闘破蒼穹（とうはそうきゅう）

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第0748話 夜の面会

空に突然休戦した大戦は下方の無数の人々を混乱させ、それぞれが連絡を取り合いながら様々な推測を交わしていた。

要塞の上では海波東が瞬時に反応し、人々からの視線に対し手を広げて見せたが、空で何が起こったのか全く理解できなかったことを示した。

「あの冷酷な女が戦いを止めてしまったとは驚きだ。

もしかしたら蕭炎の存在に怯えているのだろうか？ しかし先ほどの火蓮を使った後の彼は明らかに衰弱しているように見える」

加刑天が考えるようにつぶやいた。

「原因はどうあれ、その女が手を止めたのは良いことだ。

あの不気味な毒術は本当に恐ろしいもので、まだ完全に発動していない段階ではあるものの、一旦展開されれば毒気が漂ってくるだけで普通の兵士は触れただけで死んでしまうだろう」

法犸が嘆息しながら言った。

毒宗の宗主の戦闘力はメデューサと比べて劣るかもしれないが、その恐ろしい毒術は彼ら側に重大な損害を与える可能性があるため、加マ帝国としてはできるだけ敵対する方が良いと考えていた。

「彼らは何か話をしているようだ」

「三弟が本当にこの女を抑えつけられれば、加マ帝国も大災害から免れることになるだろう」蕭鼎も嘆息した。

近一年間、毒宗の宗主が与えた印象はあまりにも深刻で、彼女の不気味な毒術を思い出すと、連蕭鼎自身も身震いするほど寒気が感じられた。

「制御？」

その言葉に小医仙は驚きを隠せなかった。

すぐに眉をひそめながら蕭炎の真剣な表情を見つめた。

「もし君がこの厄災毒体を完全に制御できるなら、無意に人を死に至らせるようなことは起こらないし、逆に体内的にある劇薬は君の思う通りに使えるようになる」

蕭炎が重々しく言った。

その言葉を聞いた小医仙の目が一瞬光り、少し躊躇しながら尋ねた。

「本当にできるのか？**

「相絡我」蕭炎は頷いた。

彼の経験からすれば厄災毒体に対抗する方法などないことは明らかだが、药老が残した膨大な情報を調べる際に偶然見つけた方法ではあった。

ただしその方法には厳しい条件が必要で、まず必要なのは三種類の異火だった。

普通の人間にとっては不可能なことかもしれないが、蕭炎にとっては難しくなかった。

彼の体内にある落命心炎、青蓮地心火、そして药老の骨霊冷火がちょうど三つ揃っていたからだ。

灰紫の目で蕭炎の真剣な表情を凝視しながら、小医仙は冷たい瞳孔に僅かに優しさが混ざり、頷いた。

その後美杜莎の方を見やると、銀歯を嚙み締めながら体中の痛みに耐えている姿を見て、手を伸ばすと彼女の体内から不気味な灰紫の血斑が浮き上がってきた。

最後は小医仙がその血斑を受け取った。

灰紫の血斑が離れたことで美杜莎の顔色も正常に戻り、冷たく言い放った。

「本王なら自分で解消できるわ」

小医仙特に否定も肯定もしなかった視線を再び蕭炎に向け、ためらいがちに告げた。

「この厄難毒体の制御を手伝ってくれれば、私は大軍と三宗の人間を解散させよう。

今回の戦争を起こしたのは、ただ厄難毒体の解毒法を得るためだけだ」

「ガーマ帝国と蛇人族がこれほどまでに惨憺たる被害を受けたというのに、本当にそれで終わらせるつもりか？」

メドゥーサは冷ややかな笑みを浮かべた。

「私が一声で命じれば、貴方も護ってくれようとも、ガーマ帝国と蛇人族は全て消滅するだろう。

貴方は無知な子供ではないはずだ。

弱肉強食の理も理解しているはずよ」小医仙の灰色と紫色の瞳に鋭い光が走った。

「淡々とした口調で告げた。

「それなら本王もその強さを試してみようか？」

メドゥーサは顔色を変え、再び手を上げようとしたが、蕭炎が引き止めた。

「彼女が本当に死に物狂いで戦うなら、蛇人族とガーマ帝国は三宗の力でさらに大きな被害が出る。

もうこの辺りで感情的になるのはやめよう」萧炎はメドゥーサの耳元で囁いた。

