現代兵器で異世界無双

wyvern

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陸編

 9.帰還

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 ステラのさっきの行動が気になりながらも聞けないままセレデアまで帰ってきていた。
 転移する前にしたことのなかったキスとハグを受けて完全にパニックになった俺だがこういう体験が今までなかったのでそのときどうすればいいのかもわからずただただ呆然とするだけだった。ただ心臓の高まっていくのだけはわかっていた。

 二人は町につくとすぐにギルドの集会所へと向かっていた。
 そこにはもうすでに多くの人が集まってきていた。ただ朝集まった人数よりも明らかに少ないようだ。
 周りを見てもほとんどの人がけがをしていたり、ひどい人となると床に寝かされ治療を受けていた。
 ほかの多くがその状態なのに対してエレザの率いている隊は軽い傷を負っているものは少しばかりいたがほぼ無傷で帰ってきていた。
 こちらに気づき近づいてきたエレザは驚きと不思議そうな顔をしていた。
 それもそのはずで、俺ら以外はみな6人以上のパーティーを組んでいてなおかつ重武装でいるのに対しステラが剣一本と俺はこの世界の人からしたら得体の知らない黒い物体を持っただけの軽武装だからだ。
 こちらの世界の人たちからしたらモンスターが大量に発生しているところに軽武装でしかも二人のパーティーで行くなど相当な実力のある人でなければ自殺行為に等しい。
 しかし、俺には銃があるため同じものを持っていない相手で中距離であれば一方的に攻撃できる上に弾さえあれば多数の相手を一人で倒すことができる。さらに拳銃であれば至近距離の相手にも素早く対処できるし、一人であっても手りゅう弾や各種爆薬を使えばさらに大多数の相手を一挙に葬ることも出来る。
 それを知らないエレザ達にとって中級冒険者や熟練の冒険者たちが束になって掛かってようやく帰ってこれたというのに完全に無傷で戻ってきたとなれば異常でしかない。
 
「一体全体ワタ達はどうやったら無傷でしかも短時間で帰ってこれるんだい?こっちは350体以上のモンスターを50人でギリギリ倒せて帰ってきたというのに。しかもあの森にはもっと大量のモンスターが潜んでいただろう?」
どうしても俺たちが無傷で帰ってきたのが不思議でしょうがないエレザに質問攻めにあった俺はさも当然のようにそして平然と答えた。
 「森に入ってすぐに10体ぐらいのゴブリンの集団に遭遇して戦闘を開始したらすぐにゴブリンの本隊が増援に現れすぐに乱戦状態に。そこから約1時間後には襲ってきたゴブリン“殲滅”とまぁこんな感じです。倒したゴブリンを目視で確認したところ200体以上はいたかと……」
 「嘘だろ!?たった二人で200以上も!そんなのあり得るわけが……」
 俺の報告を聞いたエレザは腕を組み片手を顎に当てながら唸ってしまった。どうやら相当理解できないでいるようだ。
 (まぁ、そんなに考えたところでも結果は変わらないけどね)
 内心エレザのことを小ばかにしていた俺であるが、そんなことはさておき今まで負傷者のうめき声や冒険者たちの会話だけが聞こえていただけで比較的静かだったのが、急に外の方向から恐らく馬の歩く音や鎧などであろうか金属がぶつかり合う音などが多数聞こえはじめ騒がしくなってきた。
 それを聞いたエレザは“考える人”のようになっていたが、静かに顔を上げ、手を剣の柄に置き自然と警戒するような恰好に移っていた。

 しばらくしてその一行がギルド前に止まったのか先ほどまで聞こえていた音が急になくなった。周りもエレザの警戒するような姿を見てみな緊張の面持ちでギルドの入り口の方向を見つめていた。

 「トントン」と静かに二回ドアをたたく音がした。
 「誰だ?」
 少しばかりの苛立ちと警戒心をふんだんに含んだ声でその来訪者たちに対して尋ねた。
 「我々は王国近衛騎士団第一連隊である。モンスター大量発生の報を聞きここを訪れた次第であるエレザ殿とワタ様にお目通り願いたい」
 
 その言葉にエレザと俺は一瞬顔を合わせなんのことかと首をかしげる二人であったが、前を向いたかと思えばそのままエレザは入り口へと進んで行く。それに遅れて慌てて俺もついて行く。
 後ろではステラが心配そうな顔で見てきていた。

 ドアを開けるとそこには美少女騎士が立っていた。その子はエレザ達とは違い現世でモデルをやっているようなかわいさがある
髪はセミロングで白に近い銀色、体は鎧の上からでも見てわかるほど豊満体つきをしており特に胸のあたりは……大きい。しかもよく見ると背中からは天使のような白い羽が生えている……!?
(こっ、これは獣ッ娘って奴ですか!いや違うモンスry!それとも、もう天使様が私をお迎えに……)
 
