闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
474 / 1,458
0400

第0498話 薬比べ

しおりを挟む
蕭炎が突然強大な力を発揮したことに、薰(くん)たちも周知していたため、その息遣いが急に高まるのを見て驚きはしなかった。

しかし上段の林修崖(りんしゅうがい)たちは思わず「えっ?」

と声を上げた。

彼らのような実力者だからこそ、蕭炎の現在の実力が白程(はくてい)に迫るほど急激に向上していることに気づいたのだ。

その差はなんと六星分もの隔たりがあるというのに。

「この男、初対面の時から何か慎重な感じがあったのはそのためか。

こんな手を隠していたとは」と林修崖が目を細めながら驚きの色を見せた。

蕭炎のこの爆発的な成長は予想外だったようだ。

一側の厳皓(げんこう)が下方の蕭炎に鋭い視線を注ぎ、彼の表情からその急激な変化に強い関心を抱いていると読み取った。

林修崖の言葉を聞いた後、厳皓は小さく頷いた。

目線を上げると、薄暗い光が差す場所で何か微かな驚きの声が聞こえたようだ。

「今回は白程も鉄板に足を引っ張られたな。

この『強榜』ランキングは手放すかもしれない」と厳皓が皮肉たっぴしに笑った。

林修崖たちが笑い、再び下方の戦闘場面を見つめた。

……

天火三玄変(てんかさんげんぺん)を発動した蕭炎は短時間で白程と同等の実力を獲得していた。

そのため白程が声勢を急に高めて駆け寄ってくる蕭炎を見て、冷ややかな表情も幾度か揺らいだ。

蕭炎が強制的に実力を上げる方法について知っていたものの、それほどまでとは思っていなかったようだ。

彼はそのような非正統的な手段はいずれバレると信じていた。

そんな軽蔑の念が眼前の雷のような勢いで迫る人影に揺さぶられ始めた。

この時になってようやく白程は、最初から蕭炎を過小評価していたことに気付いたのだ。

歯を噛み締めながら槍を握りしめた白程は、ますます近づいてくる蕭炎を見つめ続けた。

その目には冷たい光が宿り、この戦いが彼にとって何を意味するかを知っていたからだ。

もし負けたら『強榜』の順位が萧炎に奪われ、それに伴って「白派」の威信も大きく損なわれる。

内院での地位も一気に低下してしまうだろう。

そのため今日こそは手段を選ばず蕭炎を粉砕するしかない。

「狂気じみた男め、今日は本当の『強榜』の実力を見せつけてやる! そのような下等な手口で自信満々になるのは早すぎた」と白程が冷たい表情を作りながら言った。

深黄色い斗気(とうき)は黄河の水のように彼の体を包み込み、光球表面では水波のような動きを見せる。

それは黄金色に輝く渦巻きのようだった。



黄色の斗気光球がわずかに震えたその瞬間、聴衆の眼前で低く唸るような声を発した。

槍が電撃のように眼前を突き出した時、槍の動きと同時に残像が連続して現れる。

白程は槍を振るう速度が尋常ではなく、僅か一瞬の間にその残像が空間全体を覆い尽くす。

一方で獣のような勢いで駆け寄ってくる蕭炎も、槍影の外側に瞬時に姿を現した。

「喝!」

深黄色の槍影が空中で動きを止めた。

槍先から異様な寒光が放たれ、その光は黄斗気によって強化されたものだった。

白程は眼前に迫る蕭炎を見据え、冷たい叫び声を発した。

その叫びと共に密集していた深黄色の槍影は突然爆発的に飛び出し、戦場から鋭い破風音が響き始めた。

槍影の数は多く、これだけ多くの残像を同時に形成できるのは白程の実力の強さを物語る。

『強榜』に載る実力者としてその名は虚偽ではない。

普通の斗霊ならこの鋭い攻撃に対し手忙しい状況になるだろうが、蕭炎の戦闘経験は白程と遜色なく、天火三玄変の影響で正面対決可能な実力を備えていた。

そのため槍影がちらつく中、厳然たる風圧の中でも退く気配は一切ない。

彼は重厚な玄重尺を高く掲げ、極めて素直な構えで鋭く斬りつけた。

「破!」

その一撃の軌跡は平凡そのものだった。

華麗さや奇技は一切なく、山を裂くような無匹の気勢が込められていた。

尺身が空気を切り裂き、残る黒い痕あとには強烈な風圧が生じた。

その圧力で地面すらわずかに割れ目を作り出すほどの一撃だった。

この凄まじさを見て観客席からは小さく動揺の声が漏れた。

ここまで激しい戦いはなかなか見られないものだ。

「ジーン、ジーン……」

重尺の下で槍影が次々と消えていく。

その際槍影から金鉄相打つような清澄な音色が連続して響き、槍影が急速に散り散りになる中、唯一残るものは激しい衝突が生んだ波紋だけだった。

大量の槍影が消失し、最後の一撃となった実体化した槍は一瞬で空間を切り裂き、蕭炎の胸元へ鋭く突き込まれようとした。

その時蕭炎は目を開き、重厚な玄重尺を素早く引き戻し、漆黒の盾のように前に構えた。

