闘破蒼穹（とうはそうきゅう）

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第0533話 血地0008裂

広大な闘技場の中央に、黒と白の二つの人影が対立していた。

薄灰色の地面を背景に、そのコントラストは周囲を引き立てていた。

「あの二人か……蕭炎と白程だよ。

この勝負ありやもしれませんね。

前回は稽炎（きえん）に敗れたと言っていたが、白程は龍力丹のせいだと主張していたらしい。

今回は薬物禁止の試合だから、その説明が成り立たないんだぜ」

「そう簡単にはいかないだろう。

蕭炎は前回の闘技場で程南（ていなん）を破ったんだからね。

六七星の斗霊強者だぞ。

白程より実力があるんじゃないのか？」

観客席からはささやき声が響く。

内院のほとんどがその二人を知っている。

前回の闘技場での戦いは、蕭炎に強豪ランキングの地位を確立させたが、敗者である白程の評判は落ちていた。

そんなささやきに無関心に、蕭炎は掌を軽く回した。

巨大な玄重尺（げんじゅうしき）が空中で輝き、彼の手のひらから一気に広がり、地面に降り立った。

その瞬間、強烈な風圧が発生し、周囲の塵を四方八方に吹き飛ばした。

白程は冷ややかな目で蕭炎を見据え、彼が武器を構えたのを見て淡黄色の槍を取り出した。

槍身が震えると同時に、極速の動きで槍花（やりばな）を舞い上げたが、すぐに消滅した。

内心では稽炎への敗北を恐れつつも、この場面ではその不安は風に散った。

勝利すれば以前の栄光を取り戻し、ランキングから落とされた屈辱も洗い流せるのだ。

「くっ……必ずや倒すぞ！ 何でもするんだ！」

白程は歯を食いしばり、目つきがさらに鋭くなった。

この試合では手段を選ばないつもりだ。

殺意さえも構わないと考える。

勝者が全てを支配する——勝てば流言飛語など関係なくなる。

蕭炎は相手の表情の変化を見やると、最後に白程の険しい顔を一瞥した。

そして裁判席へと視線を向けた。

その瞬間、蘇千（そせん）がゆっくり立ち上がった。

彼の動きに合わせて場内の騒動は自然に収まった。

四方八方に目配りしながら、無駄な言葉もなく宣言する。

「第四試合……開始！」

その声が響くと同時に、観客席から熱い視線が集中した。

この試合は今大会の上位戦で最も注目の一戦となるに違いない。

もちろん変化があったのは周囲だけではない。

闘技場の中でも蕭炎と白程の気勢が爆発し、青と黄の二色の斗霊光（とうりょうこう）が彼らを包み込んだ。

その圧迫感は観客席に近い位置の修煉者たちまで息を詰らせるほどだった。

「さすが強豪ランキング上位の実力だ。

前回の試合とは比べ物にならない」

ささやき声が再び広がる。



**蕭炎が首を小さく動かすと、その体内の経脈に渦巻く雄々しい斗気（とうき）が疾走し、全身各所に充実した力を供給する。

彼は重厚な玄重尺（げんじゅうしゃ）を握り、青色の斗気が周囲を包み込む中、時折極細い炎の舌が現れる。

その炎が漏れ出すたび、空間に短時間の歪みが生じるが、目力のない者には気付かれない。

二人は顔を上げ、場内に視線が交差する。

その瞬間、火花が飛び散り、互いの瞳孔からは冷たい光が滲む。

「咳（せき）」

四つの視線が鋭く対峙し合い、緊張が場を支配した。

約一～二分経過した時、場外から響いた微かな咳声が、その高まった緊張を最後の一粒の砂糖のように溶かす。

そして、その瞬間は爆発的に解けた。

「チィ！」

二人の影が同時に疾走し始めた。

