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第0265話 己を頼りに
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顔色が変わりながら手にした淡蓝色の金属片を見つめる。
雲嵐宗の支配者であるこの女性は、普段なら平静な表情を崩さないのに、急激に焦りの影が浮かんだ。
その細い手がぎゅっと握られ、心の中で色々な思いが渦巻く。
「海之心甲の破片がなぜここで?もしかしたらあの男はここにも潜んでいたのか?海之心甲が壊れているなら、彼も重傷を負っているはずだ。
この男、どこにでも絡んできたものか」
地面を見渡すその目には焦りが色濃く、異様な感情の波が揺れ動く。
しかし、何の痕跡も見つからない。
「雲韻宗主、どうされた?」
隣に立つ老者は驚いて尋ねた。
彼は初めて雲嵐宗の支配者がこんなにも多くの感情を露わにするのを目撃したのだ。
「ふふん、大したことないわ」老者の声で我に戻った女性は、慌てて海之心甲の破片を納戒に収め、「加老、私はあの4人の斗皇級強者たちの正確な出自を調べるべきだ。
彼らが他国からガマ帝国に入ったのは遊びではないはずよ」
その言葉に老者は意外そうに目を見開いた。
彼女は普段、そんなことに興味を持つタイプではない。
「先ほどの金属破片は一体何なのか?」
老者は不思議そうな表情で首を傾げる。
帝国の守護者である彼にとって、他国からの強者の調査は当然の仕事だが、雲嵐宗が自発的に申し出たことに驚いた。
「そうか……」老者は笑みを浮かべて頷いた。
「次は石漠城だ。
まずは情報収集から始めよう」
女性はその地に降り立ち、老者も後に続く。
3日後、石漠城の漠鉄傭兵団本部で、ベッドに横たわる少年が目を閉じている。
彼の呼吸は弱く、まるで突然息を止めるのではないかと心配させるほど不規則だ。
周囲には誰かが出入りする気配があり、その度に低くため息が漏れる。
ベッド上の少年の指先がわずかに震え、しばらくして微かな呼吸が強まった。
さらに数分経て、彼は目を開けた。
優しい光が部屋を包み、少年は疲れきった体を横たえていた。
少しだけ息せば、待ってもやっと意識が完全に覚醒した。
記憶が急激に脳裡から浮かび上がってくる。
蕭炎はその始末を思い出し、苦しく笑った。
「傷ついたのか?」
と回想する。
当時の破滅的な炎の波が襲い掛かった瞬間の激痛を想起し、彼は再び苦笑した。
鼻孔に漂う僅かな蘭の香りを吸い込み、意識がさらに明確になる。
ゆっくり目を閉じ、心神が体内へと浸透していく。
突然、蕭炎は目を見開いた。
内部の破壊状態は想像以上で、まるで何らかの凄まじい力をもって強制的に崩したようだ。
彼は胸が沈み込むのを感じた。
自分が受けた傷の深刻さを予想していたものの、これほどまでとは思わず、この惨憺な状況に呆然とする。
他の誰なら完全に無残な姿になることを悟りながらも、蕭炎は「今回は大変だ」と口に出した。
気脈(けみゃく)の中央部に光点が微かに動いている。
そこには最大の底牌である青蓮の心火が隠されていた。
しかし現在の経絡状態では、その炎を引き出すことはできなかった。
蕭炎は心神を撤退し、目を開いた。
苦しく首を横に振りながら息を吐くと、突然「薬老(やくろう)」という名前が脳裡に浮かんだ。
「先生?先生?」
と呼びかけたが返事はない。
時間の経過と共にその心はさらに沈む。
緊張感から口が乾き、不安が胸を締め付けた。
