乙女ゲームの世界でサポートキャラに恋をしたので、イケメン全員落としてみせます。

あみえ

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29 喧嘩するほどなんとやら

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「うーん…」


 自室の真ん中に座り、着替えの服だけが入ってる鞄をじっと見つめながら私は考えていた。

 調査の為に森に一泊。その後ミツドナの町でも一泊するので身支度をしろ。といわれたものの…。
 そもそも着物ぐらいしか用意するものがない上に、今回は動きやすい服を、とナス子さんのお古を頂いているので、もはや私物はゼロだ。

 異形の目撃情報があった森の調査という事だけれど…
 私はいまだに本でしかそのバケモノの姿を見てないし、いざこの目で見て対峙しようものならきっと腰が抜けて、ただの役立たずにしかならないであろう事が容易に想像できるのだけど…

 せめて少しでもマシになれるように自衛できるような武器がほしい。

 自分の部屋にめぼしいものはないし、と私は自室を出ると廊下の少し先にあるゲンナイさんの部屋の戸をノックする。
 中からの返事を聞いて戸を開ければ、相変わらずの本の山の中、仕事中だったのか片手に書類を装備したままゲンナイさんは私に「どうした?」と優しく微笑みかけてきた。

 ワイルドイケメンの微笑みに目をやられながらも、事情を説明すれば、ゲンナイさんは暫く悩んだあと、小さな小刀をくれた


「由羅ちゃんが扱えるのはこのくらいの武器が限界だな。野営の時にも枝を切ったりできるし重宝すると思うよ」
「ありがとうございます」
「まぁでもそれが必要になることはないだろ。トビさんもキトワさんもいるし、ちゃんと守ってくれるから安心しろ」
「…あれ?イクマくんは?」
「アイツはまだ修行不足」
「あはは、なるほど」


 そういえばイクマ君は入社したばかりだと言ってたっけ。
 それでも足手まといにしかならない私よりは確実にイクマ君は戦力になる。


「私もせめてなにか役に立てるように頑張ります」
「ほどほどにな。本当は俺もついていきたいが時成様の許しがでなかった…」
「聞いたんですか?」
「一応な…。時成様のことだ、何か意図があるんだろうが…。いいか?由羅ちゃん!キトワさんに近づかれたらそのナイフでブスっといけよブスっと!」
「ええ…?死んじゃいますよ?」
「そんくらいじゃないとあの人はダメなんだよ」


 どこかげっそりとそう言ったゲンナイさんに笑いながらも、心の中では確かにそうかもしれないと同意する。一応警戒はしておこう…。





ーーー





「気をつけてな」
「何かあればすぐ駆けつけますから」

「はい!それじゃ行ってきますね」


 身支度を済ませ、ゲンナイさんとサダネさんに挨拶をしてトキノワを出ると、玄関横で待っていたらしいトビさんとキトワさんそしてイクマ君が私の前に並んだ。


「お疲れ様っす由羅さん!本日よりよろしくお願いしまっす!」
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
「道中馬での移動だけど、由羅さん乗馬の経験は?」
「案ずる事なかれだよトビ!由羅嬢はこの僕といっしょに馬の上でランデヴーと行こうではないか」


 アッハッハ!と高らかに笑うキトワさんをトビさんは無言で睨んだあと「付き合ってたらまた時間がなくならぁ」とため息をひとつして歩き出した


「由羅嬢、これから日暮れまで移動だからね!野郎共に囲まれて過ごすのも怖いかもしれないが安心してくれ!このキトワが由羅嬢の貞操はしかと守らせてもらおうではないか!」


 移動中もキトワさんはキトワさんだった…。
 この人きっと5分も黙っていることすら不可能ではないかと思うくらいしゃべり倒す。

 イクマ君は慣れているのか我関せずなのかマイペースに町並みをキョロキョロと眺めてこちらに関心はないし、トビさんは黙々と前を歩いているしで、つまりキトワさんの標的は私になるわけで…


「時に由羅嬢トキノワにきてひと月くらいだろう?あれかい?もうドキドキハプニング的なものはあったのかい?」
「ど、どきどきはぷにんぐ?」
「男女がひとつ屋根の下でなにもおこらないわけがないからね!サダネもゲンナイもむっつりなのは知る人ぞ知る真実さ!まぁ男なんて皆脳内ピンク色なのは抗えない本能ゆえのグハッ!!!」


