闘破蒼穹(とうはそうきゅう)

きりしま つかさ

文字の大きさ
1,433 / 1,458
1400

第1485話 0007聖闘妖火

しおりを挟む
蕭炎が即座に快諾したのを見て、魂殿の殿主も僅かに驚きを浮かべた。

その目は前者を深く観察し、やがて薄笑みを浮かべながら言った。

「やはり度胸があるな。

よって四星斗聖以上の実力を持つ仲間たちと共に浄蓮妖火の討伐に協力していただきたい。

残りの炎奴たちは他の者にお願いするしかないだろう」

「残りは我々が引き受けます……」

蕭炎が微笑みながら頸を振ると、紫研と古南海に向かって囁いた。

「今後の浄蓮妖火との戦闘では気をつけてくれ。

十分力を出さないようにしないと、相手に隙を与えるかもしれない」

紫研と古南海は小さくうなずき合った。

彼らも凡人ではないのだから、魂殿の連中と組む際には警戒が必要だと悟っていた。

もし油断すれば、彼らに騙されて惨敗する可能性は十分にあるのだ。

「炎王(えんおう)よ、私は浄蓮妖火との戦闘には参加できない。

その周囲に近づけば封印が解け、同時に私の身体も完全に支配されてしまう」

蕭晨の沙哑な声が響く。

彼は黙って頷いた。

「炎王様、あなたは不用心でも構わない。

魂殿の連中には警戒が必要だ。

特に副殿主やあの危険な人物・魂風(こんぷう)に気をつけてくれ。

彼らは常に暗躍している」

「分かりました……」

蕭炎が頭を下げると、蕭晨は無言で頷いた。

かつて浄蓮妖火の罠に嵌められ幻界に閉じ込められた彼は、その影響で喜怒哀楽が激しくなりがちだったが、千余年の歳月が過ぎるうちに孤独な性格になった。

特に蕭炎から聞いた蕭族の滅亡話を聞いてからは、その寂しさがさらに増していた。

自分が現代の人間ではないという意識も強かったためだ。

「おっしゃりやしな……」

蕭炎は頭を下げた。

「現在の蕭族で唯一血脈を持つ者として、あなたを守ります」

蕭晨はゆっくりと首を横に振った。

紫研と古南海が彼の前に立ちはだかっても苦戦するほどの強力な存在であることは明らかだった。

その不気味な雰囲気からして、魂殿の殿主でさえもその実力を正確に把握できていない可能性すらあった。

そしてこの未知なる存在は、蕭炎たちにとって重要な保護壁となるだろう。

「あなたがいることでこそ、蕭族の復興はある……」

彼は若き後継者の顔を凝視し、初めて穏やかな笑みを見せた。

「あなたの才能は私よりも遥かに優れている。

この血脈が続く限り、必ずや再び栄光を取り戻すだろう。

私がかつて犯した無謀な行動の数々は族人にも迷惑をかけたが、今や天が与えた機会だ。

私は全てを蕭族のために捧げよう。

この身も惜しまず……」

蕭炎は黙り、再び蕭晨に深く一礼した。

視線を空高く向けた瞬間、彼の目が鋭い光を放った。

四星斗聖以上の強者が八名もいるという事実が、彼の胸中で計算された。

しかし蕭晨は戦闘不能であるため、残る七人が連携して浄蓮妖火に対抗するしかない。

この構図は確かに恐ろしいものだが、彼らの圧倒的な力は勝機を秘めている。

その時、魂殿の主が虚空を踏みしめた。

瞬間、彼の影が消え、浄蓮妖火から百丈離れた位置に現れた。

他の六名も即座に円形陣を形成し、炎の魔物を包囲する。

七名の四星斗聖!その規模は驚異的だ。

彼らの連携技は天地を揺るがすほどだった。

周囲の観戦者たちは顔を見合わせて後退した。

この凄まじい戦闘に介入する余裕などない。

一方、岩漿柱の上で立つ浄蓮妖火は微笑んだ。

その美しい顔が妖異な笑みを浮かべる。

「懐かしい光景ですね……」と前置きし、手を岩浆海に向けた。

すると巨大な白銀の炎の槍が飛び出し、彼の手中に収まった。

「封印から解放されて数千年——今日こそ、阻む者を皆殺しにする」

その言葉と共に、彼は顔を上げて数百丈の大炎の波を噴出した。

その熱さは周囲の魂殿主らまでが表情を変えさせるほどだった。

「同時に攻撃!」

魂殿主が目配せした瞬間、黒い霧のような闇の力が彼から溢れ出し、炎の巨浪と衝突した。

しかし一瞬で霧は崩壊し、炎の柱が七人に向かって砕けた。

紫研たちも慌てず、それぞれが強力な術を発動させた。

「ドン!」

という爆破音が連続する中、空中に華麗な光景が広がった。

しかしその美しさは儚いもので、炎の柱は七名を押し潰す。

「キィィィ!」

薬族の薬万帰と石族の長老が焦げた衣装で後退した。

明らかに連携攻撃も効果がなかった。

すると浄蓮妖火が新たな術を発動させた。

「大悲手!」

と叫び、その掌から無数の炎の手が飛び出した。



一击得手,净蓮妖火の美しい顔に冷ややかな笑みが浮かんだ。

彼は空を漂いながら右手で下方の熔岩海域を掴むと、その場所から千丈規模の巨大な熔岩の拳が海面を突き破り、驚異的な熱気と共に紫研たちの上空に現れた。

瞬間、その巨掌は彼らを叩き落とした。

「ドン!」

速度の凄まじさに反応する余裕もなく、七人が次々と熔岩海中に沈む。

彼等は四星斗聖者として頂点に立つ存在だが、この圧倒的な攻撃力には怯んでいた。

「屑のようなものだ」

紫研たちの様子を見た蕭炎らが驚愕を隠せない。

七人の力を合わせても、地利を得た相手は余裕で彼らを翻弄していた。

「バチバチ!」

再び爆発が起こり、狼狽した姿が現れた。

中州の頂点に立つ者たちがこんな姿になるなど屈辱そのものだった。

「お前らも隠し事を続けていると、手を折られるぞ」魂殿主が険しい表情で喝破する。

このままでは人員が減ってしまう。

その言葉に反応し、他の六人も眉根を寄せた。

先の攻撃で体内に残った炎の余燼は彼らの実力でも消せないほどだった。

「まずはこの男を倒すしかない」

七人が一斉に気配を高めると、紫研が龍鳴を響かせ巨大な鳳凰の本体を現した。

その圧倒的な威圧感に魂殿主も驚きを隠せず、自身も全力を解放する。

他の五人も躊躇なく力を開放し、周囲は風雲急を告げる。

紫研と魂殿主が激突する中、十体の炎奴が動いた。

彼らは乳白色の異様な炎で瞳孔を燃やし、蕭炎たちに襲い掛かった。

瞬間、天地が騒然となる。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...