花間の高手

きりしま つかさ

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第0067話 竜虎相搏つ

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重要な瞬間を迎え、華春元は低く声をかけて仲間に囁いた。

「人垣を作って11号を止めるんだ。

絶対に突破させない」

仲間たちは真剣な表情で頷き合った。

彼らもまた、11号を阻むことが勝利への唯一の道だと理解していた。

会場内外が息を呑んで見守る中、複雑な心境が渦巻く視線が注がれる。

緊張と興奮、そして期待が交錯する。

カウントダウンが始まった。

ボールを持つ胡州は時間的制約から秋羽にパスを放ち、その後の展開は彼には関係ない。

空中で渦巻くボールと共に時間が駆け抜ける。

ほぼ同時に秋羽、華春元、七班の小前锋とセンターが跳躍し、全力でボールへ突進する。

予想通り秋羽の俊敏さとジャンプ力が勝り、彼がボールを掴んだ瞬間、華春元らは意思疎通なしに人垣を築き、残り1.5秒を耐え抜く。

観客全員が首を横に振った。

「もう時間がない。

どうせ秋羽も突破できないだろう」七班の勝利は確実と見えた。

しかし突然、秋羽がボールを投じた。

これは彼が最後にできる唯一の手段だったが、周囲は冷ややかに見ていた。

この距離ならプロでも不可能だという共通認識があったからだ。

「あれ? これくらいで入るのか?」

視線が追うと、ボールはまるで自らの家へ帰るようにバスケットに突き刺さった。

同時にタイムアップのホイッスルが鳴り響く。

驚愕の声が沸き起こり、グラウンドは歓声で震えた。

「目眩まっただろ? あれこそ入ってるよ」

「俺も見えたぜ、確実に」

「凄い! NBAでもこんなプレーはできないんだから」

五班のほとんどが興奮し手足を躍らせ、「勝った! 我々が勝った!」

と叫ぶ。

「秋羽、河馬、狐、豚、猿、お前たちも凄かったぞ」

一方李偉は地面に唾を吐き捨て、憎悪と嫉妬で目を曇らせた。

「くっ、こんな奇跡があるのかよ……邪魔な奴め」

秋羽が神妙な手つきで3ポイントシュートを決め、60対59の逆転勝利。

五班は来週のリーグ戦出場権を獲得した。

七班の選手たちは肩を落とすが、華春元だけは堂々と秋羽に近づき握手を求めた。

「お前は秋羽か? 俺は服従するよ」

秋羽はその度量に感心し笑みを浮かべ、「お前のプレイも見事だ。

名前を教えてくれる?」

「華春元と申します。

お前に比べればまだまだです。

人猿との対決が楽しみですね」

「そうだな……」

秋羽は笑みを浮かべながら頷いた。

「ありがとうございます、先生の褒め言葉です。

私も努力します……」

五班の応援団員たちが駆け寄ってくると、選手たちに水分やタオルを配り始めた。

その中で蘇玉敏は秋羽の隣まで行き、彼女が特別に用意したタオルを渡しながら心配そうに言った。

「あらあなた、顔中に汗だらけよ。

拭いてあげるわ」

「えぇ……」と秋羽はタオルを受け取り、頬を拭った。

冷たい感覚が顔を包むようにしてくるのと同時に強い香りを感じた。

彼女は不思議そうに尋ねた。

「こんなにおいしいんですか?」

隣で胡州が皮肉げに笑った。

「そりゃあ蘇玉敏さんのタオルに残ってる匂いでしょうよ」

「死にがしら! そんな馬鹿なことを言うんじゃないわ!」

と蘇玉敏は胡州を睨みつけた。

「あなたこそ脇に寄ってろ!」

「おーい、そこの野郎! 追いついてこいよ」胡州は笑いながら走り去った。

秋羽は肩をすくめて言った。

「あんたったら本当に恐ろしいわね。

もし捕まえたなら皮を剥ぎ取るのよ」

蘇玉敏は秋羽にだけは優しく微笑んだ。

「ほら、冗談ですよ。

あの子は本当は優しいんですもの。

それに……」彼女は声を小さくして続けた。

「このタオルに香水をつけておいたんです。

いい匂いでしょう?」

「うん、確かに良い香りだわ」と秋羽が頷いた。

予選戦終了後、学校のスピーカーから全クラス集合のアナウンスが流れた。

各クラスが整列し、グラウンドに集まった。

体育部長が登壇して勝ち進んだクラスを順次読み上げた末、「以上の方々は来週の準決勝に出場します。

解散後は各教室に戻り、担任による反省会を行います」と述べた。

生徒たちが散開し、それぞれ教室へ向かう。

秋羽と何大剛らは凱歌を奏でるように五班の男女に囲まれて教室に向かった。

その背後に李偉が不機嫌な顔をしてついてきた。

普段から親しい数人の男女も一緒だった。

葛白東は歩みを止め、李偉が近づくのを待って並んで歩き出した。

「班長さん、そんなに野郎に腹立てないでくださいよ。

彼なんかと比べ物にならないでしょう」

「今は英雄だもの……」李偉は険しい表情で言った。

後ろから殷秀玲の声が聞こえた。

一七〇センチの高身長でプロポーションも良く、タイトなウェアに包まれた胸元が揺れる。

彼女は口が少し大きめだが整った顔立ちだった。

家は飲食店を営んでおり両親とも権力志向が強く、市会議員の息子が同じクラスにいることを知ると「高校卒業までにあの男と結婚させろ」と言い、家庭の後継者としての地位を得て江陽市の要所に近づくよう期待していた。



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