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6章 集う力

313 もう1人の自分

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「お前さんと本気で戦ってみたいとは思っていたけどまさかこんな形で願いが叶っちまうとはな…なぁ、今のお前は俺が知ってるユイトじゃないんだよな?」

「そうだ、お前の良くしる偽善者の甘ちゃんだったユイトはぐっすりとおねんね中だ。モンスター共を壊すのも楽しいがお前を壊す方がもっと楽しそうだ」

夢を見ている様な感覚だ。真っ暗な空間の中で自分の身体の感覚すら無い。ぼんやりと映画館のスクリーンの様に映し出された映像にはシグマさんと対峙している俺が映し出されていた。

「こりゃ元のユイトを返してくれって頼んだところで聞いちゃくれねぇな…悪いがお前さんを元に戻す方法が分かるまで大人しくしてもらうしかなかそうだ」

「いいねぇ、話が早い。話はここまでにして早速はじめようぜ…最強さんよぉ!」

スクリーンの中の俺がシグマさんに斬りかかる。疾い、俺の身体の筈なのに明らかに俺よりも動きが早い。

「本能のまま向かってきやがる!?でもそれは俺の十八番だぜ!!」

「はっ!この俺と正面から打ち合えるとは流石だな!さてはさっきまでは手を抜いてやがったな?」

シグマさんと俺の身体を操る何者かが剣をぶつけて合い鍔迫り合いになる。

「グッ…まさかこの俺が力比べで押されるとはな…でもお前の相手は俺だけじゃないんだぜ?今だ!オウル!」

「ミストルティンの矢!?自分を囮に使ったのか!?」

鍔迫り合いをしていた2人を目掛け無数の魔力の矢が降り注ぐ。オウルさんの援護射撃だ。一見無差別に撃たれたかの様に思われた魔力の矢は空中で軌道を変えシグマさんを避ける様に着弾した。

「俺の相方は狙いを外す様なヘマはしないんでね!でも俺は違うぜ?喰らえ!桜吹雪!」

シグマさんが追い討ちを仕掛ける。魔力の矢の着弾地点から飛び退きながら目にも見えない速度で刀を高速で抜き放つ。あの刀には見覚えがある。シグマさんの持つMMORPGの装備品は如意刀だったのか。

「今のは少し驚いたがあの程度で俺を倒せるなんて思いあがるんじゃねぇ!そんな離れた場所で獲物を振り回しても意味がないぞ!」

「確かに…これが普通の武器ならそうだろうな!」

「ツッ!?背後か!」

シグマさんが如意刀を振る度に四方八方から
光線の様な斬撃が乱れ飛び交う。繰り出したシグマさん本人にも制御出来てない様で近くにいたモンスター達も巻きこまれている。

「まだまだ速度を上げてくぜ…ユイト、死ぬんじゃ無ぇぞ!」

シグマさんの連撃が更に速度をあげる。散りゆく桜の花の様に舞い踊る斬撃にもう1人の俺は包まれていった。
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