速度はあまりにも速く、観客からは二つのぼやけた人形が中央へ向けて突進しているようにしか見えない。

彼らは衝撃的な破壊力で場中を横切り、まるで隕石のように激しくぶつかり合う。

「ドン！」

場の中心では、二人の影が交差し、鋭い槍が光速で突き出される。

しかし、その槍は堅牢な黒色の重尺（じゅうしゃ）に阻まれ、火花を散らす。

接触点からエネルギーの波紋が広がり、場外からはその衝撃音が響く。

瞬間、蕭炎の顔には表情がないが、重尺は反射的に後ろへ振り切られる。

その強烈な風圧で空気が裂け、耳を刺す破風（はふう）の音が鳴り響く。

「ドン、ドン、ドン！」

重尺が振るわれるたび、白程（はいてい）は体を捩りながら槍を連続的に突き出す。

それぞれの衝撃点で清脆な音色が連鎖し、前回よりも明らかに強化された彼の動きが目立つ。

観客席では人々が驚嘆の声を上げる。

彼らの視界には、場中で火花と人影が瞬きながら交錯する様しか映らないからだ。

「あの白程は明らかに前回より成長したようだ」高台で林修崖（りんしゅうがい）が指摘する。

「これは丹薬によるものではなく、階級突破の結果だろう」

「確かに向上している。

あの敗北が彼に何かを教えたのかな？」

韓月（かんげつ）は銀髪を撫でながら淡々と述べた。

「一時的な進歩かもしれないが、あの敗北が心に影を落としたのは確かだ。

もし今度勝てば、その陰影から解放され、さらに成長する可能性がある。

しかし負け続けたら、斗霊（とうりょう）の壁を超えることはないだろう」林修崖は平静に語る。

「そう簡単にはいかないかもしれないね」月光を浴びた冷艶な顔がほんの少しだけ笑みを浮かべ、「二ヶ月で蕭炎が三星斗霊まで跳躍したのは驚異的。

その速度は内院（ないえん）トップクラスだ。

彼の速度はおそらく斗王級に匹敵する」

**

林修崖は眉をひそめて手を動かした。

彼が蕭炎の速度を目撃した経験から、韓月の言葉が虚言ではないと確信していた。

速度という点では、自身も斗気翼を使わなければ蕭炎に勝てないことを知っていた。

場中で涛炎（とうえん）は複雑な思いを抱いていた。

白程と直接対戦した経験から、その強さを肌で感じていたが、自分にとっては脅威ではないと考えていた。

初段階の斗霊期では天火三玄変を使わなければ勝てなかったが、現在は三星斗霊にまで上り、焚決（ふんけつ）の特殊効果を得たことで、五星斗霊相手でも劣らない実力を誇っていた。

さらに強化された**力と三千雷動（さんぜんらいどう）を持つ蕭炎なら、天火三玄変を使わなくても対戦できる。

「ふーん、自信があるわけだな。

ただ突破しただけでは不十分さ」

箭炎（せんえん）は冷笑を浮かべ、重い槍（おもいやり）に集中力を注ぎ込んだ。

深山で感じた樹海の波紋のようなイメージが脳裏を駆け巡る。

その中で槍は突然軽やかさを取り戻し、白程の槍と同等以上の動きを見せ始めた。

その動きには絡みつくような攻撃性があり、白程の槍は一歩も前に進めない。

「えっ？」

観客席と審判席から驚きの声が上がった。

確かに先ほどの蕭炎の攻撃は大開大闡（たいかいだいせん）だったが、今の槍法には技巧が加わっていた。

その高度さに驚くのも無理ない。

白程にとっては最も得意な槍術さえも、蕭炎の槍と同等以上の技量で迎えられる状況だった。

彼は目を赤くして「やれっ！」

と叫び、槍を突き出した。

もし当たらなければ萧炎は即死だったが、蕭炎は重い槍を回転させて受け止め、その衝撃で後退した。

息をつく間もなく白程の顔色が血潮に染まった。

彼は恐ろしい笑みを浮かべて叫んだ。

「小野郎！今日こそお前を完全に潰す！」