闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0012話 「三年の誓約」

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その美しい青年の満面の笑みを見たとき、薫は細い眉をわずかに寄せて、彼の呼びかけにも答えず、背を向けて歩き出した。  
「薫さん!」  

薫が振り返ると、青年は白い顔で急いで追いかけると、最終的に薫の前に横切った。  
薫はその男に阻まれて足を止めた。狭められた目は少し閉じられ、彼女は淡々と彼を見つめていたが、一言も口を開かなかった。  

「薫さん……」  
少女の秋水のような瞳に見つめられた瞬間、平日から慣れている美男子たちは息を詰めたように呼吸した。普段の鋭い言葉は、今や機能しなくなっていた。  

「ガレオ様、無事ならお通りください。私は用事がございます」  
薫が顔を赤くして見つめる青年を見ると、ようやく口を開いた。その幼い声は、向かいの男の白い顎に病的なほどの赤みを生んだ。  

「ふふ、薫さん、あなたは市場で何か買われるお気付きでしょうか?このガレオも暇なので、一緒に散策しませんか?」  
薫を見つめる青年は深く息を吸い込み、笑顔を作った。その笑顔は、彼の立場と外見にふさわしく、これまで何度も彼女たちを手に入れた経験があるようだ。  

「ガレオ様、私は用事があります。お通りいただけますか?」  
薫が小首を横に振ると、その声はまったく感情のないものだった。  

ガレオの言葉を断り返すと、彼の口角がゆらりと動いた。しかし顔には笑みを保ちながら、手袋の中から何かを取り出した。  
淡い藍金色の手首用具は金鋼鉄で作られ、その接続部に磨き抜かれた緑色の魔晶がぶら下がっていた。微かな緑光がチェーン全体を美しく彩り、その価値は明らかだった。  

「ふふ、薫さんには用事があるとのことですが、ガレオがそれを阻むのは強人難に当たるでしょう」  
ガレオは手首の装飾を握りしめながら、優しい口調で言った。  
「これは市場で特別に購入した木霊の手首用具です。価値も高くないですが、その魔晶は1級の木属性で、斗気の回復を助ける効果があります。薫さんはまだ斗者ではないため、これこそ最適な装飾品です。ささやかなお気持ちですから、ぜひ受け取ってください。ガレオが部下たちの前で恥ずかしい思いをするのは避けたいものです……」  
最後に彼は軽いジョークを交え、周囲の部下たちも笑い声を上げた。  

薫は再び眉を寄せて、ガレオの行動を見つめた。彼女の長い睫毛が一瞬揺らめき、冷静な表情はやさげてきた。  
その視線が手首用具に向けられたとき、先ほど炎山で見た少年の姿が脳裡を掠めた。薫の整った顔に、初めてほのかな優しさが滲んだ。

薰の様子を見ると、ガレオは胸中で喜びを抑えられず、急いで木霊の鎖を少しだけ前に出した。笑顔を浮かべながら、「薫さん、遠慮なさいますよ。加列家と蕭家はウタン城三大勢力の一つですから、ちょっとした贈り物くらいあっても誰にも言わないでしょう」と言った。

「手に取って魔晶を蕭炎さんに渡せばいいんです。その鎖……彼が気付く前に、置いておくだけだ」。薫の頭の中で皮肉な考えが浮かんだが、すぐにそれを払い去り、手を伸ばそうとした瞬間、ガレオの手が先に動いた。薫の小さな手は掌で包まれた。

手を掴まれた薫は驚き、体中の斗気(どうき)が急激に流れ始めた。腕を引き抜こうとするその時、背後から軽い息遣いが聞こえた。視線を移すと、突然現れた蕭炎の顔が目に入る。まだ子供のような頬骨の上に、不満げな表情があった。

「この男は何か?薫さん、知らないのか?」萧炎は目で剝んで見せ、口では笑みを浮かべて言った。「ガレオ様、その気持ちは嬉しかったけど、薫さんは受け取りません。お返ししますね」

ガレオが混乱した表情を見せるのを見て、蕭炎はさらに続けた。「あなたたちのやり取りを観察していると、ものすごく滑稽な感じだよ。無理に好意を強制するなんて、どう考えても危険だわ。あなたのような真面目な姿勢は、逆に信用されないかもしれない」

ガレオは顔を引きつらせたが、その場で感情を見せるわけにはいかなかった。皮肉な笑みを浮かべて、「萧炎さん、薫さんが何も身につけていないのを見て、ちょっとした気遣いをしただけです。少しの飾りでも、彼女に美しさを加えるのに十分でしょう」と言い返す。

蕭炎はため息をついた。「手首の鎖が好きなら、こちらも見てください。地元で買った安物ですよ」そう言って、淡緑色の腕輪を取り出した。その価値はガレオの木霊の鎖とは比べものにならない。加えて、蕭炎の腕輪は魔晶製ではないし、式も実用性も全然違う。

「萧炎さん、あなたが家族でどうなっているのか知らないけど……薫さんにそれだけ安いものを贈るなんて、本当に大丈夫ですか?」ガレオは皮肉を込めて尋ねた。

蕭炎は少女の呆けた顔を見やると、「欲しいなら取ればいい。欲しいものでもないなら捨ててください。その程度の金銭的価値しかないんですから」

加列奥とその部下たちが嘲弄する声を上げた瞬間、突然彼らの笑いは凍りついたように止まった。皆が目を見開いて驚いている姿は滑稽極まりない。


白い肌の整った顔に薄い赤みが浮かんだ。薰(くん)は少し恥ずかしそうに手首にブレスレットを装着し、清らかな笑顔で炎(くん)を見上げた。「ありがとう、炎(くん)ね」

加列オの頬が微かに赤くなった。彼は口元を歪めて言う。「ふん、この薫ちゃんは他にはない個性だわね。私は少し見くらしたけど」

炎(くん)は加列オの胸元にある金星マークに視線を移し、内心で驚いた。「去年会った時は九段の斗気だったはずなのに、今年で斗気旋が完成したんだな。21歳で一星の斗者になるなんて……才能は上等だけど、特別でもないかも」

炎(くん)は加列オの滞留を不快に感じた。「このままここにいるのか?加列オさん。薫ちゃんはまだ幼いから早恋の遊びには乗れないわ。だからもう少し他家のお嬢さんたちと遊んでちょうだいよ」

「これからも近づかないで」

炎(くん)は加列オの顔を無視し、薫(くん)に威厳のある声で諭す。「薫ちゃん、この男は危ないから。私の言う通り、距離を置くんだ」

「わかったわ」

薫(くん)は目を瞬かせながら頷いた。加列オは彼女にとって数回しか会ったことのない他人だ。一方炎(くん)は薫(くん)にとって絶対に代えられない存在。炎(くん)が遠ざけると言えば、薫(くん)も迷わずそれに従う。

この選択は薫(くん)にとっては簡単な問題だった。

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