闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0558話 本源心炎

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磐門に帰ってきた蕭炎が、昊と琥嘉の二人を偶然出会った時、後者は前者の険しい表情を見て互いに顔を見合わせた。

普段は笑みを絶やさないような人物が誰かに逆上させられたのかと、その原因を探ろうとするように周囲を見回した。

「冀はどうなった?」

琥嘉がそっと尋ねる。

足を止めた蕭炎が深く息を吐きながら答えた。

「帰った」

「帰った?」

「えっ」と昊と琥嘉は驚いて聞き返す。

いつか再び戻ってくるという約束も聞こえてこない。

「彼女は一族に戻り、もう二度と来ないだろう」大門の前で淡々と言い放つ蕭炎。

するとドンと音を立てて扉が閉じられた。

昊と琥嘉は閉ざされた扉を見つめながらしばらく呆然としていた。

長い間一緒に過ごしたあの穏やかな笑みの少女がいなくなることで、何か欠けたような感覚に囚われていたのだ。

「この話を広めたなら、きっと多くの内院生が落ち込むだろう」琥嘉がため息をつく。

昊は笑って頷いた。

「最近薰子がおかしいと思っていたけど、やっぱりそうだったんだな」

「蕭炎も辛いはずだよ」琥嘉が肩をすくめながら外に向かう。

「いいかげんにしないと。

一人で静かにしていてほしい」

昊も黙々とついていく。

少女の残したほのかな香りが漂う小さな部屋で、蕭炎は柔らかなベッドに横たわり目を閉じる。

彼女の美しい笑顔や仕草が脳裏に刻まれている。

側にいる時は気づかなかったが、その存在が遠ざかるにつれ、心の奥から込み上げてくる感情が絡みついてくる。

「必ず会いに行くよ」ベッドカバーを握りしめながら囁く声が部屋中に響く。

次の日、内院は再び賑やかさを取り戻した。

本源心炎に鍛えられるのは強榜十位の者だけだ。

この機会を得れば斗王への道が開けると知り、誰もが羨望の目で見つめる。

小楼閣前には多くの内院生が集まり、閉ざされた扉を見つめてささやき声を交わしていた。

「ギィ」

その瞬間、静寂が訪れた。

扉から微かな音がしたのだ。

人々は一斉に視線を向けた。

期待と畏敬の表情で。



**灼熱の視線が集まる中、黒衣の青年がゆっくりと歩み出た。

そのいつもの穏やかな表情は、磐門の全員に一種の昂揚感をもたらした。

現在の磐門の真のリーダーである蕭炎(しょうえん)の動きは、組織全体の心を捉える。

どんな敵に対しても彼が諦めなければ、メンバー全員には無限の闘志と確信が湧く。

**その穏やかな表情を見た昊(こう)と琥嘉(こか)は小さく息を吐いた。

もし先日のような暗い表情をしていたら、場にいる誰もが沈み込んでいただろう。

蕭炎の視線がどこに向くか、磐門のメンバーは自然と胸を張り目を輝かせた。

**軽く笑みを浮かべると、彼はゆっくり手を上げて再び下ろした。

簡潔な言葉と共に:

