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第0348話 講談師
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李火旺が顔を上げると、自分を見下ろす黒い鳩が視界に入った。
拓跋丹青が使う手紙を運ぶ鳩だ。
李火旺はその足に巻かれた手紙を開き、内容を確認した瞬間、食事も忘れて部屋から出て行った。
李火旺は想像していなかった。
記相が銀陵城にいるなんて。
彼は帰らずにいたばかりか、自分の名前を挙げて会うことを要求していたのだ。
これはチャンスだった。
李火旺が驚いたのは、記相と約束した場所が華美な建物ではなく、簡素な書斎だったことだ。
拓跋丹青のような派手さとは対照的だった。
ドアを開けるとすぐに李火旺の視線を引きつけたのは、干からびた舌だった。
その根元は棺桶釘で朽ちた如意に打ち付けられていた。
その瞬間、李火旺は思い出した。
拓跋丹青が自慢していた用心素(じんしゅ)の舌で作った宝物だ。
深く息を吸いながら吐き出す動作を繰り返すと、李火旺は白顔の老中﨟に向かって一礼した。
「記相大人にお目にかかりました」
「ふふふ~宮の中でもないんだから、どうせ家族同然だ。
座れ座れ」
記相が指し示す方向を見ると、側机には既に茶が用意されていた。
李火旺は座らず、直截に尋ねた。
「敢えらく記相大人、わたくしを呼び出したのは何かご用件でしょうか?」
彼は覚えている。
その老中﨟が馬に乗って去った時、どれほど慌てていたか。
しかし今は落ち着いていた。
何か自分が知らない出来事が起こったのだろう。
「おっしゃーい~若い頃は凄かったんだねえ?」
白顔の老中﨟から上下に見られると、李火旺は気味悪さを感じた。
「洪大が三人で一人を相手にしたと言っていたが、それでも逃げ出したのか。
小さい官位につけさせたのはもったいないわ」
李火旺はその言葉を褒め言葉とは受け取らなかった。
「記相大人、どうか直談判していただけませんか?」
「さあ、爽やかだねえ。
我が方も爽やかに返すよ。
お前が何をしているのか、もう分かったんじゃないか?」
李火旺が黙り込むと、記相は続けた。
「そうだ!この度の任務は、仏骨廟(ぶっこくほう)に隠された心の濁りを回収することだったんだ。
だが失敗したんだよ」
「単に帰って罰せられれば済む話だ。
だから我々は補償が必要なんだ」
今まで座っていた記相が立ち上がった。
「我が方もお前に打ち明ける。
この任務は重大で、またもや失敗したら大変なことになる」
そこで指を硯(すずめ)の硯面に押し付け、硬く切り裂いた。
「任務を果たせなかったら、我々が関わっている全ての山芋(やまいも)が抜かれるかもしれないんだよ」
長々と話し終えた記相は李火旺を見つめた。
「お前はと言えば……また新たな心の濁りを探しに行くのか?」
「さすがだ!監天司(かんてんし)にはこういう人材が必要なんだよ」記相の丸顔が笑みを浮かべた。
「その穢れの出所など気にするな、上様が穢れを求めるなら我々はそれに応える。
ただ以前の仏骨寺は死んだものだったが、今回は生きている穢れを捕まえに行くのだ」
李火旺の心臓がドクンドンと早鐘を打った。
「生きている穢れ? 俺と同じように生きてる清浄(せいじょう)のような存在か?」
なぜだろう。
相手の名前さえ知らないのに、李火旺はその穢れに対して無意識に共感の念を抱いていた。
記相の言葉が爆弾のように耳に飛び込んできた時だった。
「我が方も分かるまい、これは内職ではないし報酬もない。
生きている穢れなら危険だし、お前が嫌がるのも分かる」
「丹青(たんせい)から聞いた話だが、お前は四庫全書の坐忘道(ざぼうどう)に関する典籍をずっと読みたいと思っていたはずだ。
この任務を無事に終わらせれば、我が方が罷官覚悟で四庫に行っても、その全てを暗記してお前に渡す」
李火旺の息が荒くなった。
素未練な穢れか、自身の清浄(せいじょう)に関する情報か。
この選択は簡単そうに見えた。
李火旺は記相に向かって深々と拝礼した。
「はい! 記相様!」
李火旺が承諾すると、記相は花のように笑った。
この散人(さんじん)には利誘しか手だてがないのだ。
彼の性格も烈しいと聞くから脅迫しても逆効果だろう。
そして新たな確信を得た記相は、太監を見つめていた。
「我が方、以前仏骨廟で穢れを奪われたが、今回はその男は来ないと思うか?」
「あの男の身分は何か。
監天司(かんてんし)の物まで奪うとは」
記相は肩をすくめた。
「穢れなら一つあれば十分だ。
诸葛淵(しょうかつえん)はそんなことをしないだろう。
もし生きている穢れと死んだものを合わせたら、彼も苦労するはずだ」
「それに心配しなくていい。
坐忘道が新たな富を得たから、新しい富が来るまで彼らは騒ぐまい」
「だから今回は生きている穢れ以外には問題ない」
記相は李火旺の肩を叩いたが、その動作に眉根を寄せた。
相手の質問を無視したことに不満を感じていたようだ。
この男は善悪を見極める術(すべ)がないのか?
