闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
84 / 1,458
0000

第0084話 「火奴の襲撃」

柳席は今、空前の興奮に包まれていた。

その源は眼前に立つ小柄な青衣少女だった。

その少女は清雅な装束を身に纏い、整った顔立ちが化粧なしで自然体だ。

滑らかな黒髪は短く緑の帯で束ねられ、腰まで届く長さで微風に揺れ動く。

細いウエストには淡紫のリボンが絡み、その曲線を鮮明に浮かび上がらせていた。

通りすがりの視線も自然とそこに集まり、誰もが「この抱きしめたい」と思わず眉を顰める。

少女の顔を見つめる柳席は手のひらが震えていた。

これまで遊んだ女性とは明らかに違う純粋な美しさに、子煩悩の柳席は即座にその身を己のものにしたい衝動を抑えられない。

一歩目で倒された蕭寧を見て、柳席は笑みを深めた。

「花を守るには実力が必要だ。

君はまだ不十分だ」

「柳席さん、彼女が危ない」後ろから声がした。

その声の主は加列奥だった。

巨漢たちに囲まれた彼は、皮肉な笑みで付け加えた。

柳席は少女の長い脚を目にし、賞賛の目線を送った。

「またもや傑作だね。

今日は本当に幸運だ」

「一品薬師か?職章を見ればすぐ分かる」周囲が驚き声を上げる。

その光景に柳席はさらに笑みを広げた。

徽章には古風な薬炉が描かれ、表面の銀色の波紋が日光を反射して異様な輝きを放っていた。

「一品薬師ですか?」

職業徽章を見た人々が声を上げる。

その驚きの声は柳席の笑みをさらに強めさせた。



一品煉薬師の名を聞いた瞬間、蕭玉は顔色が変わった。

しかし彼女の性格からして、この目立つ男と街歩きをするわけにはいかない。

すぐに冷たい声で断り、「暇じゃない、他の人に頼め」と言い放ち、薰兒の手を引き回転した。

その瞬間、人群中から数人の大漢が現れ、彼らは淫らな笑みを浮かべて道を塞んだ。

柳席が目線を交わすと、蕭玉は顔色を暗くして振り返り、加列奥に冷ややかに告げた。

「ここは我が家の領地だ。

お前はあまりにも横暴だ」

「ふん、蕭家?強いのか?ただ凝血散で人気を取り戻しただけじゃないか。

もし私が本気を出せば、貴方たちの家を瓦礫にするのも簡単だよ。

回春散なんて、私の日常的な薬くらいに過ぎない」柳席は白い袖を撫でながら得意げに語った。

その言葉を聞いた瞬間、蕭玉の顔が怒りで歪んだが、しかし口に出すことはせず、煉薬師の実力を考えると、あまり刺激的な言動は避ける必要があった。

薰兒だけが、この醜い男が萧炎の時間を阻んでいることに我慢できなかった。

「小娘、目を覚ませ」と薰儿は目を上げて柳席を見つめ、「屑は屑だ。

少し実力を見せたら自慢するのか?貴方のような自己顕示症者は、蕭炎お兄様曰く、ただの『バカ』さ」

大通りが一瞬息んだ。

多くの人々が驚きの表情になる中、清潔な外見の少女がこんな言葉を吐くとは思ってもいなかった。

「我ながら…愚かだね」と萧玉は薰儿を見つめ、やがてため息のように口にした。

「私はずっと言っていたわ。

この子はあの小坊主に染まったんだから」

柳席の顔色が次第に暗くなり、「数十年間で初めて、こんなことを言われたな」と陰湿な声を出す。

「愚かだね…」薰儿は額を撫でながら考える。

「この男がもし白痴なら、それ以上でもない。

そうでなければ、自己過大評価のバカだ」

柳席が顔色を変え、「加列奥、動いてくれ。

本来は正面からやろうと思っていたが、彼女たちが拒否したから…」と冷たい声で命じた。

「え?」

加列奥は戸惑いながら頭をかく。

「この男は本当に薬以外の何物でもないのか?父も言っていた通りだ。

なぜこんな連中が煉薬師に成り得るんだ」

ため息をつき、加列奥は笑みを浮かべて言った。

「柳席さん、我々加列家は蕭家の牙城には近寄れないわ。

柳席さんが彼女を得たら、本当に蕭家を崩壊させるのか?回春散以外にも私が調合できる薬は幾つかある。

そのうちの一つでさえも、蕭家がかつてのような境地に戻る」



「聞いてみれば、ガレオは再び呆然とし、この男が簡単に己の底を曝け出していることに気付いた。

彼は暗い喜びを感じながらも、『やはりIQが低いほど薬師になる確率が高いのか』と感心した瞬間、掌を振るった。

「捕まえろ!」

と叫んだ。

ガレオの言葉に反応して、背後から十数名の巨漢たちが凶悪な表情でシュウエーたちに囲み込む。

その光景を見て、蕭玉は柳眉を逆立てて冷笑し、腰間の緑色の鞭を引き抜き、急ぐように近づいてくる巨漢に向かって強く打ち下ろした。

「パチリ!」

という音と共に、相手の顎に長い血痕が走った。

蕭玉は三星斗者だが、十数名の巨漢たちも同程度の実力。

数人にやっかいをかけたものの、段々と不利になり始めた。

そのとき、蕭寧が「姐さん、気をつけなさい!」

