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陸編
30.我敵軍ヲ視認セリ!
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時は少し遡り国境近くのコンダート王国側のシンシナ山脈を背にした草原に、帝国軍本隊は陣取っていた。その中心にあるテントでは重苦しくピリピリした空気が漂っていた。
その空気は、一人の伝令によってもたらされたベルキア将軍部隊“消滅”の報によって引き起こされてしまっていた。
テントの中には二次攻撃隊指揮官のハルト・キール中将と帝国南部(コンダート北)侵攻作戦総指揮官のエメキア・ディエナ大将を含む主要幹部が集まっていた。
「あの女狐が消滅だと?!どういうことだ!」
怒りと想定していないことが起こってしまったことに対する焦りで、居ても立っても居られないようすで座っていた椅子を後ろに勢いよく倒しながら怒鳴ったのは、リレイの増援隊として控えていた黒い軍服に赤いマントを羽織ったハルト・キール中将だ。
キールは帝国軍士官学校を主席で卒業したエリート中のエリートで、容姿端麗・頭脳明晰・文武両道という数々の褒め言葉が似あうような男だ。
キールの実家ハルト公爵家は、代々王家に将軍として帝国ができてから長い間仕えてきた最古参の名家で、帝国で2番目に大きい領土を治めている。ハルト家当主のエンバラントは軍部ナンバー3の帝国軍最高軍事顧問を務めていて、長男のケイルは同じ軍大将でコンダート西部を攻める総指揮官を務めている、キールはそこの次男坊でその下に長女のヘルミナがいる。
「落ち着け!キール!奴が負けたのは腹立たしいかもしれんが、まだ我らも負けたわけでは無かろう」
「も、申し訳ありませんディエナ閣下」
テントの一番奥に位置する大きな椅子に座り、いまだ落ち着かない様子のキールを一喝するのは今回の総指揮官のディエナ大将だ。
ディエナは、黒髪のショートボブで、帝国軍高級将校用の黒いマントを羽織っている。彼女は帝国魔人族の最大貴族家の出身なので、魔人族特有の赤い目をしている。
ディエナもキールと同じ士官学校を卒業したのだが、普通は4年通うところをディエナはわずか1年で3年飛び級してさらに主席卒業したほどの頭脳の持ち主で、それだけではなくその士官学校を卒業した。その直後には帝国魔法学校へも入学し元々あった強大な魔力を存分に発揮しそこも1年足らずで卒業した超天才である。
生まれた家は帝国の中で2番目の権力を誇り、エメキア公爵家で魔人族長も務める。この家は伝統により代々女性が当主をつとめていてエメキア家女当主のレレーナは帝国宰相の職に就いている。レレーナの旦那は戦争で亡くなっていて以降も男性を迎え入れることがなかったので、ディアナ以外の子はいない。
そんなぶっ飛んだ二人が支える戦線は、上層部の見立てでも負けることは無いだろうとまで言われていたが、一次攻撃隊が何らかの勢力により瓦解してしまった今は、それも崩れかけている。
ディエナやキールの近くに控えていた幕僚たちは二人が発する重苦しい雰囲気に声の一つも出せずにいた。
そんな空気の中キールは上層部の期待に応えるため自身が率いる二次攻撃隊の進軍をディエナに進言した。
「閣下!ここは私がこれを封じて見せましょう!今すぐに出立いたします」
そんなキールをよそに、ディエナは伝令の報告を聞いたときから“消滅”の言葉にずっと引っかかっていた。
「早まるなキール、この報告は変だと思わないのか?いくらあのリレイでも、包囲されていたエレシアごときに負けることもましてや消えるなんてことはおかしな話だろう?」
「しかし、今出なくては援軍に間に合いません!」
「黙れ!今はお前ではなく偵察隊を出す、お前がでるのはまだ早い」
(皇帝陛下が言っていた、何(・)か(・)があちらに現れたということなのか?)
