闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0201話 蛇女月媚

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晴れ渡る空の上に巨大な炎日が高く掲げられていた。

それは不気味な赤い火の玉のように、灼熱の太陽が金色の砂漠を照らし、細かい沙粒を真っ赤な鉄片のように焼き黒くしていた。

黄砂の中から蒸発する熱気が空間を歪ませ、虚ろで不確定な光景を作り出している。

無限に広がる砂漠の先端に、黒い人影が突然現れた。

その顔は風と炎で焼け爉され、数日間の沙漠生活の証である。

彼は重い足取りで高い沙丘を登り、四方八方に視線を走らせた。

ナギョウから羊皮地図を取り出し、正確なルートを確認する。

指先が地図上の赤いラインを辿りながら、炎の顔色が「塔ゴル大沙漠の深部に近づいているようだ」とつぶやいた。

「この広さは尋常じゃない…石漠城からここまで半月もかかったんだ。

地図に記載された補給ポイントがあるからこそ、楽なもんじゃねえ」そう言いながら、炎は紫雲翼を展開して安全な時間帯に飛び立つ。

他の時間は歩行するしかない。

塔ゴル大沙漠には、潜伏する魔物や蛇人族が厄介だが、炎にとっては問題ない。

地図と薬老の強力な魂魄感知で常に先回りして回避できるからだ。

偶然遭遇した時は容赦なく討ち取る。

大量の蛇人に囲まれたら危険だからね。

しかし紫雲翼や地図があっても、炎が深部まで到達するのに半月は必要だった。

それゆえに先ほどのため息と苦笑があったわけだ。

指先が赤い点を辿り、最後に8つの警告マークの一つに止まった。

その赤い小点は沙漠各地に存在し、全てが危険な地雷原のようなものだった。



タゴル大砂漠の蛇人族の中には、中小型部族を除くと8つの巨大な部族が存在する。

地図上に赤点で示されたこれらの部族は、蛇人族中最強の勢力であり、砂漠における地位も非常に高い。

美デューザ女王を除けば互いに認め合わないほどだが。

タゴル大砂漠の8つの巨大な部族が主要方向を支配している中、地図上に一本線で示された中央路は、蕭炎が指差した赤点によって遮断されていた。

彼は眉を顰めながら赤い光るマークを見つめて嘆息する。

「本当に運が悪い…」。

「こうもあれば迂回ルートを取らねば」と苦笑しながら首を横に振った。

薬老という強力な底牌があるとはいえ、タゴル大砂漠で無闇に突進することは危険だ。

蛇人族が加マ帝国と数百年間対峙し存続した理由はその強さにある。

単身で蛇人の領地を横断するなど愚かである。

「沙漠の奥へ向かう前に水を補給すべきか…先日準備した分はもう1日以上経過している」。

ナットに保管された水源を見て嘆息し、地図を見つめる蕭炎は、最も近い緑洲マークに視線が止まった。

「あの緑洲と蛇人部族の距離が近すぎる…見れば分かるように赤点のゴ壁から至近距離だ」。

周辺100里内に他に水場がないことを確認し、蕭炎は地図をナットに戻して呟く。

「地図上では近いように見えるが実際には数十里離れているはず…水を集めるだけなら問題ない」

そう言い聞かせた後、彼は歩き出す。

山を見れば馬も死ぬが、地図の線幅を追うだけで3時間以上歩くことになった。

日没近くになってようやく緑洲の木々の影が遠くに見えた。

平原に位置する小規模な緑洲を見て安堵し、背中の玄重尺を再確認した。

周囲に蛇人の気配を感じなかったため、薄明かりの中で静かに近づいた。

森の中に潜入すると蒸れも和らぐ。

小草の香りを嗅ぎながら深呼吸し、水場を探すために樹木間を移動する。



随着蕭炎の視線が次第に広がり、彼は徐々に砂漠の奥深くへと進んでいった。

その時、久しく水を求めていた心の中で焦燥感が生じた瞬間、前方から微かな水音が聞こえた。

その清澄な水声に耳を傾けた瞬間、蕭炎は息を吐き出した。

激しい渇望が一気に緩和され、彼の視線は突然止まった。

そこには、何人かの蛇女たちが立っているのが見えた。

その目は鋭く、手にした武器は常に構えている。

彼女の肌は黒みがかかり、菱形の瞳孔としなやかな腰が異様な魅力を放っていた。

「なんだよ……こんな時なのに?」

蕭炎は舌打ちをしてから、息を殺して進んだ。

月明かりの中で、彼は水場に近づいていった。

水面には澄んだ湖水が広がり、断水で憔悴していた彼の喉は自然と唾液を生じさせた。

「プチッ」

その瞬間、水面から人影が浮上した。

背中越しに見えた女性の体は完璧に彫られたように美しかった。

月光がその白い肌を照らし、豊かな胸元や細長い腰が露わになる。

彼女の目には妖艵な色気が滲んでいた。

「この体……ベッドで見たらどうなるか想像したら……」蕭炎は血の気が引くのを感じた。

その瞬間、月明かりに浮かび上がった女性の全身が露わになった。

蛇女たちの目は鋭く、彼女の背中には水滴が光を反射していた。



灼熱の地獄世界を飛翔する炎の男。

岩漿の海に浮かぶ巨大な炎の塊が、その身体を包み込む。

胸がドキドキと鳴る。

もし今ここで斗気が途絶えたら、この体は灰になるだろう。

灼熱の空をさらに進むと、肌が赤く染まり始めた。

衣服の表面は乾き切っていた。

火星一粒でも当たればたちまち炎に変わる。

再び前へ向かう途中、後ろを振り返ると、通路口は小さくなっている。

そこには二つの小さな影が彼を見つめていた。

その影たちを見ると、炎の男はため息をつく。

手を振ろうとした瞬間、突然耳に届いたのは鋭い叫び声だった。

「主人!あの生物が追いかけています!すぐ戻りなさい!」

その声で背筋が凍りつき、彼は即座に方向転換した。

翼を広げて通路口へ駆け出した。

彼の動きと同時に、下方の岩漿湖では突然爆発的な音が響いた。

無数の熱い岩漿が四方八方に飛び散る。

その瞬間、巨大な謎の生物が岩漿から飛び出し、炎の男を追うように襲いかかった。



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