闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第0898話 石洞倉庫

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石壁の向こう側にある山洞を見つめながら、蕭炎は小顔に興奮を浮かべた紫研を後ろへ引っ張り、小医仙たちと目線が交わった。

体内の斗気を静かに回転させ、ようやく紫研が強引に開けた狭い隙間からゆっくりと降りていった。

短いトンネルを抜けるとすぐに洞口に到着し、そこからは山洞内から微かな光が漏れ出している。

周囲の石壁には凶暴な魔物の紋様が描かれていたが、その無意味な脅威は蕭炎たちにとっては全く効果なかった。

先頭を歩く蘇千は、この数人中最も実力を保ち続けている存在だった。

鷹山老人との戦いでは体力をほとんど消費しておらず、この洞窟に何か仕掛けがあるかもしれないため、彼が先陣を切るのが最も安全だと判断したようだ。

山洞内には長い石段が続き、その先端は薄暗く見えない闇へと伸びていた。

周囲の岩壁には月光石が埋め込まれており、ほのかな光で洞窟内の闇を徐々に払うように照らしていた。

数人が石段をゆっくり下りていくと、約10分後にはその先端に重厚な石門が現れた。

黒い外観の石門は苔で覆われており、どこか古びた雰囲気を漂わせていた。

「私がやります!」

紫研は新たな石門を見つけると即座に手を上げ、小顔に喜びの表情が広がった。

破壊への情熱は彼女にとって特別なものだったようだ。

「静かにしてなよ」蕭炎はため息混じりに紫研を引っ張りながら蘇千に頷き、「ここは状況不明だから慎重にした方がいい」

その言葉に、蘇千は笑みを浮かべた。

枯れた手のひらが石門に触れるや否や、山崩れのような膨大な斗気が腕から駆け上がり、轟然と石門に衝突した。

「ドン!」

砕ける石片と共に石門は瞬く間に亀裂で覆われ、次の瞬間にはその巨響とともに崩壊し、眩しい光が突然噴き出した。

強烈な光の直後、蘇千が袖を広げた瞬間、腥い風が最前線にいた蘇千へと襲いかかった。

紫研たちの視界は一時的に曇り、蕭炎は「大長老!注意!」

と叫んだ。

その声が途切れる直後、凄まじい気圧と共に巨大な影が蘇千めがけて突進してきた。

しかし蘇千は冷ややかに笑みを返し、柔らかい袖を硬くして鋭く振るった。

その破風音は山洞全体に響き渡り、衝撃を受けた巨体は悲鳴と共に後方へと弾かれた。

「バキ!」

袖が空中で爆発したのち、蘇千は再び袖を広げると、周囲の煙塵が一掃され、石門の向こう側に新たな空間が露わになった。



広い倉庫が眼前に現れた。

内部は非常に明るく、周囲の壁は堅固な墨鋼石で造られている。

まるで墨鋼石鉱脈から切り出されたかのようなこの倉庫は、その存在感だけで圧倒的な印象を与えた。

倉庫内には数多くの台が並んでおり、その上に整然と巻物が並べられていた。

反対側にはクリスタル製の棚があり、そこには貴重な薬材が慎重に保管されていた。

特に注目すべきは、巨大な蛇形魔獣だった。

その体躯からは迫力が溢れ、先ほどの襲撃者は明らかにこの存在だと容易に想像できた。

「斗王級の魔獣だというのに、老夫を襲うとは…」蘇千がゆっくりと倉庫内に入り、蛇形魔獣が吐く舌を睨みながら淡々と言った。

その魔獣は体を丸めて彼らに向かって牙を見せていた。

「この場の警備員でしょうね」蕭炎も笑みを浮かべつつ、魔獣に一瞬だけ視線を向けた後、倉庫全体を見渡した。

そこには「玄階低級」と書かれた棚があり、その数々の巻物を見て彼は驚きの表情を見せた。

「これらは全て整理分類済みです」蕭烈が近づいてくると、棚に目をやりながら笑った。

萧炎は頷き、視線を移動させつつ倉庫の奥へ向かっていった。

