闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

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第1464話 人殿血洗い

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歪んだ空間の中央に広がる巨大な黒土の地帯。

その表面には時折白骨の破片が露出し、不気味な光を放っている。

そこは明らかに何世紀にもわたる戦いの跡と化した場所だ。

中心部にそびえる漆黒の巨殿は遠古の凶獣のように地面を這うように横たわり、その周囲から不気味な闇が漂っている。

館内には粗大な鎖が地中深くまで伸びており、その鎖には霧のようなものが渦巻きながら人間の形を成す。

時折光る鎖は黒い霧の中に消え、その霧をより濃密にしている。

この地帯は異様な静寂に包まれている。

不気味な空気が肌を刺し、訪れた者たちの背筋を凍りつかせる。

突然「バシャ」という音が響く。

長い沈黙の後に十数人の霧のような存在が鎖から立ち上がり、人間の姿を取る。

彼らは互いに視線を合わせた後、集団で動いた。

その中にはリーダーらしい人物がいた。

「行こう。

今こそ我々の任務を果たす時だ。

今回は十分な魂を収穫できるだろう」

リーダーの声は枯れ葉のように沙汰していた。

他の一人が陰々と笑った。

「桀!先日柳老怪のチームが『天府』の都市を襲撃し、多くの魂を奪い天尊様から褒賞を受けた。

我々も同じように血祭り上げよう」

リーダーは皮肉な笑みを浮かべながら頷いた。

「そうだ。

今回は誰一人残らず抹殺するぞ」

十数人の影が黒霧となって空間の外へと駆け出す直前、彼らを取り囲む空間が突然凝固し崩壊した。

その瞬間、十数体は空間の力で粉微塵に消えた。

すると空間の裂け目から新たな人物が現れた。

その一人が足を踏み出した時、巨殿からは悲惨な叫び声が響き渡った。

鎖の霧の中から忌々しい視線が集まった。

「我が魂殿の領域に侵入したとは!死ね!」

十数体の影が黒光となって襲い掛かると、リーダーは皮肉な笑みを浮かべた。

「一群の雑兵め、走り回るのも愉快だ」

彼の口から灼熱の炎海が噴出する。

その炎に近づいた全ての影は三呼吸も経たずに消滅した。

残った者たちは驚愕で動きを止めた。

「これらは死なないほどにはあるのか……」

巨殿の方から新たな叫び声が響き、十数体の影が再び襲いかかった。

炎海が広がる中、彼らは恐怖に怯えていた。



「野郎め、この魂殿で暴れることか!生きていても苦しいほどだぞ!天尊諸君、その놈を捕らえろ!」

炎海が空を覆う中、巨闘から突然耳に馴染みのある怒声が響き渡り、瞬く間に十数の影が巨闘から飛び出し、空中高く浮かびながら炎海の向こう側にある蕭炎たちを見据えた。

「ははは!区区の斗尊などと笑わせよ!骨幽老鬼、貴様自身で出てこい!」

蕭炎が哄々と大笑いし、その雷鳴のような声は巨闘の中にまで轟き渡った。

同時に足を踏み出した彼は数百丈に及ぶ炎海を一歩で越え、空中高く位置を取りながら掌を十数名の魂殿天尊に向けて握りしめた。

空間が瞬時に凝固し、その掌が強く閉じられた時。

「ドン!」

蕭炎の一撃によって十数名の魂殿天尊の身体は一瞬で血漿に変化し、彼らの霊魂さえも恐怖の圧縮力で粉砕された。

二星斗聖という今の実力を持つ彼にとって、これら程度の敵など何の障害にもならなかった。

「えっ?海心焰か?」

掌を下ろした瞬間、蕭炎が驚きの声を上げたのは、崩壊する空間の中にまだ一人の影が残っていたからだ。

その人物の体には青い炎が纏わりついており、蕭炎は一目でそれが何であると悟った。

「お前は慕骨老人か?」

彼の顔に笑みが浮かびながら掌を振ると、無形の力場が人影を引き寄せた。

掌で青い炎を砕き、その下には確かに慕骨老人の姿があった。

かつて何度となく蕭炎を追跡し、丹会優勝を狙ったあの男だ。

「萧炎!?」

慕骨老人は驚愕に声を失い、体が震え始めた。

蘭千炎焱火を奪われた後、彼は人殿へ送られ中州外で魂を集めていた。

途中で蕭炎の実力が急上昇したという噂は聞いていたものの、まさかここまでとは思わず、再会した今になってその成長ぶりに呆然とさせられた。

「斗聖……貴様まで二星斗聖に?」

慕骨老人が震える声で問うた瞬間、巨闘から新たな怒吼が響き、黒い影が駆け出した。

百丈にも及ぶ漆黒の鎖鍬は毒蛇のように虚空中を突き進み、蕭炎に向かって襲いかかった。



「区区半聖の実力でこの場を汚すとは、骨幽老鬼も自分を過大評価しているようだ」鎖鏈に向けた蕭炎は微かに首を横ねじり、指先で軽く弾いた。

その低音爆発が指先から生まれた瞬間、巨大な鎖鏈は重撃を受けたように暴れ出し、最終的に巨殿の壁面に激しく衝突した。

「出て来い」

骨幽聖者の攻撃を一指で弾き飛ばすと、蕭炎の掌が猛然と伸びる。

藍色の炎が慕骨老人から強制的に引き抜かれた瞬間、その息は途絶えた。

致命的な打撃を受けたのだ。

「萧炎、老夫と戦え」

海心焰を強奪したことで慕骨老人の目は血まみれになり、身体が膨張し始めた。

自爆しようとしているらしい。

「今の君は、私の前に自爆する資格すらない」冷めた視線で一瞥すると、袖口から無比な恐怖の気流が慕骨老人に襲いかかった。

その凄まじい力は瞬時に彼の身体を血霧へと変えた。

かつて魂殿尊者として蕭炎を追跡した人物も、今や自爆すら許されない存在となった。

慕骨老人の肉体と魂を粉砕し、萧炎が手にした海心焰を見つめた瞬間、口を開いた。

「吞み込んでしまおうか。

今の私の実力ではこれで強化は期待できないが、五色滅却火蓮を完全に発動させるには必要だ。

化生火は確かに強いが、偽の異火である。

この海心焰を得たことでようやく、真の五色滅却火蓮を繰り出す準備が整った」

「蕭炎よ、こここそ君の終焉の地となるだろう!」

海心焰を口にした直後、半空から骨幽聖者の影が現れた。

冷酷な声で叫ぶ。

「申し訳ないが、今日はこの場所を血染めにするつもりだ」蕭炎は顔を上げて骨幽聖者に笑みを浮かべた。

「紫研が空間のゆらぎを乱しているから、彼らが持っている魂族強者を呼び出す玉簡も無効化されている」

「その程度で?!」

骨幽聖者は怒りと驚きの混ざった笑い声を上げた。

「長年の間、蕭炎は初めてこの場所を血染めにすると言った男だ。

だが……」蕭炎は彼の言葉を遮らず、黒々とした巨殿に視線を向けた。

「『当然、ここでは君が主導権を持つわけにはいかない』と知っているからこそ……」淡々と言いながら、「その所謂の大天尊も隠れ続けるのはやめよ。

今日この場所は、私が血染めにする」

「『ふん、大それた口先だ。

あなたが斗聖に達したなどと信じてもらえるわけない。

魂族が君を抹殺するなら、それは一瞬の出来事だ』」巨殿の奥から冷たい鼻息と共に黒い霧が湧き出し、その中で痩せた老人の姿が現れた。

枯れ葉のような影と不気味な空気が彼を包み込む。



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