闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1335話 出現

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蕭炎たちの顔色が変わったのを見て、魂崖はさらに険しい表情を浮かべながら皮肉な笑みを浮かべた。

「世事無常を感じたか? 狩人と獲物の関係がまた逆転するかもしれないぞ」

その皮肉な嘲弄には誰も反応せず、皆は魂崖の前に立つ二名の灰衣老人に視線を集中させた。

彼らの体格や目つきは普通の人間と変わらないものの、エネルギー体であることが直感的に感じられた。

「この二人はどこから見つけた斗聖級のエネルギー体だ? こんな強者がなぜ彼のために働くのか?」

古華が眉根を寄せながら低く呟いた。

古真は二名の老人を見つめ、しばらく考えてから言った。

「彼らも魂族の人間だ。

生前の霊智だけは残っているようだ。

この連中は準備していたんだろう」

古青陽がゆっくりと頷き、考え込むように続けた。

「今後はそれぞれバラバラに逃げろ。

二人の斗聖級エネルギー体だろうと、我々には勝ち目がない。

正面から戦うのは危険すぎる」

その言葉に皆は黙り込んだ。

重苦しい困難を乗り越えてきたはずが、結局はこの二名の元凶によってここまで追い詰められたのだ。

「蕭族…… まだ完全に滅びていないのか……」

灰衣老人の一人が淡々と視線を蕭炎に向けた瞬間、魂崖は深々と一礼しながら言った。

「魂刁様。

現在蕭族は滅亡したとはいえ、この男は自身の力でここまで上昇した。

だからこそ今回は絶対に排除しなければならない。

もし放っておけば、再び復活するかもしれない」

「血脈の力を借りていないのか?」

その質問に灰衣老人が目を瞬かせた。

「そうであれば…… 確かに除去すべきだ」

「いい加減話さないで、殺して早く逃げろ。

ここは天墓の近くだぞ。

遅れれば大変なことになる」

もう一人の灰衣老人が眉をひそめながら厳粛に言った。

「分かりました」

その瞬間、魂崖の目元に僅かな波紋が浮かんだ。

彼は足を踏み出しただけで、周囲の空間が激しく震え始めた。

老人の足元から広がる空間の渦巻きが辺りを包み込む。

「逃げろ!」

魂崖の動きを見た古青陽が鋭く叫んだ。

その声に反応して皆は同時に飛び出したが、それぞれ異なる方向へと散開した。

「止めるぞ」

未だ動いていない灰衣老人が冷ややかな笑みを浮かべて手を握りしめた瞬間、周囲の空間が凝固した。

その光景に時間までもが凍り付いたように見えた。

凝固した空間の中で、皆は動きを止めていた。

彼らの目には驚愕が映っていた。

これが本当に斗聖級強者の力なのか? 一瞬で天地を翻すような存在だったのだ。



魂崖も思わず冷笑いを浮かべた。

この三人組が簡単に凝固させられてしまったなら、古族の若手に大きな空白が生じることになるだろう。

その貴重な新鮮な血筋が失われれば、この古くからの勢力にとって相当な打撃となる。

「毒」

魂崖の胸中で一抹の得意感が湧き上がった瞬間、凝固した空間から突然極度の熱を放つ金色の炎が爆発した。

それは再生する鳳凰のように輝き、その一瞬のエネルギーは周囲の空間を激しく震わせた。

「プン」

金色の炎が空間に波紋を作り出す隙間を見計らい、紫褐色の炎が猛然と噴出した。

恐怖的な熱気が広がり、次の衝撃波で空間そのものが崩れ始めた。

空間が揺らぐ中、古青陽たちの体内で斗気が一気に回転し、束縛から解放された。

しかし今回は逃げずに再び集結した。

先ほどの交戦で彼らは分かれて逃げるほどにこの二つの斗聖強者を阻むことは不可能だと悟っていた。

「えっ?」

魂崖の灰衣老者の目が驚きを浮かべた。

凝固空間から抜け出した蕭炎たちの実力に、思わず声が出た。