と叫んだ。

すると、先ほど鞭で叩いた巨漢が顔中に血痕を流しながら、胸元に鉄拳を振るう。

蕭玉はその卑劣な攻撃を見た瞬間、掌に斗気が集まりかけたが、突然黒い影が現れ、凶悪な力技で巨漢の顎を強打した。

相手は血まみりで地面を滑って数メートル後方まで転がった。

「今から動いた連中は全員仕留めとっしゃん」

少年は鉄棍を握り、柳席とガレオに冷たい目を向けた。

唇を噛んで小さく呟くように言った。



感想 0

あなたにおすすめの小説

姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
 リクスには、最強の姉がいる。  王国最強と唄われる勇者で、英雄学校の生徒会長。  類い希なる才能と美貌を持つ姉の威光を笠に着て、リクスはとある野望を遂行していた。 『ビバ☆姉さんのスネをかじって生きよう計画!』    何を隠そうリクスは、引きこもりのタダ飯喰らいを人生の目標とする、極めて怠惰な少年だったのだ。  そんな弟に嫌気がさした姉エルザは、ある日リクスに告げる。 「私の通う英雄学校の編入試験、リクスちゃんの名前で登録しておいたからぁ」  その時を境に、リクスの人生は大きく変化する。  英雄学校で様々な事件に巻き込まれ、誰もが舌を巻くほどの強さが露わになって――?  これは、怠惰でろくでなしで、でもちょっぴり心優しい少年が、姉を越える英雄へと駆け上がっていく物語。  ※本作はカクヨム・ノベルアップ+・ネオページでも公開しています。カクヨム・ノベルアップ+でのタイトルは『姉(勇者)の威光を借りてニート生活を送るつもりだったのに、姉より強いのがバレて英雄になったんだが!?~穀潰し生活のための奮闘が、なぜか賞賛される流れになった件~』となります。

勘違いで召喚して来たこの駄女神が強引すぎる 〜ふざけたチートスキルで女神をボコしながら冒険します〜

エレン
ファンタジー
 私は水無月依蓮《みなづきえれん》、どこにでもいる普通の女子高生だ。  平穏な生活を送っていた私は、ある日アルテナと名乗る女神に召喚されてしまう。  厨二臭いその女神が言うには、有給休暇で異世界冒険したいから、従者としてついて来なさいとの事。  うん、なんだその理由は。  異世界なんて興味ない、とっとと私を元の場所に返せ。  女神を殴ったり踏みつけたりしてやっと返してもらえるかと思いきや。  え? 勝手に人間を異世界に呼ぶのは天界の掟で禁止? バレたら私も消される?  ふざけるなー!!!!  そんなこんなで始まる私とポンコツ女神アルテナのドタバタ異世界冒険。  女神が貴族をハゲさせたり、「器用貧乏・改」と言うふざけたスキルを習得したり、ゴブリンの棲家に突撃する羽目になったり、手に入れた家が即崩壊したり、色々起きるけど全てを乗り切って見せる。 全ては元の世界に帰るために!!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 他サイトにも投稿しております。 ※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。 ※無断著作物利用禁止

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

即席異世界転移して薬草師になった

黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん) 秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。 そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。 色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。 秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

極うま魔獣肉に魅了されたおっさん冒険者は辺境の町で訳あり美少女エルフと癒し食堂を始めたようです

夢幻の翼
ファンタジー
長き期間を冒険者として過ごした俺――グラードは四十五歳を迎えるにあたって冒険者を引退、かつてから興味のあった料理人へと転職を決意した。調理は独学だが味に自信のあった俺は店舗経営の知識修得の為に王都の人気料理店で修行を始めるも横柄なオーナーのせいで店はおろか王都からも追放されてしまった。しかし、魔物の素材に可能性を見いだしていた俺は魔物が多く住むと言われる北の魔樹海側の町を拠点とし、食堂経営に乗り出すことに。 旅の途中で出会った変わり者の魔白猫や呪いのために一族から追放されたエルフの少女と共に魔物素材を使った料理で人々を幸せに癒す。冒険者を引退した料理好きのおっさんが繰り広げるほのぼのスローライフ開幕です。