闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
164 / 1,458
0100

第0174話 煉薬師の極上待遇

しおりを挟む
「二品薬師の試験に再び申し込むのか?」

蕭炎の言葉は、フランクとオットを呆然とさせる。

そして隣で雪姫とリンフィも手を止めて、石台の少年を見上げた。

大庁には全員がその視線を向けている。

もし前回の一品薬師試験を突破したことが驚異だったなら、今度は二品薬師への再挑戦が彼らの目を釘付けにした。

19歳で一品薬師となることは珍しいが、加マル帝国にはそれなりに存在する。

しかし19歳で二品薬師となるのは本当に稀だ。

丹王クルトもこの年齢ではまだ一品薬師の段階だったというのに…

もし蕭炎が今度の試験を突破すれば、将来的な成就は丹王クルトを超えてもおかしくない。

「天に翼を広げて…黒岩城から出てきた怪物を見たか?」

と大庁で人々は顔を見合わせ、笑みながら呟く。

「その子は二品薬師の試験を本当に受けるのか?」

リンフィが少年の微笑ましい顔に目を向け、眉をひそめて尋ねた。

「斗士級になっているのか? あなたはそれには達したか?」

笑みながら、蕭炎は美しいリンフィの顔を見つめ、「ただ試してみたいだけだ。

通るかどうかは関係ない」と答えた。

「本当に二品薬師の試験を再挑戦するのか?」

フランクとオットが目配りし合い、重ねて尋ねた。

「問題なさそうか?」

オットも顔色を変え、「この小男がもし二品薬師の試験に合格したら…それは本当に驚異的な存在だ。

加マル帝国の薬界史に記憶すべき人物になるかもしれない」と考えていた。

「成功率は五分くらいかな」萧炎は唇を噛み、二品丹薬の成功率を慎重に計算した。

そのデータを聞いた瞬間、オットとフランクが同時に体を震わせた。

他の人々も表情を引き締めた。



第二段階の薬を錬成する際には相当の失敗率がある。

現在場にいる一部の薬師も、五割以上の成功率を保証できないと胸中で考えている。

しかし目の前の少年は笑顔でその言葉を述べた。

すると二段階薬師たちの頭の中で疑問が生じた。

彼らは蕭炎の言葉を完全に信用できなかった。

なぜなら彼にはあの奇妙な炎があるからだ。

「五分……」と雪魔が口の中でつぶやき、石台内の少年の背を見ながら心の中で思った。

「この男はあまりにも無謀すぎるわ」

「どう? 続けて試験を続けるか? どうしてもだめなら諦めていい。

僕はただ黒岩城に一時的に滞在しているだけだし、もし機会があれば他の場所に行ってみよう」

フランクとオットが返事をしないのを見て蕭炎はため息をつきながら言った。

「ちょっと待って! それはできない! 黒岩城の薬師連盟が同行者たちに見せる絶好のチャンスだ。

だから萧炎が他所で試験を受けたらその機会を他人に奪われてしまう」

フランクは急いで言い、オットと目配りをした。

二人とも相手の目から興奮の光を見た。

フランクが手を振りながら叫んだ。

「来い! すぐに第二段階薬師試験の手続きを準備せよ」

背後の数名の薬師たちが列を組み、側室へ向かって走り出した。

その側室には「第二段階薬師試験場」と書かれていた。

「いいわ、続けて受けるけど、おじさんたちにだまされないように気をつけなさい」フランクは拍手をして蕭炎に笑いかけた。

「頑張ります……。

ところで試験をパスしたら連盟に登録すると何か特権があるんですよね?」

蕭炎が石台から降りて笑顔で尋ねると、フランクはうんと頷いて続けた。

「そうだよ。

薬師が薬を作る際に必要な珍しい素材が必要になる場合、個人だけで集めることはできないから連盟に登録すれば交換権利を得られる。

