道诡异仙

きりしま つかさ

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第0371話 小頼み

長椅に座る李火旺は黙ってその曹百戸を監視し、獄神への線香を上げながら礼を述べた。

理屈としては仏壇に向かう行為は兵家とは思えないが、自分たちのことはほとんど知らないので、この大梁国では兵家に独特の風習があるのかもしれない。

曹百戸が線香を上げ終えると、再び李火旺と記相の前に戻り、李火旺の銅色の面覆いに軽く目をやると尋ねた。

「公公、こんな不吉な場所に来るのは何か用事があるのでしょう?」

「ははあん、曹百戸は直截だ。

わしも遠慮なく言うが、これは耳玖という男で、家内が魔気に入っているらしい。

これくらいの小事なら曹百戸にお任せするだけよ」

目の前の曹百戸が笑みを浮かべながら頷くと、李火旺は心臓が一瞬縮まった。

その反応は予想外だった。

魔気が体に入ったなどということが些細なことのように扱われているようだ。

李火旺は即座に腰の葫を取り上げて中身を全て取り出した。

「曹百戸、これくらいの敬意でどうか」

ところが相手は受け取ろうとせず、その葫を押し返した。

「あー、君がそう言うならわしを外人扱いにするな。

役所こそ違うが、みんな大梁国のためだよ~」

その言葉に記相の口が広がり、「それじゃ曹百戸、この小忙は……」と続けようとしたが、曹百戸が遮った。

「理屈としてはね、わしのような者なら助けるべきだが……」

半刻(約30分)後、記相と李火旺は顔を引きつらせながら牢屋から出てきた。

記相は閉ざされる門に向かって唾を吐きかけ、「何様な奴だ。

こんな小忙にまで頼むなんて!お前たちの門には狴犴(ひがん)ではなく貔貅(びしゅう)をぶら下げろよ!」

と罵声を浴びせた。

李火旺はそれを止めた。

「記相大人、我々は彼らにお願いしているんだ。

少し手伝ってもらうのも当然だ」

「そうは言うものの……」記相は悔しげに両手を叩いた、「あーあ、わしの不甲斐さがいけないんだよ。

君にこんな厄介な奴を見つけてやれなかった」

李火旺はその演技が八割程度だと見抜いていたが、確かに上手く演じていた。

「構わん、些細なことだ。

助けるのは当たり前さ」李火旺は最初から相手の無償援助を期待していなかった。

自分がただ犯人を護送するだけで、白霊淼(はれみょうぞう)が元通りになるなら、この取引はあまりにも安すぎる。

「すまない、本当に申し訳ない」記相は恥ずかしげに謝り続けた。

「記相大人、黙っておくれ。

これ以上言うとわしの気持ちは悪いんだ。

もしどうしても気が済まないなら、この護送について何か知っているようなら教えてくれ」

大梁軍から仕事を頼む場合、知人がいないと不安になるのは当然だ。

「それも構わないさ。

曹老が言った通り、些細なことだよ。

ただし君は今後官途に進まない限り……」

「官途?」

その瞬間李火旺の好奇心が芽生えた。

兵家が自分に護送させる犯人は一体何者なのか。



ふと、李火旺の手が震えた。

朽木如意を掌に載せたまま、彼は記相の言葉を反芻するように呟いた。

「朽木……」

その瞬間、大堂の柱から突然光が迸り出した。

金色の輝きが天井まで届くと、そこには記相の姿が浮かび上がっていた。

「耳玖よ、お前は朽木を捨てたのか?」

声は記相のものではあるが、その中身は明らかに違和感があった。

李火旺は息を詰めて見つめる。

記相の顔が歪み、額から血の滴りが垂れ落ちる。

「お前……」

次の瞬間、光が消えた。

床に転がっていたのは朽木如意だけだった。

李火旺はその場で膝を突き、掌に残った血の匂いを感じ取った。

「不自然だ……」

彼は急いで記相の部屋へ駆け込んだ。

そこには無人のベッドと、未使用の薬箱が残されていた。

鏡の前にある髪飾りから、一筋の黒髪が垂れ下がっている。

李火旺はその髪を手に取った瞬間、記相の顔が浮かんだ。

しかし次の瞬間、その顔が崩れるように歪んでいく。

彼は鏡面に映る自分の姿を見た。

「お前も……」

血色の唇が笑みを零す。

李火旺はその笑い声と共に、朽木如意を天井まで投げ上げた。

光が再び迸り、今度は記相の真実が明らかになった。

「耳玖よ、お前の運命は朽木で終わるのか?」

その問いかけに応えるように、朽木如意は李火旺の手から離れて天井へと消えていった。



彼女は訪れた者の気配を感じ取り、その心素の枯れ舌がわずかに震えた。

複雑な表情を浮かべた李火旺は、ゆっくりと指先でその舌を撫で、さらに棺材釘に留められた舌を観察した。

この物の価値は尋常ではなく、記相が二言も言わずに自分に譲ってくれたことに驚きを禁じ得ない。

彼は相手が自分を何と見なしているのか分からないが、唯一確信できることは相手が誤解しているということだった。

暗い夜色の中、記相は早足で小屋の前まで向かい、戸を開けると既に新しい馬車が待機していた。

白髪の老婦人が顔を覗かせ、「阿哥、どうなった?」

と尋ねた瞬間、記相は軽やかな動きで乗り込み、城北へと進んだ。

「あの袄景教の男が上京したらしい。

我々の約束も果たし、さらに多くの贈り物を渡した。

この恩義は返すだけでは足りない。

帰る準備は整った」

「本当ですか? 本当に良かった! 阿哥、我が家へ戻れるんですか!」

老婦人の顔には少女のような純粋な喜びが溢れ、普段から丁寧に隠されていた表情だった。

彼女は馬車の中から鍋盔を手に取り、小さく砕いて記相の口元に差し出した。

「阿哥、なぜあの袄景の男に対してここまで慎重なのか。

こんなにも待たせたのか」



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