道诡异仙

きりしま つかさ

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第0433話 歴史

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「諸葛兄は私だ!李火旺だ!」

李火旺が一旁の李歳(りせ)に制御された身体を指差しながら詳細に説明し、ようやく諸葛淵(しょかくえん)が何が起こったのか理解した。

彼がその説明を受け入れた後、李火旺は他のことに構わず叫んだ。

「諸葛兄!ここから逃げろ!この場所に長居するのは危険だ!大梁の監天司(かんてんし)と坐忘道(ざぼうどう)が戦い始めている。

ここで留まれば池魚のごとき災禍を被る」

しかし諸葛淵は首を横に振った。

「いや、私が側室を清める作業を始めたのだから、途中でやめられるわけがない」

李火旺が何を経験したかに関わらず、諸葛淵にとっては他の者と共に宮中に侵入し、大齊(たいぎ)の傀儡皇帝に退位させたという事実だけが重要だった。

彼の周囲には戦甲を纏った兵家武将や文官たちが集まり、まるで諸葛淵を中心に据えたかのような雰囲気があった。

李火旺の焦燥感を見て諸葛淵は自信満々に言った。

「安心せよ。

私が全てを見届けるから問題ない」

李火旺が周囲を観察すると、金光で覆われた領域が大梁(たいりょう)であり、白銀に包まれた領域が大齊だった。

内側は黄金、外側は白銀と明確な層構造が見えた。

「あとどれくらいだ?」

李火旺が尋ねる。

「一炷香の時間で禅房(ぜんぼう)に到着する。

そこには皇太后(こうとうたい)が仏説を唱えている。

その中に傀儡皇帝もいる。

我々は彼に退位令を下すだけだ」

李火旺が一旁の李歳制御下の身体を見やり、思い切って頷いた。

「分かった!協力するぞ!速やかに終結させよう」

諸葛淵が進みながら周囲の環境も変化し、戦っている人々は彼の影響を受けて引き込まれた。

監天司(かんてんし)と坐忘道の者たちがどう動こうとも、今は誰も諸葛淵に注意を払おうとはしなかった。

彼らが周囲から通り過ぎる度に、諸葛淵は何かを思い出し眉根を寄せた。

禅房の戸が勢いよく開かれた瞬間、低く響く誦経(しょうきょう)と木魚の音が押し寄せてきた。

「サ皤啰罚曳(さばらはやえ)、埵伊蒙阿唎耶(ついみんありや)、南無那啰谨墀(なんむなろんち).....」

黄色の僧袍を纏った和尚たちが円陣を組んで禅房を埋め尽くし、中央には彼らから背を向けた老方丈が剃刀で顔色が死人のように灰色の少年に剃髪(そっはつ)を施していた。

李火旺はその少年を認識した。

坐忘道が自分たちの前に偽装した姿だった。

彼こそ大齊の傀儡皇帝だ。

「剃度(そっはつ)か?正徳寺(しょうとくじ)の和尚たちは狂ったのか?ゾンビに仏門に入らせるなど......」誰かが非難する声を上げたが、和尚たちの作業は止まらない。



剃刀が軽やかに動くたび、最後の髪の毛まで剥ぎ取られる。

「アミ陀仏、善きこと。

煩悩の髪三千を断ち切った。

貴方の法号は戒貪(かいどう)で、今より正徳寺の弟子となる。

もし誰かが貴方に不和を向けるなら、それは正徳寺と敵対するということだ」

その袈裟姿の老僧がゆっくり振り返ると、李火旺(りかくわん)は思わず声を上げた。

「和尚!?」

眼前の方丈の顔は明らかに彼自身のものだった。

普段身近にいる幻覚のような和尚と同一人物だ。

ここではただの無寺老僧だが、大齊(たいぎ)では正徳寺の方丈なのだ。

一瞬で李火旺は多くのことが理解できた。

大齊が千年以前の大齊ではなく、诸葛淵(ちゅうかつえん)の側にいるのは時空を超えた千年以前ではない。

別の時間軸への移動だったのだ。

思わず诸葛淵を見上げた李火旺は、彼の外号「説書人」や監天司(かんてんし)の看板に刻まれた私印史書を厳罰化するという記憶が脳裏を駆け巡った。

「诸葛淵の大齊はこの混乱世界の別の歴史軸だ」

その瞬間、李火旺は心蟠(じんぱん)とは何かを悟った。

それは過去と未来を行き来できる「門」なのだ!以前訪れた坐忘道(ざぼうどう)も別の時間軸のもので、この世界では和尚が正徳寺の方丈になっていた。

李火旺がそんな思考に耽っている間、诸葛淵が何かを囁いた瞬間に禅房全体が「正徳寺」の文字で震動した。

彼らが合掌すると、戒疤(かいは)から大小様々な目孔がちらつくように浮かび上がった。

その声が次第に大きくなるにつれ、壁に飾られた巨大仏像の口端がわずかに上向き始めた。

诸葛淵が突然絹巻物を広げると、たちまち周囲の僧侶が唐突に消えていった。

それは画中の「心濁(しんだく)」で彼らを隠蔽したのだ。

「フン!」

僧侶たちは拍手しながら怒目を向け、孔雀のように羽ばたかせながら血肉模糊な千本の手が背後に伸びてきた。

その直前、禅房全体が地動山摇(ちどうさんよう)し、十情八苦を緩和させる不気味な音が響き始めた。

その瞬間、大梁(たいりょう)の巨大竖瞳(しどう)が一座の大山のように立ちはじめた。

「诸葛兄!この場はもう危ない!大梁が大齊に影響し始めている!」

李火旺が叫ぶと、诸葛淵は冷ややかに笑みを浮かべた。

「フン!偽物だろうと構わん!お前も同じだぞ!」



「さて、これで終わりだ」诸葛淵は懐から古びた暦を手早く取り出し書き始めたが、その途端に巨大な目がぱっと開いた。

瞬間、诸葛淵は膝をついて苦しみだし、彼の体には透明な臍帯のようなものがちらつく。

空の雲も激しく渦巻き始めた。

李火旺は動くのも辛かった。

こんな調子だと自分と诸葛淵がここで死ぬのは目に見えている。

「よし、覚悟だ」李火旺は匕首を懐から取り出し、自分の喉元に深々と切りつけていった。

「バキバキ」と血の色した『大千録』が地面を覆い広がった。

「肝木!脾土!肺金!腎水!心火!五行逆置!」

李火旺は自身の五臓をその上に叩きつけ、五感が次第に融合していく。

彼はバヒーの存在を感じ取った。

すると『大千録』の赤い籤が蠕虫のように歪み、たちまち体内へと侵入し、肉片を食らいながら繁殖を続けた。

間もなく李火旺の空虚な胸腔を埋め尽くし、さらに外に溢れ出す始末だった。

しかしその驚異的な身体とは裏腹に、李火旺は今や最上なく感じていた。

痛みも消え、混乱も解けたのだ。

そしてあの巨大な縦目がどう睨みつけても、奇妙な声はもう彼の心を揺るさない。

五行逆置は危険なのだ。

五臓を犠牲に一条の命しか使えないからだ。

だが李火旺には構わなかった。

今は自分の体ではなく北風の体だからこそ。



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