闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
840 / 1,458
0800

第0871話 修練場第0871話 修練の場

しおりを挟む
部屋の中、優しい光が蕭炎の変わりやすい表情を照らし出していた。

その前に灰褐色の炎がゆっくりと昇り、灼熱の温度を放ちながら揺らいでいた。

沈黙が数秒続いた後、蕭炎は深く息を吐き、掌を動かすと灰褐色の「化生火」が手の中に落ちた。

炎を見つめながら彼は苦しげに笑み、口を開けてその炎を受け入れた。

中州への警戒感は蕭炎の心の奥底に根差していた。

大陸最上の強者たちが集まる場所であり、そこでは実力がないとただの踏み台になってしまう。

現在五星斗皇という実力を得ても、彼はそれを中州で通用するとは思っていなかった。

そのためには何か保身の手段が必要だった。

四種類の炎を融合させた「滅ぼしの蓮」が最良の選択肢であり、これが彼の最後の切り札となるはずだった。

実力向上か、自身に保証を与えるかという二択で、蕭炎は後者を選んだ。

欣藍から家族の復興を手伝う約束をしたが、その難易度についてはまだ曖昧だった。

そのためにはより強固な盾が必要であり、この滅ぼしの蓮が最適だった。

地魔老鬼の実験結果も根拠として機能していた。

四種類の炎融合体である滅ぼしの蓮は七星や八星級の斗宗を脅かす力を持ち、弱い相手なら即座に倒せる。

空間移動術で逃げた老鬼がその惨状を見せつけたように、この炎の威力は明らかだった。

そのため蕭炎は滅ぼしの蓮への自信を持ち、中州でも堂々と歩けると考えていた。

化生火を体内に留めることでいつか必要に応じて使えるよう準備した。

魔炎谷三位長老の雄大な斗気を凝縮させたこの炎は通常の保管方法では時間と共に失われるが、異火で包み込むことで長期保存が可能だった。



化生火を体に慎ましく封じ込めた蕭炎は息を吐き、すぐにまた考え事を始めた。

今日の戦いを通じて、彼は自分が次第に強敵に対抗するのに苦労し始めていることに気づいていた。

中州へ行く前のこの時間を利用して、基礎力を崩さずに速やかに修練して実力向上を図る必要があると悟った。

その方法でさえも、理想の場所を見つけるのは容易ではなかった。

内院周辺は深い山林が連なり、静かな場所を探すことは難しくないが、天地のエネルギーは混ざり合っている。

蕭炎が必要とする純粋な火属性のエネルギーだけを求めるなら、火山地帯以外にはほとんど存在しない。

しかし内院近隣には火山脈もないので、彼は適切な場所を見つけることができなかった。

眉をひそめてしばらく考えた後、蕭炎は諦めの表情で首を横に振った。

掌を開くと、炎のように輝く巻物が現れた。

実力向上の手段は二つある。

一つは自身の力を強化し、もう一つは威力のある斗技を修練することだ。

前者の条件が厳しいため、彼は後者を選択した。

当日のオークションで購入した「**遊身尺」をようやく取り出したのだ。

この巻物のレベルは蕭炎の所有する「焰分噬浪尺」よりも上であり、その威力も相当なものだろう。

それだけの価格を支払ったのは明らかに割り切れない取引だった。

赤みがかった巻物は水晶のように美しい。

掌を開き、目を閉じて眉心から霊力が流れ出すと、その霊力は巻物の中に侵入した。

蕭炎の霊視には、岩脈の間にある熔岩湖が広がっている。

熱い泡が水面で膨らみ、破裂すると薄い蒸気を上げる。

ここは作成者が霊力を用いて記録し、高級斗技を刻むための場所だ。

所有者の技術や戦術への理解が含まれており、修練者は間接的にその経験を受け継ぐことができる。

そのため、習得が容易になるという利点があった。



炎と吴鴻が岩漿湖に足を踏み入れると、黄い曖昧な影がゆっくりと現れた。

その影は灼熱の岩漿の上で虚ろに立つだけで、手には約半丈(約1.5メートル)の赤い鉄尺を持っていた。

この鉄尺は炎の重厚さとは異なり、軽やかさを帯びていた。

炎はその影が巻物の製作者の魂の痕跡であることを知っていた。

黄い影が現れた直後、足元を猛り立てるように踏みつけた瞬間、岩漿湖全体が火の海のように沸騰し、その影は突然動き出した。

赤い鉄尺を周囲に流麗な軌跡を描きながら。

炎はその動きに見入っていた。

速度は遅くとも、連続した動作が一体となって繋がり、赤い影が全身を包み込むように舞う。

岩漿の波が黄い影に近づこうとすると、全ての滴が鉄尺の防御網で弾かれる。

炎の魂は驚きの目でその光景を見つめていた。

この影は斗気で体を守るのではなく、単純に鉄尺の術で密閉した層を作り出していた。

その防御力だけでも炎を惹きつけた。

「**遊身尺 動静一体 進退自在 我が極意 炎裂火 游身火 **火 修練は岩漿湖に波を立て 漫然と泳ぎながらも一滴の岩漿に触れず 足場を得るならば上級者と認める その上でさらに努力すれば 大成まで至り 後者は同レベルでは近寄らせぬ」

「次は**遊身尺の鍵所を説く 后生たちは注意して聞くがよい」

炎が黄い影の奇妙な術に驚いている間、空間から老人の声が響いた。

それはこの術の創造者だろう。

その声を聞いた炎は耳を澄ませ、一字一句を刻み込んだ。

最後の言葉と共に老人の声が消えると、炎は再び黄い影を見つめた。

先ほどまで不気味に見えた術も、今では何らかの手がかりが掴めるように感じた。

百回以上その動きを観察した後、炎は深く息を吐いた。

「高額で買った甲斐があるわ」と満足げな笑みを浮かべる。

魂の説明と術の解説があれば、苦労して研究する時間を半減できる。

意識を動かすと、炎はゆっくりと巻物から離れた。

それを慎重に保管し、「この**遊身尺を修得する前に まず岩漿湖を探さねば」と呟いた。

眉をひそめながらベッドの端を叩く手が突然止まった。

漆黒の目の中に喜びの光が浮かんだ。

「天焚煉気塔の下に岩漿世界があるではないか」

三年前に眠り込んだ地底世界への記憶が蘇った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...