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7,弟王子は兄王子からの苦言を受け流す
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「ソウ」
デートを中断した日の翌日、王宮へ招いたサキを自室へ連れていく途中で、ソウは名前を呼ばれ、足を止めた。
ソウを呼び止めたのは、ソウの兄であり、王太子でもある第一王子のシンだった。
「兄上、何の用ですか?」
ソウはいつも通りに振る舞い、サキは冷徹な顔をしているシンを怖がってか、ソウの服を掴み、その背中に隠れた。
シンは観察するようにサキを見たが、すぐに興味を失ったように視線をソウへと戻し、訊ねる。
「一体何を考えている?」
「何を、とは?」
ソウはことりと首を傾げ、聞き返す。
とぼけるような仕草にシンは目を細め、冷めた表情をソウへ向ける。
「どういうつもりで、カタリとの婚約を破棄したかと訊いている」
「そのことですか。どういうも何も、仔細はすでに兄上の耳にも入っていると思いますが」
ソウは優美に微笑み、淀みなく答える。その顔にも声音にも、自身に非があるとは思っていないものだった。
「お前の後ろにいるその娘は平民のようだが、お前が身辺調査を不要だと止めさせたと訊いたが?」
「ええ。だって無意味でしょう? サキを疑う必要などないのですから」
「・・・・・・」
その態度に、シンはしばし黙り込み、考え込む仕草をしてから言った。
「あまり馬鹿な真似はするんじゃない」
「しませんよ。兄上、俺はいつだって俺の信じる正しい道を選んでおります」
それを聞くと、シンの顔はますます険しい顔になる。その表情は少し、昨日のカタリと街角で出くわした時のソウに似ていた。
何を言っても無駄だと悟ったのか、シンは小さくため息を吐くと、
「・・・・・・なら、好きにしろ」
それはソウを見切るような台詞だったが、気づいてないのか、或いは気にしていないのか。
「はい。そうします」
ソウは笑って頷き、いまだ背後に隠れているサキへと振り向いた。
「こんなところで立ち止まらせて悪かったな。さぁ、行こうか」
「は、はい」
サキの肩を抱いたソウは、兄のことなどもう気に止めずに歩き出す。
シンはその背を見つめるだけで、ただ静かに自室へ向かう弟を見送った。
「はぁ。びっくりしました」
少し歩いて、サキは獣から逃れたように安堵の息を溢して言った。
「まさか、兄上に会うとはな」
「やはりシン王子は私のことがお気に召さないのでしょうか・・・・・・」
「サキ・・・・・・大丈夫だ。兄上はああ見えて、とても情が深く、優しい方だ。きっといずれわかってくれるさ」
悲しそうなサキの頭を撫でて、ソウは慰める。
「そうでしょうか?」
「ああ。すぐに」
「でも、とても恐ろしい方でした」
シンの冷たい視線を思い出したのか、サキはぶるりと身震いする。
「そんなことはない。兄上はああ見えて、可愛いところもあるしな」
「え?」
信じられないことを訊いたような顔を上げたサキの手を握り、引く。
「今はそんなことはいいじゃないか。早く部屋に行こう。早く二人きりになりたい」
「──私もです」
頬を赤らめたサキを連れ、ソウは足早に自室へと
デートを中断した日の翌日、王宮へ招いたサキを自室へ連れていく途中で、ソウは名前を呼ばれ、足を止めた。
ソウを呼び止めたのは、ソウの兄であり、王太子でもある第一王子のシンだった。
「兄上、何の用ですか?」
ソウはいつも通りに振る舞い、サキは冷徹な顔をしているシンを怖がってか、ソウの服を掴み、その背中に隠れた。
シンは観察するようにサキを見たが、すぐに興味を失ったように視線をソウへと戻し、訊ねる。
「一体何を考えている?」
「何を、とは?」
ソウはことりと首を傾げ、聞き返す。
とぼけるような仕草にシンは目を細め、冷めた表情をソウへ向ける。
「どういうつもりで、カタリとの婚約を破棄したかと訊いている」
「そのことですか。どういうも何も、仔細はすでに兄上の耳にも入っていると思いますが」
ソウは優美に微笑み、淀みなく答える。その顔にも声音にも、自身に非があるとは思っていないものだった。
「お前の後ろにいるその娘は平民のようだが、お前が身辺調査を不要だと止めさせたと訊いたが?」
「ええ。だって無意味でしょう? サキを疑う必要などないのですから」
「・・・・・・」
その態度に、シンはしばし黙り込み、考え込む仕草をしてから言った。
「あまり馬鹿な真似はするんじゃない」
「しませんよ。兄上、俺はいつだって俺の信じる正しい道を選んでおります」
それを聞くと、シンの顔はますます険しい顔になる。その表情は少し、昨日のカタリと街角で出くわした時のソウに似ていた。
何を言っても無駄だと悟ったのか、シンは小さくため息を吐くと、
「・・・・・・なら、好きにしろ」
それはソウを見切るような台詞だったが、気づいてないのか、或いは気にしていないのか。
「はい。そうします」
ソウは笑って頷き、いまだ背後に隠れているサキへと振り向いた。
「こんなところで立ち止まらせて悪かったな。さぁ、行こうか」
「は、はい」
サキの肩を抱いたソウは、兄のことなどもう気に止めずに歩き出す。
シンはその背を見つめるだけで、ただ静かに自室へ向かう弟を見送った。
「はぁ。びっくりしました」
少し歩いて、サキは獣から逃れたように安堵の息を溢して言った。
「まさか、兄上に会うとはな」
「やはりシン王子は私のことがお気に召さないのでしょうか・・・・・・」
「サキ・・・・・・大丈夫だ。兄上はああ見えて、とても情が深く、優しい方だ。きっといずれわかってくれるさ」
悲しそうなサキの頭を撫でて、ソウは慰める。
「そうでしょうか?」
「ああ。すぐに」
「でも、とても恐ろしい方でした」
シンの冷たい視線を思い出したのか、サキはぶるりと身震いする。
「そんなことはない。兄上はああ見えて、可愛いところもあるしな」
「え?」
信じられないことを訊いたような顔を上げたサキの手を握り、引く。
「今はそんなことはいいじゃないか。早く部屋に行こう。早く二人きりになりたい」
「──私もです」
頬を赤らめたサキを連れ、ソウは足早に自室へと
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