偵察隊を放ってから数日後、“消滅”の情報より酷い報告が上がってきていた。
その情報をたずさえた偵察隊の隊長がディエナのいるテントに駆け込み報告を始めた。
「申し上げます!リレイ閣下の軍は何処にも見当たりませんでした、しかし敗走して来た兵士によるとリレイ閣下は生存しており敵に降伏したとのこと、さらに我々が帰隊する際に、敵と思しき集団を視認しその集団がこちらの陣に接近中!なおその集団の中にリレイ中将を確認、さらにその集団から我々偵察隊が攻撃され、私以外の全員が戦死してしまいました……」
すごい勢いで報告した隊長は、敵勢力に自身も攻撃を受けたのかところどころにけがをしており、息も苦しそうであった。
「報告ご苦労、偵察隊の面々は残念だった……誰かこいつを手当てしてやれ!それとキールをここにすぐ呼べ!」
その報告を聞いたディエナは矢継ぎ早に命令を下していった。
(クソ!なんてことだ!壊滅しただけだと思っていたらリレイの奴が寝返っただと)
しばらくしてからキールもディエナのテントの中に入ってくる。
「閣下!敵がこちらに向かってきているとお聞きしましたが、本当でしょうか?」
「そうだキール、しかもリレイが裏切った」
すると、キールは何を思ったのか不気味な笑みをしながら、ディエナに向かい又もや出撃の要請をした。
「今回こそ私に行かせてください。そして、リレイを……いえあの女を奪取してまいりましょう」
「もう好きにしろ、発つなら今だ。行け!」
「ありがとうございます。きっと良い報告を上げられることでしょう」
キールは不気味な笑顔のまま、そのまま走ってテントから出ていった。
(ここで負けても我々には次の手がある)
いなくなったのを確認した後、ディアナは何かを悟ってか自身の部隊に命令を告げた――
編成が終了してから3日後の早朝、部隊は北に陣取る帝国軍本隊のいる方向へ全体が付いてこられる最大の速度で部隊は向かっていた。
今の兵は練度も上がり、実戦が可能な域までの能力を備えた。
同時に最新兵器を以って、陛下(俺)の直接的な命令を受けた混成連隊の兵士たちは士気が高かった。
合計200輌もの日米独軍の三大戦車が一挙に並び行軍する光景は元いた世界では見れないだろう。しかもそれに合わせて後ろには騎馬部隊も付いて来ていた。この部隊を率いることとなった俺は、これを見ていていま一人で興奮していた。
途中、敵の偵察部隊に遭遇してしまった。
「こちら、ミント、我々の大隊の隣を敵部隊と思われる一団が通過中、指示を!」
「こちら連隊長、発砲を許可する」
「了解」
その通信が終わって間もなく左側を走行していた89式装甲戦闘車の部隊が90口径35㎜機関砲で迎撃を始めた。
パンパンパンッ!パンパンパンパン!
断続的な35㎜機関砲の射撃音が聞こえて間もなく、敵撃滅のしらせが入った。
「こちら(機械化)歩兵大隊、敵殲滅を確認、しかし一名だけ取り逃してしまいました」
「連隊長了解!そのまま放置しろ、どのみちばれる」
「了解!」
偵察部隊との交戦(一方的な攻撃)をした後、そのまま何事もなかったかのように戦車連隊を走らせてから約1時間後、戦車部隊本隊から少し離れた小高い丘の上に到達したミント率いる89式装甲戦闘車の部隊が「敵視認」の情報を戦術データリンクシステム(略称 TDLS)によって戦車全体と後方にいる連隊本部に伝達してくる。
このTDLSは編成が終わった後にLiSMのオプションとしてついていたツールを使って作成したものだ。
現世では通信衛星などを用いて情報を共有するものだが、今回はこの戦車と装甲戦闘車・前線などの情報を連隊本部に集約して総括的に管理する目的でLiSMの「召喚物連携システム」を使って構成してみた。
これを使えば今後艦隊や航空隊を指揮するときにも使えそうだ。
ベルはミントたちがいる丘の下に到着し、10式戦車のコマンド―キューポラから双眼鏡で正面に見える帝国軍本隊を見つめていた。
帝国軍は左右に広く展開していて、前面には盾を持った歩兵隊が見え、奥には騎兵隊も控えているようだ。
俺はベルの隣に自身が乗る10式を止め同じく双眼鏡で敵前線の様子を観察していた。
今回の作戦に俺も10式に搭乗し直接、10式で構成されている第一戦車大隊の指揮を執ることにした、このことには全女性から反発を食らったが、万が一のことがあったらこの戦車で逃げると約束し事なきをえた。