「行こう」

**その瞬間、蕭炎が先頭に立ち内院の外へと進む。

その後、大勢の磐門メンバーが続く。

この大群が内院を通るだけで騒動は避けられない。

人々の視線を集め、彼らが黒衣の青年を認めると、羨望の表情で彼の後ろにいる活気ある磐門の姿を見つめる。

**現在の磐門は丹薬販売で内院市場を独占し、実力向上と共に薬帮(やくほう)との競争が困難になりつつあった。

豊富な炎属性エネルギーと特殊な報奨制度により、既に他勢力を加えた学院でもメンバーの待遇に羨望を感じる。

**大勢の集団は天焚煉気塔(てんふんれんきとう)へ向かう。

途中他の勢力も遭遇するが、その規模は磐門とは比べ物にならない。

彼らのリーダーたちは強榜上位者だが、柳擎(りゅうけい)を重傷にした特殊存在である蕭炎の前では傲慢さは見せない。

もし彼と柳擎が最終決戦に出場していれば、トップ3争いの有力候補だったはずだ。

**天焚煉気塔に近づくと、林修崖(りんしゅうがい)たちと衝突した。

お互い驚きながらも笑顔で挨拶を交わす。

**その時、蕭炎は林修崖の後ろにいる二十人程度の集団を見やった。

人数は少ないが、個々が一星斗霊(いちせいてくりょう)前後の実力があり、気配を固くまとめていた。

彼は暗躍した。

「内院で有名な『狼牙』か。

人数は少ないが一人で十人敵う精鋭だ」

**その時、林修崖も蕭炎の側に目をやるが、脳裏に焼き付いていた影は見つからなかった。

失望の色が一瞬現れ、彼は笑顔で会話しながら塔頂へ向かっていった。



天炎煉気塔の外には既に人でごったんこんな状態だった。

今日は強榜上位十人が塔の底層に入ることを理由に内院が他者への入場を禁止したため、その決定に不満を持つ声もあったが、代々続く規則であることを理解するしかなかった。

炎王たちが現れた瞬間、周囲から一斉に視線が集まった。

現在の知名度と名声で林修崖に劣らない炎王は即座に全員の注目を集め、様々な声が人混みの中で響き渡った。

炎王たちはその騒音を無視し、人数を武器に楔のように人群の中に突入した。

やがて塔門前の広場まで到達し、そこで一団で腰を下ろすと、炎王は後方の密集した人波を見つめながらため息をもらした。

大半年前までは自分もこの外側に立っていた時期があった。

当時は「狼牙」のような強豪勢力が最良の位置を独占している様子を見て羨ましく思っていたが、今やその立場は逆転していたのだ。

「あいつらも来たぜ」と林炎が突然炎王の隣に座りながらある方向を見つめ、鼻で笑った。

するとそこでは人波が騒然と動き出し、柳槍を背負った柳擎率いる一団が門へ向かって突進してきた。

その先頭には柳槍、次いで柳菲や姚盛ら「狼牙」の精鋭たちが続いている。

炎王が柳槍を見つめる時、後者は直感的にその視線を感じてわずかに首を傾げた。

この光景は会場全体の注目を集め、人々の囁き声が一斉に静まった。

柳槍は少し躊躇した末、炎王たちに向かってゆっくりと近づき始めた。

炎王側では磐門の仲間たちが大量の柳槍一行の接近を感知し、体が緊張して武器を手に取る者も現れた。

この双方の動きは瞬時に周囲の注目を集め、次々と視線が炎王たちへ向けられる。

柳槍が磐門から十メートルほど離れたところで足を止めると、その大男たちは一斉に停止し、ズンと重い音と共に地面に降り立った。



柳フィ、姚盛、柳剣がゆっくりと蕭炎の前に止まり、その清らかな青年を見つめる。

暫くすると、低い声で囁いた。

「強いね、お前は見過ごした」

萧炎は笑みを浮かべて柳剣に頭を下げた。

「運が良かっただけさ」

「戦闘中には『運』なんてないよ」柳剣は淡々と続け、「でもこれからは新たなライバルが増える。

これは大いなる幸運だ。

時間があればまた挑むからね」

そう言い終えた柳剣は、蕭炎の返事も待たずに仲間たちと共に遠くに座り込み、塔門の開幕を静かに待った。

背中を見送る蕭炎はため息をついた。

「この連中も手ごわいな」

柳剣のグループが集まった直後、新たな人々が現れた。

約30分後の突然の風切り音と共に、塔門外に数人の老人の姿が浮かび上がった。

先頭には大長老・蘇千がいた。

「あらあら、皆揃ったようだね。

それじゃ冗談はここまでにして」

蘇千は周囲を見回し、重い塔門をゆっくりと開け始めた。

「強榜上位十人の十一人、私と共に中へ。

他の者は今日中に立ち入るな。

逆にすれば半年間は入れないぞ」

その厳しい罰則に驚いた人々が縮み込むのを見て、蘇千は気にせず塔の中に入った。

背を見た蕭炎がまず立ち上がり、羨望の視線を浴びながら天焚煉気塔へと足を踏み出した。



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