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第0011話 従姉妹
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villa内部はさらに豪華絢麗で、広いリビングルームには柔らかな光を放つクリスタルシャンデリアが輝き、高級なフローリングの上にイタリア産の快適なソファが置かれている。
これらは二つの文字で表現できる「贅沢!」
と。
ソファに座っているのは中年男性。
体型を保ち、肥り気味ではない。
整った顔立ちに黄金のメガネをかけ、学者然とした雰囲気がある。
この人物は林成栋(りんせいどう)という名で、成祥グループ社長。
江陽市商界の要人である。
ソファの後ろには保镖の高雄(こうしん)が立っている。
40代前半の男。
体格が良く、鷹のような目と獅子のような鼻を持ち、頼もしい存在感を放つ。
その時、林雪珊(りんせっさん)が少年を連れて入ってきた。
後ろには趙伯(ちょうはく)が付き添う。
リビングルームの二人の視線が向けられる。
少年は秋羽である。
帆布袋を持ってvillaに入るや否や目を見張るばかりで「本当に美しい……宮殿のようなものだ」と心の中で感嘆する。
その少年を見て林成栋は失望した様子もなく立ち上がり、微笑んで尋ねた。
「お前は秋羽か?」
高雄の目に一瞬の軽蔑が浮かぶ。
どうしてこの田舎者を表小姐の護衛に雇ったのかと不思議に思う。
少年は頷き、「俺だ、お前は誰だ?」
と返す。
秋羽の無礼な質問にも林成栋は構わず穏やかに告げた。
「姓は林。
お前の雇主だ。
林叔と呼べ。
紹介するぞ。
彼は高雄、私のボディガード……」指差した。
秋羽が驚き、「林叔、貴方にはボディガードがいるんだから俺を雇う必要があるのか?」
と問いかける。
林成栋は笑って答えた。
「お前は私ではなく、私の甥女・夏蘭(あらん)の護衛だ」
秋羽も驚き、「おじいちゃんは山で護衛だとだけ言ってたが……女性の護衛とは知らなかった。
でも金銭を受け取れば仕事はするさ」そう言いながら高雄の方に目を向け、手を合わせて挨拶した。
「高さん、初めまして」
「ん」としか返らず、高雄は相手を見下すように一礼もしない。
秋羽が暗黙で「この奴は相当なプライドだな」と思った。
不満はあるものの表情に現さないのは年齢より成熟した城府の表れだった。
林成栋が続ける。
「それからこちらは趙伯……」
秋羽が振り返り会釈をすると、趙伯(ちょうはく)が笑顔で「よろしく」と応じた。
「あいよ、紹介忘れていたわ」清らかな声と共に軽やかな足取りの女性が入ってきた。
20代前半の美女。
黒髪を大きなお下げにし、起伏のある体形は模様入りパジャマで包まれ、白く透き通る肌に潤んだ目を向けながら秋羽を見つめ、「新任の護衛って若いんだね? あたしより年下じゃない?」
と笑みを浮かべた。
林雪珊が微笑んで告げた。
「秋羽、紹介するわ。
これが家のお手伝い・小蓮(しょうれん)さんよ」
本当に裕福な家庭だね、メイドもこんなに魅力的なんだ。
秋羽は内心感心しつつも、そんな元気のいい女の子と同僚になるのは久しぶりに女性を見る機会を得たことに興奮し、笑みを浮かべながら「小蓮さんお初です」と挨拶した。
「ほんとにお世辞使い上手ね」小蓮は笑顔で返す。
林成棟が指示する。
「小蓮、表の姪っ子を呼んでこい。
保镖が来たから」
「ハイッ」小蓮は爽やかに応じて階段を駆け上がった。
間もなく足音が響き、階段から一人の少女が現れた。
十七八歳と見えた彼女は艶やかな容姿で、髪をピンクのリボンで適当に束ねた上に斜めバングの前髪を施し、目元には黒曜石のような瞳が輝く。