その俺の乗る10式はシルヴィアが操縦していて、砲手にはノアが乗り込んでいた。最初はベルが俺と一緒に乗ると言って聞かなかったが、シルヴィアとノアが俺の乗っていた10式に何も言わず乗り込んでしまった為、ブツブツ何かを言いながら空いていた他の10式に不承不承乗り込んでいった。
「報告通り前方に敵大部隊を確認、如何しますか?」
不機嫌そうにベルは、俺に対してすぐ隣にいるにもかかわらず大隊内用の通信機で指示を仰いできた。
(絶対怒ってるよねこれ……それより今は戦闘に専念しなければ)
「連隊長より全車!まずこの第一戦車大隊が先陣を切って突撃を敢行する、続いてリレイの第二戦車大隊、ユリーシャの第三戦車大隊、最後にミントの機械化歩兵大隊の順で突撃をする!」
「「「了解!!!」」」
ついに俺たちは敵本陣に突撃していく――――
その空気は、一人の伝令によってもたらされたベルキア将軍部隊“消滅”の報によって引き起こされてしまっていた。
テントの中には二次攻撃隊指揮官のハルト・キール中将と帝国南部(コンダート北)侵攻作戦総指揮官のエメキア・ディエナ大将を含む主要幹部が集まっていた。
「あの女狐が消滅だと?!どういうことだ!」
怒りと想定していないことが起こってしまったことに対する焦りで、居ても立っても居られないようすで座っていた椅子を後ろに勢いよく倒しながら怒鳴ったのは、リレイの増援隊として控えていた黒い軍服に赤いマントを羽織ったハルト・キール中将だ。
キールは帝国軍士官学校を主席で卒業したエリート中のエリートで、容姿端麗・頭脳明晰・文武両道という数々の褒め言葉が似あうような男だ。
キールの実家ハルト公爵家は、代々王家に将軍として帝国ができてから長い間仕えてきた最古参の名家で、帝国で2番目に大きい領土を治めている。ハルト家当主のエンバラントは軍部ナンバー3の帝国軍最高軍事顧問を務めていて、長男のケイルは同じ軍大将でコンダート西部を攻める総指揮官を務めている、キールはそこの次男坊でその下に長女のヘルミナがいる。
「落ち着け!キール!奴が負けたのは腹立たしいかもしれんが、まだ我らも負けたわけでは無かろう」
「も、申し訳ありませんディエナ閣下」
テントの一番奥に位置する大きな椅子に座り、いまだ落ち着かない様子のキールを一喝するのは今回の総指揮官のディエナ大将だ。
ディエナは、黒髪のショートボブで、帝国軍高級将校用の黒いマントを羽織っている。彼女は帝国魔人族の最大貴族家の出身なので、魔人族特有の赤い目をしている。
ディエナもキールと同じ士官学校を卒業したのだが、普通は4年通うところをディエナはわずか1年で3年飛び級してさらに主席卒業したほどの頭脳の持ち主で、それだけではなくその士官学校を卒業した。その直後には帝国魔法学校へも入学し元々あった強大な魔力を存分に発揮しそこも1年足らずで卒業した超天才である。
生まれた家は帝国の中で2番目の権力を誇り、エメキア公爵家で魔人族長も務める。この家は伝統により代々女性が当主をつとめていてエメキア家女当主のレレーナは帝国宰相の職に就いている。レレーナの旦那は戦争で亡くなっていて以降も男性を迎え入れることがなかったので、ディアナ以外の子はいない。
そんなぶっ飛んだ二人が支える戦線は、上層部の見立てでも負けることは無いだろうとまで言われていたが、一次攻撃隊が何らかの勢力により瓦解してしまった今は、それも崩れかけている。
ディエナやキールの近くに控えていた幕僚たちは二人が発する重苦しい雰囲気に声の一つも出せずにいた。
そんな空気の中キールは上層部の期待に応えるため自身が率いる二次攻撃隊の進軍をディエナに進言した。
「閣下!ここは私がこれを封じて見せましょう!今すぐに出立いたします」
そんなキールをよそに、ディエナは伝令の報告を聞いたときから“消滅”の言葉にずっと引っかかっていた。
「早まるなキール、この報告は変だと思わないのか?いくらあのリレイでも、包囲されていたエレシアごときに負けることもましてや消えるなんてことはおかしな話だろう?」
「しかし、今出なくては援軍に間に合いません!」
「黙れ!今はお前ではなく偵察隊を出す、お前がでるのはまだ早い」
(皇帝陛下が言っていた、何(・)か(・)があちらに現れたということなのか?)