 突然棒のようなものがキトワさんの頭上に落ちてきて、重い悲鳴と共にキトワさんの体が地面に伏した…
 どうやら、斧の持ち手の部分をキトワさんに向け振り下ろしたらしいトビさんは、蹲るキトワさんを冷たい視線で見下ろしている


「次、喋ったら持ち手じゃない方で振り下ろすぜぃ」


 「その脳天に」と真っ黒いオーラを身に纏いながら言ったトビさんにキトワさんは黙ってコクコクと頷いていた。
 凄い。あのキトワさんが言うことを聞いた!でもなんだろ、トビさんってキトワさんの事、嫌いなのかな?やたら当たりが強いような…え、もしや?と気になってこっそりとイクマ君に聞いてみる


「あの二人って仲悪いの?」
「え?んなことないっすよ!幼馴染らしいっすから」
「え、そうなんだ…」


 意外な事実に面食らう。え、ってことは?つまり?兄弟みたいなものだからこその遠慮ない感じなのかな?女の私にはよくわからないけども…

 なんだかまだ関係性をつかめていない雰囲気を感じながらも歩を進め、私達は町はずれの馬小屋についた


 皆がそれぞれ華麗に乗馬する中で私は一人、馬の前で固まる。

 いやすみません乗り方すらわかりません
 なんとなくいけるかな、と思っていたけど実際目の前にすると馬って意外に大きいんですね。
 足をかける鐙にすら上手く自分の足をひっかけることができません!

 そう叫ぶ私の心中を察したのか、トビさんが馬から降りると、私の腰をひょいと持ち上げた


「うぅわ!!」

「馬のたてがみと手綱をしっかり持って、左足から足をかけてみな」
「は、ははい!!」


 言われた通りにしてやっと乗ることができたものの少しこわい…
 え、そもそも馬での進み方とかわからない


「由羅さんが慣れるまで俺が手綱をもって並走すっからイクマとキトワは索敵警戒陣形で前を行ってくれ」
「了解っす!」
「え~僕が由羅嬢と並走したかった…」


 元気よく返事をしたイクマ君と残念そうに何か言っているキトワさんはトビさんに言われたとおり前へ進んでいく

 パカラパカラっと小気味良い蹄の音がして私も早く一人で乗れるようになろう、と意気込んでトビさんに乗馬の指導を受けた


「うん。いいんじゃねぇかぃ。明日には一人で乗っても問題ねぇだろぃ」
「本当ですか!やった!ありがとうございますトビさん!」


 何時間か進んで休憩にと馬を降りたところで
 トビさんに合格をもらうことができたものの、普段使わない筋肉でも使ったのか節々が痛くすでに筋肉痛だ…
 手頃な岩に腰を下ろして足をほぐしていればふとやたらと静かな事に気が付いた


「そういえばトビさん二人が見当たらないですけど…」
「もう数分行けば、例の目撃情報があった森だから二人には先に森に入って索敵してもらってるぜぃ。なんの異形かも、その数もまだわかんねぇからな」
「え、大丈夫なんですか」


 二人だけで危険な森なんて、と少し怖くなる。ましてやイクマ君はまだ異形と対峙するのは数回しかないというし。もし何匹も異形がいたらまずいのではないだろうか…

 そんな事を考えながら不安になっていると「んー」と視線を逸らして「…キトワがいっから大丈夫だろぃ」と、なんでもないことのように言ったトビさんからキトワさんに対しての信頼が見えて少し驚く


「トビさんって、キトワさんの事ずいぶん信頼されてるんですね」

「まぁ…悪いとこもあれば良いとこもあるってこった」


 照れくさそうに頬をかくトビさんにほほえましくなる。幼馴染というのは本当のようだ。


「ちなみにトビさんとキトワさんならどちらが強いんですか?」
「んなもん俺に決まってら」


 フフンと自慢げに笑うトビさんにクスリと笑う。キトワさんに同じ質問をすれば同じように自分の方が強いと答えそうだ。なんだか本当に兄弟みたいな関係性なんだろうな。
 
 「キトワさんと仲良しなんですね」と笑えばトビさんはとても嫌そうに「寒気がするからやめろぃ」と顔を顰めていた

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