花間の高手

きりしま つかさ

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第0184話 生死状

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また三五手数の攻防が過ぎた時、聞印天は先ほどの勇猛さを失い、明らかに虎頭蛇尾の様相を見せていた。

慌てて防御するあまり体勢を崩し、後退しながら南面の壁際に近づいていたその瞬間、避け損ねた一撃が右頬骨に直撃した。

「ドン」

その重い一撃は鉄槌のごとく響き、聞印天の二本の前歯を即座に粉砕させた。

痛みで自然と口を開いた瞬間、血水と断牙が飛び散り、彼は体勢を崩しながらさらに後退し、木造の壁に衝突した。

相手の実力は予想外だった。

聞印天自身も勝利を期すのは困難だと悟り、視線を壁にかざされた鋭い馬刀へと向けた。

迷わずそれを掴み持ち直し、双目が赤く充血する中で野獣のような狂気を湛えながら叫んだ。

「斬ってやる!」

その瞬間、秋羽は三連の切りつける攻撃を放ち、彼は身を翻すように回避した。

息もせずに後退し続けた結果、ようやく馬刀の鋭利さに苦戦する秋羽が三歩下がり、危うくその一撃をかわした。

「ふざけるな! 勝てないから武器を使うのか? 卑怯者……」

南宮雪乃は憤然と叫んだ。

秋羽の勝利でテーブル上の十万円札が彼女のもとに移る瞬間だった。

しかし、その嫌らしい男が馬刀を手に取って再び攻撃を開始し、優位な状況に戻ったことに怒りが込み上げた。

南宮燦は眉根を寄せながら厳しい口調で責した。

「黙れ! これは生死状の単騎決闘だ。

武器を使うのは禁止されていない」

明らかに南宮家当主である彼は、聞老七との旧交を誇示するように発言していた。

聞印天が馬刀を構えると、楚涼霸も黒い顔をして罵声を浴びせた。

「くそっ! まだ人間の顔があるのか? 今度は武器を使うか、次は銃だぞ……」

その言葉は聞老七たちに向けられたものだが、同時に未来の娘婿である秋羽にも暗示があった。

楚涼霸は内心で毒づいた。

「お前らも同じ穴の仲鼠だな。

相手が銃を持てば負けたことになるんだから……」

しかし聞老七は鋭い目を光らせながら暗に考えていた。

秋羽が銃を持っているならこれは重大な問題だ。

「馬刀を使うのは許可だが、銃火器を使ったら即刻降参と決めておこう」

慣れたように頷いた南宮燦の言葉に楚涼霸は舌打ちした。

「ふざけんな! お前らが武器を使うならこちらも構わないんだよ。

秋羽、お前のポケットから銃を取り出せよ! 本当に打たないのか?」

一方で楚雲萱は冷ややかに鼻を鳴らし、馬刀の存在など関係ないと付け足した。

「武器を持っていても無力だわ。

勝負は変わらないでしょう……」

その通り、秋羽は短時間の劣勢から回復するものの、敵が鋭利な馬刀を持つため慎重に後退を続けた。

間もなく馬刀が斜めに斬り込んできた瞬間、彼は体を捻って回避し、寒気を感じるほどの鋭さが背中を掠めた。



秋羽が右足を光の如く振り上げたその瞬間、聞印天は腹部に激痛を感じて呻き声を上げながら三四メートル先の青石畳に転倒した。

しかしすぐに立ち上がり、血まみれの顔で周囲を見回すと、楚家側から「秋少様! 見事です!」

という喝采が湧き上がった。

「あれはただの乱暴だよ」

一連の動作を観察したチンピラどもが鼻をつまんで嗤う。

彼らの不満は聞印天が武器を使う卑劣さに向けられていた。

秋羽は勝利を呼び止めた。

軽やかに南側の壁面へと駆け上がり、地面すれすれで疾走するその姿は夜猫のように静かだった。

この動きを見た南宮燁と聞老七が息を呑んだのは、楚涼霸が「単なる軽功術では他に類を見ない」と褒め称えたからだ。

瞬きの間に秋羽は半人前の高さの強弓まで到達し、背負い紐を蹴り上げると鉄胎弓を右手で掴んだ。

足先で壁を弾くように跳ね上がり、恰好が矢筒の紐に絡まった。

その一連の動作は水のように滑らかで、観客たちの視線を釘付けにする。

「あれは何をするつもりだ?」

「冗談でしょう? あの弓は四石力もあるんだぞ」

「無謀にも程があるわ」

聞印天が立ち上がったその時、秋羽は地面に降りて狼牙羽矢を取り出し、慣れた手つきで鉄胎弓に搭載した。

息を詰めて弓を引き上げる様子を見て、観客たちが「まさか本当に……」と声を揃える。

「周倉将軍の憾地弓だという話は聞いたことがあるわ」

「そうよ、ずっと開けられなかったんだから」

聞印天は右肩に血を滲ませながら馬刀を構えた。

胸の痛みが全身を貫く中で彼は秋羽を見据えると、「力だけではどうしようもない」と冷ややかに笑った。

秋羽の目が鋭い光を放ち、矢先がわずかに動いた瞬間、弓弦が鳴り響く。

長さ一メートルを超す狼牙矢は疾風のように飛び出し、観客たちの視界から消えた。

「どっ!」

聞印天の右肩に矢が突き刺さると同時に彼は空中を舞い、馬刀を放ちながら西側の壁に血で染まった影を残した。

その惨烈な叫び声は闇夜に響き渡った。



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