闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1373話 情報

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静寂に包まれた大殿を見つめる宝山老人は笑みを浮かべた。

彼は浄蓮妖火の魅力を熟知しており、その関連する一枚の破れた図書を長年秘蔵してきたことを知っていた。

大殿の中では熱い視線がその破れた図書に注がれている。

座っている人々は凡人ではないが、浄蓮妖火は彼らにとって伝説のような存在であり、聞いたことはあっても実際に見たことがない。

しかし、それほどまででもないというわけではなく、強大なものは危険性に関わらず欲求を刺激する。

この破れた図書自体が浄蓮妖火そのものではないにせよ、それを入手できれば関連情報を得られるし、もし運よく追跡して手に入れることがあれば、その恩恵は計り知れない。

「ふん、この図書の所有者は丹薬と交換したいようだ。

ただし品質は六色電雷以上のもので、数量は相手次第だ」宝山老人が笑みを浮かべながら全員を見回した。

「競売開始だ諸君」

大殿では明らかに多くの人々が興味を持っていた。

すると途端に枯れた声が響いた。

「三品の六色電雷八品丹薬」

「四品」

「五品」

瞬く間に熱気は高まり、宝山老人の笑みの中で価格は急上昇した。

誰もがこの図書の価値はその数には達しないと知っているが、浄蓮妖火を追跡できるならそれほどの損失など問題外だ。

「どうする?」

多くの人々が興味を持ったことに眉をひそめる蕭炎が声を低くした。

「焦らず待とう」薬老が首を横に振った。

その言葉に従い、蕭炎は強制的に平静を保ちながら価格の上昇を見守っていた。

確かに彼は浄蓮妖火の魅力を過小評価していた。

単なる図書でもここまで狂熱的になるとは。

互角な声援が続く中で価格は急速に上がり、たった十分足らずで七色電雷八品丹薬九品まで到達した。

その高さは蕭炎の顔を曇らせた。

七色電雷を伴う丹薬を作るのは彼にとっても苦労するものだ。

幸いにも現在の価格は多くの人々が支払えない水準で、出札者が次第に減っていく。

しかし残る者はいずれも財力と度胸がある者たちだった。

「八品」

突然冷たい声が響いた。

その主は黒装束の人物だ。

「九品」

さらに高額な価格を提示する声が静寂を破った。



「この声を聞いた瞬間、蕭炎の心も無意識に安堵した。

ようやく藥老が手を動かし始めたのだ。

ただ、その残り図面を本当に手に入れられるかどうかは分からない。

ここにいる連中は、決して油断ならない相手ばかりだ。

薬老が出声で奪い取ろうとした瞬間、先ほど値段を提示した人物が鼻白んで一呼吸置いてから、さらに牙を剥いて叫んだ。

「八色丹雷の八品丹薬一枚!」

その言葉に大殿中は低くざわめきが広がった。

残り図面のために、この男が八色丹雷という稀少な天材地宝を使ったとは誰も予想していなかったからだ。

「三枚……」と淡々とした声で薬老が返すと、その人物は極度の不満を押し殺しながら諦めたように頷いた。

その男が黙り込んだ瞬間、蕭炎も胸を撫で下ろした。

しかし耳に届くのは藥老の冷たい言葉だった。

「まだ喜ぶのは早い」

「五枚……」と今度は鋭い響きを含む声が響いた。

その視線の先には、石椅子に座る痩せた男の姿があった。

彼は蕭炎の視線を感じて斗篷の中から鋭い眼光を向けつけ、周囲の空気まで歪ませていた。

「ふん……」と藥老が鼻を鳴らすと、その無形の圧力は一瞬で消し飛んだ。

「この男も相当な実力だ……」

蕭炎は藥老とその謎の人物が交わしたやり取りに気付いてようやく現実に戻った。

