花間の高手

きりしま つかさ

文字の大きさ
207 / 262
0200

第0207話 護身符

しおりを挟む
ヤントクサンは疲れたようにソファに座り、ハクヤリが彼の首を両手で掴んで膝の上で揺さぶっている。

白いスカートが高々と捲られ、その下から薄紅色のパンティースを見せる。

ヤントクサンは額に汗を垂らしながらも、ハクヤリの髪を撫でて笑う。

「老ふれてもお前の身体は若いわね」

「いや、お前の方がずっと若く見えるよ」

ハクヤリが舌を出すと、ヤントクサンは彼女の頬に軽くキスをしてから、机の引き出しを開けた。

そこには白い封筒が二つ入っていた。

「これを持って行って」

ハクヤリが封筒を受け取ると、ヤントクサンは窓際で日光を浴びながら深呼吸した。

彼の顔にはまだ先程の汗と欲望のあとが残っている。

「秋羽という男のことだな」

「ああ、あの不良ね」

ハクヤリが封筒を開けると、中から写真が出てきた。

少年の頬に痣がある。

ヤントクサンはそれを指差して言う。

「この痣は彼の父親のものだ。

父が殺された時、彼はまだ幼かったはずだが……」

ハクヤリは首を横に振った。

「でもどうせ死んだのはお前のせいでしょう? あの男もろくでなしだからね」

ヤントクサンは笑いながら封筒を机の上に戻した。

その中にあったのは、彼が秋羽の父親を殺害した時の写真だった。

血まみれの首と、少年の頬に残った痣。

「お前も見てみるか? これが全てだよ」

ハクヤリは封筒を閉じてバッグに入れた。

その目には興味が消えていた。

「でもどうせあの男はもう死んでいるんだろ? だったら何でこんな写真が必要なの?」

ヤントクサンは窓から外を見た。

遠くに第一高校の校舎が聳えている。

「彼はまだ生きている。

だからこそ必要なんだよ」

「そうだ……」楊徳山は口ではそう答えたが、内心で鼻をつまんでいた。

この破れ靴みたいな女が皇太后にふさわしいわけがない。

葉惜平のほうがもっと適任だ。

あのポジションは彼女にぴったりだろう。

くそっ、今や腕利きが来たら、俺は秋羽という小悪党を怖がらなくて済むぜ。

暇さえあればその娘を手玉に取ってやるさ。

校長の心眼は曖昧だが、一方で鈴音が響くと葉惜平は教科書を持って高三五組へ向かう。

安価なスーツが彼女の凹凸を強調し、白いシャツが張り詰め、黒いストッキングの美脚がスカートから覗く。

さらに艶やかな容姿も相まって、男なら誰でも心奪われる。

当然、男子生徒たちはこの美人教師に好意を持ち、英語の時間だけを待ち焦がれる。

目は彼女から離せないし、ふと「もし葉先生が俺の恋人だったら……」などと妄想してしまう。

秋羽も葉惜平を好きで、二人は姉弟のように慕い合っていた。

英語の授業中、秋羽はいつも真面目に取り組んでいた。

寝たり見たりしゃべったりせず、異常に集中している様子が隣の夏蘭の目には気味悪く見える。

彼女は舌打ちして言った。

「美女ってのは魅力的だよな。

お前の魂まで奪い取っちまうぜ」

秋羽は笑みを浮かべたが返事はしなかった。

内心ではこう思っていた。

「姉貴なら当然だろ。

それこそ当たり前のことさ」

楽しい授業の流れは早く、気がつけば下校時間になっていた。

葉惜平は机に集まった提出物を見ながら秋羽に向かって言った。

「秋羽くん?**

**1000**

**本を預けておいたわ」

男子生徒たちが羨ましげにため息をつく。

「なんていい仕事なんだろう。

美女教師と二人きりで……」

朱彪は教師の長い脚を見つめながら尋ねた。

「あいつら、羽哥は葉先生と仲良くする機会を狙ってるんじゃないのか?」

何大剛が首を横に振った。

「いやさ、羽哥のことだから送り物の美女でも興味ないんだろ。

楚姐や徐少が追いかけてるのに見向きもしないぜ」

孫涛は感心して言った。

「羽哥は女運がいいんだよな。

いつも好かれてるんだから」

多くの羨望と嫉妬に包まれた視線の中で、秋羽は厚い束の提出物を抱え、葉惜平の後ろについて教室を出た。

狭い事務室で秋羽は軽々しく椅子に座り、花柄の水筒を手に取って一気に飲み干した。

その瞬間、口の中に広がった甘酸っぱさが唇と歯茎を刺激する。

葉惜平は教科書を別の机に置き、その様子を見たとき不機嫌そうに言った。

「この野郎、また私の水筒から飲むのか?叩いてやるぞ」

彼女は彼の肩を軽く叩いた。

秋羽はカップを下ろし、ニヤリと笑った。

「お姉ちゃんなら構わないさ」

葉惜平が不満そうに言った。

「ふん、お姉ちゃんだって知ってるのか?約束したじゃないか、英語の補習をするってのに。

でもお前はただボールを蹴っ飛ばすだけだぜ」

秋羽は慌てて弁解するように言った。

「仕方ないさ、試合のせいなんだよ。

来週一回戦が終わったら毎日来て教えてもらうよ」

葉惜平は澄んだ目で秋羽を見つめながら興味津々に観察していた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

堅物御曹司は真面目女子に秘密の恋をしている

花野未季
恋愛
真面目女子が、やはり真面目で堅物な御曹司と知り合う純愛もの。 サラッと読める短編です♪

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...