例えばあなたが何らかの薬を調合する際に不足している素材があれば、他の薬師がその素材を持っているなら双方が納得する限りで連盟が仲介するんだ。

ただし前提はあなたが相手側に満足させる品物を用意することだ」

蕭炎は顔をほころらせながら頷いた。

「素晴らしい制度ね……」彼の目には期待の光が浮かんでいた。

薬師連盟のこの措置なら多くの薬師が遠征する手間を省けるから、自分が今欲しいものを探しに回る必要はなく、試験をパスしたらフランクに頼んで調べてもらうつもりだった

「さて、二品薬師の審査は設定完了だ。

僕について来い」

フランクが小屋から出て来た数名の薬師を見回した。

彼らが彼に頷くと、ようやく笑みを浮かべた。

「ん」蕭炎が小さくうなずき、フランクの後ろについた。

その背後にオットーも続き、彼が小屋に入る瞬間、フランクは外に向いて伸びかけた人々に向き直し、「二品薬師の審査は一品薬師とは異なるから、ここで待っていてくれ。

すぐ答えが出るよ」

「先生…ちょっとだけ見せてください?」

オットーの言葉を聞いたリンフィが慌てた表情で駆け寄り、彼の袖を引いた。

「これは薬師会の定番だ。

僕もどうしようもない。

ここで待っていてくれ」オットーは首を横に振ると、袖を軽く震わせた。

リンフィが一歩後退した瞬間、オットーは小屋の中に飛び込み、ドンと閉めた。

「むっ、何だかムカつくわ」リンフィは閉ざされた扉を見つめながら不満げに唇を尖らせた。

振り返り、リンフィが雪魔の平静な顔を眺める。

彼女に近づいて小声で尋ねた。

「あの人は成功すると思う?」

「さっき聞いたじゃない?五〇%の確率だよ。

これくらいは普通じゃないか?」

雪魔が横目でリンフィを見やった。

「うっ」リン菲が唇を突き出し、紫色の衣の下に伸びる長い脚を揺らした。

その動きだけで会場の一部の男たちの視線が集まる。

「あー、二年間一品薬師になるのも立派なのに、この突然出てきた奴はもっと凄いんだ。

年齢も僕たちより若いのに、二品薬師の資格があるなんて、本当に人を打ち沈めるわ」

リンフィが偏頭して競争相手を見やった。

「あー、確かに。

雪魔もそう思う?」

リン菲が小声で尋ねた。

「地に立つ者たちの間にも、この男より優れた者はいないんだよ」雪魔は笑みを浮かべた。

「えっ? あなたは以前『黒岩城の若手では誰も超えない』と言ったじゃない。

今はその時と同じ人物か?」

「ごめん、彼は黒岩城の人じゃないわ」雪魔が頬を染めた。

リン菲に笑みを向けながら続けた。

「勝手なこと言わないでよ。

あなたならでも、彼の才能には敵わないわ。

あなたの先生は黒岩城の頂点人物だし、その指導した生徒がこれだけ凄いなら、先生自身も相当強いはずだ」

「関係ないわ。

好きなら好きでいいけど、オットー先生と私の先生は並ぶ存在よ。

あなたのお父さんは黒岩城の城主だもの」

雪魔が笑顔を浮かべると、リンフィが歯車を噛み合わせた。

「きゃー…僕たちの家臣でさえ城外三十リーグまでいるのに、そんな余裕はないわ」

リンフィが目を回し、軽く跳ねて石台に座った。

紫の衣の下から伸びる脚は優美に揺れ、周囲の視線を集めてしまう。

「あー、この子の才能は確かに凄いけど…」雪魔が眉を上げた。

「審査終わった?」

リンフィが目を凝らすと、ドアが軋んで開いた。

フランクとオットーが出てきた。

お互いいつも通りの視線で会う。

その様子を見てリンフィと雪魔は眉を顰めた。

「敗北したのか?」

「彼の薬師才能は驚異的だ…本当に賞賛しないわけにはいかない」

フランクが手を広げて笑った。

「この子は、黒岩城の薬師会に生まれて初めて、最年少二品薬師になるかもしれない」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...