かつて天才から一朝夕で無能になる瞬間と同じような恐怖に襲われる。
唇を嚙みながら掌を開くと、指先には何事もなかったように黒い古びた戒(かい)が静かに輝いている。
その存在が彼の不安を鎮め、蕭炎は再び目を閉じて魂魄(こんぱく)を結集させ、戒に触れた。
魂の力が黒い指輪に触れた瞬間。
巨大な吸引力が突然その中に爆発し出した。
そして蕭炎はそれを防ぎもせずに吸い込まれた。
魂の感触は最初真っ暗だったが、次第に薄白い光に包まれた。
その光の中には薬老の虚ろな姿が浮かび上がり、彼は笑顔で蕭炎の小さな魂を見つめていた。
「小坊主、ようやく目覚めたか」薬老が近づいてきた。
「大丈夫かい?」
「老師、お大事ですか?」
薬老の姿を見て萧炎は心配そうに答えた。
彼は以前なら直接魂を通じて会話できたのに、今は黒い指輪に入らなければ通じないことに気づいた。
つまり薬老の状態はかなり悪いようだ。
「良い知らせと悪い知らせがある」
薬老が笑って蕭炎の虚ろな姿に手を置く。
「まず良い知らせは、お前を賞賛するよ。
あの仏怒火蓮を作ったことか。
その破壊力は驚異的だ。
俺でも感心した。
もし完成させたら同レベルでは敵うまい」
蕭炎の顔には喜びがなかった。
仏怒火蓮の威力は確かに凄まじいが、その代償もまた恐ろしいほどだった。
「悪い知らせは、お前自身の体が酷く破壊されていることを気づいたか?」
「ええ、かなり深刻です」蕭炎は頷いた。
「もう崩壊寸前ですよ」
「ふん。
傷は重いけど治療すれば回復するよ。
俺が休養プログラムを伝えるから、それを守れば元に戻れるさ」と薬老は笑った。
「それ老師はどうなされますか?」
薬老の言葉に弦外の音を感じた蕭炎は急いで尋ねた。
「俺は……これが最大の悪い知らせだ。
お前が完璧な爆発を成功させたことは立派だが、そのために俺から70%以上の魂を吸い取った。
さらに最後の火の波で保護した結果、俺の魂はほとんど消耗しつくされた」
蕭炎の顔色が急変し、彼の虚ろな姿も激しく揺らぎ始めた。
「落ち着け。
魂が尽きても回復可能だ。
ただ……以前のように長期間眠り続ける必要があるかもしれない」薬老は緊張した萧炎を見つめながら優しく言った。
「しばらくは俺はお前を守れない。
全ては自分でやるしかない」
笑顔の薬老を見て蕭炎は目を赤くし、拳を握り締めた。
「ごめんなさい、老師」
蕭炎は自分が勝手に異火融合を試みたからこそ、薬老の魂がここまで消耗されたのだ。
もしやらずにいれば眠りで回復する必要もなかったはずだった。
「ふふふ。
自責する必要はない。
しばらく眠っているだけだ。
完全に消滅したわけじゃない。
あなたが作った仏怒火蓮は、とても気に入っているよ。
私の弟子として、確かに特別な存在だ」
薬老は萧炎の肩を叩きながら笑った。
「いい加減にしろ。
残りの霊力もすぐになくなる。
出ていけ。
青鱗のことには心配するな。
あの緑蛮は墨家のように扱わないと誓う。
安心して」
薬老の体が次第に透明になっていく。
彼は萧炎に手を振って笑った。
「先生、お大事に!」
蕭炎は両膝を地面につけ、頭を深々と薬老の前に突き伏せた。
薬老は満足そうに、この変化を経て成長した少年を見つめた。
彼の体は完全に消散し光環の中に溶け込んだ。
「小坊主よ。
目覚めたら、強者としての弟子になっていてほしい。
指輪の中には骨霊冷火が入っているから危機時には使える。
これまでの指導も満足だぞ」
光環の中で優しい笑みと共に響く言葉はいつまでも消えなかった。
