破棄の理由より、何故この場所で、という疑問の方が浮かんだまま私はしばしその場で茫然としてしまいました。
「えっと……グジル様、その話は帰ってから致しませんか?」
とにかくパーティー中の王宮でこの話は不味いと脳が警告しているため、場所を改めてすることを提案しました。
「いいや、この場でなくてはダメだ。何故なら、俺は今日、この場で婚約発表をするのだからな!」
「「……………………は?」」
今度は声が重なりました。流石私とライラック。息ぴったりです。いえ、それどこではありませんね。
「グジル様、その……私の記憶違いでなければ、すでに婚約発表は済ませているはずですが」
グジル様の仰っている婚約発表が私とグジル様のことを指すものではないことはなんとなくわかっておりましたが、もうそう言うしかありませんでした。
例え、その一言で決定的な言葉が返ってくると予測出来ても、暴走した馬車がどこかにぶつかるまで止まれないように、なりゆきに身を任せることしか出来ません。
そして、決定的な言葉は放たれました。
「この場で婚約破棄すると言った相手との婚約発表をするわけないだろう。俺が言っている相手はリマリーのことだ」
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