「貴方とは知り合いかもしれないが、彼女が蛇人族にしたこと、本王は忘れない。

いずれ必ず返すつもりだ」メドゥーサは無限の黒い大軍を眺めながら、銀歯を嚙み締めた。

苦しげな笑みを浮かべた蕭炎はため息をついた。

これらの年月を経て、小医仙はもう善良で純粋だった頃とは比べ物にならないほど冷酷になった。

彼女の心の冷たさはメドゥーサを超えている。

今回の戦争が休止されるのは、まず自分の存在と、自分が提案した厄難毒体の制御方法への彼女側の欲求があるからだ。

「貴方がガーマ帝国を滅ぼせば厄難毒体の解毒法を得られるという話は以前聞いたことがあるのか？」

蕭炎は急に何か思いついたように眉をひそめた。

その言葉に小医仙はためらいがちに頬を歪め、「ある日謎の組織から連絡があった。

ガーマ帝国を占領し、炎盟の盟主を捕まえれば厄難毒体の解毒法を与えると。

ただ……炎盟の盟主とは貴方だったのか」

その言葉にメドゥーサと蕭炎は驚きの表情になった。

想像もしなかったことに気付いたのだ。

「この一年間、ガーマ帝国を滅ぼすチャンスは幾度かあったが、貴方が現れなかったからこそ本格的な戦いになっていない」小医仙は険しい視線で蕭炎を見つめた。

「貴方も最近色々と問題を起こしたようだな。

その謎の組織は強力だし、厄難毒体にも怯まないようだ」

眉根を寄せた蕭炎が突然気付いたように顔色を変え、「魂殿か？」



「うむ、大陸中で魂を収集する謎の組織だ。

ただ貴方のことを狙ってくるとは思いもよらなかったな。

やはりお主は昔と比べてずいぶん成長したようだ」

小医仙はため息混じりに頷いた。

かつて炎毛狼頭傭兵団が追跡したあの狼狈きった情景を思い出したのか、冷たい表情の奥から僅かに笑みが滲んだ。

その微笑ましい光景の中に、かつての優しい少女の影がちらりと映る。

「お主の笑顔は当時と同じだ」

蕭廷も笑みを浮かべた。

やがて柔和な声で囁くように告げた。

「貴方の言葉に反応して唇を噛む小医仙、僅かに頬を染めながら小さく呟いた。

「些細な事でも変わるものだ。

あの頃は私には合わなかった」

「私は好きだ」

蕭炎が軽口で返すと、小医仙は驚きの表情を見せた。

その視線が少しだけ幼さを失った顔に向けられる。

「魂殿の連中は出雲帝国にいるのか？」

蕭灸がためらいながら尋ねる。

彼は魂殿についてほとんど知らなかった。

当時斗皇級になった際、偶然巨大な石殿に入ったことがあったが、その場所すら把握できていなかった。

「分からない。

彼らは非常に不気味だ。

素人では探し出すのは難しい」

小医仙が首を横に振った。

「残念だが…」蕭炎もため息をついた。

彼は魂殿の一人を生擒めにして情報を引き出そうと考えていたのだ。

「今日は軍を解散させよう。

厄難毒体の件は一刻も早く解決せねば、完全発動まであとどれだけか分からない」

小医仙が厳しい表情で告げた。

「具体的な時期は分かるのか？」

「早ければ半年、長くても二年」

苦しげに答えると、蕭炱の顔色が変わった。

眉根を寄せながら考え込む。

「時間がないからこそ魂殿との戦いを始めたんだ」

小医仙も暗然としているようだ。

「分かった。

材料を集めれば必ず制御できるはずだ」

しばらく黙り込んだ後、蕭炎は決意を持って頷いた。

「では今夜また来よう」

小医仙が微かに頷き、深く見つめるように蕭炎を見つめた。

その視線を受けてから空へと消えていった。

空中の三宗強者たちは小医仙の姿を見て慌てて礼拝した。

連敗した二人の斗宗級武将も、彼らが加瑪帝国に侵入するのに何ら問題ないはずだった。

「総督様…」困惑した声が上がろうとした時、

「撤退だ」

その言葉で全員が凍りついた。

勝利を確信していた三宗の連合軍が突然撤退命令を受けたのだ。

灰紫の瞳が冷たく彼らを見渡すと、皆は疑問を呑み込んで命令を伝達し始めた。

空を見上げる蕭炎はため息をつく。

かつて薬店の小薬師だったあの少女が、今や出雲帝国の真の支配者となったとは…この激変はまさに天と地の差と言えるのだ。