闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1232話 恐怖の碧蛇0003花瞳

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その突然敵から味方へと転じた光景を見たのは当事者以外のみで、この関係の変化は早すぎたんじゃない?

「ふん」あの夜に私を支配しようとしたんだわ。

紫研が青鳞をちらりと見たまま鼻をつまんだように言った。

「あれは誤解よ。

私は人の本質を見抜けるから、あなたも九幽地冥蟒の仲間だと思った。

しかもあなたの本体は彼らとは違い王族に近いもので、だから攻撃したのよ」青鳞が慌てて説明した。

「誰かあの醜い足無しの連中と比べるなんて不満よ」紫研が九幽地冥蟒を比喩する青鳞に不快感を示し唇を尖らせた。

だがその影響範囲が広すぎると気づき急いで修正した。

「彩鳞姉は例外よ」

「あーあ」と萧炎がため息をつき、震えている丹兽を抱いたまま小声で言った。

「この丹獣には気配がないけど、経験豊富な強者や錬薬師ならその薫りから正体を見抜ける」

「じゃあ青鳞に預けてみようか?」

小医仙が提案した。

白い小獣はそれを理解したように猛しく首を振り水色の大きな目で萧炎を見上げ、爪で彼の衣をぎゅっと掴んでいた。

明らかに青鳞には拒絶していた。

その姿を見て青鳞は少し恥ずかしそうに紫研はニヤリと笑った。

「あの水色の大きな目を見れば……」蕭炎が苦々しく笑った。

「この子は私を可愛がっているわけじゃないんだよ」

「咳、私が預かってあげよう。

私はその薫りを遮断できるわ」小医仙が軽く咳払い美目で白い小獣を見つめた。

明らかにその可愛さに耐え切れなくなっていた。

「女は毛並みの良いものを好むんだね」蕭炎が小医仙の様子を見て呆れたように言った。

「強豪な小医仙でも例外じゃないみたいだ」

萧炎が白い小獣を小医仙に渡すと、その子は少し迷った後も彼女の胸元で毛並みを擦り付けた。

小医仙が笑うのを見ると蕭炎の口角が引きつった。

小医仙が指先からエネルギーを発し丹獣の体に触れた瞬間、薄いエネルギー網が現れその毛並みの下に張り付いた。

エネルギー網が貼り付けられた途端、人々を酔わせるような薫りは完全に消えた。

この丹獣は普通の小獣と見分けられなくなったはずだ。

「ほっとした」蕭炎が安堵し、白い小獣が小医仙から離れようとしないことに目元を動かしながら天妖傀や傀儡を納戒に収めた。

「青鳞も保镖たちを片付けろ」

青鳞が頷き眼孔の緑色が一瞬輝いた。

その瞬間保镖たちは無数の光粒子となって彼女の瞳孔に戻った。



「この不思議な術を見た後、蕭炎を含む皆は思わず驚きの表情になった。

碧蛇三花瞳という名前のその瞳孔は確かに奇異極まりない」

「碧蛇三花瞳が成熟すると眼の中に空間を作り出すことができる。

私が制御するものならばそこへ保管できるが限界がある。

それは実力が強くなるにつれて徐々に向上する」

青麟は笑いながら言った。

「しかし私が制御する人々の力量は次第に衰弱する。

碧蛇三花瞳が彼らの力を吸収し、それを私に返すからだ」

青麟の次の言葉で蕭炎らは思わず息を呑んだ。

この物、本当に恐ろしいものだ。

ならば青麟は修行せずに強者を捕まえてそのまま利用するだけか?

