婚約破棄された令嬢ですが、賢者に拾われ見習い聖女になりました。

1章 婚約破棄

002 憂鬱なパーティ

豪華なドレスに身を包んだ女性に、幾つもの勲章を胸に付けた男性。

多くの作られた笑顔に囲まれて私は1人どんよりとした顔をしていた、嘘でも笑顔になんてなれない。本来なら今日の主役の1人は私だったのだ。

「レイス殿下！ステファニー皇女殿下！ご婚約おめでとう御座います！」

「これで我がティンバードール王国とレイルデスク皇国は益々の発展が約束されましたな！いやぁ！実にめでたい！」

口々にレイス殿下とステファニー皇女殿下の婚約を祝う貴族達。私も賓客として今日の婚約パーティーへと招かれていた。

「オーロラ。いつまでその様な顔をしているのです。招いて下さったレイス殿下とステファニー殿下に失礼ですよ？」

「まぁまぁ、フリージア。オーロラの気持ちも汲んであげなさい。オーロラ？この場にいるのが辛いなら客室で休んでいても良いんだぞ？」

「いえ…申し訳ありませんでした。私もティンバードールの貴族に名を連ねる者…これも貴族の勤めと言う事を失念していましたわ」

私を叱咤する母と、庇ってくれる父。いつもの事だが、今日の母の叱咤はいつにも増して心に刺さる。初恋の人が他の女と結ばれる事を笑顔を受け入れるなんて辛すぎる。

「ねぇ…あの方ってもしかして…」

「うわぁ…殿下も酷な事をなさいますのね…婚約破棄をされた元婚約者をこのパーティーに呼ぶだなんて…」

「しっ！そんな事を言ってもし殿下の耳に入れば、私達の家が取り潰されてしまいますわ」

会場のあちこちから私を憐れむ陰口が聞こえて来る。公式な発表はされてなかったが、私と殿下が婚約関係にあった事はこの会場の皆の知るところ…針の筵に座らされている気分だ。

やはり父上の言う通り部屋に帰って大人しくしておこう…そう思った次の瞬間だった。

「なっ！？何だ！？転移魔法！？この部屋には魔法封じの結界が貼られている筈では無いのか！？」

「衛兵！！衛兵は直ちに集まれ！何者かが会場に侵入してくるぞ！警戒しろ！」

突如会場の中心に黒い渦の様な物が出現し、会場が騒然となった。鎧を纏った衛兵が集まり渦を囲む。あの黒い渦は見覚えが有る。高位の魔法使いのみが使える転移魔法だ。しかしこの会場…というか王城全体には魔法が使えくなる強力な結界が貼られている筈だ。

「いゃあ…ゴメンゴメン。昼寝をしてたら遅れちゃったよ。パーティーはもう始まっちゃ…ってアレ？何この空気？」

黒い渦の中から現れたのは銀髪青眼の青年…歳は私と同じくらいだろうか？恐らく10代後半だろう。見窄らしいローブを羽織っている。突如会場に現れた青年は辺りの様子をキョロキョロと伺うと、事態を把握出来てない様子で頭を掻いた。