「確かにそれなりだが、これでは不十分だ」

魂崖は冷笑し、口を開くと黒雲のようなものが吐き出された。

その咆哮と共に千丈規模の巨大な黒い蛇が形成され、尾を振ると空間から「パチパチ」と音を立てながら砕け始めた。

この凄まじい威圧力に蕭炎たちの顔は険しくなった。

斗聖強者の実力を目の当たりにしたのだ。

エネルギー体でさえこれほどなら、本物の斗聖となると想像もできないほどの脅威だった。

「一斉に!」

古青陽の胸中で危機感が膨らんだ。

この攻撃を防ぐには協力しかない。

尊との差はあまりにも大きかった。

「うん」

古青陽の低くした声に合わせ、薰なども頷いた。

血刀聖者との戦いでも感じたことがないほどの死の危機感が迫っていた。

「ふぅ」

蕭炎が深呼吸し、天火三玄変を発動させた。

掌に電撃のようにエネルギーが集まり、この強敵に対し、準備なしで全力を尽くすしかない。

その瞬間、古青陽たちの周囲では強烈な斗気が暴れ出し、巨石を粉砕した。

蕭炎は漆黒の光点を掌に浮かべ、重い表情で虚空に向かって一撃を放った。

「チィ」

掌が空間に触れた瞬間、漆黒の光輪が急速に広がり始めた。

「寂滅指!」



炎が天階の斗技を発動させたその時、そばにいた薰(くん)や古青陽らは同じ動きをした。

彼らが使ったのは、かつて古妖が繰り出したという天階の秘術『寂滅指』だった。

巨大な漆黒の指が一行人の背後の空間から破空し、その黒い光輪と同時に、裂けた次元から突進してきた黒い巨蛇と激しく衝突した。

轟音と共に驚異的なエネルギー爆発が周囲を包み込み、その中心から巨大な影が暴走してくる。

「バキィ」

恐怖の衝撃で地鳴りが響き渡り、接触点から凄まじいエネルギー風圧が四方八方に広がった。

その中から巨蛇の黒い尾が猛スピードで襲いかかると、音速を超える爆発が地面を無数の巨大な穴に変えた。

蛇尾の恐ろしい破壊力を感じ取った炎らは顔色を変えた。

彼ら全員が天階の秘術を使ったにもかかわらず、巨蛇を止められなかったのだ。

「仕方ない!」

古華が歯を食いしばりながら叫んだ。

その爆発で大地自体が震えている中、逃げる時間はなかった。

炎の表情が険しくなり掌に異火が渦巻く。

彼もまた、今や最後の一戦しかないことを悟っていた。

「チィ」

彼らが覚悟を決めようとしたその時、遠方から空間がゆらめき一人の男が現れた。

袖を一振りすると炎らは空中に浮かび上がり、瞬時に天墓の奥へと駆けた。

「血刀聖者?」

突然の救出に驚いた炎らは顔を見開いた。

その人物を見て彼らはさらに驚愕した。

血刀聖者がなぜ彼らを助けようとしているのか、誰もが理解できなかったのだ。

「くそ! あの連中はどこから来たんだ。

ここで殺せばいいものを……」

血刀聖者は炎らには目もくれず罵声を上げた。

彼の怒りは明らかに魂族への憎悪で満ちていた。

「ふん、この程度の半聖が二人前に暴れようとするのか? 死ぬ気か!」

突然の変化に魂族の二人組も驚きを見せたがすぐに笑みを浮かべた。

彼らは同時に身を翻し怒吼と共に声を上げた。

「ロック!」

その瞬間血刀聖者の動きが止まった。

彼の顔には驚愕の表情が広がり、二人の斗聖強者に比べれば圧倒的な力差があったのだ。

「この程度の技で……」魂族の二人は冷笑を浮かべ脚を踏み出した。

次の瞬間彼らは血刀聖者の前に現れ胸元へ拳を叩きつけようとしたが、その直前で動きが止まった。

「誰だ?」

拳が血刀聖者から半歩離れたところで固まるや二人の魂族は怒鳴った。

「この天墓に残る魂族の存在か……」

その声と共に空間が崩壊し、二人組の術も解けた。

彼らの驚愕の表情はさらに強まった。

「蕭玄(しょうげん)?」

その名を聞いた瞬間、二人の顔色が一変した。



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