 すると美少女騎士(天使というか女神)は満面の笑みで俺に近づいてくる
「やっと見つけましたわ!ワタ様!」
「何故俺の存在がわかるんだ?それに“ワタ様”って?」
天使みたいな羽のはえた美少女は、普通の人からしたら意味不明なことをいう俺に眉ひとつ変えず答えてくれる。

「はい!ワタ様のことは召喚前に“鏡”と呼ばれるこの世界から召喚先が見える特殊な鏡にて拝見させていただいておりますので、以前から存じております、それと腰につけている端末その物が確たる証拠です!」

「意味がよく伝わらないけど……それはそうと、君は誰?」
「申し遅れました。わたくしは王国近衛騎士団第一連隊長のへカート・ベルと申します。ベルとでもお呼びください。」
「じゃあ、あれは君の部隊?」
「急用もあってたまたま大勢で来てしまいまして、お騒がせして申し訳ありません」
「別にそれはいいんだけど、そんな大部隊のお方がどうしてここに?」
この時の俺は困った様子を伝えようと視線を送るが、エレザはただこちらの様子を窺うだけのようで視線を合わせようとしてくれなかった。

「それより王城で女王様がお待ちしておりますので、そこの一行ともども一緒に参りましょう!」
「“そこの”とは何だ“そこの”とは!」
ベルの放った一言により、先ほどまで静観していただけだったエレザが怒り出す
「いや、ちょっと待って。そもそもなんで俺が“召喚”されたってこともこの端末のことも知っているんだ?」
 それを聞いたベルは「あ!いっけね」みたいな感じで頭をかきながら簡単に説明してくれた。
 「簡単に申し上げますとあなた様はこの世界にこの王国の女王陛下によって召喚された所謂“選ばれし者”です。そのためこれより王都へ向かっていただきそこで女王陛下におあいしていただきたいのです」
 「なるほどね、大体は理解できたよ。それじゃあその王都へ向かいましょうか」
 そこまで黙っていたエレザだがここで急に話に割り込んできた。
 「予定があるのは悪いがワタを連れて私らと一緒にエルベ村に向かってくれないか?」
「それは無理な話だな」
ベルの傍にいた騎士は不快な様子で答える
「いや、行きましょう。確かそこもモンスターの討伐令が出ていましたね?」
「そうだ、とりあえずここが落ち着いたころ合いにあちらの視察と討伐の応援に向かいたいからな」
「しかし!ベル様!我々は……」
「ええ、わかっていますわ。しかしあそこには“挨拶”しておきたいお方もいらっしゃるので、ついでに」
「ですが、ベル様」
「お黙り!あなた方は途中の戦闘で負傷した者たちを連れ王都に引き返しなさい。そして女王陛下にはベルはもう少し探してきますと伝えてきなさい!」
「は、はっ!」
騎士は少し困惑した表情を見せたが、ベルの有無を言わせない物言いに圧倒された騎士は敬礼をしてすぐに踵を返した。
それを聞いた後方の騎士たちもすぐに行動を開始し、負傷者を連れ王都へと引き返し始めた。

「では、皆様方向かいましょうか?エルベへ」
 「ではさっそくそうしようか。情報によるとかなり手ひどくやられているようだからな」
 話が二人の中で進んでいる中、俺はずっと後ろの方で心配そうに見ていてくれたステラに近づいて行っていた。
 「ステラはこの後どうする?」
 「出来ればついて行きたいのだけれど、二度も助けてもらってしまった私がついて行ってしまったらただの足手まといになってしまうわ。でも考えたのはここで一旦あなたと別れてこれから軍にでも入って修行しようとでも思うの。そこで強くなったらまたあなたに会いに行くわ」
 やはり二度助けられたことに対して随分と気にしているようで、ステラはそのことが足かせとなって今ついて行くことをためらっているようだ。
 しかしそこには強い向上心と決意や希望に満ち溢れた顔があるのと同時に淡い恋心を抱いた少女の顔も垣間見える。
 「わかった、そうなったら必ず会おうか。それまでお互い頑張ろうな」
「うん!じゃあ元気でね!」
そうやって見送ってくれたステラはかわいらしい満面の笑みで見つめていてくれた。

俺が二人のところへ戻ってくるとちょうど話も終わったのか、俺の顔を一瞥するとすぐに外へと向かって歩き出した。俺もそれについて歩いていく。

 こうしてエレザ・ミレイユ・ワタ・ベルの一行は一路エルベへと向かっていった。

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