白い身体に着ていたのはホワイトのカートゥーンTシャツ(キティ猫柄)とオレンジの七分ハーレー短パンで、足元はピンクのキティ猫スリッパ。
間違いなく美少女だ。
林雪珊のような大美女とはタイプが異なるものの、華やかさと可愛らしさを兼ね備えた存在だった。
この少女こそ夏蘭。
彼女の両親も決して無名ではない人物で、現在国外に滞在中。
最近の出来事により国内へ送り込まれ、江陽市第一高校の高三生として転校してきた。
両親は彼女が安全を確保できるよう林成棟に保镖を探させた。
甥っ子を見ると林成棟は「蘭ちゃん、早く下りてこい。
おじいちゃんが探した保镖と紹介しよう」
夏蘭はすぐに唇を尖らせ、内心で鼻をつまんだ。
「この格好、民謡の難民みたいじゃない? あーっ、ほんと嫌だよ! 保镖なんて要らないわ。
いつも後ろに誰かがいるのはイヤなの」
林成棟は首を横に振る。
「それはダメだ。
お母さんたちの決断だからね。
今は高校も落ち着かないんだ。
不良グループとかが跋扈してるから、安全確保のために必要なんだよ」
夏蘭は眉根を寄せた。
「でも……」
「安心して。
学業には影響しないわ。
秋羽も同じ学校に転校させて、クラスメイトとして隠れて守ってくれるの」
夏蘭はため息をつく。
「そうね……」アメリカの友達と離れたくないし、中国に戻りたくなかったが、親の意思は覆せない。
やむを得ず「分かりました。
保镖ならいいけど、代わりに探してほしいわ」と頷いた。
その言葉を聞いた秋羽は眉根を寄せた。
「どういうことだよ? 俺を見て馬鹿にしてるのか?」
林成棟が訊ねる。
「どうしたの?」
夏蘭は平然と「おじいちゃん、自分で見てみて。
保镖ってこんな格好じゃないでしょ? 汚れててみすぼらしいし、見た目も平凡だし、酷くない? 保镖なら『吸血鬼騎士』の椎生零みたいなイケメンにしてくれればいいのに」
林成棟は笑いながら「蘭ちゃん、保镖は恋人じゃないんだよ。
そんなにかっこよくしなくてもいいんじゃない?」
と続けた。
これらは二つの文字で表現できる「贅沢!」
と。
ソファに座っているのは中年男性。
体型を保ち、肥り気味ではない。
整った顔立ちに黄金のメガネをかけ、学者然とした雰囲気がある。
この人物は林成栋(りんせいどう)という名で、成祥グループ社長。
江陽市商界の要人である。
ソファの後ろには保镖の高雄(こうしん)が立っている。
40代前半の男。
体格が良く、鷹のような目と獅子のような鼻を持ち、頼もしい存在感を放つ。
その時、林雪珊(りんせっさん)が少年を連れて入ってきた。
後ろには趙伯(ちょうはく)が付き添う。
リビングルームの二人の視線が向けられる。
少年は秋羽である。
帆布袋を持ってvillaに入るや否や目を見張るばかりで「本当に美しい……宮殿のようなものだ」と心の中で感嘆する。
その少年を見て林成栋は失望した様子もなく立ち上がり、微笑んで尋ねた。
「お前は秋羽か?」
高雄の目に一瞬の軽蔑が浮かぶ。
どうしてこの田舎者を表小姐の護衛に雇ったのかと不思議に思う。
少年は頷き、「俺だ、お前は誰だ?」
と返す。
秋羽の無礼な質問にも林成栋は構わず穏やかに告げた。
「姓は林。
お前の雇主だ。
林叔と呼べ。
紹介するぞ。
彼は高雄、私のボディガード……」指差した。
秋羽が驚き、「林叔、貴方にはボディガードがいるんだから俺を雇う必要があるのか?」
と問いかける。
林成栋は笑って答えた。
「お前は私ではなく、私の甥女・夏蘭(あらん)の護衛だ」
秋羽も驚き、「おじいちゃんは山で護衛だとだけ言ってたが……女性の護衛とは知らなかった。
でも金銭を受け取れば仕事はするさ」そう言いながら高雄の方に目を向け、手を合わせて挨拶した。
