花間の高手

きりしま つかさ

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第0046話 別に面白くない

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秋羽は聞き慣れた声に目を凝らし、向かいの少女が自分の雇い主・夏蘭だと気づいた。

慌てて舌打ちした。

「くそっ、どうしてお前なんだよ……」この娘にはやられちまうぜ、性格悪いんだろ?と内心でため息をつきながら説明する。

「わざとじゃないって……」

「はぁ!? お前かバカ野郎!?」

夏蘭も相手が誰か気づき、その男の子が新調したスーツ姿に辟易しながらも、「やっぱりこの悪ガキは変わらないわね」と舌打ちする。

どうせ勝手に覗いてきたんだろうと。

秋羽は眉をひそめながら返す。

「お前こそバカ野郎だよ、一方的に罵倒してんじゃねーか!口をきっちり閉じろ」

「きゃあ!? お前……」夏蘭が震え上がった。

「お前が悪かったって?クビ切るぞ!」

秋羽は険しい声で返す。

「どうでもいいさ」

廊下の喧嘩に部屋から林雪珊が顔を出す。

困惑した目つきで尋ねる。

「どうしたの?何があったの?」

夏蘭は涙目になり、「雪ちゃん、この野郎が上階で覗いてたんだよ……私が注意したら逆ギレして……」

秋羽は鼻を鳴らす。

「お前こそ最初に罵倒してきたんじゃないのか!猪八戒が逆恨みするみたいなもんじゃねーか」

夏蘭は憤りのあまり声を荒げる。

「それがどうしたって?覗いてたんだから!クビ切るぞ!」

秋羽は舌打ちして返す。

「お前こそ最初に罵倒してきたんじゃないのか!猪八戒が逆恨みするみたいなもんじゃねーか」

「きゃあ!? お前……」夏蘭が胸を張り上げた瞬間、その豊かな曲線がさらに際立つ。

怒りのあまり理性を失い、「覗いてやろう!どうせ見たいんだろ?」

秋羽は目を見開いた。

「うわっ……これは本物だぜ……」

林雪珊が驚きの声を上げ、体当たりで表妹を庇ってる。

「バカか!わざと人に見せるんじゃないよ!」

「あっ!」

夏蘭が我に返り頬を赤らめる。

「はぁ?お前こそ……クビ切るぞ!」

林雪珊は事情を説明する。

「秋羽はわざとじゃないの。

私が病気で診てもらいたいって頼んだのよ。

偶然お前に会っただけだわ。

ごめんなさいね」

「え?このバカが医者になったのか!? 雪ちゃん、騙すな!狼男に近づくなよ」

秋羽は目を白黒させた。

「くそっ……この野郎呼ばわりかよ……」

林雪珊はその不満顔を見ながら諭す。

「そんなことないわ。

秋羽さん人柄いいのよ」

夏蘭は唇を尖らせて。

「バカってことだよ!」

林雪珊がため息混じりに言う。

「お前ね、汗かいてるから早く部屋に戻って」

秋羽はその後ろ姿を見送りながら、鼻で笑う。

廊下の先端まで行き、林雪珊の指示通りに診察室に入る。

「えーと……」秋羽が診療台を覗き込む。

「服脱いでベッドに寝てよ」

診療室は薔薇の香りが漂っていた。

林雪珊が化粧台の前に立つと、秋羽は自然な調子で指示した。



「あっ……」白く透き通る肌が一瞬で朱に染まった。

林雪珊は驚いて訊ねた。

「どういうこと?」

「鍼灸には服を脱ぐ必要があるんだよ。

仰向けになってこそ全身の緊張を解けるし、正確なツボを見つけられるからさ」秋羽は当然のように答えた。

針灸の経験がない林雪珊は銀針で体に刺すという行為そのものさえ詳しく知らなかった。

「服を着たままでもできないのか?」

「お姉さん、見たことないよ。

無理だよ」秋羽が笑って首を横に振る。

治療したい病魔と恥辱の間で揺れる林雪珊はため息混じりに訊ねた。

「本当に脱がないといけないのか?」

「仕方ないさ。

完全に治すには鍼灸と薬合わせて必要なんだ。

鍼灸を受けるなら服を脱ぐしかない」秋羽が肩をすくめてみせる。

「うっ……」林雪珊は眉根を寄せた。

長年の苦痛から解放されるという奇跡的な機会なのに、未出嫁の若い女性として恥ずかしいのだ。

「だったらやめとこっか。

お姉さん、そのままにしておくよ」秋羽が立ち上がりかけた。

「待って……秋羽!」

秋羽は足を止めて振り返った。

「どうしたんだ?」

「私は脱ぐわ……病気の根本から治してもらいたいの」

林雪珊は頬を染めながら囁く。

治療のために身を捨てることに決意したのだ。

「なら脱げ」秋羽が頷く。

林雪珊は唇を噛みしめて繰り返す。

「恥ずかしい……でも……」服の下端を持ち上げて、白い平坦な腹部を露わにする。

その瞬間、誰かの視線が熱っぽく注がれるのが感じた。

「どうしたの?」

林雪珊は胸元を手で隠して憤りを込めて訊ねる。

「いや……ほんとに一瞬だけ見たんだよ」秋羽が慌てて否定する。

その子らしさに林雪珊はため息をついた。

男ならみんなそうなのかもしれない。

まだ若いのに……と。

「秋羽、お姉さんは君を信じているからこの姿を見せたの。

何かやましい考えはない?」

「大丈夫だよお姉さん。

俺もそんな人間じゃないさ。

そっちへ向いてくれないかな?背中は後ろから治療するんだ」

林雪珊はさらに恥ずかしさが増して頬を真っ赤に染めながら俯卧した。

その白く滑らかな背中は秋羽の視線を引きつける。

夏蘭とは違うな……と比較してしまう自分が情けない。

「どこを見ているの?」

林雪珊が胸元を隠すようにして怒りを込めて訊ねる。

「いや、ほんとに一瞬だけ見たんだよ」秋羽は己に呆れながら弁解する。

「お姉さん、背中向いてくれないと鍼灸できないんだ。

ここからだよ」

林雪珊はさらに恥ずかしさが増して頬を真っ赤に染めながら俯卧した。

その白く滑らかな背中は秋羽の視線を引きつける。

夏蘭とは違うな……と比較してしまう自分が情けない。

「お姉さん、背中向いてくれないと鍼灸できないんだ。

ここからだよ」

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