闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0690話 異変

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その惨白な頬を目にした瞬間、蕭炎の殺意に満ちた心がわずかに震えた。

この女が語る言葉や行いは、彼には完全に無関係ではなかった。

天界全体の時間が一時停止したように見えた。

無数の視線が空を舞う若き男の姿に釘付けになり、その次の行動次第で雲嵐宗の運命が決まろうとしていた。

海波東らは拳を固く握りしめ、蕭炎の拳勢が雲韻の悲鳴で一瞬止まったのを見た時、ほとんど跳ね上がりそうだった。

この瞬間、その一撃が当たれば、彼らが全て身代わりに賭けた宝物を手に入れるのだ。

「打て! 打て!」

無数の視線が加刑天と海波東らを包み込む。

彼らの目は開きっぱなしで呼吸が荒くなり頬が赤く、腕の筋肉が浮き上がっていた。

しかし胸中で叫び続ける声だけは出せなかった。

今日の戦いは各勢力が一族全体を賭けたものだった。

勝てば莫大な利益を得られ、負ければ滅亡の危機に直面するのだ。

その勝敗は蕭炎の一撃にかかっていた。

拳が下れば勝利、豪賭が成功する。

拳が止めたなら敗北、そして雲山がこの瞬間に息を吹き返せば、戦いは驚異的な逆転を起こすかもしれない。

遠くの空で薬老は目を見開いた蕭炎を凝視していた。

しかし口を開かなかった。

彼は自分が見守ってきた青年が期待に応えると確信していた。

無数の視線が交錯し、今日の戦いの結末を待っていた。

視線が雲韻の惨めな頬へ移る。

その瞬間、蕭炎の目の中に一瞬だけ優しさが揺れた。

その変化を見た雲韻は頬の蒼白さが少し和らいだ。

彼女はこの時機に声をかけようとしている自分が無理やりで云山の元教え子であることを知りつつも、云山が何年もの間彼女を育ててきたことを考慮すれば、云山が蕭炎の手に倒れるのを見過ごせないと思っていた。

雲韻の頬の蒼白さが和らいできたその時、蕭炎は突然視線を引き戻し、一瞬だけ現れた優しさは消え、代わりに濃厚な憎悪と殺意が充満した。

彼は云山を斃たすことを誰にも許さないと言っていたのだ。

「雲韻、莽家の血の恨みは必ず償わされる」

冷たい声が蕭炎の口から漏れ、広場に響き渡った。

その言葉が聞こえた瞬間、雲韻の頬はさらに蒼白くなり震えだし、目の中に涙の霧が浮かんだ。



静かに告げられたその言葉の瞬間、蕭炎の目が鋭く光りを増した。

先ほど雲韻の悲鳴で止まった拳が猛然と震え、その強烈な衝撃と共に天を揺らすような低音が響き渡る。

「ゴォ!」

胸元に突き刺さった拳は雲山の心臓を直撃し、その瞬間全身から骨が砕けるような異様な音を立てた。

雲山の目には恐怖と絶望が渦巻いていたが、蕭炎の拳はさらに激しく打ち下ろされる。

「老狗!これは父のために!」

「これは滅んだ蕭家のために!」

「これは二哥の命を奪ったために!」

「これは大哥を無残にしたために!」

血まみれの拳が次々と胸元を叩き、その度に新たな骨折音が響く。

蕭炎の目は血で染まり、狂気のような叫び声と共に雲山の体から内臓片が飛び散る。

「プチュ!」

雲山の身体が次第に凹み、顔面に潮色の血潮が広がり始めた。

その頬を撫でるように降り注ぐ鮮血は蕭炎の全身を染め上げたが、彼はそれを無視し続けた。

機械のように拳を振り回すその姿は寒気が漂うほど冷酷だった。

雲韻は顔色一変して膝を突き、震える手で口元を押さえながら嗚咽する。

空を見上げれば、暴れ狂う蕭炎と敗北の雲山が重なり合っている。

その光景に加刑天らも息を吐いた。

「この子は苦労したんだな…」

「云峯宗はこれで滅ぶ運命だ」

彼らの視線の先では、血みどろの復讐劇が続く。

雲山の体からは次々と内臓が飛び出し、その度に新たな骨折音が響く。

蕭炎の拳は怒りと共に無限に振るわれる。

「ゴォ!」

雲山の最後の叫び声と共に、彼の身体は完全に崩壊した。

その死体は血で染まったまま地面に落ちた。

周囲は沈黙が支配し、ただ雲韻の嗚咽だけが響き渡る。

「この子…」

加刑天がため息をついた瞬間、遠くから新たな足音が聞こえた。



激しいパンチが、既に凹みきった雲山の胸をさらに深く抉り、蕭炎の体も大きく揺らぐ。

背中の緑色の翼はますます薄くなり、右拳は奇妙な角度で低く垂れ下がっていた。

先ほどまでの狂乱的な乱打により、腕の骨が反動で折れた数本あった。

雲山の顔には血が滲み、恐怖と絶望に満ちた目はゆっくりと閉じられた。

最も脆弱な状態で蕭炎のような暴発的な攻撃を受けたため、彼が斗宗級とはいえ死を免れることはできなかった。

消え行く雲山の気配を見つめる蕭炎の心もようやく緩む。

頭に押し寄せる疲れが急激に襲い、視界が黒ずみ、瞬きする間に意識は途絶えた。

彼の体は雲山と同様に地面へと垂直に落ちていった。

「ふー」

蕭炎が着地寸前で、突然天を駆ける影が現れた。

その人物はすぐに彼を支え上げた。

視界がぼやけながらも、その蒼白な顔と深い皺を見れば、薬老であることは一目瞭然だった。

「老師……成功した……」

薬老は蕭炎の血まみれの頬に笑みを浮かべ、彼の歪んだ腕を優しく包む。

その手には、折れた骨が露わになっていた。

「これでは長く休養が必要だよ」

薬老の声を聞きながら、蕭炎は何かを思い出したように目を開いた。

雲山の死体が地面に落ちる前に叫んだ。

「早く! あの家伏の遺骸を掴め! 斗宗級の骨は……」

その言葉に驚きを隠せない薬老は、すぐに雲山のほうへと駆け出した。

「藥塵、手が遅いわよ」

薬老が動いた直後、黒い影が瞬時に雲山のそばに現れた。

その人物は彼を掴み取り、そのまま引きちぎり始めた。

それが鴻護法だった。

「死ね!」

鴻護法の動きを見た薬老の顔色は一変した。

怒吼と共に、鴻護法は雲山の天蓋に黒い霧を叩きつけ、その上から引きちぎり始めた。

そこから現れたのは、虚ろな意識を持つ雲山の魂だった。

「本護法が約束した通り、今日こそ貴方を捕らえるわ」

鴻護法は奇妙な手印を結び、突然鋭い叫び声と共に黒い霧が広がり始めた。

その中に「九森百噬魂」という言葉が響き渡った。

「九森百噬魂!」

その瞬間、鴻護法の体から噴出する異形の霧は雲山の魂を包み込み、次第に咀嚼音が聞こえてきた。

周囲の全員の顔色が険しくなり始めた。



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