「高さん、初めまして」
「ん」としか返らず、高雄は相手を見下すように一礼もしない。
秋羽が暗黙で「この奴は相当なプライドだな」と思った。
不満はあるものの表情に現さないのは年齢より成熟した城府の表れだった。
林成栋が続ける。
「それからこちらは趙伯……」
秋羽が振り返り会釈をすると、趙伯(ちょうはく)が笑顔で「よろしく」と応じた。
「あいよ、紹介忘れていたわ」清らかな声と共に軽やかな足取りの女性が入ってきた。
20代前半の美女。
黒髪を大きなお下げにし、起伏のある体形は模様入りパジャマで包まれ、白く透き通る肌に潤んだ目を向けながら秋羽を見つめ、「新任の護衛って若いんだね? あたしより年下じゃない?」
と笑みを浮かべた。
林雪珊が微笑んで告げた。
「秋羽、紹介するわ。
これが家のお手伝い・小蓮(しょうれん)さんよ」
本当に裕福な家庭だね、メイドもこんなに魅力的なんだ。
秋羽は内心感心しつつも、そんな元気のいい女の子と同僚になるのは久しぶりに女性を見る機会を得たことに興奮し、笑みを浮かべながら「小蓮さんお初です」と挨拶した。
「ほんとにお世辞使い上手ね」小蓮は笑顔で返す。
林成棟が指示する。
「小蓮、表の姪っ子を呼んでこい。
保镖が来たから」
「ハイッ」小蓮は爽やかに応じて階段を駆け上がった。
間もなく足音が響き、階段から一人の少女が現れた。
十七八歳と見えた彼女は艶やかな容姿で、髪をピンクのリボンで適当に束ねた上に斜めバングの前髪を施し、目元には黒曜石のような瞳が輝く。
白い身体に着ていたのはホワイトのカートゥーンTシャツ(キティ猫柄)とオレンジの七分ハーレー短パンで、足元はピンクのキティ猫スリッパ。
間違いなく美少女だ。
林雪珊のような大美女とはタイプが異なるものの、華やかさと可愛らしさを兼ね備えた存在だった。
この少女こそ夏蘭。
彼女の両親も決して無名ではない人物で、現在国外に滞在中。
最近の出来事により国内へ送り込まれ、江陽市第一高校の高三生として転校してきた。
両親は彼女が安全を確保できるよう林成棟に保镖を探させた。
甥っ子を見ると林成棟は「蘭ちゃん、早く下りてこい。
おじいちゃんが探した保镖と紹介しよう」
夏蘭はすぐに唇を尖らせ、内心で鼻をつまんだ。
「この格好、民謡の難民みたいじゃない? あーっ、ほんと嫌だよ! 保镖なんて要らないわ。
いつも後ろに誰かがいるのはイヤなの」
林成棟は首を横に振る。
「それはダメだ。
お母さんたちの決断だからね。
今は高校も落ち着かないんだ。
不良グループとかが跋扈してるから、安全確保のために必要なんだよ」
夏蘭は眉根を寄せた。
「でも……」
「安心して。
学業には影響しないわ。
秋羽も同じ学校に転校させて、クラスメイトとして隠れて守ってくれるの」
夏蘭はため息をつく。
「そうね……」アメリカの友達と離れたくないし、中国に戻りたくなかったが、親の意思は覆せない。
やむを得ず「分かりました。
保镖ならいいけど、代わりに探してほしいわ」と頷いた。
その言葉を聞いた秋羽は眉根を寄せた。
「どういうことだよ? 俺を見て馬鹿にしてるのか?」
林成棟が訊ねる。
「どうしたの?」
夏蘭は平然と「おじいちゃん、自分で見てみて。
保镖ってこんな格好じゃないでしょ? 汚れててみすぼらしいし、見た目も平凡だし、酷くない? 保镖なら『吸血鬼騎士』の椎生零みたいなイケメンにしてくれればいいのに」
林成棟は笑いながら「蘭ちゃん、保镖は恋人じゃないんだよ。
そんなにかっこよくしなくてもいいんじゃない?」
と続けた。
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