蕭炎は立ち上がると空虚な光環を見つめた。
深い息を吸い込み、それからまた吐き出す。
これから先、彼は一人で世界と向き合わなければならないのだ。
雲嵐宗の支配者であるこの女性は、普段なら平静な表情を崩さないのに、急激に焦りの影が浮かんだ。
その細い手がぎゅっと握られ、心の中で色々な思いが渦巻く。
「海之心甲の破片がなぜここで?もしかしたらあの男はここにも潜んでいたのか?海之心甲が壊れているなら、彼も重傷を負っているはずだ。
この男、どこにでも絡んできたものか」
地面を見渡すその目には焦りが色濃く、異様な感情の波が揺れ動く。
しかし、何の痕跡も見つからない。
「雲韻宗主、どうされた?」
隣に立つ老者は驚いて尋ねた。
彼は初めて雲嵐宗の支配者がこんなにも多くの感情を露わにするのを目撃したのだ。
「ふふん、大したことないわ」老者の声で我に戻った女性は、慌てて海之心甲の破片を納戒に収め、「加老、私はあの4人の斗皇級強者たちの正確な出自を調べるべきだ。
彼らが他国からガマ帝国に入ったのは遊びではないはずよ」
その言葉に老者は意外そうに目を見開いた。
彼女は普段、そんなことに興味を持つタイプではない。
「先ほどの金属破片は一体何なのか?」
老者は不思議そうな表情で首を傾げる。
帝国の守護者である彼にとって、他国からの強者の調査は当然の仕事だが、雲嵐宗が自発的に申し出たことに驚いた。
「そうか……」老者は笑みを浮かべて頷いた。
「次は石漠城だ。
まずは情報収集から始めよう」
女性はその地に降り立ち、老者も後に続く。
3日後、石漠城の漠鉄傭兵団本部で、ベッドに横たわる少年が目を閉じている。
彼の呼吸は弱く、まるで突然息を止めるのではないかと心配させるほど不規則だ。
周囲には誰かが出入りする気配があり、その度に低くため息が漏れる。
ベッド上の少年の指先がわずかに震え、しばらくして微かな呼吸が強まった。
さらに数分経て、彼は目を開けた。
優しい光が部屋を包み、少年は疲れきった体を横たえていた。
少しだけ息せば、待ってもやっと意識が完全に覚醒した。
記憶が急激に脳裡から浮かび上がってくる。
蕭炎はその始末を思い出し、苦しく笑った。
「傷ついたのか?」
と回想する。
当時の破滅的な炎の波が襲い掛かった瞬間の激痛を想起し、彼は再び苦笑した。
鼻孔に漂う僅かな蘭の香りを吸い込み、意識がさらに明確になる。
ゆっくり目を閉じ、心神が体内へと浸透していく。
突然、蕭炎は目を見開いた。
内部の破壊状態は想像以上で、まるで何らかの凄まじい力をもって強制的に崩したようだ。
彼は胸が沈み込むのを感じた。
自分が受けた傷の深刻さを予想していたものの、これほどまでとは思わず、この惨憺な状況に呆然とする。
他の誰なら完全に無残な姿になることを悟りながらも、蕭炎は「今回は大変だ」と口に出した。
気脈(けみゃく)の中央部に光点が微かに動いている。
そこには最大の底牌である青蓮の心火が隠されていた。
しかし現在の経絡状態では、その炎を引き出すことはできなかった。
蕭炎は心神を撤退し、目を開いた。
苦しく首を横に振りながら息を吐くと、突然「薬老(やくろう)」という名前が脳裡に浮かんだ。
「先生?先生?」
と呼びかけたが返事はない。
時間の経過と共にその心はさらに沈む。
緊張感から口が乾き、不安が胸を締め付けた。
かつて天才から一朝夕で無能になる瞬間と同じような恐怖に襲われる。