普通の玄階級の武技や修練法などには興味もなかった。

彼の好奇心は、この魔炎谷が秘めているかもしれない高級な武技や修練法に向けられていた。

「シュー!」

蕭炎たちが倉庫を自由に調べ始めたことに不満を感じた蛇形魔獣が身を起こし、舌を振りつつ尾を振った。

その動きは瞬時に彼らに向かって襲い掛かる勢いだった。

しかし尾がまだ動いていない段階で、小さな手がそれを掴んでいた。

その持ち主は蛇を見やると鼻をひねり、そのまま魔獣の尻尾を引きずって倉庫外へと引っ張り出した。

どれだけ抵抗しても、その小さな手からは想像できないほどの力が働いていた。

「この子の膂力は本当に凄いですね。

彼女の本体となる存在は一体何なのか、気になります」蕭炎が紫研を倉庫から引きずり出された魔獣を見ながら首を横に振った。

「私も詳しく知りません。

彼女が化形草を誤食したのは幼少期のことです。

その年齢でこれほどの力を得たということは、本体の強さも尋常ではないのでしょう」蘇千が眉をひそめつつ続けた。

「中州大陸南東部には珍しい魔獣族団が存在するという話ですが、そこで彼女の出自を探る手がかりがあるかもしれません」

「魔獣族?」

その聞きなれない言葉に反応して蕭炎の足が一瞬止まった。



「その地域では魔物たちは群れを形成して集まっているが、一定のレベルに達した場合、特に遠古の血脈を持つ異種魔物は人間と同等以上の知性を持ち、人型化することも可能だ。

彼らの悠長な寿命や実力は相当なもので、普通の人間勢力では手を出せない存在である。

ただし……」

蘇千が目を凝らして蕭炎を見つめた。

「遠古の遺伝子を受け継ぐ人類種族も同様に……」

歩みが突然止まり、数秒後、蕭炎は黙って頷いた。

彼は蘇千が言及する「薰」やその背後に隠された異種族を連想したのだ。

「中州は大陸で最も華麗な地域だ。

広大無辺の土地と強者たちが集まる場所であり、そこで頂点に立つことは大陸全体の頂点に立つことと同じである」

蘇千が淡々と言い放った。

「その地では、貴方の小彼女が所属する勢力との接触もいずれあるだろう。

しかし今はまだ、学院を出たばかりの小さな斗師ではない。

ある程度の実力を得た今でも、それを手に入れる資格は得たものの、目標に到達するにはさらに強くなる必要がある……」

蕭炎が小さく頷き、前に広がる一列の巻物に掌を置いた。

深呼吸で沸々と湧いてくる感情を抑えながらも、清雅な顔立ちが脳裏に浮かぶ。

「薰(フン)……」

袖の中で拳を握りしめると、蕭炎の目に熱い光が宿った。

彼は薰が去る際に言い残した言葉を鮮明に覚えている。

「斗宗に達するまで接触は避けるべきだ」——おそらくその族内からの圧力への懸念だろう。

「斗齋(ドウチエ)か」

若い顔の上で光が輝く。

かつては遥かな目標だった斗宗も、今は手の届きそうなものに思えた。

「待ってろよ。

いずれ皆に見せつけるんだ——貴方の族内全員に! 貴方の目は最良のものを選ぶのだ」

心の中でそう囁くと同時に、蕭炎の目に新たな熱情が宿った。

野心と期待が交錯する中、かつて「家廃」呼ばれた男が人々を驚かせる日も近い——その瞬間までに彼は思考を整理し、庫房の端に辿り着いた。

そこには四つの古びた木箱が並んでおり、他の書架とは異なり光の幕で囲まれていた。

その奥から滲み出る濃密なエネルギーに蕭炎も驚きを隠せない。

「地階(チカイ)」

文字を見つめる蕭炎の顔に笑みが浮かんだ。

「これだけでも価値があるわい、地魔老鬼が大切に保管するのも無理はない」

光の幕を破る前に、彼は周囲を慎重に観察した。



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