偵察隊を放ってから数日後、“消滅”の情報より酷い報告が上がってきていた。
その情報をたずさえた偵察隊の隊長がディエナのいるテントに駆け込み報告を始めた。
「申し上げます!リレイ閣下の軍は何処にも見当たりませんでした、しかし敗走して来た兵士によるとリレイ閣下は生存しており敵に降伏したとのこと、さらに我々が帰隊する際に、敵と思しき集団を視認しその集団がこちらの陣に接近中!なおその集団の中にリレイ中将を確認、さらにその集団から我々偵察隊が攻撃され、私以外の全員が戦死してしまいました……」
すごい勢いで報告した隊長は、敵勢力に自身も攻撃を受けたのかところどころにけがをしており、息も苦しそうであった。
「報告ご苦労、偵察隊の面々は残念だった……誰かこいつを手当てしてやれ!それとキールをここにすぐ呼べ!」
その報告を聞いたディエナは矢継ぎ早に命令を下していった。
(クソ!なんてことだ!壊滅しただけだと思っていたらリレイの奴が寝返っただと)
しばらくしてからキールもディエナのテントの中に入ってくる。
「閣下!敵がこちらに向かってきているとお聞きしましたが、本当でしょうか?」
「そうだキール、しかもリレイが裏切った」
すると、キールは何を思ったのか不気味な笑みをしながら、ディエナに向かい又もや出撃の要請をした。
「今回こそ私に行かせてください。そして、リレイを……いえあの女を奪取してまいりましょう」
「もう好きにしろ、発つなら今だ。行け!」
「ありがとうございます。きっと良い報告を上げられることでしょう」
キールは不気味な笑顔のまま、そのまま走ってテントから出ていった。
(ここで負けても我々には次の手がある)
いなくなったのを確認した後、ディアナは何かを悟ってか自身の部隊に命令を告げた――
編成が終了してから3日後の早朝、部隊は北に陣取る帝国軍本隊のいる方向へ全体が付いてこられる最大の速度で部隊は向かっていた。
今の兵は練度も上がり、実戦が可能な域までの能力を備えた。
同時に最新兵器を以って、陛下(俺)の直接的な命令を受けた混成連隊の兵士たちは士気が高かった。
合計200輌もの日米独軍の三大戦車が一挙に並び行軍する光景は元いた世界では見れないだろう。しかもそれに合わせて後ろには騎馬部隊も付いて来ていた。この部隊を率いることとなった俺は、これを見ていていま一人で興奮していた。
途中、敵の偵察部隊に遭遇してしまった。
「こちら、ミント、我々の大隊の隣を敵部隊と思われる一団が通過中、指示を!」
「こちら連隊長、発砲を許可する」
「了解」
その通信が終わって間もなく左側を走行していた89式装甲戦闘車の部隊が90口径35㎜機関砲で迎撃を始めた。
パンパンパンッ!パンパンパンパン!
断続的な35㎜機関砲の射撃音が聞こえて間もなく、敵撃滅のしらせが入った。
「こちら(機械化)歩兵大隊、敵殲滅を確認、しかし一名だけ取り逃してしまいました」
「連隊長了解!そのまま放置しろ、どのみちばれる」
「了解!」
偵察部隊との交戦(一方的な攻撃)をした後、そのまま何事もなかったかのように戦車連隊を走らせてから約1時間後、戦車部隊本隊から少し離れた小高い丘の上に到達したミント率いる89式装甲戦闘車の部隊が「敵視認」の情報を戦術データリンクシステム(略称 TDLS)によって戦車全体と後方にいる連隊本部に伝達してくる。
このTDLSは編成が終わった後にLiSMのオプションとしてついていたツールを使って作成したものだ。
現世では通信衛星などを用いて情報を共有するものだが、今回はこの戦車と装甲戦闘車・前線などの情報を連隊本部に集約して総括的に管理する目的でLiSMの「召喚物連携システム」を使って構成してみた。
これを使えば今後艦隊や航空隊を指揮するときにも使えそうだ。
ベルはミントたちがいる丘の下に到着し、10式戦車のコマンド―キューポラから双眼鏡で正面に見える帝国軍本隊を見つめていた。
帝国軍は左右に広く展開していて、前面には盾を持った歩兵隊が見え、奥には騎兵隊も控えているようだ。
俺はベルの隣に自身が乗る10式を止め同じく双眼鏡で敵前線の様子を観察していた。
今回の作戦に俺も10式に搭乗し直接、10式で構成されている第一戦車大隊の指揮を執ることにした、このことには全女性から反発を食らったが、万が一のことがあったらこの戦車で逃げると約束し事なきをえた。
その俺の乗る10式はシルヴィアが操縦していて、砲手にはノアが乗り込んでいた。最初はベルが俺と一緒に乗ると言って聞かなかったが、シルヴィアとノアが俺の乗っていた10式に何も言わず乗り込んでしまった為、ブツブツ何かを言いながら空いていた他の10式に不承不承乗り込んでいった。
「報告通り前方に敵大部隊を確認、如何しますか?」
不機嫌そうにベルは、俺に対してすぐ隣にいるにもかかわらず大隊内用の通信機で指示を仰いできた。
(絶対怒ってるよねこれ……それより今は戦闘に専念しなければ)
「連隊長より全車!まずこの第一戦車大隊が先陣を切って突撃を敢行する、続いてリレイの第二戦車大隊、ユリーシャの第三戦車大隊、最後にミントの機械化歩兵大隊の順で突撃をする!」
「「「了解!!!」」」
ついに俺たちは敵本陣に突撃していく――――
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