白程の深黄色の槍がその巨大な槍身に接触した瞬間、強烈な力が発散され、蕭炎は足元で地面を滑らせながらも三メートルほど後退してようやく止まった。



「ふん」震退した蕭炎を白程が冷やかに鼻で笑った。

握る銃剣の腕がわずかに震えると、槍身から黄色い光が突然輝き始め、灼熱の太陽のように戦場に煌めき始める。

「チィ!」

黄光が爆発的に増大する瞬間、蛇のような黄色いエネルギーが鋭く飛び出し、恐ろしい巨口で重鉄を猛撃した。

「ポン!」

衝突の轟音と共に目に見える気浪が四方八方に広がり、堅固な床から炎の裂け目が蕭炎の足元から次々と拡散していく。

「退け!」

掌に銃剣を叩きつけると六星斗霊の実力を全開で解放。

強大無比の気浪が鉄身に直撃し、槍先が軽く弾かれたその瞬間、漆黒の重鉄は観客の目の前で「シュッ」と炎のように蕭炎の手から飛び出し、戦場外の地面に斜め刺さった。

重鉄を放ち、観台では騒然とする。

勲(きん)など蕭炎に詳しい者たち以外は磐門のメンバーも拳を握りしめ、緊張で顔が引きつる。

「武器がないならどうする?」

全力の一撃で蕭炎の武器を奪った白程は勝利が目前と意気揚々に笑いながら槍先をさらに加速。

胸元に鋭い痛みを感じた蕭炎は足裏から銀色の電光が走り、体が一瞬虚像のように残る。

次の瞬間彼の身体は十数メートル先に消えた。

槍が虚像を貫き、白程は十数メートル離れた蕭炎を見つめ冷笑道「まだ降伏しないのか?今跪いて懇願すれば私は手加減するが……」競技場では内院も殺人を禁じていない。

ただし一般には関係悪化していない限りは相手に余地を与えるのが常識だ。

白程の喜びを無視して蕭炎は重鉄を見やり軽く目配りした。

重鉄から解放されたことで体内の渾厚な斗気(とうき)が洪水のように流れ込み、彼の唇端には白程の表情を曇らせる笑みが浮かんだ。

白程に視線を戻すと、彼は軽く嗤いながらも一言も発せず足裏から銀光が再び輝いた。

次の瞬間その身体は風のように白程の横へ移動し、灼熱の青色斗気で覆われた拳が相手の頭部に直撃した。

その驚異的な速度に白程の瞳孔が一瞬縮まった。

炎のような熱風を頬に感じた彼は「この野郎……」と心の中で絶叫する。

蕭炎の素手で戦う姿は初めて見るものだったからだ。

重鉄を持つ蕭炎は恐ろしいが、武器なしの赤裸々な身体こそ真の破壊機関なのだ。

**(ここに追加すべき描写や固有名詞があれば挿入)**

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様

ともボン
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです 【あらすじ】  カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。  聖女の名前はアメリア・フィンドラル。  国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。 「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」  そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。  婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。  ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。  そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。  これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。  やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。 〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。  一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。  普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。  だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。  カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。  些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。

処理中です...