「そんなに恐れるな。

その吸収速度は遅いし私の今の実力では二星以下の斗尊しか制御できない。

しかも三つまでが限界だ……」

人々の反応を見て青麟は舌を出しながら言った。

「さらに私が制御できるのは蛇系血脈を持つ魔兽数のみで人間や他の魔獣には効果がない。

せいぜい補助的な効果があるだけだ」

蕭炎が冷汗を拭った。

その補助効果は彼自身も体験済みだった。

青麟の魂魄力量に比べれば遥かに弱かったからこそ危なかったのだ。

現在の青麟の実力は斗尊初段でさえも安定していないのに碧蛇三花瞳があれば蕭炎と戦った場合二十回合以内に敗北するだろうが、これがある限りは警戒が必要だ。

「なるほどその速さは驚異的だ」蕭炎はため息をついた。

十年前までまだ斗者にも届かなかった青麟がここまで来たとは……この速度こそが速さというものだ

口では感嘆の声を上げても萧炎は事実を知っていた。

責鳞のような存在は大陸に十人未満だろう。

碧蛇三花瞳という極めて稀な天性のものを持つ者はそういないのだ。

「やはり天下第一奇瞳とは名うたるだけある。

本当に凄まじい」

天火尊者もため息をついた。

長年の修行を無駄にした気分だった。

この速さこそが速さというものだ

人々が呆然と見つめる中蕭炎は笑みを浮かべて手を振った。

「これは生まれつきのものだ羨ましくても仕方ない。

行こう主殿へ向かおう。

遅れたら宝物は他人のものになる」

その言葉に人々も頷き、羨望を胸に秘めながら整理して偏僻な丹室から出て行った

現在この第三層にはますます多くの強者が集まり始めていた。

ある丹室では珍しい宝が発見されたのか罵声と剣戟の音が響いていた

他の丹室はほぼ全てが洗い尽くされていたため、蕭炎ももう探査する気にはなれなかった。

この丹殿で最も重要な宝物を手に入れた以上、他は些細なことだ。

一行はそのまま出口を見つけて、その場を後にした。

彼らの手にあったのは、多くの人々が羨望の眼差しを向けるような珍しい丹獣だった。

通路を進むにつれ、当然ながら注目を集めた。

小医仙の腕の中にある丹獣は特に視線を集め、その正体を誰も認知できなかった。

さらに一行の圧倒的な強さが周囲に広がり、少しでも目があった者たちは阻みようもなく、ただ呆然と見守るばかりだった。

遺跡の出口に到達した一行は、交叉する通路を見渡して暫く立ち止まった。

この古代の迷宮のような遺跡を主殿まで辿るのは容易ではなかった。

「私が道案内します。

先ほど遺跡内で簡略地図を見つけたので、主殿の位置を知っています」──蕭炎が困惑していると、隣にいた責鱗(せきりん)が笑顔で提案した。

その言葉に、萧炎は安堵の息を吐いて頷いた。

この娘はやはり福将だ。

かつての小侍女とは比べ物にならないほど成長していた。

青蓮(せいれん)が方向を見極めると、足先で床を軽く蹴り、軽やかに跳躍した。

その後、蕭炎らもその背後に続く形で追従する。

古代遺跡の複雑さは予想以上だった。

責鱗の後ろから通路を進むと、右往左往する廊下が迷宮のように広がり、約十分間ほどその感覚が続いた。

しかし突然視界が開け、前方に巨大な古殿が現れた。

この大殿は全体的に銅黄の色調で、長い年月を経てその色合いが深みを増していた。

石板から漂う古い空気は、数百年もの沈黙を宿したように重苦しかった。

広大な空間の中、人々はまるで蟻のように小さく見えた。

中央には十個の巨大な光球があり、その中間には白玉色の骸骨が石座に鎮まっていた。

手に印決を結び、膝を折って坐っているその姿は、斗聖(とうせい)級の強者らしかった。

「ここが遺跡の主殿です」──責鱗が低い声で囁いた。

蕭炎は小さく頷き、光球と骸骨から視線を外し、大殿の中心部を見やった。

そこには既に多くの人々が立ち並んでおり、その中には鳳清(ほうせい)らも含まれていた。

「へっ、来得りゃあ早いぜ」──その姿を見て、蕭炎の顔に冷笑が浮かんだ。



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