「記相様、あの诸葛淵という人物の身分は? こんな変わった男と出会ったら、どうしたらいいか教えてください」
李火旺が顔を上げて記相と真っ向から向き合った。
目には執着と決意があった。
この機会に質問しないと後悔するだろうと判断したのだ。
李火旺の言葉に反応して、記相はため息をついた。
「本来は忌み嫌うべき存在だが、お前がどうしても知りたいなら話す」
「诸葛淵という名前の男の通称(あだな)は知っているか? みんな『語り部』と呼んでいるのだ」
記相は玉串(ぎょくぐし)を指でつまんでいた。
「この男は奇妙極まりない。
学者のような恰好だが、功名を競うことはせず、賑やかな場所で物語を語るだけだ」
「語る内容は男女の恋愛でも軍事出征でもなく、ただ史書(しょく)を読むのだ」
「例えば『清浄(せいじょう)』という概念が生まれたのは、ある人物が穢れと戦ったからだと云う。
その男は、清浄の力で穢れを封じ込めた」
李火旺の目が輝いた。
「しかし現在では、その清浄も穢れに侵されているらしい。
だから我々は、その清浄を取り戻す必要があるのだ」
拓跋丹青が使う手紙を運ぶ鳩だ。
李火旺はその足に巻かれた手紙を開き、内容を確認した瞬間、食事も忘れて部屋から出て行った。
李火旺は想像していなかった。
記相が銀陵城にいるなんて。
彼は帰らずにいたばかりか、自分の名前を挙げて会うことを要求していたのだ。
これはチャンスだった。
李火旺が驚いたのは、記相と約束した場所が華美な建物ではなく、簡素な書斎だったことだ。
拓跋丹青のような派手さとは対照的だった。
ドアを開けるとすぐに李火旺の視線を引きつけたのは、干からびた舌だった。
その根元は棺桶釘で朽ちた如意に打ち付けられていた。
その瞬間、李火旺は思い出した。
拓跋丹青が自慢していた用心素(じんしゅ)の舌で作った宝物だ。
深く息を吸いながら吐き出す動作を繰り返すと、李火旺は白顔の老中﨟に向かって一礼した。
「記相大人にお目にかかりました」
「ふふふ~宮の中でもないんだから、どうせ家族同然だ。
座れ座れ」
記相が指し示す方向を見ると、側机には既に茶が用意されていた。
李火旺は座らず、直截に尋ねた。
「敢えらく記相大人、わたくしを呼び出したのは何かご用件でしょうか?」
彼は覚えている。
その老中﨟が馬に乗って去った時、どれほど慌てていたか。
しかし今は落ち着いていた。
何か自分が知らない出来事が起こったのだろう。
「おっしゃーい~若い頃は凄かったんだねえ?」
白顔の老中﨟から上下に見られると、李火旺は気味悪さを感じた。
「洪大が三人で一人を相手にしたと言っていたが、それでも逃げ出したのか。
小さい官位につけさせたのはもったいないわ」
李火旺はその言葉を褒め言葉とは受け取らなかった。
「記相大人、どうか直談判していただけませんか?」
「さあ、爽やかだねえ。
我が方も爽やかに返すよ。
お前が何をしているのか、もう分かったんじゃないか?」
李火旺が黙り込むと、記相は続けた。
「そうだ!この度の任務は、仏骨廟(ぶっこくほう)に隠された心の濁りを回収することだったんだ。
だが失敗したんだよ」
「単に帰って罰せられれば済む話だ。
だから我々は補償が必要なんだ」
今まで座っていた記相が立ち上がった。
「我が方もお前に打ち明ける。
この任務は重大で、またもや失敗したら大変なことになる」
そこで指を硯(すずめ)の硯面に押し付け、硬く切り裂いた。