唇を嚙みながら掌を開くと、指先には何事もなかったように黒い古びた戒(かい)が静かに輝いている。
その存在が彼の不安を鎮め、蕭炎は再び目を閉じて魂魄(こんぱく)を結集させ、戒に触れた。
魂の力が黒い指輪に触れた瞬間。
巨大な吸引力が突然その中に爆発し出した。
そして蕭炎はそれを防ぎもせずに吸い込まれた。
魂の感触は最初真っ暗だったが、次第に薄白い光に包まれた。
その光の中には薬老の虚ろな姿が浮かび上がり、彼は笑顔で蕭炎の小さな魂を見つめていた。
「小坊主、ようやく目覚めたか」薬老が近づいてきた。
「大丈夫かい?」
「老師、お大事ですか?」
薬老の姿を見て萧炎は心配そうに答えた。
彼は以前なら直接魂を通じて会話できたのに、今は黒い指輪に入らなければ通じないことに気づいた。
つまり薬老の状態はかなり悪いようだ。
「良い知らせと悪い知らせがある」
薬老が笑って蕭炎の虚ろな姿に手を置く。
「まず良い知らせは、お前を賞賛するよ。
あの仏怒火蓮を作ったことか。
その破壊力は驚異的だ。
俺でも感心した。
もし完成させたら同レベルでは敵うまい」
蕭炎の顔には喜びがなかった。
仏怒火蓮の威力は確かに凄まじいが、その代償もまた恐ろしいほどだった。
「悪い知らせは、お前自身の体が酷く破壊されていることを気づいたか?」
「ええ、かなり深刻です」蕭炎は頷いた。
「もう崩壊寸前ですよ」
「ふん。
傷は重いけど治療すれば回復するよ。
俺が休養プログラムを伝えるから、それを守れば元に戻れるさ」と薬老は笑った。
「それ老師はどうなされますか?」
薬老の言葉に弦外の音を感じた蕭炎は急いで尋ねた。
「俺は……これが最大の悪い知らせだ。
お前が完璧な爆発を成功させたことは立派だが、そのために俺から70%以上の魂を吸い取った。
さらに最後の火の波で保護した結果、俺の魂はほとんど消耗しつくされた」
蕭炎の顔色が急変し、彼の虚ろな姿も激しく揺らぎ始めた。
「落ち着け。
魂が尽きても回復可能だ。
ただ……以前のように長期間眠り続ける必要があるかもしれない」薬老は緊張した萧炎を見つめながら優しく言った。
「しばらくは俺はお前を守れない。
全ては自分でやるしかない」
笑顔の薬老を見て蕭炎は目を赤くし、拳を握り締めた。
「ごめんなさい、老師」
蕭炎は自分が勝手に異火融合を試みたからこそ、薬老の魂がここまで消耗されたのだ。
もしやらずにいれば眠りで回復する必要もなかったはずだった。
「ふふふ。
自責する必要はない。
しばらく眠っているだけだ。
完全に消滅したわけじゃない。
あなたが作った仏怒火蓮は、とても気に入っているよ。
私の弟子として、確かに特別な存在だ」
薬老は萧炎の肩を叩きながら笑った。
「いい加減にしろ。
残りの霊力もすぐになくなる。
出ていけ。
青鱗のことには心配するな。
あの緑蛮は墨家のように扱わないと誓う。
安心して」
薬老の体が次第に透明になっていく。
彼は萧炎に手を振って笑った。
「先生、お大事に!」
蕭炎は両膝を地面につけ、頭を深々と薬老の前に突き伏せた。
薬老は満足そうに、この変化を経て成長した少年を見つめた。
彼の体は完全に消散し光環の中に溶け込んだ。
「小坊主よ。
目覚めたら、強者としての弟子になっていてほしい。
指輪の中には骨霊冷火が入っているから危機時には使える。
これまでの指導も満足だぞ」
光環の中で優しい笑みと共に響く言葉はいつまでも消えなかった。
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