心臓がドキッと鳴るほど驚きだった。

「用心するんだ、この男は半聖への足場を掴んでいる強者だ」藥老が静かに囁いたその声には初めての重みがあった。

話を続けながら薬老も冷ややかに叫ぶ。

「八枚……」

その瞬間、彼の顔色が引きつった。

この競り合いは予想外だったのだ。

宝山老人が笑みを浮かべて言うと、「残念ですが、これ以上出せる価格はありません。

この残り図面は貴方に譲ります」

その言葉に大殿中が一瞬静まり返った。

皆の視線が先ほど薬老と競っていた痩せ男へ向けられた。

黒衣の男は冷ややかに笑い、低い声で続けた。

「九色丹雷の八品丹薬一枚……貴方がそれ以上の価格を提示できれば譲ります」

その言葉に会場が息を吞んだ。

九色丹雷という超稀少な天材地宝を使ったとは誰も予想していなかったからだ。

蕭炎の顔はさらに険しくなった。

「九色丹雷の丹薬……私も手に入れたことがある。

それは斗聖遺跡で得たあの丹獣だ。

しかしそれを交換に使うのは危険すぎる。

この丹獣を大事に育てれば、いずれ九品丹薬になるかもしれない。

その価値は数百倍にもなるだろう。

斗聖級の強者ですら動揺するほどのものだ。

そんな可能性のある未熟な丹薬は絶対に出せない……」

薬老の指がゆったりと肘掛を叩く。

斗篷で顔は隠されているものの、蕭炎はその表情から眉根が寄り込んでいるのが直感的にわかった。

彼は袖を引き寄せながらゆっくり首を横に振った。

「今は感情的になるべきではない。

残図を直接手に入れるのは難しいかもしれないが、他の手段で……」

薬老の掌が緩やかに開き、頷いた。

その低い声が蕭炎の耳に届く。

「競売代金は高すぎる。

だがその老人の身分はわかった。

かつての旧敵だ。

この機会に因縁を清算するのも悪くない」

薬老のような性質なら、最後の一張り残図を見逃すはずがない。

蕭炎の予想通り、正面突破が不可能ならば他の手を使うしかない。

そして彼と薬老は以前にも同じことをやったことがある。

黒角域で別の残図を手に入れた時も同様に……今度も同じ手口を使おうとしているのだ。

「ふっ」

痩せた黒衣の男が低く笑い、宝山老人を見つめる目を移した。

掌から白毛の兎が現れると同時に、場内は濃厚な丹薬の香りに包まれた。

九色雷光丹は半聖級の強者でさえも欲しくなるほどの逸品だ。

ましてや斗尊クラスの存在なら……目眩しそうになるほど。

その白兎を撫でる手が男の胸を締め付けそうになるが、浄蓮妖火という言葉に牙を立てるように頬を引きつける。

掌から光が立ち上がり、包まれた兎は瞬時に宝山老人へと駆け寄った。

その丹薬が大殿を横切る度に多くの人々の手が伸びそうになるが、理性でそれを抑え込む。

結局誰も動かなかった。

宝山老人が掌で光を受け取り、白兎の体全体を確認すると頷いた。

「この方、取引成立。

残図は貴方に」

彼は兎を慎重に収めると、古図に指先を弾くと一筋の光となって痩せた男へと飛んだ。

その男が勝ち誇った笑みで受け取る瞬間、蕭炎の袖の中で手が握りしめた。

浄蓮妖火は絶対に手に入れるべきだ。

だから残図もどうしても必要なのだ。

「ふん……」

宝山老人が笑いながら全員を見回す。

「最後に出されるのは物品ではなく情報です。

その情報は間もなく中州で騒ぎになるでしょうが、ここでは初めての発表です」

その言葉に場内から眉根を寄せた視線が集まる。

どんな情報だろうか?

宝山老人は笑みを浮かべながら異様な声色で続けた。

「伝説の立地成仏の菩提古樹が、万年ぶりに現れた……」



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