「任務を果たせなかったら、我々が関わっている全ての山芋(やまいも)が抜かれるかもしれないんだよ」
長々と話し終えた記相は李火旺を見つめた。
「お前はと言えば……また新たな心の濁りを探しに行くのか?」
「さすがだ!監天司(かんてんし)にはこういう人材が必要なんだよ」記相の丸顔が笑みを浮かべた。
「その穢れの出所など気にするな、上様が穢れを求めるなら我々はそれに応える。
ただ以前の仏骨寺は死んだものだったが、今回は生きている穢れを捕まえに行くのだ」
李火旺の心臓がドクンドンと早鐘を打った。
「生きている穢れ? 俺と同じように生きてる清浄(せいじょう)のような存在か?」
なぜだろう。
相手の名前さえ知らないのに、李火旺はその穢れに対して無意識に共感の念を抱いていた。
記相の言葉が爆弾のように耳に飛び込んできた時だった。
「我が方も分かるまい、これは内職ではないし報酬もない。
生きている穢れなら危険だし、お前が嫌がるのも分かる」
「丹青(たんせい)から聞いた話だが、お前は四庫全書の坐忘道(ざぼうどう)に関する典籍をずっと読みたいと思っていたはずだ。
この任務を無事に終わらせれば、我が方が罷官覚悟で四庫に行っても、その全てを暗記してお前に渡す」
李火旺の息が荒くなった。
素未練な穢れか、自身の清浄(せいじょう)に関する情報か。
この選択は簡単そうに見えた。
李火旺は記相に向かって深々と拝礼した。
「はい! 記相様!」
李火旺が承諾すると、記相は花のように笑った。
この散人(さんじん)には利誘しか手だてがないのだ。
彼の性格も烈しいと聞くから脅迫しても逆効果だろう。
そして新たな確信を得た記相は、太監を見つめていた。
「我が方、以前仏骨廟で穢れを奪われたが、今回はその男は来ないと思うか?」
「あの男の身分は何か。
監天司(かんてんし)の物まで奪うとは」
記相は肩をすくめた。
「穢れなら一つあれば十分だ。
诸葛淵(しょうかつえん)はそんなことをしないだろう。
もし生きている穢れと死んだものを合わせたら、彼も苦労するはずだ」
「それに心配しなくていい。
坐忘道が新たな富を得たから、新しい富が来るまで彼らは騒ぐまい」
「だから今回は生きている穢れ以外には問題ない」
記相は李火旺の肩を叩いたが、その動作に眉根を寄せた。
相手の質問を無視したことに不満を感じていたようだ。
この男は善悪を見極める術(すべ)がないのか?
「記相様、あの诸葛淵という人物の身分は? こんな変わった男と出会ったら、どうしたらいいか教えてください」
李火旺が顔を上げて記相と真っ向から向き合った。
目には執着と決意があった。
この機会に質問しないと後悔するだろうと判断したのだ。
李火旺の言葉に反応して、記相はため息をついた。
「本来は忌み嫌うべき存在だが、お前がどうしても知りたいなら話す」
「诸葛淵という名前の男の通称(あだな)は知っているか? みんな『語り部』と呼んでいるのだ」
記相は玉串(ぎょくぐし)を指でつまんでいた。
「この男は奇妙極まりない。
学者のような恰好だが、功名を競うことはせず、賑やかな場所で物語を語るだけだ」
「語る内容は男女の恋愛でも軍事出征でもなく、ただ史書(しょく)を読むのだ」
「例えば『清浄(せいじょう)』という概念が生まれたのは、ある人物が穢れと戦ったからだと云う。
その男は、清浄の力で穢れを封じ込めた」
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